千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。




流されてたけど、思えば色々おかしい

 

 

「人の嫁の胸に埋もれてるスケベ狸がなにをいっとる!」

「うっせえ!少しぐらいいいだろうが!」

「えーん、扉間様、止めてください!」

 

目の前で怒る、一尾の守鶴とほっぺたをつねり上げる男に、九喇嘛はなんだと他の尾獣に視線を向ける。それに、八尾の牛鬼がああと頷いた。

 

「お前を捕まえた、アシュラの生まれ変わりの千手柱間っていただろう?」

「ああ。」

「あれの、今世の弟だ。」

「あの甘ったれが兄か。世も末だな。」

「まあ、世も末は末だけど。」

「ちなみにインドラはそのまま長子だぞ。」

「あいつ、ただでさえ背負い込みやすいんだから、いっかい、弟とかになったほうがいいんじゃないのか?」

 

そんな尾獣たちの会話の間に、決着が付いたらしく首根っこを掴んだ守鶴が放られる。

 

「扉間、お前、少しは俺に敬意を払えよ!」

「払われたいのなら、それ相応の態度を見せろ!」

 

まったくと言いながら、扉間は守鶴を尾獣たちの中に放った。放り投げると思ったが、普通にとんとおいたのが意外だった。

 

「イドラ、離れろ!ほら、広間だ。」

「あ!広間!お体、なんにもありませんでしたか?」

「見事なまでの健康体だ。うちはや千手でよく見る流行病の兆候もないそうだ。」

「そうかあ、よかったあ!」

 

扉間は自身の足にすがりつくイドラの体を引き離し、そうして、正面からは見えなかったがよくよく見れば、背中から何かを下ろした。

九喇嘛は思わず食い入るようにそれを見た。それは、赤ん坊だ。

もう、首が据わっているらしい赤ん坊は母の腕の中で収まっている。そうして、イドラはそうだといってとことこと自分の元にやってくる。

赤ん坊自体がそこそこ大きいためか、でかめのぬいぐるみを抱えているような景色だった。

そうしてそれに合わせるように尾獣たちはわらわらとイドラの元に集まっていく。   

 

「広間だ!」

「見せろ見せろ!」

「九喇嘛様、そうだ、紹介しますね!」

 

差し出された、銀の髪をした、赤ん坊。きっと、見ることなど無いと思っていた、柔らかなそれ。

 

「私の息子の広間と申します。」

 

唖然とした、茫然とした。

だって、それは、自分にとって、何よりもほど遠いと思っていた生き物だ。その赤ん坊は何よりも安全であるだろう母の胸の中で、不思議そうに自分に手を伸ばす。

 

自分を見る、黒い瞳。それは、己を見て、無邪気に笑う女の目によく似ていた。

乳臭い、甘い、それは、まるで何の疑いもためらいも無く、己に触れた。

 

やわっこくて、温かなそれ。

 

自分を無遠慮に掴んだそれに、九喇嘛は固まった。

 

 

 

「お前は!」

 

尾獣たちの中心にいたイドラを扉間が上から引き上げた。腋に手をかけて、そのまま持ち上げた。

 

「尾獣たちに広間をあまり近づけるなと!」

「何すんだよ!」

「俺の癒やし枠返せ!」

「においを嗅ぎたいんですの!」

「少しぐらいいいじゃないですか!」

「ええい、たかるな!散れ!イドラ、お前は広間に乳をやってこい!」

 

扉間は尾獣たちからイドラを引き離し、そうして、部屋の隅の区切られた場所を指した。それにイドラも、慌てて広間を抱えて歩き出した。

扉間はそれを追う尾獣たちの前に立ちはだかる。

 

「懐くなと言っているだろうが!」

「なんもしねえよ!」

「赤ちゃん、もうちょっと、見たい・・・」

「ケチ!」

「あのな!逆に聞くが、堂々と尾獣たちに自分の息子を近づける方がおかしいだろうが!」

「イドラは?」

「あんな今までよく生き残って来れたか疑問な奴を平均値にするな!」

 

尾獣たちからブーイングが上がる。九喇嘛は扉間の物言いにイラッとしたが、言いたいことももっともなため口を噤んだ。

 

「はあ、まったく、貴様らももう少し、考える頭を持ってはどうだ?」

「なんだよ、ペン吉。」

「ペン吉さん、そんなこと言わなくても。」

「やーいペン吉。」

「だあれが、ペン吉だ!貴様ら、我が八咫烏だと知っとるだろうが!」

「ええい、お前ら、少しは静かにしろ!」

 

尾獣たちはわらわらと扉間に飛びつき、抗議の声を上げる。そんな中、ぺーんと怒るペン吉はため息を吐きながら自分は違うとイドラの元に行こうとした。

が、扉間は他の尾獣たちと話をしながらペン吉の頭をわしづかみにして壁に叩きつける。

びたーんとすごい音がするが、尾獣たちはそのまま扉間にたかっている。

扉間自身、拒絶はしているが強硬手段をとるということはない。

 

「・・・・いいのか、あれ。」

「ああ、あいつ、元々、サクヤ姫に仕えてたろ?そのせいか、イドラの嬢ちゃんの世話を焼きたがって纏わり付いちゃ、焼き餅焼いた扉間にどつかれてるんだ。」

「・・・・なるほど。」

 

九喇嘛はぼやくように言った後、赤ん坊に握られた手をじっと見つめた。

柔らかくて、暖かくて、甘い匂いがして。

九喇嘛は不思議そうにその感触を思い出した。

 

 

 

「イドラ、食事だ。」

「ほら、お前はこれが好きだろう?」

「ほら、体を拭くための水と手ぬぐいだ。」

「髪が乱れておるぞ。」

「ほれ、今日はもう寝ろ。」

 

思った以上にこいつ尽くす奴だな。

 

九喇嘛は扉間と呼ばれる男が来てからの行動を見ていた。イドラは現在、術の経過観察のために男の家にある隠し部屋で保護されているらしい。少し、体調を崩しているからと周りには伝えてある。

そうして、人目がつかないようにと尾獣たちも同じように放り込まれているそうだ。

部屋から出られないイドラに対して、扉間は食事に身を清めるためのものなど、細かく世話をしている。

男でそれだけ、妻の世話をするのは珍しいなと思った。彼の思い出す父親像の六道仙人もそこまでのことはしていない。

状況が状況のためだろうか?

 

そうして、その間に、尾獣たちを捌いている。

近づくな、お前らの飯はそっちだ、これは嫌い?我が儘言うんじゃない、喧嘩をするな!

尾獣たちはイドラに構って貰おうと、扉間をかいくぐろうとするが、それは見事に止められる。

けれど、九喇嘛自身なんとなく、こいつら扉間に構ってもらおうとすることが本題になってないか?

 

「貴様ら、いい加減にせんと封印するぞ!?」

「やっべ、キレたぞ!」

「逃げなくちゃ!」

 

きゃっきゃと笑うはしゃぎ声を九喇嘛は遠い目をする。

お前ら、楽しんでないか?

 

「そう言えば、皆さんは今日、来られないんですか?」

「今日は皆、仕事が立て込んでおるから無理だ。」

「そうですかあ。」

 

しょぼんとしているそれに扉間は苦笑した。その横顔は少しだけ、優しげだった。

 

 

 

「いいか、最後の尾獣がそろったのだ。明日、六道仙人を呼び出すからな。」

「わかってる!」

「承知しておりますわ。」

「おい、お前、もう少し詰めろよ。」

「ここが一番広間に近いんだよ。」

「扉間様は寝ないんですか?」

「聞いとるのか!?さっさと寝ろ!」

「「「「はあーい!」」」」

 

九喇嘛はなんとも言えない顔をした。だって、目の前では地下のじめっとした生活に対応するためか寝台があるのだが、そこにはイドラと尾獣たちが満ち満ちになっている。

潰される危険性があるためか、広間は一人用の小さな寝台に寝かされている。

 

扉間は諦めたように、毛玉に埋まった女の頭を撫でた。少しすれば、すやすやと寝息を立てる。

 

「・・・・・お前はいいのか?」

「ほう、俺に人となれ合えというのか?」

 

皮肉がこもったそれに九喇嘛は目の前のそれの反応を見た。事情はわかりはしたが、九喇嘛は目の前のそれを信用することが出来ない。

 

人には、散々に辛酸をなめさせられてきたのだから。

 

「そうだろう!?」

 

九喇嘛のそれに扉間は大きく頷き、獣のことを抱き上げた。

 

「そうだ、その反応が正しいのだ!」

「な、なんだ!?」

「尾獣を集めるとなって、こちらもそれ相応の苦労をすると思ったのだ!だが、蓋を開けると尾獣たちはそれは大変だとほいほい付いてきて!」

「お、おう。」

「それはいい。こちらとしてもありがたい話だ!だがな、来てすぐにイドラを前にすると、野生を失った動物がごとくごろごろ懐いて!イドラも、ミト殿も、姉者も!無駄に丸っこい輪郭に情が沸いて自ら世話をすると言うし!兄者もマダラもそれを許可しおって!」

「それは、た、大変だな?」

「見てみろ!あの懐きっぷりを!もう、群れの一部と化しておる!」

 

九喇嘛は少しだけ扉間に同情した。

いや、九喇嘛もそれの言いたいことがわかる。

完全に、懐きすぎなのだ。尾獣たちもおかしいが、それはそれとしてそんな尾獣たちを受け入れる人間の方もおかしいのだ。

 

なあ、知ってるか?こちとら、国も滅ぼせる存在なんだぞ?

もう少し、警戒心を。可愛いからそんな気にならない?

あ、そうですか。

 

「つーか、お前もそんなに言うのなら隔離しろよ。」

「・・・ワシとて最初はその気だった。だが、連れてこられた尾獣たちをイドラの奴は気に入ってしまってな。絶対に世話をすると聞かず。それに、姉者まで賛同してしまって。大体、今回、時間が無いからと尾獣たちの能力を封じる術も信用できるかわからんが。だが、時間がないのも事実だ。」

「・・・いつの世も、男は女に弱いな。」

 

全てを察した九喇嘛は扉間に同情の視線を向けた。けれど、はっと気を取り直す。

こちとら、それでも尾獣なのだ。

最後のプライドは手放してなるものかと、九喇嘛は皮肉モードに入る。

さすがにこれでほだされるのはチョロすぎる。

 

「ふん、そう言う貴様もあの女にだいぶ甘いようだが?」

「どこがだ?」

 

扉間のそれに九喇嘛はしらーとした目を男に向ける。

え、あれだけ世話をしていて?

あれだけ、甲斐甲斐しくしていて?

 

「・・・お前、それはないだろう?お前もどうせ、イドラにベタ惚れじゃないか。」

「はあ!?どこがだ!?」

 

扉間は叫んだ。もしも、ここに誰かがいれば何言ってるんだと呆れた顔をしただろう。

咄嗟に叫んだ扉間はそっといろんな物から視線をそらした。

大々的に叫んだことは諸諸あれど、なにか、殆ど無関係な存在には面子みたいなものを保ちたい気が少しした。

 

「何よりも、よく、千手とうちはで婚姻がなったな。どうしたんだ?」

 

九喇嘛も人間とは距離を置いていたが、噂話を聞かないわけでは無い。そんな中、うちはと千手などどれだけ仲が悪いかぐらいは知っていた。

ふとした好奇心でそう聞けば、扉間はくわっと目を見開いた。

 

「よく、聞いてくれた!」

「お、おう。」

「そうだ、散々、丸め込まれ、振り回され、そうして、押さえつけられてきたが!こんなことになるのがおかしいのだ!」

 

九喇嘛はとがった様子の扉間にドン引きをしながら距離を置きたくなる。

 

「いいか、あれは遡ること・・・・」

 

それから扉間は語った。

何故か、戦の最中で責任を取れと叫ばれたこと。

何故か、自分がイドラを孕ませた最低男になっていたこと。

何故か、自分がとんでもない好き者になっていたこと。

 

所々、恨みがましさやら複雑さの伴った話を扉間は語った。

九喇嘛は、それに恐れ戦きながらそれを聞いた。

 

「・・・・ということだ。」

「そ、それは、大変だったな?」

 

九喇嘛は少しだけそれに同情した。その話を聞く上では、なかなかに不名誉極まりない話だろう。

九喇嘛の哀れんだ目に、その、いかめしい顔をしたそれは感激した顔をして九喇嘛のことを抱きしめる。

 

「わかってくれるか!そうだ、こちとら、何が悲しくて敵対している氏族の姫を口説き落として、孕ませたあげくに、閨のための術開発をしたと思われにゃならん!」

 

まあ、その話がどこまでも本当なのかはわからないが。

ただ、それから悪意のようなものは感じない。尾獣たちもある程度懐いている。

 

ちなみに、尾獣たちは皆、懐いてはいる。ただ、男の中で一番に人気があるのはマダラらしい。何故って、一番世話の仕方が細々しているし、甘えるとそこそこほだされて言うことを聞いてくれるためだ。

男兄弟で育った柱間は扱いが雑且つ適当なため、不人気だったりする。扉間も扱いは雑だが、それはそれとして気遣い自体は出来るので柱間よりは人気がある。

 

(嘘は、ついていないのかもしれないが。全て真実かはわからない。)

 

とも思うが、その鬼気迫る様子になんだか、本当なのかなあとも思う。

けれど、なんとなく、それは抜け目ないにおいもする。

 

「・・・・大体、お前達もお前達だ。どうして、あんなに容易く懐く。イドラの奴、どうしてこうも、変な存在にばかり纏わり付かれおって。」

 

その言葉に、なんだろうか。

九喇嘛は思わず、口を滑らせてしまった。

 

「・・・・誰とて、望んで暗がりにいるのではない。日だまりを、見つめていたい時もある。」

 

それに扉間はじっと、九喇嘛を見た。

九喇嘛自身も、何を言っているのだろうかと思った。何を、一体、言っているのだろうか。

 

言ってもせんないことだ。願っても無駄なことだ。祈っても届かないことがある。

ただ、ただ、自分たちは人と暮らすにはあまりにも、違うことが多すぎる。だから、遠くにいたのだ。

 

人と共に、と。

そう、己の父代わりは言ったけれど。

 

九喇嘛は父のことが好きだ。彼の願いを否定したいだとか、それを間違っているだとかは思わないけれど。

けれど、どこかで、思ってもいる。

 

己の息子さえも争っているのに、何を、わかり合うことなどできるのだろうか?

 

その思いも嘘では無い。

 

脳裏に、浮んでくる。

馬鹿みたいに笑う女がいた。何のためらいも無く、弱くて、柔らかくて、暖かい赤ん坊を自分に見せて、紹介してくれる女。

昔、遠くで見ていた、女に似たそれ。

尾獣たちに呆れていて。

なのに、その心をわかるのも本当だ。

 

暗がりでは無くて、日だまりの中で微睡んでいたいのは。

きっと、当たり前のように手を差し出してくれるのが、あんまりにも目映くて。

 

(戯れ言だ、こんなこと。)

 

扉間は少しだけ、黙った後、九喇嘛のことを掴み、そうして寝台の上に放り投げた。

 

「おい!」

「明日、やることがあるのだ。さっさと寝ろ。」

 

寝息が聞こえる。甘ったれた、在り方だ。なのに、いいかなと思う自分がいる。

九喇嘛はそのまま寝台に眠るイドラの髪を撫でる男を見た。

 

事が終れば、お前は尾獣たちをどうするんだ?

そう、聞こうかと思った。思ったけれど、その顔を見ていると、聞く気になれなかった。

九喇嘛はそのまま眠った。

幼い、いつかの時のように。

 






なあ、マヒル。俺って、地味じゃん?
え、千手のクソガキと名高い狭間が地味とかふざけてるのかって?
そんな悲しいこと言うなよ。
でさ、俺も木遁の使い方とか父上譲りだろ?やっぱ、芸が無いなって。
それでさ、得意の水遁で何か術を作ろと思って。

液体の利点ってなんだと思う?
形を自由自在に変えられることってところなんだけど。
扉の爺様も、言ってたけど殺傷能力って大きさとか規模よりも、針一本で生けるだろ?水遁って、何かを形作る上で水って一番媒介にちょうどいいだろ?
だからさ、自由自在に操れる水の固まりって便利だと思わない?

衝撃を吸収する、スライム状にすれば守りも出来る。
攻撃用に硬化すれば、良い感じになるしさ。
自分をドーム状に覆って守りにして、針状の水を辺りにまき散らせば敵も一網打尽だろ?
水っていうのが弱いなら、液体状の金属、水銀とかつかってもいいしさ。
重量?
俺の瞳術応用すれば、持ち運びも出来るしさ。水なら、水遁で作ればいいし。

チャクラを使っても操作性とか、持続性が難しいなら分身の術の応用と、あと、チャクラを溜めておく媒介をぶち込んでおけばそこそこいけそうだし!

とか考えてたんだけど、量産できそうだから一端作るの止められたんだよね。悲しい。




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