陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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アニメの見て思ったんですけど、アレクシアとクレアって日本刀が似合いそうですよね?
2話での大岩を素早く斬るクレア、3話でのアレクシアの剣の振り方が日本刀を使うそれに近く、アレクシアの剣技がロングソードと少し相性が悪いと感じました。
日本刀を持たせたらもっと強くなれるかもしれません。
自分からは以上です。どうぞ。


不仲

「なんなのここ…?」

 

 アレクシアは気が付くと白い廊下に立っていた。廊下はどこまでも続き、先が見えない。左右には鉄格子の入った牢のような部屋が並んでいる。

 

 現実の様で、何処か夢のような、ふわふわとした空間だった。

 

「聖域に閉じ込められた英雄オリヴィエの記憶よ。かつてここは、教団によって身寄りのない幼い子供たちが集められ、ある実験の被験者となった」

 

 アルファの声がどこまでも続く白い廊下に反響した。

 

 そしてアルファは歩き出す。

 

 左右の牢にはいつの間にか小さな子供たちが入っていた。男の子、女の子、人間、エルフ、獣人、幼いという以外に共通点はなかった。

 アルファの足が一つの牢で止まる。

 牢の中に女の子がいた。女の子は正気を失くした様子で、牢の中で暴れていた。それは苦痛から逃れているように見えた。頭を打ち付け、壁をひっかき、床を転がる。

 

 アルファが歩き出す。

 

 次の牢には血濡れの女の子がいた。しかしその血は自傷によるものだけでなかった。肉体の異様な変異によって裂けた肌から血が滴り落ちていた。

 その黒く腐り落ちるような様に、アレクシアは見覚えがあった。

 

「これは悪魔憑き……!?」

「ほとんどの子供は『それ』に適応できずに死んだ」

 

 アルファが歩き出す。

 次の牢には誰もいなかった。ただ、血に濡れた壁と床、そして助けを求めるような手形が残っていた。

 アルファは足を止めず、そのまま歩く。

 牢の中では似たような光景が繰り広げられた。子供たちが苦しみ、そして死んでいった。

 

「むごい……」

 

 ローズは口元を押さえて嘆く。アレクシアも心の中で同意した。

 子供たちの死に方に一つ共通点があった。女の子は悪魔憑きのような姿で死に、男の子は悪魔憑きにはならなかった。

 

「適応できたのは、ほんの僅かな女の子だけだった」

 

 そして、アルファは足を止めた。

 牢の中には幼いオリヴィエがいた。彼女には怪我もなく、苦しんだ様子も見えない。ただじっと膝を抱え、向かいの牢を見ていた。

 

 向かいの牢は血塗れだった。次の瞬間、そこは場面が切り替わるかのように掃除され、中には女の子が現れた。そして、苦しみ、死んでいく。すぐにまた別の子が入る。

 小さなオリヴィエはずっとその様子を眺めていた。

 

「どうして、こんなひどいことを……」

 

 震える声でローズが言った。

 

「どうしてなのか答えてくれるかしら、ネルソン大司教代理?」

 

 アルファがネルソンに振った。 ネルソンは顔を背けしばらく口ごもり、呟くように言った。

 

「魔人ディアボロスに対抗する力が必要だったのだ……」

「それが教団の言い分。真偽がどうであれ、実際にオリヴィエは魔人ディアボロスの左腕を落としている。オリヴィエは『それ』に適応した僅かな子供の一人だった」

 

 アルファはそう言って歩き出す。

 

「はぁ……あのさアルファ、さっきから『それ』ばっかり言ってるけど、知らない人にはわからないからちゃんと説明してよ。コミュニケーション能力大丈夫?」

 

 モニカからの指摘に、アルファは一瞬足を止めてため息をつきながら答えた。

 

「ディアボロス細胞。我々はそう呼んでいる。魔人ディアボロスに対抗するため、彼らはディアボロスの力を取り入れることを選択したのよ」

「魔人ディアボロスの力を……?お伽話ではなかったの」

「我々は実際に見てきたわけじゃない。歴史にそう書かれていることを知っただけ。お伽話と思うならそれはあなたの自由よ」

 

 アルファはそう言って歩いていく。

 

「ここで見ている光景も、結局どこまでが真実かはわからない。記憶は時間とともに色褪せる。本人の望んだ形に作り替えられる」

 

 次々と牢を通り過ぎていく。

 牢の中は次第に空きが多くなっていった。オリヴィエは成長し、美しい少女となった。その顔はやはりアルファと酷似している。

 

「成長し、ディアボロスの力を得たオリヴィエに一つの任務が与えられた」

「ディアボロスの討伐ですか……?」

 

 ローズの問いにアルファは首を縦に振った。

 

「歴史ではそうなっているが、我々はそれは偽りであると判断した。おそらく、オリヴィエに与えられた任務は新たなディアボロス細胞の採取だった」

「周りから英雄なんてもてはやされても、実際は教団の犬だったってわけだよ」

「でたらめを言うな!」

 

 ネルソンが吠えた。紅潮した顔で、彼はアルファとモニカを睨みつける。黒ずくめの女がネルソンの首根っこを掴み、彼は「グエッ」っとカエルのように呻いた。

 

「オリヴィエは力を得た後も教団に従順だった。理由ははっきりとしないが、我々はオリヴィエがディアボロスを倒し平和が訪れることを心から望んでいたからだと考えている。だから彼女は教団に協力した」

 

 オリヴィエが牢から出た。

 彼女は鎧に身を包み、剣を腰に下げて旅立つ。その顔を見てアレクシアはアルファの考察に同意した。

 

 オリヴィエはきっと、心から世界の平和を望んだのだ。彼女の表情にあったのは、覚悟と希望だった。

 どこまでも続く白い廊下を歩き、彼女の道先が眩い光に染まっていく。

 

「しかし教団の目的は違った」

 

 そして世界に光が満ちた。

 

「教団の目的は力の私物化だった……」

 

 光に包まれた世界は鏡が割れるように粉々に砕け散り、その後に新たな世界が広がった。

 

 

 

 

 そこは幾多の死体が積み重なった戦場だった。アレクシア達はアルファの後をついていく。

 

 夕暮れの戦場で、白衣の男たちが黒い塊を取り囲んでいた。

 オリヴィエの姿もない。

 

 アレクシアたちはアルファの後に続いてその黒い塊に近づいた。

 

「何ですかこれは……」

 

 ローズが呟くように言った。

 その黒い塊は巨大な腕だった。黒く、太く、醜く肥大した化物の腕だ。鋭い爪が伸び、生々しい肉片がこびりついていた。

 

「ディアボロスの左腕…………オリヴィエに斬り落とされても尚、その腕は生きていた」

 

 アルファの言う通りその腕はまだ生きていた。

 不用意に近づいた白衣の男が、その爪に貫かれ絶命する。ディアボロスの腕は鎖と杭で拘束されるが、そこから膨大な魔力が漏れ出していた。

 

「高度なアーティファクトによって教団はディアボロスの左腕を封じることに成功した。しかし封印は完全ではなく、やがて歪みが生じ聖域となる。ま、それはまた別の話ね。教団の目的はディアボロス細胞の驚異的な生命力だった。その肉を切り刻み、血を抜き取って研究し、ディアボロス細胞の驚異的な生命力を得るために…………その過程で生まれたのがこれよ」

 

 アルファが懐から錠剤が入った瓶を取り出した。それはアレクシアも見たことのある、赤い錠剤だった。

 

「それ……ゼノンが持っていた!」

「あ、そっか。アレクシア王女は教団のメンバーゼノン・グリフィと婚約関係にあったんだったね」

「あくまでも候補よ」

「これは失敬。でっ補足説明すると、ゼノンみたいな奴らが持っている赤い錠剤ってさ、悪魔憑きの少女たちの血から抽出してるんだよね」

「えっ!?」

「だって左腕一本から大量に錠剤作れるわけじゃないし……捕まってた時に悪魔憑きの子見なかった?」

「え、ええ……一人いたわ。私の拘束を解いて逃げた後のことは知らないわ………」

「そう……その子はこっちで保護しておいたよ。その子の話によると教会に売られた後そのまま君が幽閉されていた場所に送られて実験動物生活を強いらされていたみたいだよ」

「なっ、ということは教会もグルってこと!?」

「グルっていうか……聖教にもディアボロス教団が入り込んでいてね。積極的に集めた彼女たちの血に流れるディアボロス細胞を取り出したいんだよ。まっ、なにも知らない連中は浄化と称しての処刑を目的としてるけど………どっちもろくでもないね。痛みに苦しむ少女達を手にかけてるんだから……ってごめんごめん。君達にとっては他人事か。痛みに悶え苦しむ子供達が道端にごみの様に捨てられようと、教会で見世物として処刑されても仕方のないことだと割り切ってる表の人間なら尚更」

「「――っ!」」

 

 モニカの冷めたような、それでいて僅かに籠っている憎悪の視線がアレクシアとローズを射抜く。

 どうしてそんな目を向けられるのか理解できなかったが、二人はなにも言い返せない。

 

「まっ、いずれ他人事じゃなくなるか」

「えっ、どういう意味――――」

「話、続けていいかしら?」

 

 余計なことを話すなと言いたげにアルファが会話を遮る。

 

「ごめんごめん。続きをどうぞ」

「この錠剤を飲むことで人間を強化し、更に今までと違って男性でも使用できた…………でも副作用が強く、教団が真に求めるものではなかった」

 

 

――――パリン

 

 世界が割れた。鏡が割れるように粉々に砕け散った。

 

 気が付くと、そこは白くて広い研究室だった。

 中心でディアボロスの左腕が巨大な透明な容器の中に封じられている。

 その容器の前には白衣の男たちが何かを操作していて、カード状の物を装置に差し込んだ。

 

「ばっバカな!よりにもよってここを暴くつもりか!?よせ、見るな、実験体の末裔如きが、知っていいものではない!」

 

 その場面に移った途端ネルソンが慌てふためくが、場面が書き消えることはない。

 

「見るなぁぁあああ!」

 

 装置が作動して筒状の物が開いた。そこには紅い光を放った粒があった。

 それは美しく輝き、鮮やかな赤を放つ、血のようなものだった。

 男たちが喜び、歓声を上げ、代表の男がそれを舐める。

 

「赤く輝くその液体は、まるでディアボロスの血のようだったという。その液体を舐めれば莫大な力と……不老の肉体を得る」

「不老不死…………とでもいうのですか?」

「それが教団の真の目的…………」

 

「やはり我々の仮説は正しかったようね」

 

 アルファの視線はネルソンの方を向いていた。ネルソンは顔を隠すように俯き沈黙している。

 

「さて、そこにいる白衣の男と」

 

 アルファはそう言って、代表の白衣の男を指さす。

 

「ここにいるネルソン大司教代理はよく似ていると思わない?」

「……まさかッ!」

 

 アレクシアは慌ててネルソンの顔を見た。

 アルファの言う通り、ネルソンの顔と白衣の男の顔はそっくりだ。それは似ているという段階を通り越し、本人としか思えないほどだった。

 

「当事者の貴方になら、素敵な情報が得られそうね。この素晴らしいお薬は何て名前なのかしら?」

「……『ディアボロスの雫』だ」

 

 ネルソンが呟いた。

 

「ありがとう。でもこの『ディアボロスの雫』は完全ではなかった。二つの大きな欠陥を抱えていた」

「欠点…………ですか?」

「それくらいなら私でも見てて分かったわ、過去のこいつには髪があるのに、今のこいつは髪が無い。不老は完全ではなかったみたいね!」

 

 確証があるようにアレクシアが堂々とそんな事を言うが………

 

「違うわぁぁぁぁぁっ!髪が抜けたのはストレスのせいだっ、どうせ死なんのだからとどいつもこいつもわしに厄介事ばかり押し付けてきおってぇぇぇっ。いつもはいがみ合っているくせに、どうして後始末を押し付けるときは協力しあうのだ!!あいつらは!!」

「え、えっと……ごめんなさい」

 

 ブチ切れてしまったネルソンが本音をぶち撒けたのを聞いてアレクシアは謝罪した。

 

「欠陥の一つ目は『ディアボロスの雫』を定期的に摂取しないと効果を失うということ。一年に一度といったところかしら?」

「その通りだ」

「それともう一つの欠点……この『ディアボロスの雫』はごく少量しか生産できない。1年で?」

「12滴だ」

「12滴ね。そういえば教団最高幹部ナイツ・オブ・ラウンズの数も確か12人だったわね。偶然かしら?」

「ナイツ・オブ・ラウンズ……!」

「知ってるのですか?アレクシアさん」

「ゼノンの奴が私を手土産にラウンズに上り詰めるって言ってたわ………」

「ちなみに、学園で副学園長だったルスラン・バーネットもかつてはラウンズの一人だったよ」

「「えっ!?」」

 

 モニカの補足説明にアレクシアとローズは驚愕する。

 学園襲撃事件の際、通信機から聞こえた内容によるとゼノンはルクレイア殺害をネタにルスランを脅迫していた。出世目的という話しかその時はいまいちピンとこなかったが。

 

「雫の効果が切れかけた時に不治の病にかかっちゃって他の奴に蹴落とされちゃったみたいだよ。雫なら治せるだろうけどラウンズじゃなくなったからアーティファクトに縋りつくしかなかったんだろうね」

「…………そして『強欲の瞳』の危険性に気付いたシェリー先輩の母親は無惨に殺されたのね。ゼノンは元ラウンズのルスランを脅迫してラウンズに上がる口利きをしてもらおうと……」

「ボクもその話は聞いていたよ。どっちも世間では人格者だの天才だのもてはやされてたみたいだけどとんだ下種野郎だったてわけ。寿命を延ばせも性根が腐っていくのは止められないみたいだね……あと毛根の死滅も」

「う、うるさいわ!とってつけてわしもディスるな!」

「―――髪の話はひとまずおいておいてネルソン大司教代理、貴方はラウンズの為に千年もの間せっせとディアボロスの雫を生産していた。でも最近下の連中に雫とは別の新薬を流してるようね?」

「は?」

 

 アルファの言葉が理解できていない様子のネルソン。

 

「今更とぼけなくていいわ。教団のアジトを調査していた時にそこのリーダーが持っていたわ」

 

 そう言ってアルファが懐から錠剤が入った瓶を取り出す。しかし先程見せた赤い錠剤と違い、それは黒かった。

 

「黒い、錠剤……?」

「この黒い錠剤を飲んだリーダーは途轍もない変化を起こしたわ。赤い錠剤を飲んだ場合よりも再生能力と魔力量が格段に上がった………だけどその代償なのか、最初は人間の姿を保っていても傷を治すたびに形が歪んでいき、生命危機に即応するように形を変え、頭部が別のものに置き換わり、脇腹の部分から新しい腕が生え、人間の姿はほとんど失われ、理性も知性もない、魔人と呼ぶのもおこがましい醜い怪物に変化したわ」

「な、なに?」

「そ、そんなものが……!?」

「気になって少し調べたけど、この錠剤の中にディアボロス細胞を宿した寄生虫が入っているみたいよ」

「魔人の細胞が入った虫が……!?」

「そんなのが入ったのを飲むって………」

 

 流石王女達も想像しただけで生理的嫌悪感を抱きそうになる。

 

「寄生虫は寄生虫でも、元は蚊などの吸血昆虫を媒介にして生物の臓器の侵入し、細胞を喰らって増殖するタイプよ。自然界に存在するそれはディアボロス細胞を喰らって変異したものだと私達は考えている。この変異体が体内に入ると宿主の細胞を喰らいながら増殖、宿主に膨大な魔力と驚異的な生命力を与えると共に浸食を続けていき、最終的に宿主は完全に変異体に呑まれてしまう。不老不死にかなり近づけるだろうけど副作用が強すぎる代物ね。教団が目的とは逸脱したものを作り出したわね」

「は?それをわしが作り出したと?」

「貴方はディアボロスの雫を作り出した科学者…………こんな危険なものを考えついても何もおかしくはないわ。この聖域の研究所を探せばそのサンプルが一つか二つ見つかるでしょうね」

「ちょっ、ちょっと待て!!待ってくれ!!」

「なに?話す気になったの?」

 

「わし…………そんなもの作っておらんぞ?」

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

「ラウンズ以外の連中に錠剤を渡しておらんし、寄生虫とディアボロス細胞を合成?そんなことができるなんて初耳だ」

 

 顔色を窺ってもネルソンが噓をついている様子はなかった。本当に何も知らないようだ。

 

「……黒い錠剤を作ってるのは、ここじゃない?それじゃあいったいどこで?」

 

 自分の予想が大きく外れたことにアルファは激しく動揺する。

 

「あらら?シャドウガーデンを指揮っているアルファ様も予想を外すことなんてあるんだ?」

 

 すると、モニカが人を小馬鹿にするような口調でアルファを煽りだす。

 

「黒い錠剤ね…………そんな危険なものがあるなんて驚いたよ。でもさ、今問題とすべきはそこじゃないんだよね」

「?なにを――――」

「アルファ、そんな危険な錠剤を見つけたって情報…………ミストに報告した?」

「えっ――――」

「今回の作戦のこともだけど、してないよね?この前通信機で定例会議したときに本人が聞いていないって言ってたよ。どういうつもり?」

「あっ、いや、その――――」

「報告・連絡・相談…………組織運営にあたり重要なこの3つをミストが説明したのに、もう忘れちゃったの?」

「わ、忘れてなんかいないわ!」

「ならなんでしなかったの?」

「――っ」

 

 モニカとアルファとの間の雰囲気が悪くなるのをアレクシアとローズ、ナツメも感じ取った。

 

 

「仲間割れ、でしょうか?」

「シャドウガーデンって思ってたよりまとまりがない組織みたいね……」

「……き、きっと組織内に派閥のようなものがあるのでしょう」

「?ナツメ先生どうかしましたか顔色が悪いですよ?」

「そ、そうですか?あ、歩き疲れたのかなあはは(ヤバいヤバいヤバいどうしよどうしよどうしよ!)」

 

 遠回しにシャドウガーデンを弁護するナツメ(ベータ)は滅茶苦茶テンパっていた。

 

 今回の作戦、ガンマ、ゼータ、イータを除いた七陰メンバーが取り仕切っている。

 つまり殆どのメンバーが陰の参謀に報告もせず独断で動いてしまったことになる。

 

 今までも殆ど独断で動いていて特に咎められなかったのだが、今回親衛隊の2人が出張ってきたという事は相当なことだ。

 

 

 

 

「まっ、この話は後にしよう。それより、今はこの男に聞きたいことを聞こうよ」

「っ……ええ」

 

 モニカが話を打ち切り、ネルソンと向かい合う。

 

「単刀直入に聞くけどさネルソン大司教代理」

「?なんだ?」

「災厄の魔女アウロラって何者?」

「っ!」

 

 モニカの口から出た名前にネルソンが大きく反応した。

 

「な、何者とは……?」

「最初にアルファが言ってたじゃん。聖域は古の記憶と魔人の怨念が眠る墓場だって……つまり記憶の牢獄内のディアボロスとの戦いで死んだ人間の記憶が女神の試練で形を成して現れるわけだ」

「……確かに、話をまとめるとそうなりますね」

 

 アンネローゼが倒したボルグという戦士もディアボロスとの戦いで死んだということだ。

 では問題は……。

 

「災厄の魔女アウロラが現れたってことは、戦いにいたってことだよね?」

「「「――――あっ」」」

「っ!!!」

「その時の戦い、彼女はどういう立ち位置だったの?」

「…し、知らん!」

「本当に?知ってますって顔をしてるよ?」

「知らんものは知らん!」

 

 ネルソンは答えるのを頑なに拒みだした。

 アレクシアとローズもネルソンが他にもなにか隠していると勘づいている。

 

 女神の試練の際、アウロラについてナツメがネルソンに聞いた時、彼は彼女は歴史上最強の女と自信満々に答えた。しかもアウロラの名は教会でもごく一部でしか知られていないと。

 

「……はぁ、駄目だ。全然答えてくれないや」 

「ここまで頑なに説明を拒むってことはきっと彼女が大きく関わってるみたいね。あの戦いに深く関わっていた貴方が知らない筈がない。そうでしょ第11席殿?」

「フッ……」

 

 ネルソンが俯いたまま嗤った。

 

「……くく…………くっくっくっく…………は、ハッハッハッハッハッハッ……‼︎」

「…………急に高笑いしだしたよこのお爺ちゃん。なんか引くんだけど」

「私の正体に辿り着くとは……それだけは褒めてやろう。もう少し中心まで行ってお前達を誘い込んで殺そうと思ったが、ここでも十分に貴様らを殺す事が出来る!そう、何を隠そう儂こそがナイツ・オブ・ラウンズの第11席!『強欲』のネルソンだ!」

 

 顔を上げたネルソンの瞳が赤く輝いた。

 膨大な魔力が渦巻くのを感じ、アレクシアとローズが身構える。

 その瞬間、ネルソンの心臓を漆黒の刀が貫いた。ネルソンを拘束している女が、一瞬にしてその命を刈り取ったのだ。

 力を失くしたネルソンの身体が崩れ落ちる。

 

「は?」

「……デルタ、殺すのは情報を全て聞き出した後だっていつも言ってるでしょう」

「えっ、デルタ連れて来たの!?」

「あぁっ!!あっ、え、え、えっ、す、すみませんアルファ様…………。でもデルタは、あいつは狩った方がいいと思ったのです!」

 

その声はどこか気の抜けた感じだった。

 

「デルタ……」

「デルタは狩りが得意なのです。この前山で岩イノシシを狩った時も……」

「黙りなさい」

「うぅ…っ」

 

 アルファの声にデルタがビクッと震え、怒られるのを怯える子供のようにその場にしゃがみ込む。その瞬間顔を上半分まで覆っていたフードが捲れてしまった。

 

 

「……獣人?」

「…………デルタ、耳が出てるわよ」

「あッ……!」

 

 デルタの獣耳が飛び出していた。ついでに顔の下半分も見えていた。

 慌ててデルタが隠すと、今度は白いお尻が丸見えになり、上向きの尻尾がフサフサと揺れていた。

 

「………アルファ、人選ミスったね」

「…うるさい」

 

 情報源を勝手に刺した上に、シャドウガーデンのメンバーに獣人がいることを部外者に知られてしまった。

 戦闘極振りのデルタを連れて来た上に情報源の拘束を命じたアルファに、呆れ顔でジト目を向けるモニカ。

 

「…それと、いつも言ってるでしょ。獲物を仕留めたかちゃんと確認しなさい」

 

 死んだネルソンの死体が割れていく。死体の端から崩れ、虚空に消えていく。

 それは人の死に方ではなかった。

 まるで、鏡が割れていくようなその様は……。

 

「来るわよ」

 

 

 パリン

 

 

 場面が変わった。

 そこは辺り一面が真っ白な空間。

 

「くくく…………クハハハハハ!」

 

 その空間にネルソンが高笑いしながら立っていた。

 その顔に聖職者の面影はない。それは獰猛な戦士の顔だった。

 

「聖域は我らの領域!ここが貴様らの墓場となるのだ!」

 

 ネルソンの声がブレていた。いつの間にかネルソンの姿が二つになり、かと思えば一つに戻る。

 

「改めて自己紹介といこうか」

 

 ネルソンは人の身長ほどもある大剣を軽く肩に担いだまま軽く頭を下げた。

 

「ナイツ・オブ・ラウンズの第11席『強欲』のネルソンだ。教団に牙を向けたこと、その身で悔いるがいい」

 

 

 

「デルタ、行くわよ」

「はいです!」

「大鴉、貴女も手伝いなさい」

「は?やだ」

「えっ」

 

 

 

「本当にまとまりがないわねこの組織……」

「うっ……」

 





ミア「では皆さん、ミスト様のご命令は?」
親衛隊一同「「「「絶対!」」」」
ミア「では刃向かうものは?」
親衛隊一同「「「「シャドウガーデンだろうとぶち殺す!」」」」

近くで聞いていたベータ「ひっ」
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