~辿り着く場所~ -Another Story- 作:ナナシの新人
帰り道で眠ってしまったともを布団に寝かせて、テーブルを囲って座っている二人の女友達と向かい合って座る。一人は、指折り数えて困惑顔を覗かせ。もう一人の方はというと、何かを言いたくて仕方ないというような笑顔をしている。
後者の方は何を言いたいのか、大方察しはつくが......。
「うんうん、頑張ったんだねっ」
「予想通りの台詞ありがとな。違うからな」
いたずらっ子のような笑顔で予想通りの口にしたのは、左右で前髪の長さが異なるショートカットの女子――
「あっははっ、でも、どうしたの? その子。ひょっとして......魔が差したとか?」
「そ、そうなのですかっ!?」
もう一人の女子、五つ子姉妹の末っ子で、ウェーブのかかった髪に目につく星型のヘアピンを着けた
「そんなわけないだろ。知り合いの義妹を預かってるんだ。てか、口調戻ってるぞ、
「あっ......」
「まだまだ先は長そうだね、
「ううぅ~......」
「お前らは、
「ご飯ができたら行くよ。それに、やっぱり気になったからね。びっくりしちゃったよ、ほんと」
「私もだよ。事前に教えてくれればよかったのに」
「突然だったから。それにお前たちが今日来ること、俺も知らなかったぞ」
「あれ? そうなの? フータロー君には先週伝えてたんだよね?」
「そのはずだけど。きっと、
テレ隠しだな、たぶん。
隣の部屋で彼女が手料理を振る舞ってるって話だし。気を遣ってくれている二人はとものことはあまり触れず、自然と話題を新生活の方に持っていってくれた。仲良しだった五人ともそれぞれ別の歩んでいる道は違えど、仲の良さは健在。今でも月に数回、家族揃って食事を食べる機会を作れるようにしているらしい。
「親父さん、元気か?」
「もちろん元気だよ、言葉数はあまり多くないけどね。それから、
「俺の? どうして俺の話なんだよ、もっと適任がいるだろ」
「
「ま、別にいいけどさ」
娘想いの親バカも健在、と。何だか少し安心感を覚えた。
変わるものもあるけど、変わらないものある。
「と言うことで、話題になりそうな何か新しいことない? ゴールデンウィークに聞いた復学時代の武勇伝はもう殆ど話しちゃったんだ」
「ネタ屋じゃないぞ、俺は。そもそも話してたのは、
「そうだったね。
「地元のツレとはっちゃけるってさ」
姉妹の誰かが直接連絡すれば「マジっすか! いますぐ行きます!」ってな感じで予定放り投げてすっ飛んで来るだろう、で平静を装いながら「急に僕に会いたいなんて。いやぁモテる男は罪だよね、アハハ!」といった感じに調子に乗って、姉妹全員に完全否定されてヘコむまでの絵が写実のように目に浮かぶ。
そんなことをテキトーにダベっていると、
「なんだよ?」
二人が、ニヤニヤしていた。
「息ピッタリでお似合いだなーと思いまして。お姉さん、もうお腹いっぱいだよ。じゃあ、そろそろ行こっか?」
「そうだね、お邪魔しちゃ悪いし」
「あわわっ、せっかく遠くからお越しいただいたのに何もおもてなし出来なくてごめんなさいです」
「いえ、お気になさらないでください。私たちが一方的に押しかけたようなものですし」
「迷惑かけてるの私たちの方だもんね。うちのフータロー君がいつもお世話になってます」
大袈裟に。そして、とてもわざとらしく頭を下げる
「お前が言うのか、それ」
「もう家族みたいなものだからね。
「あ、ごめん。ちょっと、学園祭のこと思い出しちゃった」
――学園祭。
去年の学園祭、
だから、今も六人で一緒に過ごせるんだろう。
「あれ? 何で外に出てるのよ」
五つ子
「
顔の半分が隠れるほど長かった前髪を二つに分けた、姉妹の三女の
「スマホ使ってただけだよ」
「ふーん、わざわざ外に出て使うなんて、彼女には見せられないやましい内容なのかしら?」
「ただの定時連絡だ。別に見られても困らねぇよ」
ゴールデンウィークに会った時よりも長くなった背中にかかるくらいの後ろ髪をシュシュで二つに結んで肩の前に垂らしたお下げ髪、姉妹の次女
「フータローから聞いて知ってるのに」
「そっか、聞いたのか」
「そうよ、聞いたわ。また裏でこそこそやってるのね」
「なんだよ?」
「気にしなくていいよ。頼ってくれなくて拗ねてるだけだから」
「べ、別にそんなじゃないわよっ」
「ね?」
いつも伏し目がちだった
「そうだ、二人に渡すものがあるんだった」
まだ暑さが残る外に待たせるのも何だから上がってもらった。寝ていたともは知らないうちに起きていて、ともの話し相手になってくれていた二人に、知り合いから預かったCDを渡す。
「私たちに?」
「タイトルは......Love & Spanner? 聞いたことないわね。誰のCD?」
「
「ホントだ、Y.yoshinoって書いてある」
「これ、本当に本人なの?」
「正真正銘、
友達がファンだと言うことを伝えたところ、快く都合をつけてくれた。本人曰く「とても金の掛かる趣味」だそうで、再び生業にしようとは考えていない。この新譜も壮絶な過去を知りながらも、離れずに支えてくれた人以外には配っていない。
「因みに、全曲ラブソング。奥さんのためだけを想って書いた詩なんだって」
「そうなんだ、だからあんなにまっすぐ響くんだ。ありがとうございますって伝えて」
「この町に居るのね。世間って狭いわね」
などと世間話を話している間に、夕食の支度が調った。今のテーブルの上に、
「スゴい、私の理想の家庭料理......!」
「そうでしょうか? 普通だと想いますけど」
ご飯、味噌汁、おかず、漬け物。確かにメインのおかずは、手作りコロッケだけど――。
「二人とも調理の専門学校通ってるんだろ? 習わないのか」
「習うけど。
「そんなことないわよ。私のことより、あんたはまず教わった作り方でレシピ通り作れるようになりなさい。出来もしないアレンジしようとするから上手くいかないのよ」
「むぅ、私だってちゃんと成長してる。
「さあ、どうかしらねー」
料理を巡って不毛な言い争いが始まってしまった。向こうに居た頃も二人のじゃれ合いは何度か見かけたから気にはしないけど、気にしてしまった子供が一人。
「もー、けんかしたらだめだよー」
「ほら、ともに怒られたぞ」
「べ、別にケンカじゃないわ。そうよね?
「うん、そう。いつものこと。ケンカじゃないよ。ちゃんと教えてくれるし、お菓子作りも
「おかしつくれるの? それは、スゴいよー!」
「じゃあ明日、一緒に作ろう。パンケーキ好き?」
「パンケーキ?」
「ホットケーキのことよ。
無垢なとものお陰で、殺伐とした空気が一転した。改めて夕食にありつこうとした時、スマホに着信を知らせる振動した。席を立って、表に出る。
「......キツいな」
着信は、
――やっぱり、希望になっていることに間違いはない。
ただ、それ以上に問題が大きすぎて、対応しきれるだけの考えと技量を持ち合わせていない。二人が、もう一度親子として過ごせる環境......果たしてそんな都合のいい方法があるのだろうか。
太陽の光が陰りだした夏の空を眺めながら、頭をフル稼働させるも妙案は浮かんでかず、ただただ時間だけが過ぎていき、やがて日が暮れた。
「......戻るか」
せっかく作ってくれた夕飯も、もう冷えてしまった。
踵を返すと同時に、隣の部屋のドアが開いた。視界に飛び込んで来たのは、目立つ緑色のリボンを頭に付けた女子――姉妹の四女
「お久しぶりです、
駆け寄って来た彼女は、屈託のない笑顔でそう問いかけてきた。