陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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カゲマスでの七陰達の水着姿……最高じゃないか。


どっちが年上なんだろうか

 食事が終わった後、シェリーとアンナは談話室でプチ女子会を行っていた。アリスはヴァイスとオハナシ中である。

 

「これがまだアリスちゃんが生まれる前の頃ね」

「じゃあ、ここに写ってる赤ん坊はヴァイス君なんですね」

 

 ソファに座るシェリーがネーベル家のアルバム写真を食い入るように見る横で、アンナがその時のことを懐かしむように説明していた。

 

「雨の日に夫が赤ん坊のあの子を連れて帰ってきた時には驚いたわ。実の両親が魔獣に襲われてあの子だけが生き残ってたみたいで、最初は使用人の1人として育て上げようって話だったんだけどね、あの子の表情を見て気がすぐ変わったの」

「表情、ですか?」

「シェリーちゃんはヴァイスちゃんが笑ったり泣いたりしたの見たことある?」

「え?いいえ」

 

 言われて見れば確かにヴァイスが感情を表に出すところを見たことがなかった。

 

「あの子ね。赤ん坊の頃から1回も泣いていないの」

「え!?そんなことあるんですか?」

「ヴァイスちゃんがそうだったの。アルバムの写真見てみて」

 

 アンナに言われてアルバムの載ってる写真を見てるが、写ってるヴァイスはどれも無表情だった。

 

「お医者さんはショックが原因じゃないかって言ってたけど……見た時の印象はお人形さんみたいで、まるで産まれたときから中身が空っぽみたいだったわ」

「空っぽ……」

 

 アンナは笑った。

 

「だからね、思ったの。私達がこの子にいっぱい愛情を注いでやらなきゃいけないんだって」

「それでヴァイス君を養子に……」

「ところで、お母さん、ちょっと訊きたいんだけどね……」

 

 そう前置きをして、アンナは真剣な表情を浮かべた。

 

「シェリーちゃんは、ヴァイスちゃんはどういう子だと思ってる?」

「え?えっと……その、頭がよくて、無表情でなに考えてるか分からなくて、時折厳しいところがありますが………優しいところもあります」

 

 シェリーからゆっくりと言葉が発せられた瞬間、アンナはぐっと拳を握った。

 

「そうっ、そうなのよっ!ヴァイスちゃんって頭が良いうえに本っ当に優しいのっ!だってね、だってね、他の子より読み書き計算を覚えるのが早くて、生まれたばかりのアリスちゃんの面倒を見てくれたり、領民のために色々と改善したりしてくれたのよ!!」

「……お、親孝行ですね」

「そうでしょそうでしょっ。シェリーちゃんって、わかってるわ」

 

 シェリーはアンナを見てこれが親バカというものか、と理解した。

 

「気難しい子だろうけど、仲良くしてね?」

「…は、はい!」

「あっ、せっかくだからヴァイスちゃんのお嫁さんになっちゃう?」

「え、いや、あの、そういう話は、その……」

「あら?シェリーちゃんはヴァイスちゃんのこと嫌い?」

「い、いえ!そういうわけでは」

「じゃあ好きなのね」

「~~!!」

 

 アンナのペースに乗せられて、シェリーの顔がリンゴのように真っ赤になる。

 

♢♦♢ 

 

 翌朝、なんとか生き延びたオレはグレンとマルコを連れ、屋敷の近くにある魔剣士用の修練場に来ていた。修練場といっても大した道具があるわけでもない拓けた場所だ。

 アリスとのオハナシが終わった後、グレンとマルコがオレに来て鍛えて欲しいと頼んで来た。学園の襲撃とその前で自分達の無力さを痛感したようで、チルドレン達を返り討ちにした元学園生のオレからプライドを捨てる覚悟で学ぶつもりとのことだ。

 最初は断るつもりだったがなかなか食い下がらず、仕方なく引き受けることになって今に至る。

 

「それでは、始める前にこの同意書にサインお願いします」

「え?」

「同意書?いつ作ったんだ?」

「昨日自室に戻って空いた時間に、受けるからにはルールを決めておこうかと」

 

 二人に作成した同意書とペンを手渡す

 

「えっと、まず第一に今回行う修行内容を家族や友人、所属先を含む第三者への口外を禁止するって……ここまでするのか?」

「誰が味方で敵かわからない状況で情報が漏れるのは危険なので」

「ま、まあ確かにそうだな。この3項目の有事の際にネーベル領へ支援するというのはなんだ?」

「うちはまだ経営が軌道に乗ってないのでもしもの際にお願いしたいのです。授業料の代わりと思ってください」

「ちゃっかりしてるな。まあ、お願いしてるのはこっちだからな」

「仕方ないですね」

 

 二人は他の項目に目を通してから同意書にサインをし、オレに渡した。スペルに問題がないのを確認した後、本題に入ることにする。

 

「改めましてこれより修行を始めますが、まずお二人は普段どういう風に戦ってるのですか?」

「どうって、魔力で剣や身体を強化しながらだが?」

「俺も同じく」

「では魔力を武器にどれくらい流してるのか見せてください」

 

 オレの指示に従って、二人は剣を取り魔力を流す。魔力感知でミスリル剣に流そうとする魔力と霧散していくそれの密度を確認できた。

 

「……やっぱり粗いな」

「「え?」」

「もういいです。剣を納めてください」

「あ、ああ」

「いったい、なんなんだ?」

「修行する手順を考えてまして、今ので決まりました。一番最初は魔力コントロールを修得するのからにします」

「「え?」」

「どうしました?」

「いや、魔力のコントロールの意味がわからなくてな。私達はちゃんと使えてるぞ」

 

 グレンとマルコはオレの言葉が理解できていないようだから、丁寧に説明する。

 

「さっき確認した通り、魔力を使って人は身体や武器を強化して戦うわけです」

「魔剣士なんだからそれは当たり前だな」

 

 とグレンは当然のように言う。

 

「問題は、魔力が自分の体から離れると途端に制御が効かずに霧散する上に扱うときそこにはどうしてもロスが出ます。例えば普通の鉄の剣に魔力を100流しても実際に伝わるのは10程度で、9割の魔力が無駄になります。魔力を流しやすいミスリルの剣でも100流して50伝われば高級品と言われるぐらい、極めてロスが多いのです」

「確かにそうだが……」

「しかも一番の問題は無駄に消費してしまう魔力の使い方に依存してしまってることです。二人共学園襲撃でもう痛感したでしょう?魔力が吸い取られ続けてまともに戦えなかったのを」

「うっ……」

「…耳が痛いな」

 

 オレのストレートな物言いに二人はぐうの音も出ない。

 

「教団が同じような手を使ってこないとも限りません。どんな不測の事態にも臨機応変に対応できるようにしないと、そのために一度今まで常識とされてきたことは忘れて取り組んで貰います」

「それで魔力のコントロールからという訳か」

「謹慎が解けるまでの期間しかやらないので、最初から非常にハードなのから始めます」

「非常にハードな修行……」

「そ、それは一体」

 

 緊張感の奔る二人にオレは修行内容を伝える。

 

「――――木登りです

「「……は?」」

 

 二人の目が点になる。

 

「それもただの木登りではありません。手を使わないで登ります」

「えっと、巫山戯てる訳じゃ……ないよな?」

「別に巫山戯てません。まあ見ててください」

 

 いまいちピンと来ないようだから、実際に見せてやることにする。

 オレは自分の両足の裏に魔力を集め、近くにある約7メートルの木に足裏をつける。そして、まるで道を歩くように木を登っていった。

 

「え!?」

「嘘、だろ」

 

 二人共鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。

 

「魔力を足の裏に集めて木の幹に吸着させる、魔力を上手く使えばこんなこともできます」

 

 この修業の目的は2つ。

1.魔力のコントロールを身につけること。

2.足の裏に集めた魔力を維持するスタミナを身につけること。

 

「まず第一に魔力の調節を身につけることです。練り上げた魔力を必要な分だけ必要な箇所に……一見簡単そうに見えて難しいものです。この木登りにおいて練り上げなくてはならない魔力の量は極めて微妙……さらに足の裏は魔力を集めるのに最もむずかしい部位とされているのでハードルが高くなります。まあようするに、木登りでコントロールを極めれば、後からいくらでも応用が利くようになるということです」

 

 だが、コントロールされた魔力を、そのまま維持するのはもっと大変だ。

 元々魔剣士が魔力を練るのは、絶えず動き回る戦闘中。その状況下で、魔力のコントロールと持続を両立させるのは、かなり難易度が高い技術だ。

 しかし、それを身につけなければスライムスーツ無しでレベルアップは不可能だ。

 ちなみにミア達はこの修行を三週間でクリアした。

 

「成程、それで先にあの同意書にサインさせたわけか」

「え?どういうことですか?」

「考えてもみろマルコ、我々だけじゃなく敵もコントロールを身につけてみろ?規模が上の敵が更に強くなってしまえば我々に勝ち目は無いぞ」

「た、たしかに」

「そういうことです。二人にこれを使ってもらいます」

 

 そう言ってオレは木から降りて、ただの鉄でできたナイフを二人に渡す。

 

「自分の力で登り切れる高さの所に、ナイフで目印を付けてください。できたら次はさらに上に印を付けられるように心掛けてください。初めから歩いて上れないので、最初は走って勢いにのったり、飛んだりしてもいいです。ただし身体強化で飛ぶようなズルはしないでください。やればその時点で修行は中止します」

「「き、厳しい……」」

 

 了承した二人は近くの木の前で準備をする。まずは、足の裏に魔力を集める。

 二人とも集中している。

 そして木に向かって、一斉に走り出した。

 

「あイタッ!?」

 

 木に片足をかけただけで、マルコはすっころぶ。

 

「おっと!」

 

 グレンの方は途中まで登ったが、弾き飛ばされて落ちる。

 

「これほど難しいとは……」

「俺なんて登る前にコケましたよ」

「まあ最初はそうなります。魔力が強すぎると、さっきのグレンさんのように弾かれ、弱すぎるとマルコさんのようになります」

 

 一定の魔力を維持することの難しさを痛感する二人。

 

「感覚を掴むまで何度も挑戦するしかありません」

「やるしかないということか」

「よし!もう一回だ!」

 

 二人は再び木に向かって走り出した。

 

 さて、当分掛かりそうだからのんびりと「ヴァイスー!私と勝負しなさぁーい!」はぁ……。

 一瞬でオレの平穏がぶち壊された。

 

「ちょっと!聞こえてるんでしょ!返事しなさいよ!」

「……どうしたクレア?こんなところに来て」

 

 後ろを振り返ると、昨日別れたばかりのクレアがいた。

 

「今いったでしょ。私と勝負しなさいよ」

「嫌だ」

「なんでよ!?」

「お前もしつこいな、勝負以外にやることないのか?ひょっとして暇人か?」

「うっさいわね。そう言うアンタは暇そうじゃないの。暇なのよね?じゃあ勝負しなさい」

「暇じゃない。グレンさん達の修行を見てるんだ」

 

 のんびりしようとしていたのは黙っておく。

 

「修行って……なんか木に向かって走ってるだけみたいだけど」

「足の裏に魔力を集める練習だ」

「へぇ、なんか面白そうね」

「教えないが」

「なんでよ!」

「詳しい内容は部外者には秘密だから。同意書にサインするなら教えてやってもいいが」

「結構よ!」

 

 思った通りプライドの高いクレアはオレに教わろうとは思わないだろう。怒ってこのまま帰ってほしい。

 

「アンタに教わらなくても自力でやってみせるわよ!」

 

 いや、帰れよ。

 

「いくわよー!」

「は?おいちょっと待―――」

「おらあ!」

 

 オレの制止を聞かずに、クレアは魔力を込めた足で大木に蹴りを入れた。

 

 バキッ

 

 衝撃に耐えられなかった大木はへし折れ、呆気なく倒れた。

 木登りをしていたグレン達が目を剥き、足を止めてしまう。

 

「……身体強化での修行なんて一言も言ってないだろ」

「え?違うの?」

 

 

 

 

 修行は一時中断とした。

 

「まったく…騒がしいと思って来てみたら、何をやってるのですかクレアさん」

「だって、ヴァイスがちゃんと言わないから……」

「人のせいにしない」

「うっ……」 

 

 騒ぎを聞きつけたアリスによる説教タイムが始まった。正座させられているクレアは大人に叱りつけられた子供の様に体を縮こませている。前からそうだが、こっちに来たクレアが毎度勝負を挑んできてやらかしたらアリスがよくしかっていた。どっちが年上か分からないな。

 

「だいたい貴女は短気が過ぎます。魔剣士以前に淑女として――――」

「まあまあ、その辺にしたらアリスちゃん。誰も怪我していないし、クレアちゃんもこうして反省してるみたいだから」

 

 説教が長くなりそうなことを見越してか、アンナはアリスを宥める。

 

「…そうですね。言いたいことがまだ山ほどありますがこの辺にしておきましょう」

「ほっ」

 

 解放されたクレアは胸を撫で下ろした。

 

「それじゃあ話が終わったところで少し早めの昼食にしましょうか。グレンさん達も休憩して一緒に食べましょう?」

「むっ、すまないアンナ殿」

「ありがとうございます」

「クレアちゃんもどう?」

「え?は、はい」

 

 なんかクレアも一緒に食べることになった。

 

「そういえば義父さんは?」

「書類仕事よ。もう少ししたらこっちに来るわ」

「そうか」

「せっかく天気が良いんだからピクニックみたいな感じにしたのよ」

 

 使用人達が地面にシートを敷き、いくつかバスケットを上に置く。

 

「それとね、なんとヴァイスちゃんの分は特別にシェリーちゃんが作ってくれたの!」

(……ん?)

(……は?)

「あ、あの……ヴァイス君。上手くできてるかわかりませんが……ど、どうぞ!」

 

 使用人の格好をしたシェリーが、妙に畏まってバスケットを差し出した。

 

「えっと……ありがとう」

 

 受け取ったバスケットを開けると、サンドイッチがいくつも入っていた。

 一つ手に取って口にする。 

 

「ど、どうですか…?」

「ん?美味しいぞ」

「聞いた?美味しいって、良かったわねシェリーちゃん!」

「は、はい!」

 

 シェリーは嬉しそうに微笑んだ。

 

「あらあら、可愛い女の子に手作りを貰うなんてお義兄様も隅に置きませんね」

 

 がしがしとアリスが肘で脇腹をつついてくる。一撃一撃が重くて滅茶苦茶痛いからやめて欲しい。

 

「ふーん……随分といい御身分じゃないこのすけこまし」

 

 クレアからは罵倒の言葉を頂いた。グレンとマルコは他のバスケットに入っていたサンドイッチを食べながら「青春だな……」とか「修羅場ですね」とか呟いている。

 

「そういう邪なことは一切ないが」

「どうだか……そんなことよりヴァイス、昼食が終わったら勝負しなさい」

クレアさん。先程言われたことをもうお忘れですか?

「ひっ」

 

 アリスの笑顔の圧にクレアが悲鳴を上げた。

 

「まったく、あまりお義兄様を困らせないでください。お義兄様には領地経営の手伝いの他に女神の試練や武神祭に向けての練習があるのですから」

「おいちょっと待てアリス。オレはどっちにも出るつもりはないぞ」

「え?それは困りましたね」

「えっ、どういう意味だ?」

「実は既に両方とも代わりにわたしが応募しておきました」

「は?」

 

 今なんて言ったんだオレの義妹は?

 

「悪い。もう一回言ってくれ」

「ですから、女神の試練と武神祭に応募しました

「その二つに誰が出ることになってる?」

勿論お義兄様です

「えぇ……」

 

 

 

 マジかよ。

 




修業内容はナルトの波の国編での修行を参考にしました。
そして最後、リトルシスターがやってくれました。
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