陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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コロナに感染してしまいました。とてもだるく、投稿スピードが遅くなるかもしれません。


縁を切りたい

 巣立つ時が来た。

 アルファたち七陰はディアボロス教団との本格的な抗争に備えるべく、シャドウガーデンの力を秘かに高めることにした。

 この世界のあらゆる場所へと見えない魔手を伸ばす教団に対して様々な手段で、その強大な影響力へと対抗するために。

 

 …いつかは確実に訪れるだろうシャドウとミスト、ディアボロス教団との対決。

 

 世界の陰の中で行われる死闘に向け、彼女たちはその準備のためにオレ達の下から暫く離れるのだ。

 アルファたちの覚悟は実に天晴というのだろう。

 

 だが問題があるとすれば肝心のシャドウことシドだ。

 アルファがあれだけ説明しても話の大半を聞き流してまだ設定だのお遊戯の一環としか思っていないときた。

 初めて会った時から何一つ変わっていない。戦闘力で言えば大きく成長しているが、精神的には全く変わっていない。オレを勧誘する際に言っていたバカみたいな野望もあの時のままだ。

 

「ねえヴァイス」

「なんだ?」

「学園でヒロインキャラに告白して振られるのってモブっぽいよね?」

「……オレはお前の言うライトノベルとかいうのを読んだことがないからわからん」

 

 こんな感じだ。

 

 貴族は十五歳になると、王都にある『ミドガル魔剣士学園』へ通うことになる。オレとシドも例外ではなく、実家を出て王都へ行くことになった。

 オレとシドはそこで中の下あたりの成績をキープしながら数か月経つ。勿論シドはモブを演じるため、オレは単に目立つのを嫌ったためだ。

 だというのに、魔剣士学園に先に入学していたクレアに再び毎度勝負を挑まれることに頭を悩ませているオレのことなど意に返さず、シドはこれからやることになっているモブイベントを楽しみにしていた。

 

──学園のアイドルに告白してフラれること。

 

 意味が分からない。好きな相手に勇気を振り絞って告白する男子にとって侮辱そのものだろう。

 しかも告白する相手というのが超大物ときた。

 

 アレクシア・ミドガル王女。

 ここ『ミドガル王国』の第二王女で、要するに王家の人間だ。

 彼女が入学してからすでに百人を超えるアホたちが彼女に挑み、『興味ないわ』 と冷酷な一言で返り討ちにあっている。

 

 そして今日、シドもその仲間入りをしようとしていた。

 変態の思考は分からない。いや分かりたくない。

 大体振られるために告白しましたなんてふざけた真似したら不敬罪ものだというのに…………いやいっそ死んでくれた方が世界のためかもな。

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、夜なべしてまで練習したシドの告白(フラれるのが目的)が見事成功した。

 

 

「おかしくない…?」

「おかしいな」

「絶対おかしいですね」

 

 翌日の昼、オレは食堂でシド、そして奴がモブ友として選んだ2人と食事をしながら例のイベントについての話をしていた。

 

「正直言ってお前にアレクシア王女と付き合えるだけのスペックはない。俺ですら怪しいレベルだぜ?」

 

 そう言うのはヒョロ。ガリ男爵家の次男坊で、外見は長細くておしゃれに気を使っているがセンスは悪い。遠くから見ると雰囲気イケメンに見え…………いや、見えないな。

 

「シド君でオッケーなら、自分もいけたと思います。自分が告白すればよかったなぁ」

 

 そう言うのはジャガ。イモ男爵家の次男で、外見は小さくごつい、野球部に一人はいるイモっぽいやつ。遠くから見ても近くから見てもどの角度から見ても雰囲気イケメンにすらなれない。

 シドがこいつらと友達になった理由が、モブっぽいからという酷い理由だ。

 

「別にいいんじゃないか?逆玉の輿で」

「ああん?随分と余裕そうだなぁヴァイス・ネーベルくんよぉ?」

「シド君のお姉さんと付き合ってると噂されるだけのことはありますねぇ?」

 

 因みにこの2人はオレを嫌っているようだ。意味が分からない。特待生であるクレアがオレに勝負を挑むだけで付き合ってると勘違いするとは、こいつらの思考回路はどうなっているんだ。

 

「何度も言うがあいつとオレはそんな関係じゃないぞ」

「まぁヴァイスと姉さんのことはひとまず置いといて…………実際いいもんじゃないよ。なんか裏がありそうで怖いし、そもそも住む世界違うわけだし」

「だろーな。お前に俺みたいな器量は無いし、もって一週間ってところか?」

「3日ぐらいでしょう、周りを見てください」

 

 ジャガの言葉に周囲を見渡すと、食堂の人間がそれとなくシドを見てヒソヒソ話していた。

 

『ほら、あれが……』

『嘘ー! なんか普通……』

『何かの間違いじゃ……』

『あ、私ありかも……』

『えー!』

『弱み握って脅したらしいぜ……ヒョロ・ガリって奴が言ってた』

『マジかよあいつ絶対殺す……』

『演習で事故に見せかけて……』

『ここでやらなきゃ男が廃る……』

『あっ、向かいに座っている茶髪の子かっこよくない?』

『そう?なんかパッとしないじゃん』

『俺知ってるぜ、特待生のクレア・カゲノーって人と付き合ってるって噂だぞ』

『えっ!?なにそれ気になる!』

 

…………既に噂が広まっていたか。全部デマだが。

 

「でも本気でどうしよう。告白してすぐ僕のほうから別れ切り出すのっておかしいし」

「いいじゃん、付き合えば。あわよくばいい思いできるかもしれないぜ」

「ですね。たとえ間違いでも王女と付き合えるんですから、多少の障害で怯んではもったいない」

 

 この2人楽しんでるな。

 シドの方は不服そうだがどうせ念願のモブルートから離れてしまうとかどうでもいい理由からだろう。昔馴染み(不本意だが)のオレにできることといえばこいつと王女との仲を暖かく見守るくらいだ。

 

 

「しかしこういう結果になったのであれば、罰ゲームのことは隠さなければなりませんね」

「だね。バレたら面倒なことになりそうだ。だから頼むよ、特にヒョロ」

「俺?俺は漏らさねーよ?」

「もちろん自分も漏らしませんよ」

 

 信用できないなこいつら。シドは友達になる相手を間違えたのかもしれないとオレは考える。

 

「ご一緒してもいいかしら?」

 

 そこにシドの交際相手となったアレクシア王女がメイドを連れて現れた。

 

「ど、どどどどど、どうじょ!」

「こ、こここここ、こんな席でよければ、じぇひじぇひ!」

 

 さっきまで自分でも付き合えると大口叩いていたジャガでさえも動揺していた。

 

「オレも別に構わない」

「座ればいいと思うよ」

「では」

 

 最後にシドの許可をもらい、アレクシア王女はシドの隣の席に座る。

 

『下級貴族の席に!?』

『やっぱりホントに付き合ってるみたい………!』

『しかも距離が近い!』

 

 周りがザワっと騒ぐ間に、シドの隣の席に10万ゼニーはする日替わり定食がメイド達によって手際よく並べられた。下級貴族のオレたちとは無縁な豪華な食事ばかりだ。

 

「へぇー。さすが王族、やたら多いねえ」

「いつも食べきれないの。本当はもう少し下のコースでいいんだけど、私がこのコースを頼まないと皆が頼みづらくなるから」

「なら貰っていい?」

「ええ、いいけれど……」

「ああ、マナーとか気にしなくていいよ。所詮下級貴族の席だしここ」

 

 シドは戸惑うアレクシアからメインディッシュの肉を強奪し文句が出る前に頬張る。

 

「うん、うまい。魚ももらうね」

「ちょっと……!」

 

 駄目だコイツ。救いようがない。振られるためにわざと意地汚い奴を演じているようだが不敬罪に当たるぞ。

「はぁ……まあいいわ」

「ごちそうさま、じゃあまたね」

「待ちなさい」

 

 食うもん食って流れるように立ち去ろうとするシドをアレクシアが呼び止める。

 

「そういえば貴方、午後からの実技科目は王都ブシン流だったわね?」

「あ…………はい」

「一緒に受けようと思って」

「い、いやあ、無理でしょ。僕は一番下の9部だし」

 

 この学園は午前の基礎科目と午後の実技科目に分かれている。基礎科目はクラスごと、実技科目は選択式で、クラスも学年もごちゃまぜ。数多の武器流派から自分に合った授業を選ぶわけだ。

 ブシン流はかなり人気の授業で、1部50人でなんと9部まである。1部から9部は実力ごとに分けられて、オレ達は入学して間もないこともあってまだ9部だ。

 

「大丈夫よ?私の推薦で1部に席を空けてもらったから」

「………それは大丈夫じゃないやつだ。僕は知っているからな」

「なら私が9部に行こうかしら?」

「やめてくれ、僕の立場がなくなる」

「2つに1つよ、選びなさい」

「……はい」

 

 性格の悪さが滲み出た微笑みを浮かべるアレクシアの命令にさすがのシドも逆らえなかったようだ。

 シドが視線でオレに助けを求めてくるがオレは無視し、ブラックのコーヒーを啜りながらアルファたちからの報告について考えていた。

 

 

 

♢♦♢

 

 

「ど、どどどいうことなのヴァイス!?し、シドが、ア、ア、アアレクシアおうにょと付き合ってるって!?」

「落ち着けクレア、嚙んでるぞ」

 

 午後の実技科目がある時間帯、オレはクレアに物凄い剣幕で問い詰められていた。

 ブラコンである彼女が例の噂を聞きつけてシド本人に確認を取ろうとしたが既におらず、代わりに体育館に向かっているオレを捕まえて校舎裏に連れ去った。これで変に勘違いする奴が増えるというのが分からないのか。

 というか授業サボっていいのか特待生。

 

「な、なにか間違いよね!?」

「いや、事実だぞ」

「じゃ、じゃあ王女の弱み握って脅したって…………」

「それはデマだ」

「どっちよ!?」

「そのまんまの意味なんだが」

 

 シドのこととなると知能がデルタ以下になるなコイツ。取り敢えず分かるように事の経緯を説明しておく。

 

「ば、罰ゲームで王女に告白ってバカじゃないの?」

「あいつらが馬鹿なんだ」

「……で、あんたはそれを止めなかったと?」

「そうなるな」

「なんで止めなかったのよこのお馬鹿!」

「……無茶言うな」

 

 クレアに両肩をつかまれ、ぐわんぐわんと揺らされる。

 コイツにお前の弟は結構ノリノリだったぞ、と言っても信じないだろう。

 しばらくしてクレアはようやく落ち着き、オレの肩を掴んでいた手を離してくれた。

 

「使えないわね…………まあいいわ。それで、なんでシドの告白がオッケーになったのよ?私から見てもシドは馬鹿で顔立ちが平凡で私より弱くてデリカシーのかけらもない欠点だらけの人間よ」

「………よくそんなに自分の弟を貶せるな」

「そんなでもお姉ちゃんの私には可愛い弟なのよ!」

 

 よくわからないな。義妹のアリスはオレのことを大げさに自慢するが、クレアはシドを悪く言った上で好きだと言う。頭の中の論理が破綻してるのかもしれない。見た目は美少女と言って差し支えないのに中身が残念過ぎる。

 

「今私に関して失礼なこと考えていたでしょ?」

 

 何故バレた。

 

「お前の気のせいだ………それで、どうするんだ?」

「どうするってなによ?」

「そんなに気になるなら本人たちに問いただしたらいいんじゃないか?」

「そ、そんなことできるわけないじゃない!それでシドに嫌われたらどうするのよ!」

 

 そういうところで遠慮するとか、面倒くさいなコイツ。

 

「あっ、そうだ。アンタちょっと調べてよ」

「は?」

 

 何言ってんだ。

 

「なんでオレが?」

「私はクラスも学年も違うけど、あんたはシドとクラスメイトだから近くにいるくらい出来るでしょ気に食わないけど。本当に気に食わないけど」

「確かにそうだが……」

「じゃあお願いね」

「おい、まだやるとは言ってな「お・ね・が・い・ね?」あっ、はい」

 

 オレの喉元へ突きつけられた剣が、拒否権はないと語っていた。不本意ながらクレアの頼まれごと(殆ど命令)をオレは聞き入れるしかなかった。

 

 

 

 

 そうしてオレは放課後にシドを尾行して様子を伺った。

 シドは校舎裏でアレクシアと対峙し、何故自分の告白に応じたのか話していた。

 要約すると、アレクシアと1部の指南役であるゼノン先生は婚約関係(あくまで候補)にあるが、アレクシアはゼノン先生を嫌っており、諦めるよう当て馬としてシドを選んだということだった。

 完全に人選を間違えてると思うが。

 

 あと罰ゲームで告白したことは王女にバレていた。やはりヒョロとジャガの二人があっさり吐いたようだ。やっぱり友達選びを間違えたな。

 

「とりあえず恋人のふりを続けてもらいましょうか。期限はあの男が諦めるまで」

「僕は所詮男爵家の出だ。正直当て馬には力不足だよ」

「分かっているわ。時間が稼げればいいの。後はこっちで何とかするから」

「それと危険な目には遭いたくない。相手は剣術指南役だ。何かあったら僕じゃどうしようもない」

「ごちゃごちゃ五月蠅いわね」

 

 アレクシアはそう言って懐から金貨をバラまいた。

 1枚10万ゼニー、それが少なくとも10枚はある。

 

「拾いなさい」

 

 どうやら金で買収する気の様だ。いや、盗賊から略奪品を略奪するシドでもそんなのに――――

 

「へぇ、僕が金でなびく男に見える?」

「見えるわ」

「ふっ、その通りだ」

 

 シドは地べたに這いつくばって金貨を1枚1枚丁寧に拾った。

 マジかよ。仮にもシャドウガーデンの盟主だというのに尊厳すらないのか。

 

「ちゃんと私の言うこと聞いてくれるわよね?」

 

 性格の悪さが滲み出た微笑みでアレクシアが言う。

 

「もちろんですとも」

 

 シドは満面の笑みで答える。

 

「いい子ね、ポチ」

「はっはっはっ………わん!」

「ほーら、とってこーい」

 

 堕ちるまで堕ちたか。

 このことはクレアには黙っておくことにした。

 

 

 

………もうあいつと縁を切りたい。

 

 





花澤ボイスのドエス王女の犬となった陰の実力者(笑)を見て幻滅するオリ主
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