千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。

完結後に、番外編で読みたい奴のリクエストみたいなのしてみたいんですけど、活動報告で計画してます。


主人公補正って最強だ、なら、ラスボス補正もたぶんある

 

その日、九つの尾を持つ尾獣、九喇嘛は特別なことなどなく過ごしていた。

煩わしい人間達から離れた、秘境と言っていい場所は彼にとってお気に入りの場所だった。

特別、生理現象もない彼にとって、一日とまさしく寝て過ごすぐらいしかしないのだが。

そんな穏やかさもまた、彼は気に入っていた。

そんな穏やかさが壊されたのは、唐突であった。

 

「・・・・まどの!」

 

ぴくりと耳を震わせれば、九喇嘛の耳に人間の声が聞こえてきた。九喇嘛は、またかと不快そうに顔を歪めた。

 

(またか。)

 

少し前に、雲隠れと名乗る忍が九喇嘛を捕獲しようとやってきた。もちろん、やってきた人間達は全員、踏み潰してしまった。

九喇嘛は一瞬、その場から立ち去ろうかと考えるが、それよりも先に、何故自分の方が下がらねばならぬと不快感を覚える。

九喇嘛はそのまま待ち構えることを決めた。

気配はどんどん近づいてくる。

そうして、彼は気づいた。

 

「くらま殿!」

 

その人間達が、己の名前を呼んでいることに。

 

 

 

「・・・・誰だ!」

 

森の中、高く伸びた木々の間、九喇嘛は吐き捨てるように叫んでいた。

それほどまでに、彼は内心で荒れていた。

 

何故、その名前を知っている?

 

尾獣の名前は、尾獣たち本人と、そうして父親である六道仙人ぐらいしか知るはずがないのだ。

ならば、尾獣たちのなかでそれを教えたというのか?

いや、ありえない。そんなことなどあり得るはずがない。

己自身の名前を教えることはあり得ても、他の尾獣の名前はありえるはずがないのだ。

ならば、誰だ?

誰がどうやって、その名前を知り得たというのだ?

 

九喇嘛が警戒するようにうなり声を上げた瞬間、声を上げていただろう存在が姿を現した。

それは、二人の男だ。

一人は大樹の幹のような色の髪をしており、もう一人は真っ黒な色をしていた。

九喇嘛は思わず少しだけ、動揺するように動きを止めた。

何故って、黒い髪の男のその瞳。

赤く、暗がりの中で輝くその瞳。

 

それが、誰であるかはわからずとも、どこの出であるのかは理解した。

 

「九喇嘛殿とお見受けするが、間違いは無いだろうか!?」

「何者だ!?」

 

叩きつけるような九喇嘛のそれさえも、二人の男は微動だにしない。

 

「おお、聞いたか、マダラよ!」

「そんなに声を張り上げんでも聞こえている!」

 

九喇嘛は今までにないその態度に苛立ち、威圧するように叫んだ。

 

「その名を、どこで知った!?」

 

周りの木々がざわめき、辺りに九喇嘛の声が響き渡る。それにさえも、二人の男は動揺もしない。

 

「おお、すまん!ついつい、興奮してしまったな!俺は千手柱間、九喇嘛殿にわかりやすく言うのなら、大筒木アシュラの生まれ変わりだ。」

 

その言葉に九喇嘛は目を見開いた。

アシュラ、その名前が今を生きる存在から出てきたことに驚愕したのだ。

 

(いいや、こいつは今、何と言った!?生まれ変わり!?アシュラの転生体だと!?)

 

まじまじとみた男は、確かに、面影があると言えばそうだろう。謀られているのか、そう考えたが、それ以上に何故、それを知っているということになる。

二人のことを凝視する九喇嘛を前にして、千手柱間と名乗った男は少し、てれてれしながら、隣りにいた男と肩を組んだ。

 

「そうして、こちらが、大筒木インドラの生まれ変わりである、うちはマダラ!俺の友にして、義兄ぞ!」

「いらん情報を言わんでいい!」

「いいだろう!新しくお前を紹介する機会もないし。言う機会がなかったから嬉しいぞ、義兄上!」

「義兄呼びするな!」

「事実ぞ!」

 

目の前でぎゃーすかと、というよりもいちゃつき始めた二人に、九喇嘛はしらっとした表情をした。

 

(・・・・・この空気、こいつは確実にアシュラの生まれ変わりだ。)

 

妙な既視感というか、感慨深さを感じつつ、九喇嘛は目を細めた。そうして、口を開いた。

 

「お前ら、ようやく仲直りしたのか。いったい、何年かかっているんだ。」

 

今まで威圧感を持っていた声音が格段に柔らかくなるのを理解して、マダラと呼ばれた男は自分にじゃれつく男を手で押しのけながら口を開いた。

 

「・・・知っているのか?」

「知っているも何も。両方、直接的にそこまで縁はないが、ずっと見ていたからな。インドラよ、お前は知らんだろうが、お前がいなくなってからアシュラは本当に面倒でな。生まれ変わってでも兄を止めると言いながら、酒に酔うたびに、お前がいるはずの方を見てはぐちぐちと。」

 

はあとため息を吐きつつ、九喇嘛は遠い昔、六道仙人から相談されたことを思い出した。

 

後継者にアシュラを選んだはいいが。いや、人の手を借りながらなんとかしてはいるのだが。酒が入るたびに、インドラとの思い出を語り、インドラがいる方を見ながらぶつぶつと呟いとるんだが、大丈夫だろうか?

 

いいえ、たぶん、色々ダメです。

そんなことを思いつつ、尾獣たちに出来ることなど無いのだからとスルーしていた。

それが、蓋を開ければ世代を延々と超えて等々ここまで長引くとは思わなかった。

 

人は忘れる生き物だ。数世代、人をまたいだだけで忍宗を覚えているものがどれだけいるだろうか。

けれど、彼らは忘れなかったのだ。

アシュラの後継と、インドラの後継、憎しみだけをずっと引きずって歩いたのだ。

九喇嘛はふむと、頷いて、二人の男を見下ろした。

決着はついたらしい。

 

(ならば、予言もまた叶うのだろうか?)

 

ガマのした予言、それについて九喇嘛は思い出す。

 

いつか、九匹の獣たちと人が昼寝をしても赦される日が来る。

 

(・・・・・今でもわからん。)

 

曰く、ガマが見た夢では尾獣たちはのんきにすやすやと寝ていたらしい。そうして、その背中だとか子どもや大人、金髪や黒髪、赤毛。目も、碧眼や黒い瞳など、さまざまな人間がのんきに眠りこけていたり、楽しそうに遊んでいたらしい。

 

そんな日が、お前達が暢気に人と生きていける日がいつか来るのだと、六道仙人は言っていたが。

 

(・・・・特に、碧眼の子どもと黒い瞳の子どもが目に付いたらしいが。)

 

九喇嘛には何と暢気な夢だと息を吐く。

 

「・・・・それで、俺に何のようだ?」

「おお、それでの。六道仙人様が夢見に立たれましての。それで、尾獣たちに頼み事がありましてな。」

 

その言葉に九喇嘛は顔をしかめた。

 

「ふん、断る。」

「え、いや、その!断られるわけにはいかないのだ!うちの義妹が件で!」

「くどい!」

 

九喇嘛はそう言って、ばんと尻尾を地面に叩きつけた。尾獣の中で、強い力を持った九喇嘛はそれだけ人間たちに狙われてきた。

それは、力尽くであることもあったし、下手に出てくる者もいた。

けれど、全てが九喇嘛の力を利用しようとしてのことだ。

 

彼らが自分の名前を知っているのは気になる。けれど、九喇嘛はそれらを信用することが出来なかった。何よりも、六道仙人がそこまで彼らに干渉していることこそがおかしいのだ。

散々に兄弟達で殺しあいを続けさせて、今更干渉する意味がわからない。

警戒心を強めた九喇嘛はそう吐き捨てた。

信じられるはずがないのだ。それ故に、九喇嘛は男達から離れた。

 

「そのような!頼む、九喇嘛殿!我が義妹の危機なのだ!」

「失せるがいい、アシュラの末裔、インドラの末裔よ。関わる気は無い。」

 

九喇嘛はこれ以上に関わる気は無いと彼らは追い返そうとした。けれど、それよりも先にマダラは笑った。

 

「・・・・柱間よ、わかっていただろう。この九尾は元より、人一倍、扱いが難しいと。」

「そうだがなあ。乱暴は出来れば控えたかったが。仕方が無い。」

「はっ!なんだ、お前達、この九尾を力尽くで押さえると?」

 

九喇嘛はそれを鼻で笑った。そうだ、いつものように追い払ってしまおうとした。

が、悲しいかな。

確かに、尾獣である九喇嘛に勝てる存在なんてそうそういないだろう。

だが、この世には補正というものが存在する。

本来ならば、ある意味で、物語の主人公とラスボス級を担っていた二人が手を組んだらどうなるか?

主人公補正があれば、ラスボス補正も存在する。

簡単だ。

 

「柱間、行くぞ。」

「おお!」

 

その返事と共に、マダラの目は万華鏡写輪眼に、柱間は仙人の縁取りが浮んだ。

 

「は、ま、うわああああああああああああああああああああああ!?」

 

勝てる奴なんているはずがないのである。

 

 

 

「・・・・これが、かの有名な。」

「なんともまあ、不可思議な。」

 

そう言って、その場にいたうちはと千手の人間は柱間の抱いたそれに視線が奪われていた。その手の中にいたのは、子犬サイズの狐で、もとい、九尾たる九喇嘛である。

九喇嘛はじたじたと柱間の腕の中で暴れ続けている。

 

「くそがああああああああああ!なんだ、これは!?」

「暴れんでくれ、九喇嘛殿!」

「おい、早く籠に入れちまえ。」

「だがなあ、可愛そうでは無いか?」

「慈悲はいらん。」

 

その言葉で柱間はそっと、九喇嘛を持ってきていた籠の中に入れた。竹か何かを編み込んでいるらしいそれは外の様子がよく見える。

 

「休まれていきますか?」

「時間が無い、すぐに立つ。」

「わかりました。」

 

そのまま柱間達はその場から立ち去った。

 

 

九喇嘛は籠の中をじたじたと動いた。相当の速さで動いているせいで揺れは酷いが、気遣いなのか何なのか、布が幾重もに重なって敷き詰められているせいで痛みはない。

 

(どういうことだ!?)

 

九喇嘛は焦っていた。

何はともあれ、柱間とマダラに負けた九喇嘛に二人は何かの札を貼り付けた。それの札によって九喇嘛は縮み、そうして、チャクラを扱えなくなったのだ。

おまけに、指先を見れば、つんつんとした爪はまるくなり、質感は完全にぬいぐるみ。

お子さんに渡しても大丈夫な安全設計に成り果てている。

 

「おい、なんだ、これは!?」

「六道仙人様より預かった術ぞ。尾獣たちの中には頼みを聞いてくれんものがおるだろうから、これを使えとな。」

 

あのジジイが!?と九喇嘛は今更になって干渉を行っている事実に驚いた。そうして、逃げようと九喇嘛は最後の抵抗に籠をがじがじと噛んだが乳歯に等しい、ちっちゃい歯では何も出来ない。

屈辱だ、何をしても、なんと惨めなことだろうか。

 

「・・・・可愛い。」

「誰が可愛いだと!?」

 

それは野営の最中に逃げようともがく九喇嘛にかけられた言葉だった。が、そう言ったうちはの人間だという男はどこかきらきらとした九喇嘛を見つめている。

 

「ゴヨウ殿、あまり、近づかないほうがいいのではないか?」

「ああ、桃華殿。だが、全部小さくて可愛いだろう?」

 

千手の女はそれになんとも言えない微妙な顔をした。ゴヨウと呼ばれた男は暢気に笑っている。それに桃華と呼ばれたそれは微妙な顔をする。

鋭い目つきをしているが、くせっ毛なのかぴょんぴょんと跳ねた髪のために妙な愛嬌がある。

 

「誰が可愛いだと!?」

 

ぐるぐるうなり声を上げる九喇嘛にゴヨウはにこにこと笑みを深くする。それに桃華は呆れながらゴヨウを促した。

 

「九喇嘛殿も腹が減っているだろう。頭領の捕った肉でも食べるだろうか?」

「おお、そうだ!せっかくならば、私が焼こう!」

 

るんるん気分でその場から去り、ゴヨウを横目に桃華がため息をついた。

 

「申し訳ない。あの男も悪い奴ではないんだが。なんでも、忍猫のようなつんつんとした生き物が大好きでな。自分に噛みつくような存在に構いたがるんだ。」

 

それに九喇嘛は男のやけに傷だらけの手を思い出した。なるほど、あれはそういった経緯で付いたのか。

 

「まあ、短い旅路であるが、我慢してくれ。」

 

桃華の疲れたようなそれに九喇嘛は自分を可愛いと連呼する男との旅を考えてげんなりした。

 

 

 

が、その旅は意外なことにそこそこ快適であった。

籠を背負うゴヨウのうざがらみを抜けば、新鮮な肉は貰えたし、塩をまぶしたりと飽きさせないように調理もしてくれる。

時折、自分に関わってくる柱間とマダラの様子を見るのは、嫌ではなかった。

 

遠い昔、九喇嘛にとって六道仙人の息子達は遠い存在だった。

力の強い自分たちは、人と近すぎればよくないことがあるだろうと。元より、六道仙人自体、尾獣たちの強さにより、距離をどれぐらいにするのかと悩んでいたのもある。

 

だから、ずっと、遠くで見ていた。

見ているだけだった。

仲の良い彼ら、戯れる彼ら、そうして、仲違いをし、決別して、そうして、生まれ変わっても殺し合う彼ら。

 

不本意で、腹立たしく思ってはいるのだ。

けれど、それ以上に。

 

(よかったなあ。)

 

人を信じてなどいない。彼らはよく自分を失望させて、散々にうんざりしていて。

 

けれど、遠い昔、己に優しくしてくれた父親代わりが愛した二人の在り方に安堵している自分がいた。

よかったな、そう、ただ、思う自分がいた。

 

 

が、それとこれとは別だ。

九喇嘛は唐突に連れてこられた屋敷で、逃げ出す機会をうかがっていた。

籠から出されれば、それこそこちらのものだ。

 

「・・・・・戻ったぞ。」

 

桃華とゴヨウは屋敷の前で消え、残りは柱間とマダラだけになる。

彼らは、屋敷の奥、中心に当たるだろう部屋に向かった。そうして、その部屋の押し入れを開け、なんと、奥の壁を押せば、隠し部屋への道が開かれた。

 

さて、これからどんな目に。九喇嘛は警戒心を持って、部屋の中を見た。

その中には、自分と同じサイズになっためちゃくちゃにくつろいでいる、尾獣たちがいた。

 

「ああ、そこそこ!」

「このお菓子、おいしいですねえ。」

「んん・・・・眠い・・・・」

 

野生を無くした動物のように、尾獣たちは三人の女達の膝の上だったり、近くで思い思いにくつろいでいたのだ。

 

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