千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価、ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。

扉間さんたちこの前に、何も出来ないからって男四人でお百度参りを汗だくになるぐらいしてた。


そうして、容易く折れる腕

 

 

「うわあああああああああああ!」

 

それはまさしく絶叫と言っていい声音だった。布団に横たわった女はべしょべしょに泣きながら夫である千手扉間の腕を掴んでいる。

 

「扉間ざまなんてきらいだあああああああああ!!」

「好きと言え!!」

 

扉間の腕がみしりと鳴った。

 

 

「扉間、そろそろだろうから覚悟をしておけよ。」

 

そんなことを姉である千手アカリことうちはアカリに言われたのはある日のこと。うちはイドラこと、千手イドラの腹がはち切れんばかりに膨らんだときのことだ。

 

「・・・わかっている。」

「まあ、そうは言っても男にはやることはないだろうから何を、というわけでもないがな。ただ、覚悟は決めておけよ。」

「覚悟も何も、ワシには待つことしか出来んだろうが。」

「だからこそだ、何も出来ないことの覚悟を決めろという話だ。」

 

それに扉間はいったい何の話だと、首を傾げたものだが。

 

 

「・・・・こういうことか。」

「うええええええええええええ!!いたいいいいいいいいい!!」

 

その場には死んだ目の男が四人集っていた。

 

 

出産というものから男は基本的に遠ざけられる。まあ、風習だとか諸諸あるが、それでも、そういったことを取り仕切るのは女でしかない。

女の身内が未婚のアカリしかないなかった扉間は、記録上でのことしか知らなかった。それは、柱間も同じだ。

それ故に、何もしないと言っても悶々と待ち続けることしか出来ないのだと思っていたのだが。

 

「・・・・ごめんなさいいいいいいい!!」

 

イドラの断末魔に等しい声を前にうなだれた。こんなことになるなんて思っていなかったのだ。

けれど、ひたすらに嫁の苦しむ声を聞くのはキツい。

 

「聞いてられない・・・」

「イズナ、お前にはすでに子がいただろう。」

「仕方が無いだろう。こっちが戦に出てるときに産まれてたんだから。」

 

現在、千手柱間に扉間、そうして、うちはマダラとうちはイズナは一部屋に集まっていた。イドラが産気づいたことを知った三人が落ち着かないと集まってきたのだ。

ちなみに、扉間の屋敷の周りにはイドラが産気づいたことを知った身内がそわそわと幾人か中をうかがっている。

というか、イドラの声がでかすぎて周りに響き渡っていた。

 

「兄者も、ミト殿はいいのか?」

「扉間についていると言ってきたからな。だが、すごいな。」

 

柱間さえも顔を青くする。現在、扉間の屋敷にて集まっているわけだが、遠くから聞こえてくる声がもう、悲壮感がすごいのだ。

痛みにもだえる声を延々と聞くのはキツい。

扉間はそこで一人で黙っているマダラの方を見た。そこには、まるで祈るように丸まりながら跪くマダラの存在がいた。

 

「に、兄さん、大丈夫?」

 

イズナが思わずそう言えば、マダラが顔を青くして起き上がった。

 

「お、俺が赤ん坊を産めるようになれねえのか?」

「マダラ、ヤバいんぞ!?」

「柱間、木遁でどうにか出来ないか!?」

「待て待て待て!どこに思考を吹っ飛ばしとる!?」

「おま、考えてみろ!いいか、これからイドラが子どもを産むたびにこうなるんだぞ!俺だって、子どもが出来たら、アカリのあれを聞くんだぞ!?」

 

なら、と。マダラはその場に蹲った。

 

「俺が産んでやれたら・・・・・!」

「マダラ、お前はやはり優しい奴ぞ。」

 

蹲るマダラに柱間はそう言うが、だいぶ思考が明後日の方向に吹っ飛んでいる自覚はないだろうか?

 

「兄者、マダラを褒めるとき、優しいと言えばよいと思っていないか?」

「兄さん、落ち着いて!そうしたら、兄さんが苦しむんだよ!?アカリ殿が一番嫌がるよ!?」

「あいつは、あいつが、苦しむ俺も素敵って言う奴だ!」

 

男たちがそんなことを言っていると、白装束に身を包んだ産婆の一人が部屋に飛び込んできた。

 

「扉間様!よろしいでしょうか!?」

「は?」

 

 

そこで冒頭に繋がった。

何故か、扉間は出産の途中のイドラの横に座り、必死に声をかけている。

 

「いいのか!?いいのか、これは!?男のワシがここにいると知れたら大事だろう!?」

 

出産の折に男がいるのは禁忌だ。けれど、はっきりとした理由など無く、慣習と言えばそうである決まりをアカリはあっさりと破ることに決めた。

そんなことより、夫の存在でイドラを安心させる方が先だ。

 

「黙れ!イドラに声をかけて落ち着かせろ!」

「いいんです!私たちが黙っておけばわからないので!」

「んなこと気にしてないで、声をかけなさい!?」

 

今回の産婆に選ばれた女衆はそう言って扉間に声をかける。

イドラの出産は長引いており、何故かと言えば、ただでさえ華奢なイドラの腹の子が大柄なせいでなかなか産まれないのだという。

痛みに錯乱したイドラも何やら、ひたすら、母様ごめんなさいと言いつのり、力が入らない様子だった。

出産時に変なことを口走るのはよくある話だ。今回の出産の責任者であるアカリもよく聞いた。

 

(・・・やはり、うちはから誰かを呼んでくるべきだったか。いや、今更遅い。)

 

アカリはそれに一つの選択をした。

それが、その場に扉間を連れてくると言うことだった。

 

「イドラ、ほら、扉間だぞ!」

「うえええええええええ!扉間様!」

「な、なんだ!?」

 

普段からそこそこ声がでかい嫁だが、その時は痛みのせいかさらに声がデカかった。

 

「扉間様!覚えといてください!覚えといてください!」

「何をだ!?」

「覚えといてくださいいいいいいいいい!!」

「だから、何をだ!?」

 

マジで意味がわからない。何を覚えとけば良いんだ?いいや、痛みによるうわごとのようなものなのだが、現在、感じたことのない独特な空気に飲まれていた部分がある。

 

「扉間様、私のこと嫌いなんだ!」

「どうした、急に!」

「痛いんですもん!痛いですもん!扉間様、私のことが嫌いだから!」

「関係ないわ!」

「どっちかっていうと、お前さんが好きだからこうなってるんだ!」

 

緊張感をなだめるために周りからの野次まで混ざる。

 

「お前に痛いことしたことないだろう!?」

「しました!お布団の中で、お腹とか背中とか噛んでました!私のことが嫌いだから!」

「あん!!??」

 

アカリの怒号に扉間が慌てたような声を出す。

 

「うおおおおおおお!違う、違うぞ!」

「何しとるんじゃ!何しとるんじゃ!!!」

「アカリ様、んなことは今はどうでも良いですから!」

(噛んだんだ。)

(噛んだんだ。)

(扉間様、そういう趣味が。いや、前から結構とがってたわ。)

 

「うえええええええ、扉間様、わたしのこときらいなんだあああああああ!」

 

狂ったようにそんなことを言われて、扉間は己の腕を掴むイドラのその手を撫でた。

 

「嫌いなものか!嫌いだったら、はなから構っておらんわ!」

「本当!?本当!?こんなに痛いのに!?」

「痛いだろうが、嫌いではない!ほら、広間に会いたいだろう!?」

「会いたい、会いたいけど!扉間様、わたしのこと、きらいだあああああああああ!!」

「なぜ、そこに返るんだ!?せめて、叫ぶなら好きと言え!!」

「うええええええ、好きですよおおおお!」

「いちゃつく前にいきまんか!」

「うああああああああああああ!!」

 

イドラはそう叫ぶと同時に、赤ん坊の産声が響き渡る。それに扉間はほっとした。そうして、赤ん坊の方を見ようとしたとき、みしりとイドラが掴んでいた腕が軋みを立て。

 

ぼき。

 

何かが、軽くおれる音がした。それと同時に、扉間の腕に痛みが走る。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

その場にはイドラの痛みに苦しむ声と、赤ん坊の泣き声と、そうして、扉間の痛みにもだえる絶叫が響き渡る。

それに気づいた産婆役たちは、扉間の赤く腫れていく腕に声を上げる。

扉間は自分を掴んだイドラの手を凝視した。そうして、激痛が走る腕を見る。

なんで自分は妻の出産で腕を折られているんだ?

 

「あ、なんだ!?」

「イドラ!イドラ!手を離せ!」

「扉間様の腕、すごい勢いで腫れて!」

「待て、イドラの奴気絶してるぞ!?」

「ともかく手を離させろ、誰か、医者を呼べ!」

「む、むすこを、だかせてくれ・・・・」

「その腕で抱けると!?言ってる場合か!?」

 

扉間は痛みはあるが、それはそれとして、とりあえずそう言った。子どものことは楽しみであったし、いの一番に抱っこするのは自分であると思っていた。

何か、腕の痛みから現実逃避をしたかったというのもある。

そんなとき、部屋の前を誰かが走る音がした。

 

「おい、どうした!?」

「扉間の絶叫が聞こえたが!?」

「姉さんは無事なの!?」

 

扉間の何故か上がった絶叫に柱間、マダラ、イズナが駆けつけたのだ。

それに女衆の一人がふすまを開けて叫んだ。

 

「申し訳ありません!扉間様の腕が折れたので、医者を呼ばねばなりません!」

 

それに男達は思わず言った。

 

「なんで!?」

 

そんなこんなで千手広間という存在が生まれた日は、何よりも賑やかな日になった。

そうして、扉間は誓った。何をしても、無痛での出産方法の開発を急ぐことを、包帯を添え木で塞がった片腕をぶら下げて、固く誓ったのだった。

 




ああ、私の生まれた日はそれは賑やかだったそうで。
私の産声と、母の絶叫と、父の痛みに耐える声。そうして、私が生まれた声に喜ぶうちはと千手の皆さんの歓喜の声。
ええ、めっちゃ五月蠅かったんで、他の氏族から苦情が入ったそうです。
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