アンケートについてはなんとなく、どっちだろうと。
どっちに似るかはお好みで。
「扉間よ、大丈夫か?」
「・・・・話しかけるな。」
千手扉間はぐったりとしながらその場に座り込んでいた。千手柱間は扉間のそれにしゅんとしたが、理由が理由なだけに仕方が無いのだが。
それに、千手とうちはの人間は扉間のことを慰めるように取り囲む。
「扉間様、そんなに落ち込まなくても。」
「扉間様が、イドラ様のことをどれだけ好きかわかっていますから。」
「そうですよ、大体、扉間様がすけべなことなんて皆、わかってますから!」
「ぶっとばしていいか?」
ぐっと己に親指を突き出してきた千手の男のそれをへし折ろうかと扉間は真面目に考える。
もう、何か、色々体の力が抜けそうだった。
確かに、昔から毛のものは好きだったが、そんな妻に耳を生やすほど飢えているとか、求めているわけではない。
それを先祖に当たる女に言い放たれて、うちはマダラとうちはイズナからの視線がまあ痛いことこの上ない。
ここに姉がいても、眠っていることが幸運だろうか?
(ワシが何かしたのか?)
幾度思っただろうことだが、それ自体が今更だ。というか、当人の業を考えると大分不運としては軽い部類に入るだろう。
「扉間、覚えておけよ。アカリ殿にお前のこと言いつけるからな。」
「それだけは勘弁してくれ!姉者に殺される!!」
いいや、そこそこ見合った不幸が降り注いでいるかも知れない。
「イドラ様、そろそろ起きてください!」
扉間が沈んだ顔をして、ずたぼろの中でそんなことも気にもせずに月兎だけはうちはイドラこと、千手イドラの頬をぺしぺしと叩く。
けれど、イドラはすやすやと変わらず爆睡を決め込んでいる。
うちはマダラも妻であるアカリを柱間に預けて、イドラを揺すった。けれど、イドラはむにゃむにゃと口元をもむもむするだけでまったく起きない。
どんだけ爆睡しているのかとマダラは呆れた。
「くそ、昔から寝汚いのはわかってたが、ここまでか!?」
そんな中、サクヤは自分の近くでイドラのことを揺すり起こすマダラのことを眺めながら、そっと男の頭を撫でる。
それにがちんとマダラは固まった。背中に立たれるのが嫌いだと公言する、警戒心の強い男だ。
柱間と、そうして、うちはの人間は内心で悲鳴を上げる。
気分は、気性の荒い肉食動物に幼児が手を伸ばしているのに悲鳴を上げる飼育員だ。
「・・・・さわり心地が良いですねえ。」
「妻が、手入れをしているので。」
マダラは突然のその挙動にそれだけを返した。普段の男ならば、振りほどくぐらいのことはしただろうが、あまりにも、目の前のそれは特殊すぎる。
そのために、咄嗟にどうすれば良いのかとそんな仕草をしてしまった。
「・・・妻?」
「後ろの、赤毛の。」
「ああ、アシュラのが、抱えている女子ですね。そうですか、大事にされているのですね。」
サクヤはうっすらと涙の後が残る目元を和らげた。そうして、赤い髪の女にようやく気づいたかのような顔で視線を向けた。
「不思議なこと。我が子の髪も、妻の顔も見なかった私が、幾度も重ねた死の果てにお前の髪を撫でている。」
それは、嬉しそうでなかった。考え込むような仕草だった。
「サクヤ姫!イドラ様が起きられないのですが!?」
その時、あまりにも爆睡を決め込んでいるイドラに対して、月兎が叫んだ。それにサクヤはああと頷く。
「それはそうでしょうね。そうそう起きないですよ。」
「ど、どういうことですか?」
「今、この子の精神は、いいえ、くわしく言うのならチャクラは私に吸収されているのです。」
少しの沈黙、その後に、サクヤにその場にいた人間が飛びつくように近づいた。
「「「どういうことですか!?」」」
サクヤはぼんやりとした、その表情はこれまたイドラにそっくりで、サクヤはこくりとうなずいた。
「ここは精神世界。心だけの存在が、どうして眠る事なんてあるのですか?」
心底不思議そうな言葉に皆がそれはそうだと納得する。そうして、改めて気を失ったままのアカリを見た。
「サクヤ姫!ならば、彼女たちは!」
「・・・・皆、私や姉様が生まれた理由は聞いていますか?」
「月兎に、空より来る災厄の討ち滅ぼす子を、産むためと。」
「・・・・ええ、写輪眼や、千手の高い再生能力が、人という種族に馴染んだ後、高い資質の子を産む胎として、再度、私たちの肉体の資質を子孫である存在に受け継がせるための楔でした。ですが、もっと詳しく言うのなら、チャクラを引き継がせるための術。」
サクヤは己の膝の上で眠るイドラの頭を撫でた。
「この子のチャクラを、私のチャクラが侵食しているのですよ。少しずつ、少しずつ。」
「なぜ、放っておくのですか!?」
「これは、姉様がしていること。私には、どうしようもないことです。」
その言葉に柱間は己の姉に視線を向ける。
「御母堂様!ならば、姉上も、そうなのですか?」
「ああ。姉様の器の方ですね。そうですね。」
同意をされて、柱間たちの顔色はさあと青くなる。
「姉上!」
柱間がアカリのことをゆすぶるが、赤毛の女は目を覚まさない。サクヤはアカリの様子に顔を歪めたマダラのことをじっと見た。そうして、囁くように言った。
「あれが大事か?」
「己の妻です、当たり前でしょう!?」
激高するようなそれにサクヤはゆっくりと瞬きをした。
「なら、語りかけてみなさい。」
「語りかける?」
「彼女たちの精神に揺すぶりをかけて見なさい。今、この子達は、幸せな夢を見ているのですよ」
「夢?」
「目覚めて欲しくないのなら、醒めて欲しくない夢を見せた方がいいでしょう。だからこそ、起きなくてはといけないことを聞かせれば。そうすれば、起きる可能性があります。」
「精神に揺すぶりを・・・・」
それにその場にいた人間が、アカリと、そうして、変わらず猫耳がぴこぴこ跳ねているイドラを見つめた。
イズナがそっとイドラの耳に口を寄せた。
「姉さん、ごめん。あのことが兄さんにばれた。」
それにイドラの顔が歪んだ。
「ううう、兄様、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・」
そう言いながら、じたじたと手足を動かす。
それに何か気づいたらしいうちはの人間がそっとアカリに囁く。
「アカリ様、マダラ様の今季の衣装、どうしましょうか?」
「・・・うーん、旦那様には、渋めの色が似合、う。」
アカリは眉間に皺を寄せて寝言を言う。
それにくわっと皆が口を開く。
「この路線か!」
「イドラ様の怒られネタ知ってるやつ!」
「待て、イズナ、何隠してるんだ!」
「それは弟妹同盟で秘匿だよ!」
イズナの叫びにマダラはため息を吐いた。これで反応があるのなら、正直に言えば、何を言えば起きるのかマダラにはわかっていた。
それがわかる程度に、アカリのことは理解していた。いいや、それぐらいアカリは色々とあけすけだ。
曰く、顔に出ないから、口に出すようになったのだという。
けれど、言いたくない。
いや、言うのは構わないのだが。
「なんぞ、マダラ、面白い顔をして。」
マダラのしかめっ面にイズナは全てを察したのか、肩に手を置いた。
「兄さん。」
「・・・・言わないとダメか。」
「俺が言ってもいいけど、多分、兄さんが言った方が確実だよ。」
「どうした、マダラよ!何をそんなに嫌がるのだ!?姉上の危機だというのに。」
「いいや、その。嫌な予感だ。」
そう言いはしても、それが確実であると理解しているために、マダラはなんとも言えない顔をしてアカリに顔を寄せた。
「・・・・アカリよ。」
それはすやすやと眠ったままだ。マダラはゆっくりと口を開いた。
柱間と扉間、そうして千手の人間は何を言うのだろうとそれを見守った。うちはの人間は、あれだろうなあと理解しているのかそれを見つめている。
「以前、見せた。あー、神楽の衣装があっただろう。」
それに、アカリの手先が震えるのがわかった。そうして、マダラが何を言おうとしているのか、なんとなく千手の人間は察した。
「前に言っていたとおり、それを纏って、舞も見せてやる。あと、あれだ、化粧も、しても・・・・」
がしり!
その言葉と共に、アカリの目がかっと見開かれる。そうして、マダラの腕を掴んだ。
「化粧は私がするということでいいですか!?」
アカリは跳ねるように飛び上がり、そうして、マダラの両手を握った。
「言質を、言質を取りましたからね!?ええ、ええ、ええ!確かに、あの衣装はもう少し、華奢な方の大きさです!ですが、ある程度手直しは出来ます!ああ、白い衣装はあなたの黒い髪と瞳に栄えますし!少しだけ、紅をさしても!いいえ、隈取りも赤にしませんか?舞の時の小道具も、指定が無いのなら、選ばせて・・・・・」
アカリはマダラの頬を両手で包み、るんるんでその顔をのぞき込み男を見つめるその様はまさしく熱を上げていた。
「わかった!わかったから!後でいくらでも聞いてやるから!!」
マダラは目の前で、無表情でありながら、きらきらとした眼をする妻を落ち着かせる。それに柱間と扉間は、しらっとした顔をした。
いや、何だろうか。
起きて良かったのはよかったのだが、それで起きるのか、我らが姉よというしょっぱさがある。
まあ、結婚生活が円満なようでよかったなあとは思う。こういった、敵対氏族同士での同盟が絡んだ結婚なんて悲惨なのが普通なのだ。
いや、問題の女達がどうこうも図太すぎるのはあるのだろうが。
「マダラ様の言ってる衣装ってなんだ?」
「うちはでは、新年に宗家の男児が女の装いをして神楽を舞うんだ。」
「アカリ様も、うちはの人間になったからな。それで、衣装の手入れとか、準備のことを話したときにマダラ様がそれを着て神楽をしてた話をしたら。」
「食いつくだろうなあ。あの人、マダラ様の顔好きだし。」
「・・・・なぜ、神楽を舞う年齢の時に出会えなかったんだと崩れ落ちられてな。」
「その後、なんとか目の前で舞ってくれないかとごねにごねられて・・・・」
「姉者、いい加減にしろ!」
興奮気味にマダラの肩を掴んで鼻息荒くしているアカリを、柱間と扉間が引き離す。
「姉者!いい加減にせんか!」
「そうぞ、そんな場合ではないのだぞ!?」
「何を言う、柱間、お前だって見たいだろう?」
「見たい!」
「んなこと言うとる場合か!」
ひとまず引き離したアカリは、ようやく自分たちの状態に気づいたのか周りを見回した。
「・・・ここは?私は確か、ミトやクズハと一緒に。」
「ようやく気づいたのか。」
「いや、旦那様は基本的に押しに弱いからな。ここでたたみ込めばそのまま負けてくれるのがわかるからな。」
「兄者は説明を頼む。」
「そうだな、それで、姉上よ。」
ぐったりとしたマダラとイズナを横目に扉間は改めてくるんと丸まって眠るイドラを見た。
その時、扉間はもちろん、そのほかの千手やうちはの人間は、イドラがすぐに起きるのだと思っていた。
寂しがりで、甘ったれで、そうして、扉間が大好きなその女は、扉間の言葉にすぐに起きるものなのだと。
「イドラ、早く起きろ!」
「もう、少し・・・・」
「でかい猫がいるぞ!」
「マダラが怒っておるが、お前、何をした?」
「ちがうんですー、兄様、あれは、イズナも止めなかったんです・・・」
「広間が泣いているぞ!」
「おむつ、ごはん、おっぱいさっき上げたのにぃ。」
「飯の時間だぞ?きつねうどんだ。」
「お腹いっぱいですぅ・・・」
「新作の鹿の彫り物、見ませんか?」
「猫、猫がいい・・・・」
「姉さん、起きないとあのこと、兄さんにばらすよ?」
「うええええええ、ごめんなさい、にいさまあ・・・・」
「待て、本当に何を隠してるんだ?」
「イドラ、行きたがっておった茶屋に行かんか?」
「えへへへへへ、いきたいでーす・・・」
「マダラ様の危機です!」
「うえええええええ、私がいても役に立ちません・・・・」
まあ、起きない。
扉間は、イドラが飛び起きそうなことを並べたが、反応はあれどまったくと言っていいほど起きないのだ。
「この馬鹿、まったく起きん!」
「ここまで寝汚いとは・・・・」
「く、扉間様さえ、起こすことが出来ないなんて。お手上げじゃないか!」
その場にいた人間は頭を抱えた。イドラは単純で、彼女が飛び起きるようなこと、いくらでもあると考えたのだ。が、蓋を開ければどうだろう。
その駄犬は、いや、今は猫だろうか。
華麗に爆睡を決め込んでいる。
「なるほど、それでか。というか、私はお前の生まれ変わりの、母親の生まれ変わりというわけか?」
「そうだのお、いや、ここで姉上と縁があるとは。」
「死んでも私はお前を育てなくちゃいけないのか・・・・」
「そ、そんな嫌そうに言わんでも。」
説明を受けたらしいアカリは頷きながら、ようやく、皆に囲まれているイドラの姿を確認するためにのぞき込む。
そうして、彼女はイドラに付いた猫耳と尻尾を確認した。
がっ!
ノールックで扉間の頭を掴んだ。
「うおおおおおおおおお!姉者、無実!無実の罪だ!」
「てめえ、こんなとこまで変なお前の思想が混じってるだろうが!」
「アカリ様、違う!ほんとに違う!」
「今回は、いや、今回だけは無実だから!」
「ま、待て!アカリ!」
アカリは掴んだ頭から手を離し、そうして、扉間の首に腕を回して締め上げる。完全に落とすタイプの締め上げ方だ。
そうして、周りの発言にアカリは腕の力を緩める。
「それをされたのは、こちらの。」
アカリはそれにぼんやりとその場のことを眺めている女を示した。
イズナはそれにほっとして、そうして、アカリに言いつけることは一旦白紙にした。このままでは姉が未亡人になってしまう。
というか、兄や姉とは弟妹に甘いという認識の元生きてきたイズナは、怖い姉のいる扉間が哀れになったのだ。
そのため、口を噤むことにした。
「うちはの方でしょうか?」
「サクヤと申します。」
「イドラの。」
「ええ、そうです。あなたは、姉様にそっくりの、赤い髪をされているのですね。」
そういったサクヤの瞳は、どこか淀んでいた。千手の人間は、何か肌にぞわりとしたものを感じた。
「姉様にそっくりの、強くて、美しくて、しっかりとしていて・・・・・」
淀んだ瞳をアカリは気にせずに話しかける。
「イドラの耳は、あなたが?」
「ええ、可愛いでしょう?」
ぽけぽけと微笑む様は、なるほど、イドラに本当によく似ている。
「ここは私の領域。私のような存在でも、この程度のことは可能ですよ。イドラのこれも私がしました。」
「・・・・この程度、というと、誰にもできる、と?」
「ええ、見ることしか出来ぬ、弱者であれど、この場だけはいかようにも。」
「それは、イドラ以外にも?」
「ええ、可能、ですけど。」
皮肉交じりであったサクヤの声に、被せるようにアカリが言った。それに気づいたらしい柱間ががっと肩を掴む。
「まってい!姉上!」
「いいや、待たんな!マダラ殿にも頼みたい!」
「は!?そんなこと、できるはずが!」
「出来ますよ。」
ぼふんと、わざとらしい煙がマダラを中心に沸き起こる。
「うおおおおおおおおおおおお!?」
「に、兄さん!?」
煙がなくなった後に残るのは、ぴこんと猫耳が揺れるマダラがいた。
「何してくれてるんだ!?」
「マダラにも猫耳が!」
「この年での猫耳はキツいだろう!?」
「扉間、どういう意味だ!?」
話題のアカリはその場にどさりと倒れて、顔を覆った。
「ああああああああああああああああああ!?」
叫び出したアカリに皆がびびり散らかしていると、女は叫ぶ。
「何故、私には写輪眼がないんだ!?」
「言うに事欠いてそれなのか!?」
「くそ!イドラがいれば、後で幻術で再生して貰えたというのに!」
「写輪眼のことを何だと思っているんだ!?」
「強力な瞳術だとはわかっている!わかっているが、それはそれとして、うちはにいると、完璧に覚えておきたいことが多すぎる!旦那様の猫耳なんて、そんなもの一生保存版じゃないか!?」
「耳が、耳が、二つ?俺はどっちで何を聞いてるんだ?」
「マダラ様が混乱されている!」
扉間はアカリの奇行に遠い目をして、そうして、改めてイドラに向き直った。
「それはさておき。」
「さ、さておいてよいのか?」
柱間は後ろで、マダラの耳を触ろうと彼に距離を詰めるアカリを見る。
まあ、人生は楽しそうだ。
「・・・・あなたは、イドラが眼を覚まさない理由がわかりますか?」
「肉体を乗っ取る上で、意識を吸収するのなら眼を覚まさない方がいい。ならば、見る夢は幸福なもののほうがいい。」
サクヤはじっと、扉間を見た。
「イドラは、よい夢を見ていますよ。父や母がおり、兄弟達が生きていて、そうして、お前達千手もいる。」
これ以上無いほどの夢を見ているのです。
サクヤのそれに、扉間は顔をしかめた。
後ろで、千手と、うちは、そうして、姉たちの声がする。その場には、柱間と、自分しかいない。
「精神を揺すぶるというのは、その夢から覚めるほどの衝撃を、という話。」
「これが目を覚まさんのは、都合のいい夢がよいから、ということですか?」
「その子が何に執着しているのか、それに尽きるのでしょうね。」
扉間は、目の前ですやすやと眠る女を見た。
執着、それに、扉間は考えて目を見開いた。
それの執着とは何だろうか?
兄さんが好き、イズナが好き、ずっと一緒にいたい。
氏族のみんなが好き、優しい人が好き、
猫が好き、きつねうどんが好き。
子どもに死んで欲しくない。
千手扉間が好き。
そう言って、思えば、その女は生に執着していたことなんてあっただろうか?
腹の奥が冷えていく。
ああ、そうか、この女は、思えば。
誰かに生きてと願っても、生きていたいと言ったことは思えばなかったではないか?
扉間は、どんどん腹の底が冷えていく感覚がした。
今更、ではあるのだが。
まるで、太陽のように朗らかで、明るいのに。
他人のことを優先して、誰かが笑っていることを優先して。
人が好きで、輪の中にいる。
それは兄に似ていた。理不尽に怒り、泣きわめき、変わるために足掻いた。
まあ、それのあがきは扉間にとんでもない被害を被らせたが。
まあ、結果的に良い方に向かった、向かった、のだ。一応。とんでもねえ恥を背負うことになっても。
それは確かに変えたのだ。それの駄々が、恥が、涙が、少しだけ、何かを良い方向に変えたのだ。
あのとき、泣いた顔が、どこか、扉間の慕う兄に似ていた。
似ていたから、扉間は勘違いしていた。
それは、いつだって、明るくて、朗らかなのに。
どこか、全てを手放すことにためらいのない、無頓着さがあったことを。
うちはの人間は、そうだ、傲慢で自信過剰で、そのくせ、どこか滅びの甘い匂いがした。
「・・・・お前は、生きたくないのか?」
囁くような声でそう言った。それは、近くにいた柱間だけが聞いていた。
「お前は、もう、何も未練などないのか?」
それは、真実なのだろう。
兄も弟も、氏族も、そうして子どももこのままならば里に馴染んで生きていける。その時点で、これは、もういいのだと考えていたのだろうか。
夢から覚めるほどの、執着は、生きる気持ちがこれには。
「扉間よ。」
扉間は声をかけてきた柱間に視線を向けた。柱間は穏やかに微笑んでいた。
「兄者よ。これは・・・」
「イドラは眼を覚ましたいと思っておるよ。」
「何故、そう言える?」
すやすやと、それは変わること無く眠っている。起きる気配など無い。
「それは、起きるよ。イドラは、誰よりも。」
誰かと生きることが好きで、人を愛しているのだから。
揺るぐことのない兄の言葉に、扉間は女を見た。
「下手なことを言うからダメなのだ。こういうときは、素直にお前がどう思っているのか言ってみるものだ。」
その言葉に扉間はそっとイドラに顔を近づけた。
その男は、リアリストで。
甘い愛の言葉なんて吐くような男ではなくて。
縋ることさえありえない。
それは、きっと、兄が死んでも変わらない。扉間は、きっと変わらない。
それは、どこまでも、変わらない。
いつかに、どこかの世界で、マダラという男の狂気に、うちはを爪弾きにしたそれのままなのだ。
けれど、今は、今だけは、そこで知らなかったことも、あり得なかったこともあるのだから。
「イドラよ。」
静かに扉間は口を開いた。
「お前は言ったな。何故、ワシが好きなのだと。」
それは、笑った。
あのときは、互いの結婚なんて嘘だらけで、責任なんて扉間には知ることもないことばかりだ。
あなたは、私が死んでも、そのまま変わらず生きていくだろうから。
「・・・ワシはお前がいなくても変わらんだろう。里のこともある、息子もいる。兄者もいる。思い込みの激しい、お前の氏族も、お前の兄や、弟もいる。手のかかる奴らばかりだ。お前がいなくとも、やることばかりだ。だから、ワシは変わらんぞ。」
それはリアリストだ。自分がいつかに、兄に見せられた美しい夢の先を諦めること何てないだろう。
いつかに、一人の男を脅威とし、その氏族が滅ぶ要因になったように。
変わらない、変わらない、それは立ち止まることなどしない。
それは、いつかに死んだ弟たちへの、なにも変える気は無かった大人たちへの報復で、祈りだから。
扉間は、たった一人の喪失に狂えない、そんな愚かにはなれない。
けれど。
「なあ、イドラよ。それでもな、ワシはお前が死ねば悲しく、そうして、寂しいと思う。」
だから、起きろ。共に帰るぞ。
その言葉に、猫の耳がぴくりと震えた。そうして、ふるふるとけぶるようなまつげが震えた。
ぱちくりと、真っ黒な、夜色の瞳が自分を見た。
むくりと起き上がったそれは、不思議そうな顔をした。
「・・・・扉間様、あれ、泣いておられるような?うん?私、サクヤ様とお話しして?」
不思議そうな顔をしたそれを、扉間は抱きしめた。祈るように、まるで、慈しむように抱きしめた。
「待て、アカリ!耳を、耳を揉むな!あっ!」
「ここですか、ここですね!ふっわふわ!」
「アカリ殿!落ち着いて!」
「イズナ、お前も、人の尻尾をどさくさで触るな!」
月兎は感動的だろう場面の後ろで、取っ組み合いになっているアカリたちに遠い目をした。
嫉妬とか焼き餅ってやく?
柱間
基本的に他人からの優先順位高めで生きているし、幸せならOKぞの精神のため、今まで嫉妬や焼き餅やらをしたことがない。嫁さんもいるが、精神が健全すぎて相当のことがない限り、危機感もない。
ただ、この頃、自分への感情が揺るがないと思っていた姉や弟、そうしてマダラなどからの矢印の方向が薄くなっているのでそわっとする。焼き餅の焼き方わからないので、犬みたいに周りをうろつくぐらいしか出来ない。
扉間
執着心がないわけではないが、嫉妬という感情がある意味で欠落している。里を作るという目的に障害にならなければどうもでいいと思っていたが。交通事故みたいに人生に突っ込んで来た女のせいで色々変わった。自分のことが好きであると揺るがないが、それはそれとして愛想を振りまくるために気が気ではない。嫉妬しているとは言わないが、嫌だとははっきり言う。
アカリ
愛されるより愛したい派なので、相手がどうしようとあまり気にしない。それよりも世話をさせろという感覚で生きている。ただ、それはそれとして相手の関心が誰に向くのか気になる。表に出せないし、出さない。皮肉の一つぐらいは口に出す。
マダラ
嫉妬心を出すほど相手に執着していない。弟も兄が最優先なのでする機会が無い。
ただ、嫉妬する場合感情任せにバチクソキレる。嫉妬心も人一倍強い。
ただ、嫁にした女があまりにもわかりやすいの、焼き餅焼く機会はない。
イズナ
兄と同じく、嫉妬するほどの相手がいない。兄も自分を優先ため機会が無い。
奥さんについても過ごす時間が無かったため、嫉妬心がなかった。焼き餅焼くときは、ネチネチ皮肉を重ねて追い込んでくる。
イドラ
焼き餅も嫉妬もものすごいする。が、他人を優先するためそれを表に出さずにため込むため、最終的に爆発して周りを焼きはらう。焼き餅の仕方は、泣くし、暴れる。ため込んだ末に、アカリなどに相談して、扉間は酷い目に会う。
扉間は
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女の子が欲しいが、息子しか産まれない
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女の子がすぐに産まれる
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女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
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どっちでもいい