陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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必殺技をどうしようか悩んでいるときにアニメ『呪術廻戦』を見ていたらなんかインスピレーションが湧きました。


いざ聖地へ

「それで、参加費はどうしたんだ?武神祭はともかく女神の試練は20万ゼニーもかかるはずだが」

「実は森で採れたとても珍しい食べ物を商会の方が100万で買い取ってくれまして、勿論残りはちゃんと予算の方に回してますよ」

 

 現在オレはアリスを尋問していた。個室にある椅子にアリスを座らせ、ほかの皆は少し離れて様子を見守っている。

 どうもうちの義妹はオレの同意もなく、何か月か前にリンドブルムの『女神の試練』とミドガル王国で行われる武神祭にオレの参加を応募していたようだ。

 

「……なんでそんなことした?」

「女神の試練も武神祭もクリアすればとても名誉なことです。勝者はどこの国の騎士団からもスカウトされるようになり、一生安定した生活を送れることでしょう。なので、お義兄様が勝利すればネーベル家の箔が付くかと」

「他領や王族から信頼を勝ち取るための策か……で、本音は?」

「お義兄様のお力を知らしめるチャンスだと思ったからです!」

「アホか」

 

 そうだろうと思ったよ。

 

「そういうのは本人の了承を取れ。大体手紙でも参加しないことは伝えた筈だ」

「はい。ですが謙虚でシャイなお兄様のことですから、本当は参加したいけど遠慮してるのだと思い

「そんなわけ無いだろ」

 

 自分に都合のいい拡大解釈をするな。アルファやガンマ並みにたちが悪い。

 

「お父様にも確認を取りましたよ。ちゃんと『ああ、良いよ』と返事を頂きました」

「……義父さん」

「あ、あれ?そんなことに言ったっけ?」

「言いましたよ。お父様が村長とチェスをしている際に」

「あっ、あの時か!白熱してて話が耳に入ってなかったんだよな!」

「まあ、そうでしたか」

 

 絶対わかっててやったな。義妹の確信犯ぶりに戦慄を覚えつつも、どうしようか考える。

 

 武神祭はまだ先だから取り消しはできる。だが女神の試練は後1週間しかないから無理だろう。できたとしてもキャンセル料がとても高いだろうし。うやむやにするという選択肢はあの馬鹿が取りそうな手だが、あまりにも愚策で後からボロが出るとまずいため却下だ。

 なら、残る選択肢は……。

 

「……はぁ、仕方ない。行くしかないか」

「ということは参加するのですね?」

「ああ」

 

 オレが肯定すると、アリスは嬉しそうに微笑む。

 

「では早速共に出発する準備を――――」

「何言ってる。お前はここに残るんだぞ」

「えっ」

「当たり前だろ。まさか何の罰も受けないと思っていたのか?」

「そ、そんな……お義兄様の雄姿をこの目に焼き付けることができないなんて……」

 

 アリスが笑顔から一変してこの世の終わりのような顔になった。

 

「うーん、今回ばかりはアリスちゃんが悪いかな」

「そうだぞアリス。少しは反省しろ」

「あら?アナタも反省しないと?」

「うっ」

「アナタも居残りね」

「そ、そんな」

 

 取り敢えずチェスに夢中でアリスを止めれなかったジャンにもペナルティが課せられた。アリスと同様この世の終わりのような顔をしている

 

「それじゃあ一緒に行くのはお母さんとシェリーちゃんと…クレアちゃんもどうかしら?」

「えっ、いや、私は……」

「というか義母さん達が一緒に来る必要無いだろ?」

「必要あるわよ!可愛い息子の門出なんだから!」

「大げさな、それ以前にあれが出てくる確率なんて福引きで一等を引くよりも低いぞ」

 

 リンドブルムは年に一度開かれている『女神の試練』と呼ばれる祭典は、聖域と呼ばれる魔人ディアボロスの左腕が封じられているとされている遺跡の扉が開かれる日に行われる戦いだ。聖域から古代の戦士の記憶を呼び覚まし、挑戦者はその記憶の戦士と戦う。魔剣士なら誰でも参加できるが古代の戦士がそれに応えるとは限らない。毎年数百人の魔剣士が参加するが、実際に戦えるのは十人程度だ。

 それに女神の試練を仕切ってるのが聖教なのを考慮すると、オレが古代の戦士を呼び出すことはほぼ不可能だろう。

 

「そんなことないわよ。お母さんはヴァイスちゃんが凄い子だってわかってるんだから!」

「……はぁ、まあついていきたいなら好きにしていい。あまり期待しないで欲しいが」

 

 これ以上言ってもアンナは引かない性格だから諦めることにした。

 

 

「旦那様」

「ん?入れ」

「失礼します」

 

 ジャンの許可で屋敷の執事が神妙な表情で部屋に入ってきた。

 

「どうした?」

「先程領民が森の中で複数の遺体を発見されまして」

「遺体?うちの領民に被害が?」

「いえ、魔獣に襲われたのかかなり無惨な形でしたが顔は確認できて、どれもうちの人間ではありませんでした」

「余所者か…………冒険者か?」

「武器を携帯していたので最初はそう思っていましたが、このようなものが傍に」

 

 そう言って執事は懐から出した血塗れの紙切れをジャンに渡す。

 

「なっ、これは!?グレン隊長、これを――――」

「だからもう隊長じゃないと…なんだこれは!?」

 

 紙切れに書かれている内容を見てジャンとグレンは酷く動揺する。

 

「?あなたどうしたの?」

「い、いやなんでもないぞ!それより明日は早いんだから早めに出発の準備をするといい」

「え、ええ」

「ほら、クレアちゃんも一緒に行くのなら戻ってカゲノー男爵に話をしておかないと」

「は、はい」

 

 

 ジャンに急かされ、オレたちは明日の出発の準備のために動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告をしろ」

 

 時が経ち、皆が寝静まった時間帯に自室でイータが開発した通信機を使う。

 通信機を使っての初めての部下たちとの定例会議だ。これなら相手が遠くにいても情報をすぐに伝達でき、連携も取りやすくなる。

 参加しているのはリンドブルムで潜伏中のミア、ミドガル王国王都で待機中のモニカ、ネーベル領の森で人知れず周辺の警戒を行っている灰狼族のカルラとエメラルドのエルフのテュカ。

 情報収集担当のジアや研究部門所属のアネット、調整中のアウラは他の連中にはまだ通信機を渡せていないため不参加だ。

 

『ネーベル領の森にてディアボロス教団の構成員を発見。私とカルラが撃退しました』

『他の魔獣に食べられてしまわないように手を加えておいたっす』

『奴等の隊長が閣下とご家族の暗殺の指示書を持っていました。ですがどこの愚か者によるものかは記されておりませんでした。許可を頂ければ我々が見つけて始末を――――』

「いやテュカ、お前の意気込みは買うが、探す必要も始末する必要もない」

『必要ないとは?まさか既に目星を?』

「目星も何も、暗殺の指示書を送ったのオレだから」

 

『『『『え?』』』』

 

 まあ、そうなるか。ちゃんと説明しないと。

 

「モニカ、この前オレが指定した郵便局に手紙を配達するよう指示をしたのを覚えているか?」

『ん?覚えているよ。なんか変装とかなにかの合言葉みたいなのも細かく指示されたけど……ひょっとしてあの手紙の内容って』

「想像通り暗殺指示書だ。あの郵便局は教団の息が掛かっている。以前ミアの調査で連中が密かに遠くにいる構成員に指示をするための連絡手段として利用しているのを掴んでいたから逆に利用させて貰った」

『何故そのようなことを?』

「保険だ。ルスランの悪事を暴露したオレを教団がちょっかいかけてくる可能性があるかもしれないからな。先手を打たせてもらった」

『でもご主人様。自分を殺す命令を出してウチらに始末させるのにどういう意味があったんすか?』

「考えてもみろ。実際には出していない指示に従った連中の死体が指示書と一緒に第三者に発見されたとする。その第三者が紅の騎士団だったとなればどうなる?」

『えっと、今以上に紅の騎士団の教団への調査が増えるっすか?』

「そうだ。教団の方にもその情報が行き届いた場合、連中はより慎重に動かなきゃいけなくなる。そして先走った奴が誰か見つけて処分しようとするだろう」

『成程ね、互いを疑わせてそっちに手を出さないようにするって作戦か』

 

 連中、ディアボロス教団は世界的な規模を持つ組織だ。力も権力も強く、そして規模が大きくなりすぎたせいで、派閥が分かれたり情報共有が上手く行ってなかったりとかなり弱点が多い。七陰達の活動でそれは確認できた。

 やりようによっては、直接手を下さずとも互いに潰し合わせて組織を瓦解させることも容易だ。

 まあ、馬鹿達の余計な横槍が入らなければの話だが。

 

 オレの目算通り指示書は紅の騎士団の二人の手に渡った。すぐにアイリス王女の下に暗殺未遂があったという報告の書簡が行き渡る。

 

「そういうことだから他の連中にも手出ししないように通達しておけ」

『はっ』

『かしこまりました』

『了解っす!』

『けど、そいつらで大丈夫なの?』

 

 テュカとカルラに指示をしている最中にモニカが意見する。

 

「なにか問題あるか?」

『いや、この前紅の騎士団のメンバーにディアボロス教団の手の者が入っていないかの調査報告書に目を通したんだけど』

「全員シロだと調べがついているはずだが」

『それはそうだけどさ、そっちにいる……マルコ・グレンジャーだっけ?そいつ利用する程の価値があるの?』

「ん?……あぁ、あれのことか」

 

 報告書の内容はオレも目を通している。

 マルコは誰もが認める正義感の強い人間ということだが、一つだけある問題点が見つかった。

 

「あんなのは別に珍しくない話だ。当人たちの問題をこっちが気にすることじゃない………まあ、もしどこかのタイミングで真実を知らせて、その後心折れるようなら話は別だが」

『相変わらずドライっすね』

『そっちで保護してるシェリー・バーネットも同じように見てるの?』

「いや、あいつは既に母親の死を乗り越えた。後はどう前に進んでいくか楽しみにしてる」

『ふーん……別に好意を寄せてるとかそういうのじゃないんだね?』

「好意というより好奇心の方が正しいか…………もうこの話は良いだろ。モニカ、次はお前が報告しろ」

『はいはい』

 

 質問が多かったモニカに報告を促す。

 

『王都の方は……まあ、言わずもがなかな。学園襲撃事件以降の市民たちの騎士団達への冷たい視線は相も変わらず、アイリス王女に支持が傾いてるけど力をつけさせたくない王国上層部はいまだに団員集めと予算関係の妨害をしてるね。騎士団が二つ解体されて浮いた分の予算は学園修繕に回すとか言い訳してるみたい』

 

 まあそうだろうな。年間予算から修繕費を差し引いても幾らか余りが残るだろうが、学園襲撃の元凶であるアーティファクトを学園に持ち込んでしまったことで大きく出れないのだろう。あまり交渉事に向いてなさそうだし。

 戦闘面だけでなく、狡猾さに長けている人材を傍に置いておいた方がいいな。

 

『で、修繕中の学園にゼータの部下が入ったよ』

『『『――!』』』

「……そうか」

 

 思った通りだ。

 アルファ達シャドウガーデンの目的はディアボロス教団の壊滅だが、ゼータと彼女に従っているメンバーには別の目的がある。

 その目的達成のために必要なものが学園にあるのを知り、タイミングを見計らって調査に入ったようだが――――

 ゼータ達には悪いが、探してるものは既にオレが回収して有効活用させて貰った。

 

「しばらく泳がせておけ。もし暴走するようなら七陰のリーダーであるアルファに責任を取らせる」

『あー…………そのアルファなんだけど』

「どうした?」

『ガンマとイータ以外の七陰メンバーとナンバーズ引き連れてリンドブルムに向かったよ。しかもシャドウも呼びつけてるみたい』

 

『『『「…………は?」』』』

 

 見事なまでにはハモった。

 

「なんでそうなった?」 

『どうもアルファが赤い液体……ディアボロスの雫と例の黒い錠剤の存在に気付いたみたいだけどさ。ディアボロスの雫と黒い錠剤がリンドブルムで一緒に作られてると思ってるみたいだよ。それに加えてあそこに紅の騎士団の監査が入るように噂を流してさ。聞いてないの?』

「なにも聞いていない」

『えっ、マジっすか』

 

 あいつら、前に報連相の重要性をあれほど説いたのにまるで理解してないようだな。

 しかもなにも理解していない、しようともしない馬鹿が行くともなれば、絶対に碌でもないことになる。あれほど使うなと言ったのにその場のテンションで王都に大穴を開けた前科があるからこれは断言できる。

 最悪、シャドウガーデンは聖地に災いをもたらしたテロリスト集団として世界中で指名手配されることになり、この前オレが学園でしたことが全て水の泡だ。

 すれ違いがあるとはいえ、アルファ達はそんなことも分からないのか。

 

「……仕方ない。ミア、そっちでの任務は変更だ。アルファ達のフォローに回れ」

『え?止めないのですか?』

「今さら止めたとしてももう手遅れだ。ならこれ以上計画に支障がでないよう、後ろから手綱を握ればいい」

 

 場合によっては、紅の騎士団にはプランをより前進させるために役に立ってもらう。

 

「テュカとカルラは引き続き領地周辺を見張ってくれ。オレが留守の間警戒を緩めるな」

『えっ、また出かけるんすか?』

「ああ、いろいろあってオレも聖地へ向かうことになった」

『そのいろいろについて気になりますが、閣下もフォローに入られるのですか?』

「いや、今回同伴者がいるから直接手を貸すことはできない。指示なんかは一人になった時に伝える。モニカ、休暇のところ悪いが聖地に向かってくれ。ミアの負担を減らす」

『……はあ、仕方ないね。わかったよ』

 

 モニカも自分の数ヶ月の交渉を台無しにされたらたまったものじゃないとわかってるな。

 

『でもボクらだけじゃ、あいつらの手綱を握るの難しいと思うけど?』

「そうだな。あいつらはあの馬鹿とオレの言葉しか聞かない。言い方を変えれば、言葉さえ聞けば文句は言えないだろう。手は打ってある」

 

 そのためにイータには通信機にもう一つの機能を付けておくよう頼んでおいた。

 

 

 

♢♦♢

 

 

 翌朝、出発の準備ができたオレたちは馬車に乗り込もうとしていたのだが、

 

「…………アリス、いい加減その手を放せ」

「やーあー」

 

 アリスがオレの服を掴んで妨害してきた。

 昨日置いていくと言われたショックからか幼児退行している。普段の儚さと知的さが微塵も感じられない。

 今のアリスを様子を見てシェリー達は困惑していた。

 

「あ、あのヴァイス君。アリスさんは大丈夫なんですか?」

「あー……時々こういうことがあるから心配ない」

「時々あるんですか?」

 

 そう、ブラコンのこいつに突き放すようなことを言ってしまった場合、時々今みたいに幼児退行してしまうことがある。それから立ち直らせるまでが凄く面倒くさい。

 とはいえ、このまま放置して行くと余計面倒くさいことになる。

 

「………アリス、お前を聖地に連れて行かないが、代わりにここでやって欲しいことがある。アリスにしか頼めないことだ」

「っ!」

 

 最後の言葉にアリスがぴくっと反応した。

 

「オレがいない間、グレンさん達の修行を見てほしい。同じ修行を二日でやり遂げた優秀なアリスならアドバイスくらい出せるだろ?」

「っ!っ!」

 

 ぴくぴくっと反応。もうひと押しか。

 

「だからオレ達が戻ってくる前に、頼めるか?」

「――――ふっ、お任せくださいお義兄様」

 

 よし、立ち直った。

 

「お義兄様が戻られるまでにはお二人が達成できるようビシバシと鍛えましょう。ええ、ビシバシと」

「「ひっ!」」

「ああ……まあ、ほどほどにな」

 

 アリスの気迫に二人が怯えてしまってる。やる気満々とはいえ二人を悪いようにはしないだろう……多分。

 

 

「あら?もう大丈夫なのアリスちゃん」

 

 荷物の最終確認(化粧品など)をしていたアンナが俺達のところに来た。

 

「ええお母様。私お義兄様にグレンさん達の修行を見てくれと頼まれまして」

「あら~、よかったわね。アリスちゃんがいればグレンさん達も大丈夫だわ~」

 

 大丈夫の定義によるがな。

 

「後はクレアちゃんを待つだけ――――」

「お、お待たせしました!」

 

 カゲノー領がある方向からクレアが息を絶え絶えの状態で荷物を持ってやって来た。

 

「あらクレアちゃん、どうしたの?集合時間までまだ時間があるのに」

「いや……ちょっと、振り切るのに手間取ってしまいまして」

「?振り切る?なにから?」

「あー…………多分、あれだと思う」

 

 クレアが来た道を見ると、ドドドドドドドドドと何かが土煙を上げながらこちらに迫ってきていた。それを見てクレアは頭を抱えている。

 

「ぉおおおおおおお──────ッ!ヴぁいすねぇべるぅぅうぅ――――!!」

「うわぁ…」

 

 頭皮が寂しいことになっている紳士が鬼気迫る表情で猛然と駆けてきて、急ブレーキをかけてオレの眼前のところで止まった。

 

「娘と一緒に旅行に行くとどういうことだぁ!?」

「…………どうもお久しぶりです。カゲノー男爵」

「なにが久しぶりだぁ!」

 

 今オレの目の前にいるこの男の名前はオトン・カゲノー。

 シドとクレアの父でカゲノー家の当主。魔剣士としての実力もそれなりにある人物だ。温厚な性格の持ち主だが、何故か家族全員からの当たりは強い。しかも娘を溺愛しており、クレアが誘拐された以降はかなり過保護気味になってしまった。

 

「許さんぞぉ……!どうせ旅行先で俺の可愛い可愛い娘と観光してちょっといい雰囲気になったら手を出すつもりだろ!」

「そんなつもり一切ありません」

「許さんッ!許さんぞッ!お父さんはそんなの絶対認めませんッ!」

 

 ダメだ話を聞いてない。面倒くさいなコイツ。

 

 

「まったく、貴方ったら」

 

 まくし立てるオトンの背後から突然白い細腕が2本伸び、赤子を抱きしめるように、オトンの首に絡む。

 

 

「落ち着きな、さい」

 

 こきゃ。かくん。

 

 一瞬でオトンは締め落とされ、沈黙した。

 

「久しぶりね、ヴァイス君。うちのハゲが失礼したわ」

「いえ………お久しぶりですカゲノー夫人。見事な絞め技で」

「ふふっ、ありがと」

 

 オトンの背後に佇んでいた黒髪の淑女の名前はオカン・カゲノー。

 シドとクレアの母でカゲノー家の当主の妻。領地が隣同士のため、アンナとよくご近所付き合いでお茶会をやる。あとオトンに対する当たりが凄い。

 

「あら~オカンちゃんも来たの?」

「ええ。ヴァイス君が女神の試練に参加するって聞いたから見送りくらいしてやらないと」

 

…………気を失ってるオトンを放置して母親同士が普通に会話している。

 

「ヴァイス君、退学の件聞いたわ。大丈夫?落ち込んでない?」

「もういろいろと割り切っていますので大丈夫です。ここで領地での仕事を手伝うつもりですよ」

「本当ヴァイス君しっかりしてるわ。うちのボンクラ息子に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい」

 

 言われてるぞシド。家のために働かないどころか、『陰の実力者』なんてふわふわした存在を目指してるんだから当然の評価だ。

 

「向こうでクレアのことお願いね?ハゲ程じゃないけど、娘になにかあったら親として心配だわ」

「心配せずともクレアは十分強いですからその辺の奴には負けませんよ。不意打ちの時は別ですが」

「一言多いわよっ!」

 

 横からクレアに肩を殴られるが痛くも痒くもない。

 

「うふふ、二人共仲がいいわね」

 

 どこが?

 

「ヴァイス君になら娘を任せられそうね。貰ってくれる?」

「は?」

「あら~」

「ちょっ、お母様!?」

「はわわわわ……!?」

 

 冗談が過ぎるな。ブラコンのクレアはオレに対して好意というより嫉妬と対抗心しか抱いていない。それに仮にそんなことすれば流れ的にあの馬鹿がオレの義弟になる。

 

…………想像しただけでストレスが溜まるな。

 

「もう、そういう冗談はいいから!もう行きますね!」

「うふふ、気をつけてね」

 

 オカンのあの屈託のない笑顔からどこまでが冗談かわからないな。

 

「く、クレアを・・・嫁に・・・・・・・・・だとぉ!?」

 

 ようやく復活したオトンが、ぶるぶる震えながら顔を上げた。

 

「ダメダメダメッ!結婚なんて早過ぎるッ!そんなの絶対認め――――」

「うる、さい」

 

 こきゃ、かくん。

 

 すぐさまオカンがオトンを一瞬で締め落とす。

 

「ほら、さっさと行くわよヴァイス」

「あ、ああ………」

 

 すぐそばで父親が締め落とされたのにクレアはまったく気にも留めない。

 なんだかオトンが気の毒に感じるな。

 

 

 まあ、なにはともあれ。

 ジャンやグレンとマルコ、オカン(ついでにオトン)、使用人たちに見送られ、オレ達は聖地リンドブルムに向けて出発した。

 

 

 

「あ、あの……ヴァイス君!」

「ん?」

 

 馬車の中でシェリーから声をかけられる。

 

「なんだ?」

「あの……わ、私……が、頑張ります!」

「?あ、ああ」

 

 何に対してだ?

 

 

「あらあら~ヴァイスちゃん隅に置けないわね~」

 





アリスが一度幼児退行するも復活。グレン達は大丈夫か。

2話でしか出番のなかったオトンとオカンの登場。
オトン「娘はやらん!」
オカン「娘を貰って」

ちなみにカゲノー家ではオカンが一番立場が上。
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