もうすぐ、終るので、頑張ります。感想いただけましたらうれしいです。
どぶんと水に沈むような感覚がした。それに、うちはイドラこと、千手イドラは周りを見回した。
ああ、こういう感じかと、イドラは周りを見回した。
イドラのことを追い出すほど体を掌握しているのなら、それ相応の深層心理に到達しないといけないといわれてはいた。
なんだか、夜の水の中にいるような気分になる。ゆっくりと暗い、底に沈んでいく。
いいですか!絶対に勝つ!同情も、哀れみも持ってはいけません!同調とはもっとも忌避すべきものなのですから。
そうして、降り立ったのはイドラが最初に眠らされた時に落ちた、サクヤ姫の部屋だった。
そこには、変わらないままのサクヤがいた。
彼女はぼんやりと、そこにいた。イドラに特別反応することもない。ただ、ただ、そこにいて、虚空を見つめている。
「サクヤ姫?あの、私の体を返してもらいに来ました!」
ふんすと鼻息を荒くしたイドラにサクヤは口を開く。
「本当に、いいのですか?」
「・・・はい、息子がおります。まだ、乳を欲しがるほどに幼い息子がいるのです。争った氏族の血が混ざった、夜明けを告げるわが息子が。」
サクヤはそれにイドラの方を見た。涙の跡が残った、まるで遠い昔に遠征で見た、夜の海のような瞳が自分を見ていた。
「・・・・あなたの存在は、まさしく奇跡。私たちは意識はあれど、しょせんは死人。何もできぬまま、傍観者でしかなかった。」
サクヤは天井を見上げた。
「あなたの代になって、マダラの末路を知りました。その悲劇と憎悪の果てに、訪れる結末も。けれど、私はそれが許せなかった。」
まるで、あの子を贄にしたような結末を、赦せなかった。
サクヤはイドラに手を差し出した。
「そうして、奇跡は相成った。今まで、けして、訪れなかった奇跡。どれほど叫んでも届きはしなかった未来視の結果はどんな形であれ届いた。あなたは結末を変えてくれた。変えることはできた。ゼツさえも、われらが義母様の企みさえも砕いてくれた!」
「それでも、やめられないんですか?」
「・・・・イドラ、過去とは寂しがりなのですよ。」
置いて行かれることを赦せないように。
サクヤはそれに笑って、涙を流しながら、淡く微笑んだ。
その言葉にイドラはふんすと息を吐いた。
わかっていたことだったからだ。自分の言葉一つで、自分の願い一つで、諦めきれるのならばとっくにしていたはずだ。
けれど、引くわけにはいかないのだ。
だからこそ、イドラはぴょんとサクヤに飛びついた。驚いたサクヤの顔が目に飛び込んでくる。
月兎から聞いた、深層心理への入り口。それは、サクヤの体に触れること。
それと同時に、どぼんとまた水に沈むような感覚がした。
私の世界は、熱にうなされながら見つめる部屋の天井でした。
未来視は私にとって負担であったそうで、私が自分で健康だなんて思ったことは片手で足りるほどでした。
・・・・それを不幸とは思いませんでした。
それが当たり前でしたので。それは日常でしたので。
ずっと、姉様と、二人で生きていくのだと思っていました。
ハゴロモ様は、私の王子様でした。
私の未来視に興味を持たれてこられて、少しだけ話をして。
・・・・どうして、好きになったんでしょうか?
ただ、好きで。
幸せでした!
好きな人と結婚して、子どもが、インドラがお腹に来てくれて。
幸せだった。
・・・・子を、諦めろと言われていたんです。私、丈夫では無かった物で。死ぬことだって、わかっていて。
それでも、それ以上に、お腹の中で育っていく我が子はとても愛おしかった。
私の命一つ、いくらでも捧げてもいいと、本当に思っていて。
苦しんで、痛くて、それでも産んだインドラを抱っこして。
可愛かったなあ。
インドラ、私似だったんですよ。でも、髪の色はハゴロモ様に似て。可愛いなあと、思って。
でも、その時、私、気づいたんです。
インドラを抱っこする腕はどんどん重くなって、体も起すことも出来なくて、意識はもののすぐに薄れていく感じがして。
死ぬんだと、わかっていたのに。
赤ん坊を産むようなことに耐えられる体ではなかったのに。
わかっていて、でも、好きな人の赤ちゃん、産みたくて。そんなこと、かなわないって思っていたから。
命くらい、いくらでも、それぐらい、きっと、捧げられると思ったのに。
死にたくないって、思ってしまった。
こんなに、いとおしいのに、こんなに、弱いのに。
私は、この子に、何もしてやれないまま死ぬんだと、そう理解したとき。
死にたくないと、私、泣きじゃくってしまって。
この子が、見るものも、触れるものも、笑う瞬間も、もう、二度と、抱きしめてやれないと分かった瞬間、どうしようもなく未練を、感じてしまった!
いやだと、泣きじゃくって、産婆をしてくれた姉様に追いすがって、死にたくないと私はずっと、泣いたんです。
「・・・・姉様に、最後に、頼むと。幸せに、なってと、インドラに私は願ったんです。」
イドラはぼんやりと、一人の女が己が生んだ子に、追いすがって死にたくないと泣いているのを見た。
そうして、女がこと切れた。赤毛の女が、わかったと、幾度も、幾度も、叫ぶのを見た。
それにイドラはまるで、呪いのような声に聞こえた。
きっと、幸運であった。
死んだ後も、私は意識があって、ずっと、インドラの傍であの子のことを見ていた。
・・・・本来なら、めぐるのはチャクラで意識自体は消え失せるはずだったのに。私はあまりにも思いが強すぎて。自我を保ったままであったと後に月兎に聞いた。
幸せでした。
姉様は、とても謝ってくれました。最後まで、育てると、約束したのにと。
よかったのです、仕方がないことがあって、どうしようもないことがあると、己の死で理解していたから。
姉様と、ハゴロモ様が婚姻したのは複雑だったけれど。それでも、姉妹で嫁ぐことも珍しいことでもなかったのだから。
・・・インドラを、抱きしめることができなくて、言葉は届かなくて。
けれど、死しておのが息子を見守ることができるのだから、私は幸運だった。
そう、思っていた。
・・・・・どこで、間違えたのだろうか。
どこかで、間違えた。
ゼツという存在だけで、あの子が道を踏み違えたわけでもなかった。
ハゴロモ様に選ばれなかっただけで、あの子が憎悪にまみれたわけでもなくて。
アシュラと仲たがいしたことが、インドラのすべてを否定するわけではなくて。
周囲からの期待で、あの子のすべてが決まったわけでもなくて。
多くの何かが、少しずつ、束ねられて、あの子は力を求めて。
己を慕ってくれる誰かさえも、力のための薪にして。
そうして、あの子の中で、唯一だった愛さえも切り捨てたとき、間違えたのだと、あの子は間違えてしまったと、帰れないのだと理解した。
やめてと幾度も叫んで、もういいとすがって、すべてが無駄だった。
当たり前のこと。
その声と、すがりつく体を、私はとっくに放り出していた。
・・・・あの子が死んで、私はほっとした。
それでも、この子の生はこれで最後だと、そう、思っていたのに。
私は、そのままだった。
いいえ、それこそが正しかった。私の役目は、私の魂の役目は、アシュラとインドラの末が交わるとき、そのチャクラを渡すことだった。
だから、その時が来るまで、幾度も、幾度も、生まれ変わって。
ずっと、見ていた。すべてを。
「・・・・変わらない。ずっと、全てが変わらなくて。血の匂いも、臓物の色も、すっかりなじんでしまった。」
「・・・・サクヤ様は。」
イドラの言葉に、サクヤは、流れる涙をぬぐいもせずに、不思議そうに首を傾げた。
「どうして、そんなにもインドラ様のチャクラに執着されるのですか?」
「・・・・私たちは、ここで終わりです。楔の術はあいなり、私はようやくこの世から消える。いいえ、あなたに混ざるのか、それとも、成仏、というのが正しいのか。少なくとも、いえるのは、ここでサクヤというそれは終わるのなら。かまわない。」
ただ、未練なのだと、それは言った。
「これ以上、あの子が戦い続けてほしくない。戦乱の世は、一時だけ収まっても。戦は終わらず、大筒木が来れば、また戦いに身を投じる。それが、耐えられない。」
「・・・・兄さまは、インドラ様ではありません。」
それにサクヤは否と、そう言おうとしたのだろう。
けれど、すぐに、そんなことを言っても意味がない、いいや、ここまで来たのだからとサクヤは口を開く。
淡く、口に笑みを浮かべて。
「救われたいと、思ってしまった。」
吐き出されたそれは、悲哀の色に満ちていた。
インドラは一人で死んだ。
子もいて、妻もいて、けれど、どこか一人で。
インドラが生まれ変わるたびに、私は、その近くで、母や妹、そんな誰かの中であの子が生まれ変わるたびに、その人生を見ていた。
インドラは、あの子だけで。
けれど、救われたかった。
どうしても、あの子の面影を転生体に重ねずにはいられなかった。
救われたかった。
あの子は、インドラは、寂しく死んだ。それでも、生まれ変わった先で、幸せに生きたからと。
そうしたら、救われる気がした。そうしたら、少しだけ、散々に泣いて、散々に死んでいった誰かのことを、飲み込める気がした。
兄弟と仲たがいせず、誰かを愛し、何かをいつくしんで、穏やかに、一度でも、死んでくれれば。
アシュラと、仲直りをしてくれれば。
それでも、この結末に、たどり着けたから、と、それだけを。
全てが、脆い夢だった。
今度こそはと、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは、今度こそは。
思って、思って、思って、そう、信じて。
信じて、信じて、信じて、見ていることしかできなくて。それだけを、祈って、あの子のことを見ていた。
きしむ音が、耳の奥でしていた。
ぎしぎしと、きしむ音がして。
いつだったか、いつかに、べきりと、折れてしまった。
積み上げられた死体の山に、心が折れてしまった。
愛していた、愛していた、愛していた、何もできないまま、ただ、産んだだけの母親だったけれど、それでも、愛していた。
抱きしめてあげたくて、話をしてやりたくて、見ていることしか出来なかった。
心が折れて、もう、いいと。もう、何も見たくないと思っても、いやでもずっと見ることしかできなかった。
まただめだったと思うたびに、軋んで、軋んで、軋んで、軋んで。
もう、何人目になる息子の躯を見たとき。姉の息子の亡骸を見たとき
イドラは、女の言葉を聞いた。記憶を見た。
自分が生まれ変わりだという、女を見た。ぼたぼたと、女の悲しみに連動して、涙が出てくる。
ただ、泣いて。悲しくて。
それでも、イドラはそれを見る。
軋む音がする。イドラの耳に、何かが軋む音がして。
そうして、軋んで、折れた。
べきりと、あっさりと、もう、折れてしまった。
救われたいとなんて思うこと自体がおこがましかったのだ。何もできないまま死んだ母親が、そんなことを思う方が愚かだったのだ。
いうなれば、自分は壊れているのだと、サクヤは涙を流しながら笑った。
狂うほどの時間を、誰とも話すこともできずに、ただ、愛した子の死を見つめ続けて、どこかで、何かが軋んで、折れてしまった女の成れの果て。
イドラはそれにぼたぼたと涙をこぼした。
それは、なんとなく、自分の涙ではなくて。それは、目の前の、女の涙であった。
悲しいと、苦しいと、そうして、諦観がないまぜになったそれ。
イドラは今にも、崩れ落ちて、その場でわんわんと泣きじゃくりたくなった。
それは、もう、数えるのさえもおこがましいほど、息子の死を見つめた女の悲しみだった。
だから、泣き叫んで、そのまま何もかもを放棄したかった。
イドラはただ、目の前の女のことを見る。涙でかすんだ視界の中で、自分とよく似た顔が泣きながら、仮面のように浮かべた笑みがある。
イドラはぺたぺたと、サクヤに近づいた、変わらない、部屋の風景。
近づいた、その顔をイドラは触れた。涙の跡の残る頬は湿っていた。イドラは、慰めるようにその頬を撫でた。
「でも、サクヤ様はそんなことを思っていないでしょう?兄様のことも、一族に滅んで欲しいとも思っていないでしょう?」
「何故?いいえ、いいえ、私はもう、全部どうでもいいのです。もう、散々に、疲れ果ててました。救われたいなんて思うことこそが間違いだった。ならば、もう、いい。ただ、インドラのチャクラだけは、それだけは、返して欲しいと。」
「だって、サクヤ様。サクヤ様は、私たちのことを。兄様だけじゃない、皆のことを愛してくれているでしょう?」
揺るがないそれに、サクヤはやっぱり悲しそうな顔をした。
「サクヤ様の目は、ずっと、母様みたいでした。母様みたいな目で、兄様のことも、私のことも、一族の皆のことをずっと、見ておられたじゃないですか。」
あなたはずっと、好きにしろと。
生きたければそうすればいいと言っていた。自分たちが精神世界から返るきっかけも、全て、サクヤは許していた。
ならば、と。
イドラは目の前のそれを見る。
「サクヤ様は、いったい、何を見捨てられずに、何を許せなくて、そんなことをされるのですか?」
目の前の、己と瓜二つの顔。鏡に映しだされたそれ。
ああ、わかっているのだ。
わかっているのだ。
サクヤとて、わかっているのだ。
わかっているけれど。
サクヤの脳裏には、一人の男の生涯が浮ぶ。
弟を亡くして、一人になって、理想の里のはずなのに孤独になって。
そうして、己の中の絶望と諦観を、育て上げて、道化に成り下がった息子同然の存在。
今度こそ、そうだ、今度こそは、きっと。
千手とうちはの同盟は相成った。あの子の弟と妹は、生き残り、ほら、騒がしい妻までいるから。
今度こそは、きっと、今度こそは、必ず。
あの子は、幸せに。
本当に?
幾度も裏切られて、へし折られた心がそう問いかける。
「イドラ、信じられるのか?これから、何も、悲劇も、憎悪も、何もなく、滞りなく進むと。知っているはずだ。確かに、ゼツはいなくなった。あの悲劇の立役者はいなくなった!けれど、今までの悲劇を起したのは人間だ。ならば、私は、せめて、息子だけでも戦いの枠組みから解放したいと思うことは、間違っているのか?」
自分たちが自由に動けるのは、この、楔が発動している短い期間。これで、自分たちは打ち止めだ。ならば、そうであるのなら。
せめてと、そう思う自分がいる。
それにイドラは悲しそうな顔をした。悲しそうな顔をした。
わかるのだ、わかるのだ、イドラだって女の気持ちがわかるのだ。
イドラだって、どこかで、亡くした誰かの代わりに、何かをしてやりたいと思う心はある。
何かを、どこかで重ねて、あの人は無理だった。
だから、せめて、この子はと、救われたいと思う心がどこかであって。
今度こそは、今度こそは、誰も死なないように。そう思って目の前には死体の山。
守れなくて、この子だけは、あの子に出来なかったことをやってあげたくて。
自分が彼女と同じになった時。
見ていることしか出来なくて、広間がそんな風に、ずっと戦う人生を、愛したはずの誰かと争うことしか出来ない人生を幾度も見せられて。
それで、自分は狂わないのだろうか?
それは、自分にはわからない。
けれど、狂ってしまうだろうとなと、自分でも自覚できる部分もある。
ああ、でも、だめだ。
同調してはいけないと、白い兎が悲しそうに言っていて。
何よりも、決めていたのだ。そうだ。
「サクヤ様、ごめんなさい。あなたの心はわかります。」
救われたいと思う心も、今度こそはを繰り返して折れてしまった心も。
わかるのだ。
けれど、と。イドラはサクヤを見た。
「でも、だめです。だめです。私はあなたを選べません。私は、あの日、選んでしまった。」
あの日、千手扉間に責任をおっかぶせてしまったあのときに、イドラはとっくに選んでしまった。
「私、お母さんなんです。だから、私、
・・・・サスケ。
げ、なんだよ、ヤオ。
用があるから話しかけたんでしょう?というか、あんた、また野良猫の群れに交ざって。
ああ、いいだろ?この頃見つけた穴場。
もう、中忍なんだから。いや、いいわ。それより、聞きたいことがあって探してるのよ。
何? <にゃー <にゃー
・・・あんた、恋人出来た?
あー?できるわけねーじゃん。
まあ、そうよね。そんなの私だって同じだし。
どうしたんだよ、まだ、行き遅れるって年齢でもないだろ?
うちの、母さんがね。
ああ?
例の約束、すすめるとか言ってて。
それって、あの、うちの母さんと話してた、互いに男女の子どもが産まれたら結婚させようってあれか?
それよ。
さすがに、ないだろ?
今はね。でも、長いこと恋人でもいなかったら、本当に推し進められる可能性があるわよ?
断りゃいいだろ? <にゃー <にゃー <にゃー
いいけど、正直、断りたくない自分がいるのよ。
・・・・え、お前、俺のこと好きなの? <シャー! <シャー!
あんたのことはどうもでいいのよ。もう一人の弟みたいなもんなんだから。ただ、イタチ様を、お義姉様って呼べるのはあまりにも魅力的すぎる!
・・・・お前、どうなんだよ、それ。
サスケだってどうなのよ。私と結婚したら、ナルトの兄になれるのよ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・一端持ち帰らせてくれ!
<にゃー <にゃー <にゃー <にゃー <にゃー <にゃー
そこまで長考しなくても。というか、猫がすごいわね!?
扉間は
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女の子が欲しいが、息子しか産まれない
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女の子がすぐに産まれる
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女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
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どっちでもいい