千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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このまま、走り抜けたいので、感想、少しでもくださると大変に嬉しいです。


兄弟喧嘩って規模ではない

「耳があああああああああ・・・・」

 

うちはイドラこと、千手イドラはふわっふわな己の耳に戦きながら触る。

情けなさが爆発したまま、叫ぶ中、夫の千手扉間は無言でその耳をいじくる。

ふわふわとしたそれは、かすかに何か香ばしいにおいがする。イドラが表現するならおそらく、焼きたてのパンのようなにおいだと言っただろう。

柔らかくて、温かなそれに扉間は無言で鼻先を埋めた。

 

「うええええええええ、匂いかがれてるぅ。」

「・・・・じっとしておれ、この駄犬!ワシがどれだけ心配したかわかるか?」

「起きたばっかでわかんないですよお。大体、私、サクヤ様のお話聞いてて、そのまま寝ちゃったんですけどお。」

「はあ、にしても、確かに癖になるな、この匂い。」

 

心配をかけられた腹いせだとふんすと匂いを嗅ぐ。イドラは何が何だとわからないままに助けを求めるようにサクヤを見た。それに、サクヤは隣で頭を抱える兎を持ち上げた。

 

「月兎、説明を。」

「もう、何故、このようなことに。インドラ様とアシュラ様の関係はもう少しピリつかれていたのに・・・・」

 

千手柱間は何かしら扉間がストレスを感じていることを察して、そっと視線をそらす。そうして、イドラを後ろから両脇に手をかけて持ち上げた扉間をおいて、騒がしい後ろに視線を向けた。

 

そこには、全てを諦めた顔でうちはアカリに頭を抱えられて、姉のささやかな胸に顔を埋めた義兄弟の姿があった。姉はうちはマダラの頭に生えた猫耳に顔を埋めてご満悦な顔をしている。うちはイズナはというと、生えた尻尾を興味深そうに見つめている。

 

見捨てるか。

 

思わずそんな思考が思い浮かぶ。

いや、マダラを助けたいとは思うが、それはそれとしてその中に突っ込んでいきたくない。絶対嫌だ、姉の至福の時間を邪魔するとか恐ろしすぎて行きたくない。

見ろ、千手とうちはの人間も触れたくねえって顔をして、それを見つめている。

そこで気づく。

マダラからの目線が自分に突き刺さっていることを。

 

助けてくれ。

 

それを理解して、柱間はぐっと拳を握って、そうして一歩踏み出した。

 

「あ、姉上!そろそろ、離してやってくれんか?」

「もう少しダメか?こんな可愛い旦那様、二度と存在しないだろうに。」

 

うちはの人間は戦く、誰が山一つ更地にする男を可愛いというのだろうか。むぎゅむぎゅに抱きしめられたマダラは、今までされたことのない対応に宇宙を背負っている。

それはそれとして、微笑とは言え、ごきげんな姉の様子に驚く。

トラウマで笑うことのない姉の微笑みはプライスレスだ。それはそれとして、今はそんな時ではないのだが。

その時、ぽんという音と共にイドラと、そうしてマダラの耳が消える。

 

「皆さん!皆さん!いい加減、こっちに来てください!」

 

月兎の呼び声に、皆がぞろぞろとサクヤの元に集う。扉間はイドラの後頭部に顔を埋めて精神の安寧を保っていた。

 

「サクヤ姫のおかげで大分話がそれましたが!ともかく、現実世界に帰りますからね!」

「うえええ、帰れるんですか?」

「精神世界に居続ければ、また、チャクラの同化が進まずに済みます!アカリ様は、全力で、イワナガ姫に抵抗してください!その隙に、楔を私が封じますので!」

「まあ、それは頑張るが。」

「俺たちはどうなるんだ?」

「あなた方は今回紛れ込んだだけですので、眠っている体に戻るだけでしょう。」

「そうか、ならば、お前達は一旦待機しておけ。」

「そうだな、俺たちが暴れるとなると、いないほうがいいか。」

「それよりも、姉者はあらがえるのか?」

「もう、意地の張り合いのような物なので。ただ、今回、眼を覚ますことが出来たのなら、いけるでしょう。」

「なるほど、ならば、マダラ殿の神楽を見るという強い意志を持とう。」

 

千手とうちはの人間はそれに頷いた。

 

「ならば、サクヤ姫、お願いします!」

「そうですか。」

 

サクヤは扉間に抱えられた、なんだか間抜けなイドラの方を見た。そうして、それは、淡く微笑んだ。

 

「・・・・良い夢でしたか?」

 

サクヤのそれに、イドラは少しだけ驚いた。事情は知っている、目の前のその人は自分の生まれ変わる前で、そうして、ある意味で殺されかけていて。

けれど、サクヤは、何だろうか。

全てに対して関心が薄い。イドラが死にかけていることも、そうして、自分が生き返ると言うことにも、特別な関心は無かった。

 

「はーい!えっと、良い夢でした。」

 

イドラはそれに言われるがままにそう答えた。そうだ、うっすらとだけど、覚えているのは、幸福なもので。

 

父も母も、そうして、亡くなった兄弟たちも生きていて。おまけに、千手との同盟も終って、皆が平和に暮らしていて。

 

「父様に、子どものこと、抱っこして貰えました!」

 

弾むようなそれに、その場にいた人間は、夢の内容をある程度理解した。

 

「それでも、起きたのですか?」

「はい、だって、父様はあの子たちの存在をけして許してなんてくれませんもの。それを許すのは、父様ではないですもの。」

 

揺るがない言葉、それに、サクヤは淡く微笑んだ。そうして、頷いた。

 

「そうですね。きっと、そうですね。」

 

それと同時に、足下がふっと消える感触。そうして、視点がぐるりと回った。

 

 

 

「イワナガよ!その子を離せ!」

「離す物か!大体、これはサクヤではないというのに、鼻の下を伸ばしおりやがって!」

「誤解だ!母親似の娘は、その、少し夢だったのだ!」

 

聞こえてくるそれに、イドラは目を見開いた。そこにいたのは、慣れ親しんだ義理の姉である。

 

「ふべ!?」

 

それと同時に、足を後方に引きずられた。

 

「な!?」

「帰ったか!」

「いだい・・・・」

 

イドラが起き上がった先には、自分の足を掴んだ扉間と、そうして、柱間とマダラ、イズナがいた。

視線の先には、封印術を使い、大筒木ハゴロモを拘束しているアカリがいた。

見れば、アカリとハゴロモが向き合う形で立っていた。ハゴロモの後ろに下がる形で扉間たちが立っている。

ぽっかりと、浮んだ満月のせいか、辺りは驚くほどに明るくて。昼間のような明かりが不思議だった。

それにイドラは慌てる。

 

「あれ、アカリ様は!?」

「ここだ。」

 

その声の方に視線を向けた。そこには、赤みがかった茶色の毛をした兎が1匹。

 

「ええええええええええ!?何でですか!?」

「どうも、その、肉体を司る陽遁を掌握されていたようで。肉体から、吹っ飛ばされてしまい。急遽、私の分身体をお貸ししております。」

「えーん、すっかり可愛くなってる・・・・」

 

イドラはぼやきながら、アカリを持ち上げて頭の上に載せる。見た目は完全にマスコットだ。

 

「・・・・・サクヤは、お前達を逃がしたのか?」

「イワナガ姫、サクヤ姫はこの件に関わられる気はないとのことです!アカリ様に、体をお返しください。」

「黙れ!」

「イワナガよ!お前は何を目的にこのようなことを・・・・」

「ハゴロモよ、本当にわからないのか?」

 

アカリの姿をした、イワナガは顔を歪めた。

 

「・・・・子孫の者たちまで巻き込むような道理があるのか!?」

 

向かい合った赤毛の女にハゴロモがそう言った。それに、扉間はちらりと兄を見る。それに、柱間はもちろん、マダラとイズナも頷いた。

 

(・・・・奇襲はかけるが、姉者は兄者やマダラの本気には耐えられん。ならば、写輪眼を使い、幻術にかける。)

 

扉間の意図を理解して、皆で機会をうかがう。イドラはそれを理解できず、アカリとハゴロモとイワナガを交互に見る。

 

「そう言えば、尾獣の方たちは?」

「彼らはイワナガ姫に取り込まれています。おかげで、チャクラが尽きない状態で・・・・」

「ああ、そうだ、ないだろう!貴様にはな!私にはある!」

「何をそこまでお怒りになられておるのだ!?」

 

柱間のそれに、イワナガは切なそうに男を見た。目をこらすように、そうだ、その中に必死に、己の息子の面影を探すように。

 

「・・・・インドラとアシュラたちと同様に我らも又幾度も生まれ変わった。その間、我らは、生まれ変わった血族達の中で、ずっと、お前達を見ていた。我らの魂は特殊であったが故に。千手とうちはに分かれ、その先でずっと、見ていた。」

 

イワナガは顔を歪めた。冷たい、夜風が辺りに吹いた。

 

「お前にわかるか?気の遠くなるような、久遠の日々の中で、愛しい子らの殺し合いを見せられる母の気持ちが!」

 

叩きつける、叫びのそれに、イドラは目を見開いた。そうかと、ああ、そうかと。

そうだ、目の前のその人からすれば。

自分たちにとって、互いは他人だった。

何故、殺し合っているかなんて知らぬまま、遠い昔の因縁に縛られてここまで来た。

けれど、彼女は違うのだ。彼女は、ずっと、息子達が殺し合うという地続きの中であの殺し合いを見ていたのだ。

 

「ハゴロモよ、私が、どんな気持ちでアシュラと、そうして、サクヤの忘れ形見を預けたのかわかるか?お前ならばと、信じたのだ!信じた末が、あれだったのだ!」

 

イワナガは握り込んだ拳で己の胸を叩いた。

 

「止めろと叫んだ!止めてくれと!そんなことのために、殺し合いをさせるために産んだわけではない!届かぬ声で叫んで、それでも、お前達は殺し合うのを止めてくれなかった。」

「だが、だが!それでも、今、我らは同盟を組み、そうして、共に道を歩んでいるのです!」

「殺し合わぬと、多くを飲み込み、ここまで来たのだ!ならば!」

「・・・・同盟、はっ!お前達は、自分たちが和平を望んだ最初だと思っているのか?」

 

柱間とマダラの言葉に、女は嘲笑うように言った。それに、二人は口を噤んだ。

 

「長いときの中で、和平がなされようとしたことがなかったわけではない。千手も、うちはも、強力な氏族だったからな。だか、それは、叶わなかった!一代はよくても次の世代が、その次の世代が、どこかで必ず破綻した!それさえも忘れて、今更何を言う!」

 

イワナガはがちりと奥歯を噛みしめた。

 

「・・・・・もう、私は疲れた。」

 

掠れた声で、それは、普段は鉄仮面のアカリの顔で、ぞっとするような怒りをたぎらせて吐き捨てる。

それは、一人の母の怨嗟だ。ずっと、蚊帳の外で、すでに死んだがゆえにたぎらせた、焔のような怒りがそこにある。

 

「信じた、ああ、この子達ならばと、信じて。そうして、私の生まれ変わった女が殺されるたびに、破綻を見送るたびに、もう、信じられん。」

 

だからと、イワナガは柱間と、そうして、マダラを見つめた。

 

「全てのことを、この代で終らせるのだ。」

「何をする気だ!?」

 

ふんすとアカリが入っているらしい兎がそう言えば、イワナガは自分の体を見下ろした。

 

「・・・・インドラと、そうして、アシュラのチャクラを引っぺがし、そうして、私と、サクヤの魂を封印する。千手とうちはの因縁は無理でも、インドラとアシュラの因縁だけは、それだけは、私が終らせる!」

「お待ちを!チャクラを引っぺがすなど!現在の転生先であるお二人の命が!」

「ああ、そうだ!だが、私たちが外に出られる機会は、楔が発動したとき、今を逃してはもうこれ以上の時など訪れないだろう!」

「いいえ、何よりも!大筒木たちがやってくるまでそう時間はないのです!わかっておられるでしょう!?アシュラとインドラの転生体は、すべからく強力な力を持つ!お二人の転生体が産まれなければ、大筒木への反撃が出来る存在は産まれない!この星が滅ぶのですよ?」

「構わない。そんなこと、私はどうでもいい。」

 

そこにいたのは、ずっと、ずっと、泣き続けた母だった。

柱間も、マダラも、そうして、扉間やイズナだって黙り込んだ。

それは、その、女はきっと、ずっと彼らの側にいた。

 

千手の子として、うちはの子として、誇り高く戦いなさい。敵を殺しなさい。

そんな激高、幾度も聞いて。

それでも、その声の奥にある、嘆きの音をずっと知っていた。

 

子が死んだ母を知っている。泣いて、泣いて、どうしてだと嘆く女達の声。

戦場に出られる女などそう多くない。多くの女達は母になり、子を育て、そうして、見送るだけだ。

だから、彼らはずっと、その生きるか死ぬかの立ち回りにさえ入ることが出来ない。

爪弾きなのだ、彼女たちは。

 

「アシュラは、優しい子だった。兄が好きな子だった。私が、誰よりも、お前よりも、サクヤを愛していたように。あの子は、インドラと、優しい兄と共にあればそれでよかったのに。愛だと、笑わせるな。それで、あの子は他人を、お前の願いを優先し、あの子が一番に願った、インドラと共にありたいという願いをひねり潰した!お前は、あの子を世界の贄にした!あの子の唯一の幸福を、捨てさせた!」

「お前は、何をした!?忍宗だと?笑わせるな!己の子さえも、争う教えにどんな価値がある!?お前は、何も、何を・・・・」

「・・・・・あの日、インドラに纏わり付く影に気づかなかったのはわしのせいだ。だが、インドラもアシュラも、己の因果を背負って歩いた。インドラは力に溺れ、戦うことを求めた。故に、わしは、愛によって、人を束ねるアシュラに希望を託したのだ。」

インドラを、アシュラが止めてくれると。

 

その言葉に、その言葉を聞いた瞬間、イドラの脳裏に声が響く。

 

あなたが・・・・

「え?」

 

それと同時に、ぽーんと、吹っ飛ばされる感覚がした。

 

「誰でもない、あなたが、それを言うのですか?」

 

イドラの口から漏れ出た言葉に、イワナガの言葉を聞いていた皆が視線を向ける。イドラも吹っ飛ばされた感覚のままに起き上がる。そこで、気づく、

目の前には、可愛い黒い毛並みに覆われた愛らしいあんよがあった。

 

「う、兎になってるうううううううううう!?」

「は!?イドラ、お主、なにをそんなにふわふわになっとるんだ!?」

「えーん、私のせいじゃないでーす!!」

「うおっ!?」

 

イドラの頭に乗っていたアカリ(兎)が落ちる。イドラに意識が向かっている間に、イワナガの側には、イドラが、いいや、彼女の肉体を纏ったサクヤが立つ。

 

「うわああああああああん!耳と尻尾だけじゃなくて、全身色物になっちゃった!」

 

扉間が慌ててイドラ(兎)とアカリ(兎)を抱き上げる。

ハゴロモはじっと、己の目の前に立つ、二人を見た。それは、奇しくも、男の妻であった女達とそっくりで。

 

「サクヤ。」

「・・・・信じようと思いました。今回こそは、そうだと。でも、もう、いいです。私も、もう、終りたいです。」

「サクヤ様!体を返してくださいよお!」

 

えーんと、兎の姿で半泣きになっているせいでお労しさが倍増している。扉間の腕の中で、泣く兎をサクヤはうろんな瞳で見つめた。

 

「・・・・嘘つき。」

「嘘って。」

「知っているでしょう?イドラ、お前はずっと知っていたでしょう?本当は、どうなるはずだったのか。」

 

それにイドラは思わず黙り込んだ。

 

「この場にいるものなら、本当はどうだったか知っているはずだ。夢で見せただろう?柱間と、そうして、マダラの末路がどうなるはずだったのか。」

 

静かなそれに全員が、何か、喉元に刃物を突き立てられる気分だった。

 

「違うと、その夢を打ち消して、ここまで来たのでしょう?ええ、そうですね。イドラという、特異点により、運命は分岐しました。でも、たった一つの要因で、全てが決まるのなら、滅びも又容易く訪れる。」

 

ハゴロモ様、と、旦那様と、サクヤはぼたぼたと涙を流して、微笑んだ。

まるで、それこそが、己の普通であるかのようにそれは止め処なく涙を流した。

 

「信じようと思いました。でも、あなたがそう言うのなら、私は、私は、もう、全てが嫌です。もう、我慢しません。ねえ、ハゴロモ様、確かにインドラは力に溺れました。己が、人を導くのだと、傲慢な思想を持ちました。」

 

ですが、とサクヤは止め処なく涙を流して言った。

 

「でも、そうなったのは、誰のせいでしたか?」

周りはずっと、あの子に、人を導くことを求め続けたのに。

 

がらんどうの瞳が、ハゴロモに向けられた。

 

 

忍術を開発したあの子に、その責をあなたに問うたとき、あなたはなんと答えられましたか?

あなたが側に置いた、忍宗の人々は、インドラこそが跡継ぎと、ずっと責と立場を求め続けましたね。強いあの子に縋り、あの子に統べる責を求め続けた。

あの子に、インドラに、誰かの庇護者で有り続けることを求めた。だから、あの子は、そうあったのでしょう?

インドラは、誰よりも、人の愚かしさを知っていましたよ。人が振う力を作りだした己の責を取るために。

 

「あの子の、インドラはずっと他人のために生きていました。あの子は、弱さも、愚かさも、赦せなかった。でも、あの子は、たった一つだけ、慈悲への問いかけを持っていた。アシュラだけは、あの子の、凝り固まった正義感の中の柔らかさだったのに。」

 

あなたが、それを奪った!

 

それは、いつかの、母の嘆きだった。どうしようもない、母の嘆きだった。

 

イワナガは、サクヤのことを抱きしめた。

 

「すまない、サクヤ。すまない、私が、私が、少しでもあの子達を育てられていれば、そうすれば、私が、生きていれば・・・・」

「もう、もう、嫌!信じたかったけれど、もう、嫌!きっと、もう、何も変わらない!」

 

さめざめと泣くサクヤを抱きしめて、イワナガは、燃えるような赤い瞳でハゴロモを睨んだ。

 

「お前は、止められたのだ!インドラが、今際の際に会いに来たとき、どうして、殺しに来たのだと言った?会いに来てくれたのかと、父として言葉をかけてくれなかった?死した我らには出来なかったそれを。」

「どうして、アシュラに頼むとなどと、生まれ変わってまで殺し合うことを認めてしまったのですか?あの子が、本当に、それを願うとでも?兄と、殺し合うことを認めると思われたのですか?あなたはただ、父としての責を放棄しただけ!」

 

兄弟で殺し合うことを、お前は認め、それを是とした!

 

「それだけは、それだけは、父親として、お前は許してはいけなかったのに!しないでくれと、縋ることも出来たのに!それを、我らは、死した我らがどんな思いで見つめていたと思う?」

「あなたは嘆いてさえくれなかった!己が息子の末路さえ、殺し合うことを認めた時点で、乱世が来ることは決まってた!インドラの言うとおりに。」

 

赤い瞳と、そうして、いつの間にか黒から変わり果てた青い瞳、未来を見通す瞳がハゴロモと、そうして、息子達のなれの果てを見つめた。

 

「アシュラは、ずっと嘆いた。けれど、己の力を知っていたが故に、悲しむことしかできなかった。」

「インドラは、ずっと怒っていた。誰も、あの子の弱さを許してくれなかった。」

 

だから、と。

二人の母は言った。

 

「私はずっと、怒り続けていた。あの子はけして、自分の一番の幸福を許さない世界に怒らなかった。」

「私は、ずっと、嘆き続けていた。あの子はけして、己の弱さを許さなかった世界に涙を流さなかったから。」

 

それ故に、と。

 

「もう、滅ぶも、栄えるも好きにしてくれ。私たちはどうでもいい。この星の末も。」

「もう、私たちの子どもを、インドラとアシュラを、返してください。」

 

それは、いつかに、殺し合う子どもたちの末路を見続けた女達の、幾星霜の果ての嘆きと怒りだった。

 

 

 

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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