千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。

描写不足があったかと猛省、あと二、三話で終ります。頑張るので、感想いただけと大変嬉しいです。


マスコット的ではあるが、それはそれとして悪名も広がっている

 

 

目の前にあるのは、ちんまりとした、黒い手足。ふかふかの毛並みに覆われた兎の足。ぐっと低くなった視線に、全体的に可動部がひどく小さくなった。というか、四足歩行なのにそこまで違和感はない。

 

「えーん!猫耳の次は兎になるって色物が極み過ぎませんか!?」

「黙ってろ、イドラ!」

 

最悪な日だ、もう、色々と最悪だ。何が悲しくて、自分の前世に体を乗っ取られかけて、それと同時に兎になっているのだ。

もふもふの魅力的なフォルムは自分でなければ、きっと嬉しくて抱っこしたがったろうが、自分がもふもふになっても嬉しくない。

うちはイドラこと、千手イドラは夫である千手扉間の後頭部に捕まり、嘆いている。後頭部に垂れ耳の黒兎をひっつけた扉間はそこそこファンシーな見た目をしていた。もう、容赦なく、ぶん回されながらそんな彼らが何をしているかというと。

 

ひゅんと、鎖がイドラの頭上をかすっていく。

 

「今、かすりましたよね!?」

「イドラ、あまり、髪を引っ張るな!」

 

現在、扉間たちは、イワナガの背後から伸びる、無数の鎖から逃げていた。

 

 

二人の体が乗っ取られた際、千手柱間やうちはマダラ、そうして、うちはイズナに、扉間は動いた。元々の体がアカリの物ならば、そこまで手荒には出来ない。

うずまきらしく、元々頑丈であるが、戦闘の才はないとそこまで鍛えていない女の体をどこまで扱って良いのかわからない。けれど、その程度ならば拘束すること自体は難しくはないはずだ。

どちらかというと、厄介なのはイドラの方だ。普段から、散々に駄犬だとか、今は兎ではあるが、千手との戦場に出ても、柱間の木遁から普通に生還する女の方がずっと厄介だと思っていた。

だというのにだ、何故か、そのアカリの体をしたイワナガ、くそ強い。

 

まるで、海かというような量の鎖は絡め取られればチャクラが練れなくなるという厄介さ。ならばと鎖をかいくぐり、フィジカルでたたきのめそうとすると、何故かアカリ本人よりも明らかにパワーアップしているのだ。

 

「姉上、こんなに強かったか!?」

「楔で、おそらく!イワナガ姫の、肉体や能力が近づいて!色々と、高まっておられるのかと!」

 

柱間達が鎖に捕まりそうになる度に分裂をしては、庇っている月兎が叫ぶ。

 

「はっはっはっはっは!当たり前だ!この方は、元より、この星の危機として認識された、大筒木カグヤから逃げ続けた方であり、六道仙人と呼ばれたハゴロモと戦った存在だ!」

 

頭上でわめく大鴉も面倒だ。頭上からデカい火の玉が降ってくるのだ。

 

「ペン吉、まじで後で覚えとけよ!!」

 

イズナの怒鳴り声が聞こえる。

 

「だからって、俺と柱間相手にして普通にいなせるのは規格外過ぎるだろう!?」

「・・・・イワナガは、元々、肉体面ではわしとそう変わらんかった!」

「うえええええええええ!?六道仙人様と!?ためで!?」

「でなければ、サクヤを娶るとき、苦労しなかった!自分以上に強くない男に妹はやらんと!当時は、まだ、肉体だけだったが!にしても、この封印術の籠った鎖は厄介すぎる!!」

(この鎖は厄介だが、それ以上に面倒なのが!)

 

びゅんびゅんと、鎖がまるで蛇のように襲いかかるのを皆が必死に逃げる。

マダラとイズナは、写輪眼で。柱間は木遁を盾に、扉間は使える術をフルで使って。

イドラは、現実逃避のようにドッジボールで最後に残った人間並みの必死さを思い出す。

 

(・・・・そう言えば、アカリ様は。)

 

隣にいたマダラに扉間が放り投げられたアカリを心配してイドラはそちらのほうを向いた。そこには、確かにアカリはいた。

うちは特有の襟元に非常に幸せそうな顔をしている、赤茶の毛並みの兎がいた。

なんとなく、これはこれでと言ってそうな感じがして、イドラは見なかったことにした。

扉間の視線の先には、イワナガの後ろに隠れた、非力そうな女。扉間にとって厄介なのはそちらだった。

それというのも。

 

「姉様、二時の方向、三秒後。」

 

その言葉と同時に、その方向の通りにイワナガが鎖を振えば、予言通り攻撃をかいくぐったマダラが現れる。

 

「くそ!」

「精度の高すぎる未来視など!」

「あの力と、イワナガの腕力で母上から追手を躱し続けたからなあ。さすがは・・・」

「暢気に言ってる場合ですか!?いや、その前に、あなたはもう少し抵抗できないのですか?」

「ハゴロモ様は、すでにイワナガ姫に能力を諸諸封じられているのですよ!元々、封印術自体、イワナガ様の方が上手なので!」

「なるほど、期待するなと。」

 

扉間の得意な奇襲に任せた戦いは、未来視の出来るサクヤに潰されていく。

今は、イワナガが戦闘へのブランクがあることとサクヤを庇うために隙をうかがいつつ、避けることが出来ているが。

 

「というか、大筒木でもないのに、この方々なんで強いんですかあああああ!!」

「そりゃあ、大筒木への対策のための血族、氏族の母になるための方々なので!現在、尾獣たちからのチャクラを供給しているのも!ありますが!この星からの、後ろ盾みたい!なのも!あるので!」

「つまりか、この星の理自体が、この女の味方をしていると!?」

「じゃなくちゃ、あなた方相手にここまで圧倒できませんよ!!」

 

そんな月兎の言葉を聞きながら、扉間はほぞを噛む。

避けられないわけではない。けれど、決定打に欠け、おまけに相手は自分たちの一歩先で行動できるのだ。

 

(大体、兄者とマダラの術さえも、鎖で押し込めるような奴にどうしろと!?)

 

殺す気でいければいいのだが、それはそれとして二人の肉対面のことを考えると手荒なことをするのは。

それこそ、もう、肉体は諦めて兎のままで生きていくのならば良いのだろうが。

 

「なんか不穏なこと考えてませんか?」

 

扉間は己の髪を掴む、ふわふわで、もう、両手で掴めるほどの兎の存在を感じる。

自分の懐に入れても収まりは良い。

それはそれでいいのでは?

もう、方々でトラブル起させないという方面で籠にでも入れて連れて歩くのは。

 

「不穏さしか感じない!扉間様!目が怖いです!」

「・・・・なんでもない。」

「嘘だあああああああ!!」

 

遠くでぎゃーすかと扉間たちが言っているとき、改めて柱間が口を開く。

 

「イワナガ姫、おやめいただきたい!私も、そうして、マダラもあなた方の息子ではない!」

「貴様らがどう思っていようと、こちらには関係の無いこと!妹と、妻の体を返して貰おう!」

「・・・・先ほども言ったはずだ!我らの目的は、貴様らの中にあるチャクラだ!」

 

こらえるような顔をしたイワナガのそれに、ハゴロモが口を開く。

 

「本当にそうか?イワナガよ、ならば何故、千手とうちはの諍いに心を痛める?彼らは確かにインドラやアシュラたちが続いた先だ。けれど、彼らは彼らなりの選択を、そうして、願いを持っているのだ。ならば、何をそこまで嘆く?」

「ならば、どうしてお前は嘆かない。どうして、お前は、ああ、何故!」

 

荒れ狂う嵐のような声がする。イワナガの、声がする。けれど、イドラはそれよりも、黙り込んでじっとマダラのことを見つめるサクヤの方が気になった。

黙り込んで、じっと、自分の顔で、目で、その青い目でぼんやりとマダラのことを見つめている。

 

(あの目は・・・・)

 

そんなことを考えていたイドラの手元は緩んだ。

 

「あ・・・・」

 

ぽーんと、イドラはそのまま鎖の海に飛んでいく。

 

((((イ、イドラ!?))))

「イドラ!?」

「うわあああああああああああ!?」

 

イドラの悲鳴が響き渡り、そうして、彼女は地面に叩きつけられる。ぽーんと、黒い毛玉が地面に転がった。

急いで扉間の元に返ろうとするが、彼自身が動いているのと、そうしてイドラの手足が短すぎてどれだけ手足を動かしてもまったく追いつかない。

そうして、襲いかかる鎖の波。

 

あー、これは死にましたわ。

 

もう、そんな覚悟を決めるような光景で、イドラは茫然と迫る鎖を見つめた。もう、半泣きで、諦めの境地だった。が、その時。

がきんと、何かが鎖をはじく。

 

「え?」

「兎!?」

「ヒカク!?」

 

イドラが驚きでそう声を上げた先には彼女にとってなじみ深いうちはヒカクがいた。

 

「うさ、いや、イドラ様の声が!?」

「イドラですよ!色々あって兎になっちゃってますけど!」

 

そんな会話をしていると、また、鎖が襲ってくる。それにヒカクはイドラを抱えてその場から飛んだ。

 

「兎!?」

「ヒカク殿、なんで兎なんて!?」

「違います、イドラです!」

「え、イドラ様!?」

「どうしたんですか、猫耳の次は、とうとう扉間様に兎にされたんですか?」

「警戒のための耳が、垂れてて。兎になってまで警戒心がないなんて。」

 

周りを見ると、何故か、千手とうちはの人間が十数人ほど、結構な数で立っていた。

 

「ヒカク、何故、お前が!?」

「皆、どうしてここに?」

 

そんなことを言っていると、一旦は距離を取るためにか、イワナガたちから離れるためにイドラ達の側まで退いた。

 

「ちょ、勝手に何してるの?」

「お前達、どうしてここにいる!?」

「申し訳ありません!」

 

そこで口を開いたのは、イドラ達と同様に夢に飲まれた千手の人間だ。

 

「待機、ということでしたが、さすがに心配になり。何よりも、里の警備をしていた一族のものが、こちらの方向が騒がしいと言いまして。」

「・・・まあ、これだけ騒いでいればな。」

「は、アカリ様!?」

「兎から、アカリ様の声が!」

「うっわ、アカリ様まで兎に!?」

「まさか、うちはの衣装の襟に入るために?」

「気持ちはわかりますが、さすがにそれは・・・・」

「どういう意味だ、貴様ら?」

 

兎の姿での威嚇は、ぱっと身は大変に可愛らしいのに、しつけの行き届いた千手の人間達は一斉に姿勢を正して首を振る。

 

(しみついてんなあ。)

 

非力なはずの女の身で、うちはに匹敵する千手の男達に恐れられている女とは何なのだろうか?

そんなことを考えるが、マダラは思わずえりの中を見た。ふわふわとしたそれが首元でもぞもぞ動くとくすぐったい。

そうすると、赤茶の兎はくりくりとした瞳で見上げてくる。

マダラは無言で、首元の兎を撫でた。そうすると、くりくりとした目をとろんとさせる。

 

「・・・・もう、いっそ、このままの方がいいのでは。」

「柱間?」

「何でも無い!!」

 

がたがたと震える兄を無視して扉間が千手とうちはの人間に口を開く。

 

「勝手に里の外に出るなど!他の氏族からも疑われるだろう!?」

「里の外が騒がしいのは、見張りをしていたうちはだけで共有しています。ただ、それに千手とうちはの人間でどうすればいいかと話し合いまして。夢で起こったことを共有し、ひとまず様子だけを見に。他の氏族に関しましては・・・・」

 

千手にうちはの方々、こんな時間に、どうかされましたか?

あー、その。

何か、ありましたか?

実は、イドラ様が、その。

あ。それは、何というか、お疲れ様です。何か、ありましたらすぐに言ってください。

ええ、お力を借りるかも知れませんが。

はい、お願いします。イドラ様に何かあれば、妻や母たちから色々言われますし。それに、あの方はいつも大変でしょうから。

お気遣い、ありがとうございます。

 

「というような感じでイドラ様の話を出したらすぐに納得されました。追手の気配もありません。」

「待ってください、私の悪名、広がりすぎでは!?」

「いえ、皮肉というよりは本気で心配されてましたよ?」

「それはそれであまりにも恥では?」

「出産で騒ぎすぎて、もう少し静かにしてくれと言われてから、そこそこ色物扱いは受けてますよ。」

「すでに終ってた、私の評価!?」

「姉さんの名前を出した瞬間、理解をされてる時点でもう色々終ってるよって、やば!?」

 

のんびりとそんなことを話していてたとき、また、鎖がその場にいた人間を襲う。

 

「うわああああああああ!」

「うちはの者は千手の人間を助けろ!千手の者は全力で避けろ!」

「待ってください!この鎖は何ですか!?というか、あの、キレてるアカリ様?とイドラ様は!?」

「夢で言ってた、千手とうちはの先祖に姉さん達の体を乗っ取られてんの!」

「なんで襲われてるんですか!?」

「柱間と兄さんの命を狙ってんだよ!」

「何でですか!?」

「落ち着いたら教えてやる!」

 

それと同時に、千手とうちはの人間がペアになって鎖の波を避ける。絶対にあり得ない千手とうちはの共闘だ。そうそうない。

 

「月兎、なんとかなりませんか?」

「・・・・お二人の体の主導権を取り返せば。そのためにはまず、お二人に近づかないと。」

「未来視持ちの人間の裏をかけと?」

「おまけに、頭上から火の玉降ってくるんですが!?」

「・・・・サクヤ姫の未来視はどれほどまで感知できる?」

「数秒先から、いくらでも。ただ、そこまで多くの情報を処理することは。」

 

その言葉に扉間は少し考えた後、兄の元まで飛雷神の術で飛ぶ。

 

「うおっ!?扉間よ、どうした!?」

「兄者、考えがある。」

「おお、なんだ、乗った!」

 

 

 

 

「・・・・姉様。」

「もう少し待て、サクヤ。必ず、インドラとアシュラのチャクラだけは、あれだけは返して貰う。」

 

その言葉にサクヤは少しだけうつむき、そうして、口を開く。

 

「姉様、ねえ、手加減してる?」

「・・・・・そんなこと、していない。」

 

サクヤのそれに、イワナガの鎖がブルブルと震える。それに、サクヤは目線を下に向けた。

 

「そう。」

 

掠れた声でそう言って、その時、サクヤの青い瞳が淡く輝く。青の中に浮んだ、三重になった白い円がぐるぐると回り出す。

 

「・・・・姉様、柱間とマダラが。」

「どちらからだ?」

「ううん。」

 

サクヤの瞳がぐると回る。

 

「上。」

 

その声と同時に、サクヤ達の目の前に紫の鎧を纏った仏が現れる。

 

 

 

「・・・・・須佐能乎を纏った真数千手だと!?」

 

八咫烏は目を見開いた。そうして、一気に下降する。

 

「くそが!肉体の安全から考えて、それは避けると思っていたが!覚悟を決めたか!」

 

さすがはイワナガというべきか、その鎖は確実に真数千手を絡め取る。けれど、どれほどそれが持つかわからない。

その技が続いている間は、確実に鎖で捕らえる範囲内が少なくなる。二人が肉薄されていることを理解して、八咫烏が下降する。

 

「それを許すと思いますか!?」

 

けれど、高度を下げた瞬間、何かが自分に飛びついてくる。それは、自分と同じ、見上げるような大きさの、兎だ。

 

「月兎、貴様!」

「あなたの相手は私です!」

 

そのまま兎は鴉の体を抱えて、ぐるんと回転し、人間達から遠く離れた場所に着地する。

 

「離せ、月兎!」

「離すと思いますか!八咫烏よ!太陽と焔を司る、導きの鳥!お前こそ、どうしてこのようなことを!我らが生み出された意味を忘れたか!」

「忘れなどするものか、月兎!月と大地を司る、繁栄の獣!我らは産まれた頃から、本能のように、多くを知っていた!大筒木のことも、それを打ち倒すためのこの星からの反撃たる種族が産まれるまでの守護、それこそが我らの使命!」

「ならば、何故、イワナガ姫に加担する!」

「我は貴様とは違う!貴様こそ、何故、イワナガ姫と、そうして、サクヤ姫の心を無視できる!」

「インドラ様とアシュラ様、お二人からなった血脈は確かに続いた!それを滅ぼすことこそ、彼の人たちを真の意味で傷つけるでしょう!あなたとて、わかっているでしょう!」

 

それに、ばさりと、鴉は暴れる。

 

「月兎よ、我はお前よりも早くに封印から逃れた。故に、わかっているのだ。月兎よ、あの方々の魂は特殊だ。故に、どこにも帰れず、至れない。故に、お二人は転生した魂の牢獄で、ただ、いつかに現れる千手とうちはの混血児が現れるまで見つめていたのだ。」

 

誰と話すことも、ただ、ただ、見つめていたのだ。一人で嘆き、一人で苦しみ、死を見つめ続けた二人の女。

 

「誰とも接触できず、牢獄の中で、愛した者たちの形見が死に続けるのを見た二人は、真の意味で、まともであるとお前が思っているのか?」

「・・・それでも。」

 

月兎は八咫烏に覆い被さる。

 

「生きたいと願う者の邪魔をする道理などあるはずがない!」

私は繁栄の獣なのだから!

 

鴉に噛みついた、その視界の隅で、うちはの目に導かれた千手の忍が、イワナガたちに迫る。

 

相手は、肉体のことを考えて本気で来るとは考えていないはずだ。

 

扉間の言葉を思い出す。

 

それを逆手に取る。兄者とマダラが本気を出せば、そちらに出力は向くはずだ。そうして、未来視が多くの、事象ではなく、人間の行動まで細かく見ているのなら。この人数の未来を全て見ることは出来ない。

 

扉間と、イズナの懐から、黒と赤茶の毛玉が飛び出すのが見える。

 

大丈夫ですか、イドラ様。確かに、お二人が直接的に触れれば一旦は肉体に戻れるでしょう。ですが、主導権を取れなければ、今度こそ。

 

大丈夫です!必ず、体を返して貰います!だって。

 

その母は、にっこりと兎の姿でもわかるような笑みを浮かべた。

 

「広間におっぱいあげないといけないので!」

 

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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