少し、日数が離れてしまいました。
ダンゾウとかヒルゼンとか実際問題どこら辺で産まれてるんだろう。里が出来たぐらいの時には産まれてたのか?
でも、ダンゾウの父親なんかは戦場で死んだ云々があるから里の創設より前なのかな?どうなんだろう。
「・・・・というわけだ。」
その日、千手扉間は氏族同士での会議に出ていた。なんとか里の根幹の、任務の管理体制等の形ができあがり、それぞれの氏族での忍の登録も終った。
今回は氏族の長が集まり、里の方針についてと任務の割り振りについての話し合いを行っていた。
そんな中、話の中心、実務についての細かい調整を行っていた扉間に集まった氏族の長達の視線が集まっている。
「以上、ほかに何かあるか?」
それに氏族の人間は視線を思わず扉間の、添え木をされて三角巾で吊られた腕を見た。
その視線に気づきながら、扉間はそのままないなと一言で片付けた。
その様は、まさしく触れるな、言うなという気概に満ちていた。
千手とうちはの間に子が出来た。
これ自体は、良いことだ。他の氏族にとっても里の在り方が盤石であることを示しているのだから。
それぞれの氏族の長も、扉間の妻であるうちはイドラこと千手イドラの腹が大分膨れ、そうして、出産が近いことは知っていた。
それぞれの氏族の女衆にとってまさしくマスコット扱いされているその女については、非常によく聞いた。
そうして、とうとう産まれるとなり、千手はもちろん、うちはの人間が明らかにそわそわしていた。普段はつんとすました態度のうちはの人間が明らかに動揺しているのを見た。
そうして、とうとう産まれるとなると、うちはの人間や千手の人間が気になりすぎるあまり、扉間の屋敷の周りに集まっていた。
猫集会にでけえ犬が紛れ込んでるみたいな質感のある光景だった。
そんなこんなで里の中心街にある屋敷なのだから、そこで騒いでいればそれ相応に聞こえてくる。民家が密集しているのだからなおさらだ。
何よりも、その子がどうやって産まれてくるのか。
死産などになった場合、色々と対応が変わってくるため、それぞれで屋敷の様子を探らせていたわけだが。
「お布団の中で痛いことした!背中とか、お腹とか、噛んでましたもの!」
これ聞いてどんな顔をすれば良いんでしょうね?
屋敷から聞こえてきたイドラのそれに、様子を探っていた一人の表情がそれを告げていた。
そんなもの、こっちだって知りたいのですが。
もちろん、扉間の話は氏族でも有名だ。開発した忍術だってそうだ。
例えば、飛雷神の術。
あるうちは曰く。
「あれは扉間様がイドラ様に会うために開発したものだ。ああ、確かに、争っていた時期のことだ。だが、今ではそれでよかったのだと思う。イドラ様には、それぐらい思ってくださる方ではないと、あの、まあ、うん。我らも安心だしな。」
例えば、影分身の術。
ある千手曰く。
「そうだなあ、影分身って媒介ないと出来なかったのを無しでも出来るようにしたのはすげえよな。ここだけの話、あれだ。閨で複数でやるためにって話が。いやあ、扉間様もむっつりだよなあ!」
例えば、結界術。
ある人間曰く。
「あの術はよいぞ!何と言っても扉間から逃げるときに便利でのお!いや、サボっとらんからな!?まあ、あれもあやつがイドラ殿と会うために作ったのだろうな。うちの弟は情熱的だからな!」
そんな話を聞いた後、どんな顔をすれば良いのだろうか。全体的に、さすがに飛雷神の術は習得方法は知らされていないためにいいが、他の術は共有されているわけで。
便利なのだ。非常に便利なのだ。
けれど、使うたびに、でもこれ、すけべ目的で作られたんだよな、なんてことが頭に浮ぶのだ。
言っちゃあ何だがすごいやだなあと思うものもいる。
それと同時に、正直、その扉間の術の開発理由が本当なのかと懐疑的な者もいた。
あの扉間が?
それは千手と関わりがあった、地位の高い人間は特にそうだった。
開発された術は全て強力だ。ならば、忌避感や強力な術への危機感の軽減のためにわざとそんな噂を流しているのではないだろうか?
そんな考えをしているものもいた。
扉間自身、その術をすけべで作ったことも無ければ、使ったこともないが、積み上げられた事実(勘違い)によりそんな誤解が生まれていた。
そうして、少数派の人間達の扉間への疑いについて本人が知れば泣いて喜んだことだろう。
何と言っても、スケベである事実で名前が売れるよりも、そう言った方向で名前が売れた方が百倍ましだ。
残念ながら扉間を慰めるのはその勘違いの原因であるわんころだけである。
氏族の長達はそこら辺についてはおいおい探っていくしか無いと考える。このまま、里の中核に進むことが出来れば、重要な情報について知ることも出来るだろう。
それぐらいのポテンシャルと熱意を持っていける女でなければ、扉間も敵対している氏族の女と密通もしなかったし、この里も出来なかったのだから。
それはそれとして、扉間の腕の骨折については何があったのか?
聞いた話では、赤ん坊の産声と同時に千手とうちはで歓声が上がったそうだが、何故か扉間の絶叫も聞こえてきたそうだ。
話の上ではてっきり喜びのあまり雄叫びでも上げたのかと思ったのだが。
何故か、次に会ったときに扉間は骨折していた。
(((なんで?)))
会議の中の人間全員で思った。なんで骨折してるんだ?
任務に出たという話も聞かない。
何よりも、猛者である千手扉間の腕を折るような存在と接触したのなら少し話が出てもいいはずなのだが。
だが、聞けなかった。公然の秘密というか、触れてはならない部分がある。その骨折という事実はそれに当たるかも知れないと思うと、なかなか触れられなかった部分があった。
というよりも、おそらく扉間の長男が生まれた日に何かあったのだろうが、それに触れるとイドラの噛んだ発言に触れないといけないわけだ。
そんな時、志村の頭領である志村ジロウがゆっくりと扉間に近づいた。
「・・・・扉間殿、よろしいか?」
「ああ?なんだろうか?」
「ああ、実は・・・」
ジロウはそのまま扉間と所用について話し合いを行う。それを猿飛の頭領である猿飛サスケは見つめた。
志村の一族は、寡黙な人間が多い。といっても、うちはと違う印象を受けるのは、寡黙と言っても黙々と何かに打ち込む実直な性格の者が多いからだろうか。
猿飛はともかくはと、千手柱間の方に向かった。
「柱間殿。」
「おお、猿飛殿!」
そのまま二人は談笑をし始める。そうして、志村の用事が終ったのか、そちらの言葉が途切れたとき、丁度、柱間達の話も終った。
そんなとき、柱間が口を開いた。
「そうだ、扉間!今日、家に行ってもいいか?」
「・・・・兄者、今日もか。」
「いいだろう!甥っ子に会いたいんぞ!」
「殆ど毎日だろうが!自分の嫁のところに帰れ!」
「ミトも甥っ子の話をすると喜ぶんだ。」
初めての近い親類の子どもにうきうきしているらしい柱間のそれに扉間は呆れた顔をした。
そこにひょっこりとうちはマダラとうちはイズナが割り込む。
「おい、柱間。あまり弟を困らせるな。」
「マダラよ、お前も毎日のように行っているだろう?」
「俺は嫁さんがイドラの世話に行ってるから迎えだ。」
「そのたびに広間のこと抱っこしてるの知ってるぞ。イズナも行っておるだろう?」
「僕はクズハが遊びに行ってるから迎えだよ。」
氏族の人間は雑談などをするふりをしながら、その会話に耳を傾けている。
(やはり、相当の寵愛を受けているな。お子と同世代になりそうな、嬰児がうちにいただろうか?)
そんな考えを幾人も抱えている中、ひょっこりと出入り口から千手アカリことうちはアカリが顔を出した。
「・・・失礼する。」
赤い髪のそれはいつも通りの鉄仮面のまま、千手兄弟とうちは兄弟に近づいていく。幾人もがその女に視線を向けるが、それに怖じけることもなく歩みを進めた。
そうして、アカリは猿飛と志村に軽く会釈をした。
「申し訳ない、少々よろしいだろうか?」
「いえ、こちらの用事は終りましたので。」
「同じく。」
「そうか、なら、失礼する。」
アカリがそう言って扉間に向かい合ったとき、イズナが不思議そうに言った。
「あれ、どうしたの?今日は姉さんのところに行ってないの?」
「今日はミトと用事があってな。ただ、急ぎでこれだけは渡しておきたかったんだ。」
そう言って、アカリは持っていた冊子を渡した。
「ほら、扉間。頼まれてた資料だ。」
「おお、礼を言う。」
「まったく、千手の書庫も早く整理しなくてはな。目録、作らないと・・・・」
「姉上、なんだ、それは?」
「強烈な麻痺毒をまとめた図録。」
それに図録を持っている扉間に視線が行く。
「・・・扉間、お前、今度は何を。」
「うちの妹に、お前・・・・」
「違うわ!新しい毒薬の研究をしようなどとは考えとらん!そうして、何故、そこでイドラが出てくる!?」
「なら、何をしようとしてるんだ?」
「毒の研究なら、僕もしたい。」
他の氏族の人間もちょっとどきどきしながらそれを眺めている。
扉間はそれに不機嫌そうに、恨み深そうに吐き捨てた。
「出産における痛みの軽減をするんだ・・・・!」
それにその場にいた全員が内心で合掌した。
相当、トラウマになってるな、これはと。
いや、あの場にいた男達全員が、目の当たりにした女の苦しみは若干のトラウマになっている。
イズナは、死んだ自分の妻をもう少し労れば良かったと内心で後悔し、息子を連れて墓参りにでも行くかと思っていた。
猿飛などは、こいつ本当に嫁さん好きだなと思う。そう思った後に、いや、演技か?とも悩む。
実際問題、あのスケベな噂話がどれほど本当なのかは微妙なところだろう。
「麻痺毒は分量によっては痛み止めに使えるからな。体に負担のない分量がわかれば、それだけで大分体への負担が減る。」
アカリの補足に、なるほどと頷く中で、志村が淡々とした声音で喋り始める。
「・・・扉間殿は、イドラ殿を大事にされているのだな。」
珍しいなと、その場にいた人間は思う。
志村というそれは、あまりそういった世辞というか、世間話をしない人間のように思っていたためだ。
扉間はなんとも言えない顔をする。
それは大事にしてはいる。もう、坂道でいきなり荷車に乗せられて黒柴に突き落とされたのと同じだが。もう、同じ船に乗ってしまったのなら諦めるしかない。
飼い主として、しっかり世話をしていく覚悟は決めた。
けれど、改めて、そんなストレートなことを言われると、なにか納得できない自分がおり、表情が引きつる気がした。
が、扉間の性格を知っている周りからすると、その引きつり笑みさえも照れたように見えてしまう。
そんな中、柱間は嬉しそうににこっと笑う。可愛い義妹について饒舌に話し始める。
「そうだ!扉間はそれはイドラ殿を大事にしていてな!もう、すごいんぞ。」
とっさに隣にいた兄の顔に裏拳をぶち込まなかった自分を扉間は褒めたかった。
「兄者、いいからさっさと行け!溜まっている仕事があるだろう!?」
「持ち帰りで、お前の所に行ってもいいか?」
「そう言って広間に構ってサボるだろうが!」
ここでイドラが嫌がっているとでも言えばいいのだが、あの人間大好きな駄犬は他人の訪問をうれしがる。
広間のことも、見てみてと尻尾をぶん回しているのだ。
もう少し、危機感を持って欲しいと思うのは我が儘だろうか?
「扉間の腕がこれだから、お前にしわ寄せが行ってるのか。」
「そうぞ。姉者ばかり広間に構ってずるいぞ。」
「その情熱はお前の子が生まれて、そっちに注ぎなさい。」
「というか、うちのクズハに構ってくれるのは良いけど、あんまりお菓子上げないでよ。」
皆に非難されて柱間はしょもりとしながら頷いた。そんなとき、志村が口を開く。
「そう言えば、扉間殿の腕は何があったので?」
それに部屋の中がしんと静まりかえる。
(き、きいた・・・・)
その場にいた全員が、志村の方を見た。
(((きいたあああああああああああ!!)))
それぞれで周りにアイコンタクトを送りまくった。
おい、聞いたぞ、あの人。
触れて良い部分だったのか?
いやいや、志村が聞いたんだから。
猿飛殿も、おい、聞きやがったよって顔をしてるぞ。
そんなざわつきの中、猿飛は隣の志村を見た。それは、どこか神経質そうな顔立ちの男だ。どこか醒めた顔で淡々と目の前のそれらを見ていた。
(おい、どうするんだよ?)
(素直に言うのは?)
(ダメに決まっているだろう!?しきたり自体に関して、破ったことが知れれば、男だけでは無く、女達からの非難が来る!)
それで扉間だけに来るのならいいが、それがイドラや千手広間にまで及ぶのは避けたい。あの、すぐに人を信用するイドラは悪意との相性があまりよくない。
適当な理由をつけるにも、あまり意味深なことを言って誤解を爆誕させるのは避けたかった。すでに連鎖爆発で焼け野原になっているが、そこは気にしても仕方が無いだろう。
そこですっとアカリが前に出る。マダラや柱間、そうして、扉間もイズナもそちらに視線を向ける。
アカリは大きく頷いた。
任せておけ。
そう言外に言っていることを察したが、マダラたちはまあ、アカリならばそこまで変な事にはならないだろうと任せた。
扉間だけは、なにやら嫌な予感がして引き留めようとした。
けれど、すでに全てが遅かった。
「扉間がイドラに変態行為をしていたので私が折った。」
皆、それに度肝を抜かれた。
え、まじですか?
頭領達がそれぞれマダラたちを見た。
マダラたちも驚きのあまり、アカリを凝視していた。それが、普段はないだろう、その動揺の在り方がひどくアカリの言葉に真実味を持たせていた。
けれど、柱間やマダラに、イズナ、そうして扉間でさえも度肝を抜かれていた。
え、それ言っちゃうの?
正直、あの夜のイドラの発言自体に関してマダラもイズナもしっかり聞いていた。
イズナは無言でクナイを取り出そうとしていたが、扉間も必死にイドラを慰めていることと、その後のために思わず流してしまった。
それに加えて、扉間の腕は綺麗に折れているのではなく、イドラが思いっきり握り込んだために粉々になっていた。
回復の早い千手であれど、まだ完治していないのは症状が複雑であるためだ。
マダラとイズナとしても、一応は穢れだとかそんな理由であれど、男が入るべきではない出産という場にイドラのためにと本人がリアリストということを抜いても入ったのだ。
そうして、見事に折られて腫れた腕と、片手で小さな赤ん坊を抱いている男の様子にさすがにとがめる気にはなれなかった。
けれど、改めて、マダラとイズナは扉間を見る。
こいつ、イドラのこと噛んでるんだ・・・・・
そのしょっぱい顔に、頭領達の間に動揺が走る。
おい、まじか。
あのイドラの叫び、痛みで錯乱してへんなことを言ったとかじゃなくて、マジモンの話なのか?
「ま、待て待て、待て!!」
扉間は自由になる片方でアカリの肩を掴んだ。
「待て、姉者!」
「いや、ここは私も責任を取らねば。」
なんのよ、何の責任だ。柱間とマダラ、イズナはどうするんだと互いに視線を走らせた。
けれど、アカリはやたらと覚悟を決めた目で扉間の手を肩から下ろした。
(いいか、扉間、物事を隠すにはそれを越える衝撃を与えるべきだ。)
(それがどうした!?)
(お前の腕を折るような猛者と出くわしたのならある程度情報が無いと可笑しい。さりとて、お前ほどの男がうっかりで骨を折るわけがない。その中でお前の骨を折っても違和感のない理由は何か。)
アカリは物憂げに扉間を見た。
(・・・私としてはお前のそこら辺についてとがめたいが、さすがに腕まで折ったお前をとがめようと思わん。ただ、イドラのためだ。)
お前の尊厳の一つは、犠牲に出来るだろう?
アカリは任せろと言うように軽く拳を握って親指を立てた。
「・・・嫁さんに噛み痕を。」
「噂通りの好きもの・・・・」
ぼそりと聞こえた、頭領達の誰かが発したそれに扉間は思わず叫んだ。
「か、噛んどらん!!」
「嘘吐け!」
「違う!あれは、イドラが錯乱しとっただけだ!」
「言い訳するな!あの後、イドラに聞いたら動揺しながら全力で視線をそらしてたわ!」
アカリはあくまでイドラと赤ん坊の火の粉を避けるために全力で扉間に汚名を着せようとしていた。もう、そこら辺でこれ以上落ちることはないだろうと考えたためだ。
そうして、噛んだ発言に関しては出産の日に大騒ぎしすぎてもう、公然の秘密でしかない。
けれど、扉間としては冗談ではない。
何が悲しくてこれ以上汚名を着なくてはいけないのか。
この頃は、うちは以外の氏族からも縁談が上手く行って欲しいからだとか、嫁さんと仲直りしたいのでとか、言われて握手を求められているのに。
自分は何だ、恋愛成就の神なのか?
なんてことを言った日には、俺とおそろいだの!なんて兄が嬉々として言ってきそうで口にはしていないが。
いいや、扉間だってわかっている。
まじで、この頃周りにスケベな奴ですねって扱いをされている。
なんか、閨についての相談だとか、なんか媚薬だとか変な方向の話を振られたり、相談があったりするのだ。
強いて言うのなら、愛妻家ですからねと断るのが面倒な場に誘われなくなったのはいいが。
それはそれとして扉間は、正直諦めきれなかった。
扉間を本当にスケベだと信じているのは、千手やうちはといった人間だ。未だに里に加わって間もない氏族の中には扉間スケベ説を信じていないものもいる。
もう、一生そうであって欲しい。
イドラと所詮は政略結婚で、扉間のスケベについては同盟についての宣伝だろうという話だ。
もう、扉間は一生そうやって疑っていて欲しいと思う。
隙の無い男よ、みたいな感じで思っていて欲しい。
スケベのために忍術研究をしているなんて汚名、草葉の陰で父親である仏間が泣いているきがしたが、父親にはそれ相応に恨みもあるので泣かせといていいかとも思う。
けれど、それはそれとして、扉間はスケベであるという汚名から逃れることを諦めきれなかった。
「お前、骨を折ったことで流してやろうと思ったが。その態度で行くのか?」
「誤解だと言っているだろうが。」
扉間の声が若干上ずる。だって、今回に関しては誤解じゃ無くて本当なのである。
自分を全力で振り回す駄犬にようやく有利に立てることが楽しくて調子に乗った部分がある。けれど、それ以外は本当に誤解なのだ。
というか、この結婚自体、本気で覚えが無いことから始まったわけで。
ならば、今回こそ全力で誤魔化してやる!
というか、閨の情報が本格的に広まるのが嫌なのもある。
が、アカリの発言で扉間は黙り込む。
「こちとら、出産の後、イドラを介抱したときにがっつりその痕見てるんだよ。」
その時の扉間の様子を見た人間は、撃沈というのはああいった様を言うのだろうと思っただろう。
「アカリ姫、まあ、そこら辺で押さえたらどうだ?」
そう言って横やりを入れたのは猿飛だった。それは扉間に恩を着せたいというのもあったが、何よりもそこら辺を姉に詰められる扉間に同情した。
そうして、一種の敬意を覚えた。
すげえな、こいつ、そんなことしてんの?
そんな、男としての敬意。
(すました顔して、やるな!)
そうして、次に志村が扉間の肩を叩いた。
「・・・扉間殿、それはそうとしてなのですが。」
奥方にそういったことをしていると、いつか嫌われますよ。
その言葉に、その場にいた、今まで扉間のスケベ話自体が何かの工作ではないかと疑っていた人間たちに確信をもたらした。
あ、この人、本当にただのスケベで、嫁さんのことが大好きなだけの人なんだ。
その後、うちはや千手の人間以外からの恋愛相談が扉間に持ち込まれるようになるのはまた別の話である。
「・・・のんきに寝とるな。」
扉間は疲労感に苛まれながら、自宅に帰ってきた。
普段ならば出迎える妻の姿が見えず、手伝いに来ていた千手の女衆に聞けば、息子と昼寝の真っ最中であるらしい。
遊びに来ると言っていた柱間は一旦自宅の方によるらしい。そのまま家に帰れと思う。新婚の部類に入るのだから、そっちも子どもを早く作れと思う。
マダラやイズナも、一旦は自宅に寄るそうだ。姉もまた一頻り嵐を起こして、去って行った。
(千手の跡取りは兄者の子であらねばならんというのに。)
そんなことを考えながら、言われた部屋をのぞき込むと、そこにはぽかぽかとした陽光の中でうたた寝をする女と、赤ん坊、そうして幼児と言っていい男児がすやすやと寝息を立てている。
イドラは赤ん坊の寝かされた敷布の横に転がって眠っている。そうして、その幼子も赤ん坊を挟む形でイドラの向かいに横たわっている。
そよそよと、微かなそよ風が吹く部屋の中は確かに昼寝日和だ。
「・・・・なんだ、お前は起きているのか。」
よくよく見ると、広間だけが起きているようで目を開けている。そうして口をむぐむぐとさせている。
扉間は淡く笑い、息子の広間の頭の方へ回り込み、座った。座る瞬間、広間の周りにちらかったおもちゃを避ける。
「ああ、クズハが持ってきたんだな。」
小さな声で囁くように言って広間の頬を突いた。産まれて間もないために軽く腕や足を動かすだけだ。
まだ、寝返りも出来ない小さな体だ。
いや、赤ん坊にしてはでけえぞ。さすがは千手の子だ。
アカリの発言が脳裏をかすめるが、それを振り払い、次は赤ん坊の手を突いた。そうすると、おもちゃのような小さな、熱い手が己の指先を掴む。
「父の指とわかるか?」
ぎちりと、強い力が指先に伝われば扉間はわけもなく微笑んでいた。
そこでその横で眠る女に視線が行った。
広間を産んだ後、まだ体力が戻っていないそれはよく眠る。扉間は広間に掴まれた指とは反対の手で、女の頬を突いた。
イドラは口をむぐむぐとさせてそのまま眠り続ける。
相変わらずの駄犬振りである。けれど、赤ん坊に赤の他人が近づくと、自然と目が覚めるのだから母親は出来ているようだ。
そこで扉間はふと、その少年の方を見た。
イズナの息子であるうちはクズハとはあまり仲が良くない。今まで恐れていた千手の、おまけに棟梁の弟で有り、扉間自身そこまで子ども受けしない容姿だ。
はちゃめちゃにびびられている。
けれど、それはそれとして己のいとこに当たる広間のことは可愛いらしく、毎日とまではいかなくともやってきては自分の遊んでいたおもちゃを持ってくるらしい。
不思議な光景だと、扉間は思う。
千手の子を、うちはの人間は守るように横たわっているその様に。
(いいや、違うな。)
それは、千手の子であり、そうして、うちはの子どもでもあるのだ。
扉間は己の指先を掴んだ赤ん坊に淡く笑った。
「・・・できるだけ、ゆっくり大きくなるのだぞ。」
そんなことを、今日も広まっている誤解(真実)から目をそらしながら扉間はそんなことを言った。
はざまああああああああああ!!
・・・・おや、父上が怒っておられて。狭間がまた何かしたのか。
なあ、かくまって!!
匿うと言っても、また、何かお前がしたのだろう?
違う、今回は本気の誤解なんだよ!
ふむ、話だけは聞きますが。
いや、あのさ、実は扉のじいさまが俺の本棚から本を持っていって。
本を?
そう、時々エンタメ系の軽いのが読みたいって。それはいいんだよ。許可してたし。でもさ、しくったのが、借りてかれる少し前に俺、急な任務が入って慌ててたんだよ。それで、その時、本棚の本落として、適当にカバーつけちゃったんだよ。
それで何か変な内容のものだったので?
・・・・いや、恋愛ものを数冊借りてったったみたいでさ。同じ作者の。
それで、何をそんなに怒って。本の間に互乗起爆札でも入ってたんですか?
それしてたら、この家自体とっくに吹っ飛んでるけど。いや、その、持っていた数冊殆ど純愛ものでさ。それのヒロインが、まあ、健気なわんこ系で。
おや、父上の好きそうなのじゃないですか。
ああ、作者が同じでさあ。まあ、それで、純愛系が混じってたのはいいんだけど。その、一冊、寝取られが紛れてまして・・・・その、わんこ系のちょっと間抜けで健気な女の子が弱みを握られて、そのままって話で。
・・・・狭間、人の趣味をとやかく言いたくは無いですが。
違う!あの本は自来也の爺様が新地開拓したいって買っといて、やっぱし好みじゃないって押しつけられたんだよ!
だからといって、そんな悍ましものを持っておくなんて。
まあ、うちの身内からは忌み嫌われてる系統だけどさ。
安心しなさい、うちはでは浮気は死を覚悟するもの。寝取られようと、寝取った相手を殺して、寝取られた方は再教育すればいいので。
一周回って清々しいぃ。
ですが、父上がそれで怒るなんて珍しい。マダラ様ならキレて里を追いかけ回しても可笑しくないですが。
いや、本題はここからで。どうも、話自体は創作だからって割り切った上で流してくれたみたいなんだけど。その、それを読んでたことを、イドラの婆様に知られちゃったみたいで・・・
おおっと、雲行きが変わってきましたね。
んで、あれだよ。その、爺様の新しい性癖だと思ったみたいで、婆様が、爺様に、覚悟を決めた顔で頑張った方がいいかって聞いたらしくって。
どおりでこの数日、二人の距離感がおかしいと。いえ、もしかしたら、こんなに大きな息子がいるのに年の離れまくった妹か弟が生まれやしないかとヒヤヒヤしておりましたが。
さすがにぶっ飛びすぎでは?いや、爺様ならいけるのか?でも、多分、爺様のあの怒り自体は八つ当たりなんだよ!
どうして?
あのね、こちとら千手扉間の三代だけど、中身は似ていないなんて言われるけど、結局根っこの部分は同じですやん。だから、わかる、扉間の爺様は顔を真っ赤にしてが、がんばりますからって恥ずかしそうに自分の性癖に沿ってくれようとした婆様に興奮した自分を後ろめたくて怒ってるんだよ。あの人、むっつりだから。
ほう、誰がだ?
え、ま、爺様!?あだだだだだだだだだだだだだだだ!!!
おや、父上。
狭間よ、余計なことを言っているが、どうだ、久しぶりに稽古でもつけてやろうじゃ無いか。
え、ま、ぎゃああああああああああああああ!!??
さて、二人ともいなくなりましたが。ふむ、寝取られですか。新規の開拓もいいかもしれませんね。