千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。


これにてイドラの責任を取って欲しい話は終りになります。
二話分ぐらいあるんですが、切りの良いところで終りたかったので一話にしてあります。

見切り発車で初めて、回収しきれなかったりするところもあるかもしれませんが、ここまで長い話を終らせられて嬉しく思います。
これからは番外編を書いていこうと思っています。 
活動報告にて、読みたい話を募集しますので何かくださると嬉しいです。純粋にどういった話が読みたいのかも知りたいので簡潔なものでもいいので下さると嬉しいです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


人の人生めちゃくちゃにした責任は取ってもらう

 

「・・・・これ、大丈夫なのか?」

 

その場には奇妙な沈黙が訪れていた。千手とうちはの人間達は円になって中心を見つめた。そこには、二人の女が気を失って倒れている。

 

「・・・・おそらく、現在主導権を争っておられるのだと思います。」

 

神妙な面持ちで月兎がそう言った。その隣には、八咫烏、もといペンギンがじたばたと動きながら、鎖に縛られている。二つとも、すでに元の大きさに戻っていた。

うちはイドラこと千手イドラの隣には千手扉間が、千手アカリことうちはアカリの隣にはうちはマダラがどこか不安そうな顔をしている。そうして、互いの兄弟の後ろに千手柱間と、うちはイズナが立っている。

頭側に、六道仙人こと、大筒木ハゴロモがいた。

 

「・・・・あ。」

 

千手の人間の一人が声を漏らした。アカリの指先がかすかに動く。それにマダラたちはアカリに声をかけようとした。けれど、それよりも先にあかりの目が見開かれ、そうして、うつ伏せになりながらもがく。

 

「千手アカリ!肉体をよこせ!」

「誰が渡すか!死人が今更になって起きてきて何様だ!」

「私の子のチャクラを返して貰うためだ!」

「私の弟に手を出すな!」

 

ジタバタと暴れるそれの口からは、それこそ、まるでアカリとイワナガそれぞれの言葉を口に出す。

 

「これは、主導権が拮抗してますね。」

 

アカリとイワナガはそのまま地面に四つん這いになり、拳を握る。

 

「私の体だ!」

 

それに柱間とマダラが慌ててアカリの体を撫でる。

 

「姉上、大丈夫か!?」

「アカリ!」

 

それに千手とうちはの人間が声をかける。

 

「アカリ様!頑張ってください!」

「自我の強さで負けるような女じゃないでしょう!?」

「帰ったら、マダラ様の神楽を見るんでしょう!?」

「アカリ様なら勝てますから!」

「こんなことで負ける玉ですか!」

「でも、若干返ってきて欲しくない感じもある!」

「あくの強さで勝てる奴なんているはずがないでしょう!」

「てめえらどさくさに紛れて罵倒した奴、覚えてろよ!」

 

アカリはそう叫びながら、己の内で暴れる前世と宣うそれに歯を食いしばった。

 

「イワナガ姫、私の妻を返していただきたい!」

「そ、そんな妻なんて。ま、まあ、事実ですが。」

 

アカリの照れ照れとしたそれに、千手の男達は戦く。

 

(すごいぞ、姉上が女の顔をしておる。)

(あんな顔も出来るのか。)

(いや、本当にあのアカリ様を妻に出来る時点で尊敬する。)

(怒らせてもマダラ様の名前出せばいけるんだから本当に救世主だよな。)

(アカリ様への最終兵器ってだけでありがてえよ。)

 

千手の男達はそっとマダラに心の内で合掌する。姉貴分の女の部分とか複雑すぎるが、それはそれとして対抗できる存在はありがたい以外の言葉がない。

 

「アカリ、いちゃついとる場合か!」

「はああああああ!?嫉妬か!良いだろう!?顔良し、優秀、おまけに優しい夫だからな!羨ましいだろう!確かに、六道仙人などもすごいが、マダラ様の方がずっといい男だ!」

 

すげえこと言ってんなあと思いはすれど、女同士の喧嘩に割って入るものではないとわかりきっているので黙り込む。それにイワナガはキレながら吐き捨てた。

 

「羨ましくなど無いわ!大体、ハゴロモの事なんてどうでも、よくはないが、意識したことなど無いわ!私が好きなのは、サクヤだけだ!妹さえいればそれでいい!あの子さえ、あの子さえ、幸せだったら、私は、それだけで、それだけで、よかったのに!」

 

唐突なそれにハゴロモがこらえるような顔をしてイワナガに話しかける。

 

「イワナガよ。」

「ハゴロモ!」

 

それにイワナガはアカリの体を起して、座り込んだままハゴロモをにらみ付けた。

 

「お前は、わしを恨んでいるか?」

 

その言葉にイワナガはひくりを顔をひくつかせた。

 

「恨む?恨むと、それはどういう意味だ?私がお前を恨んでいると。私が、何故、お前を恨んでいると?」

 

嘲笑じみたそれにハゴロモは言葉を吐いた。

 

「お前との約束を、破った。必ずや、幸せにすると。そうしてサクヤとの約束も、わしは破った。」

託された子を、幸せに、わしは出来なかった。

 

その言葉にイワナガは憤怒の表情を浮かべた。そうして、喉の奥から絞り出すような、冷たい声を吐き出した。

 

「そうか、お前は、そう思うのか。それこそが、私の怒りだと。お前は、どうして・・・」

「面倒な!いい加減にしろ!」

 

アカリが叫ぶ。

 

「あんた、いい加減に不満があるならさっさと言え!散々、湿度の高い記憶見せられてこっちだって辟易してるわ!」

「はああああああああ!?勝手に見といて何を言う!?」

「旦那に怒ってるなら素直に喧嘩しなさい!報われて欲しかった子がいないなら、旦那殴ってすっきりするしかないだろうが!」

「それで、それで収めろというのか!?私の息子は、死んだのだ。死んで。」

「・・・・は。」

 

そんなことを言っているとき、隣で横たわっているイドラが口を開いた。それに扉間がイドラのことを抱き上げる。

 

「イドラ?」

 

ゆっくりと眼を覚ましたそれは、太陽のような女からはほど遠く、静かな目をしていた。そうして、扉間から視線をそらし、赤毛の女と、ハゴロモの方を見た。

 

「イワナガ様。」

「・・・・イドラか。ならば、サクヤは。」

「イワナガ様にお聞きしたいことがあります。イワナガ様は、本当は怒っておられないのでしょう?」

 

その言葉にイワナガは何をと、妹によく似た女を見た。

 

「私は、憎い。全てが、憎い。だから、せめて、返して貰うのだ!あの子の、形見を、それだけを。ただ。」

「・・・サクヤ様が持っておいででした。」

 

その言葉に、千手とうちはの円を中心にぼんやりとした、強いて言うのなら火の玉と言えるものが現れ始める。

 

「なんだ、これは!?」

 

戦いの姿勢を取る前にその火の玉は次々に人の姿に変わっていく。それは、幼子から、少ないが老人まで様々で。

その中で、千手の、門番と呼ばれている青年は目を見開いた。何故って、それはその人影の中に遠い昔に戦死したはずの身内がいたのだ。

そうして、他の人間達からもどんどん声が上がっていく。

 

「伯父上!」

「じいちゃん!」

「従兄さん!?」

 

ぼんやりと、幽鬼のような彼らはどこか寂しそうで、けれど、静かに微笑んでいた。

 

「ずっと、拾い続けていたと。死んで、無念で、悲しみと苦しみに染みついたチャクラをあなたは。」

「チャクラ、これがか!?」

「・・・・精神のチャクラには、当人の感情が残ることがある。イワナガよ。お前は、千手とうちはの人間達が死ぬ度に、それを拾っていたのか?」

「・・・・・当たり前だ!」

 

イワナガは拳をキツく握りしめた。

 

「それでも、血は薄くなれど全てが愛しい末の子どもたちだ!だが、誰も覚えていてはくれない。永遠はない!ならば、不憫だ。」

それが忘れられていくのは、あまりにも、不憫だろう?

 

「・・・・サクヤ様が、言われていました。ずっと、ずっと、そうやって置き捨てられた記憶と共にあって。それを拾って。消えることさえも不憫だと泣いたのだと。」

 

イドラはそっと、その赤い髪を撫でた。

あんまりにも、悲しみと、苦しみばかりを背負って、そうしてアシュラの転生者のことを見つめていたために、どこかで歪んでしまったのだと。

それに、一人の子どもがそっと近づいてきた。

それは、黒い髪をした、うちはらしい顔立ちの少年だ。それは少しだけ透けた体でそっとイワナガに微笑んだ。

 

「・・・・イワナガ姫。」

「・・・・安心しなさい。必ず、目的は。そうしたら、一緒に眠ろう。」

亡くしてしまったがゆえの穴は塞がらない。代わりになるかも知れないことはあって、代替えが存在しない穴は存在する。

死んでしまった者は、二度と生き返られない。手からこぼれ落ちたそれは、変えられない。

 

そこでふと、柱間は己の手に触れる感覚を覚えた。

 

「・・・板間?」

 

そこには、少しだけ透けた、死んだはずの弟が淡く微笑んでいた。

それに扉間も己の手に触れる感覚があった。そうだ、そこには、自分によく似た、三男坊がいて。

 

「ミヨウ!?」

「トガク兄さん?」

 

そうして、マダラの隣にはイドラによく似た少年が、そうして、イズナの隣には父親似の少年が立っている。

それを皮切りに、千手とうちはの人間達の隣にも、いつかに、いなくなった誰かが立っていた。

 

そうして、耳に、悲鳴が飛び込んでくる。

 

死にたくない!

 

そうだ、それは、怨嗟の声だった。

 

死にたくない!怖いよ!嫌だ、嫌だ、兄さん!父上!いやだ、怖いよ!あああああああ、憎い!殺してやる!

千手/うちは!殺してやる!

 

「止めてくれ!」

 

誰かが叫ぶ。

それは自分たちが蓋をした、憎しみで。

 

「恨んでいるのか?」

「お前達は、この同盟を、認めてなんぞいなくて。」

 

柱間とマダラのそれに皆、首を振った。それと同時に頭に、何かが流れ込んでくる。

鴉が、自分を運んでいく。その先には、赤い髪の、アカリによく似た顔が一人。

 

「・・・・憎いか、悲しいか、苦しいか。そうか、そうか。そうだろう。救ってやることは出来ん。だが、子守歌ぐらいは歌ってやろう。」

 

優しかったのだ。その人は、消えていくしかない自分たちを拾って、抱いていてくれた。

忘れられるのはあまりにも不憫だと。

 

「でも、歪んでしまった。ずっと、俺たちの悲しい、苦しいを聞き続けたから。だから、歪んで、何も信じられないと、そうなってしまった。」

「何を言っている。私は、ただ、憎いだけだ。」

「いいえ、違う。あなたは優しかった。俺たちの悲しみや憎しみさえも、消えることは哀れだと抱えてくれた。でも、もういいんです。」

 

それはちらりと、イズナの方を見た。

 

「・・・・俺たちは運命にはなれなかったし。そうして、結局、兄さん達の憎しみの理由になってしまった。でも、もういい。」

それでも、愛されていたから。自分が死んでも、あの人は生きてくれたから。

 

「それだけで、よかったんだって思い出した。」

 

少年の言葉にそれぞれの隣にいた彼らはにっこりと微笑んだ。

 

「板間、瓦間!お前達は・・・・」

「トガク、ミヨウ!」

 

柱間に扉間、マダラとイズナは兄弟の姿をしたそれに追いすがる。けれど、彼らは淡く笑ったまま、手を振った。互いに手を繋いできゃらきゃらと笑いながら、少年の方に向き直った。

イズナはそれに追いかけようとするが、マダラがそれを押しとどめる。

 

「・・・・・彼岸に行った時は、土産話を用意していく。」

 

言いたいことならば多くあったのに、何故か、そんなことを言った。もっと、もっと、あったのに。

恨んでいないか、憎くないか、自分たちを、千手と同盟を組んだ自分たちを。

けれど、それ以上に思ったのだ。

優しい弟たちは、きっと、そんなことなんて言わないから。

だから、そんなことを言ってしまった。

イズナはそれに顔を歪め、それでもと頷いた。

 

「そうだね、たくさん、お土産話を用意していくから。」

 

それに、二人の少年はこくりと頷いた。微笑んで頷いてくれた。

 

「今度は、この里では、お前達のようなことがないように。必ず、そんなことなどないようにするからな!」

 

柱間のそれに、瓦間と板間は可笑しそうに笑った。そうして、わかっているよと言うように頷いた。

扉間はそれにちらりと弟たちを見た。

小さいまま、大人になることも出来なかった弟たち。自分は、もう、すっかり大人になって、ああ、息子さえいるのならば。

それは自分と彼らの間にある隔たりだ。だからこそ、何かを言う言葉はなく、軽く手を振った。

子どものようにそんなことをして、それに弟たちは頷いた。

そうして、その少年に吸い込まれていく。一つになった少年はイワナガに言った。

 

「・・・・もう、いきます。ありがとう。それでも、俺たち、思ってしまったから。」

死んだのは悲しかったけれど、そうだと、思い出したんです。それ以上に、生きて欲しかったんです。だから、俺たちは先に行きます。

 

そのまま、彼らは消えていく。するすると、まるで解けていくように消えていく。

それにイワナガは目を見開いて叫ぶ。

 

「行くな!そんな、そんなの・・・・サクヤよ、何故だ!?お前とて、もういいと。そう、願っていたのだろう!どうして、お前は。」

 

それにイドラはゆっくりと瞬きをした。それに、開かれた目は青く染まっている。

 

「・・・・イドラに夫婦喧嘩は面と面を向かってしろと、言われました。」

 

それに、イドラは、いいや、サクヤはゆっくりと立ち上がって、そうしてハゴロモの元に向かった。

 

「サクヤよ。」

「・・・・お久しゅうございます。ハゴロモ様。」

 

静かなそれの後に、ハゴロモはサクヤを見た。

 

「・・・・ふがいないわしを、怒っているのか?」

「怒る、強いていうのならば、それはそうであったのでしょう。ですが、わかってもいました。死人である我らに生者のあなたの選択を責める資格がないことを。だから、私は、諦めようと思っていました。選択肢も、願いも、それはイドラ達が決めることと。ですが、ですが、あなたは言いましたよね。」

 

アシュラに希望を託したのだと。

 

サクヤは顔をくしゃくしゃにしてハゴロモを見つめた。

 

「インドラが悪であると、あの子は間違えたのだと。それぐらい、わかっておりましたよ。わかっておりました。だから、耐えました。仕方が無いと、けれど、けれど、どうしても、納得がいかないのです。言いましたよね。インドラが、会いに来たとき、あなたは殺しに来たのだと。」

仕方が無いと、そう言っても仕方が無いのだと、わかっていた。

 

けれど、ずっとサクヤは恨んでいた。

 

「あなたは、最期まで、あの子の父ではなくて。忍宗の人間として生きたことを、恨んでおりましたよ。」

 

静かな声音で言ったそれにハゴロモは顔をしかめた。

 

「仕方が無いことでしたでしょう。それが、正しかったのでしょう。言葉を躱し、インドラのなした罪業に諦められたのでしょう!ええ、仕方が無いのです。仕方が、ないのです。」

 

その女は幾度も、幾度も、仕方が無いと呟いて。

けれど、最期にはすり切れるような声で言った。

 

「それでも、言って欲しかったのです。争いを託すのではなくて、仲直りしろと言って欲しかった。父であったのなら、死した私には出来ないことを望んでしまった!」

 

泣きじゃくりながら、ぼたぼたと、無数の雫を流してそれは言った。

 

「イドラに、言われました。過去は選べないと。それを抱いていては、ずっと過去が地続きのまま、悲劇の延長戦になるしかないから。だから、未来を選ぶのだと。」

羨ましい。

 

サクヤはさめざめと羨ましいと泣いた。

 

「あの子は、これから選ぶのだと。願いと、悲劇を繰り返さないために。可愛い我が子を選ぶのだと、言われて。羨ましくて、妬ましくて。ええ、でも。」

それ以上に、理解せずにはいられなかった。

 

サクヤはとうとう、耐えきれなくなったと顔を覆って泣き始める。

 

「ああ、憎らしゅうございます!恨んでおります!仕方が無いとわかってなお、あの子達の、長きにわたる因縁の引き金を引いたあなたが、どうしても、憎いと。愛していたが故に、なおさらに!」

 

イワナガはそれに、立ち上がり、そうしてサクヤの肩を抱いた。

 

「わかっているのだ!ああ、わかっているのだ!わかっていてなお、それでも。」

 

イワナガは、怒りのにじんだ目でハゴロモを見た後、柱間と、そうしてマダラを見た。

 

「いつか、大義のために切り捨てられ、無念の内に死んでいく誰かを見た時、どうすればいい?だから、せめて、返して欲しかったのだ。息子のチャクラを、ただ。」

 

正しいのだ、正しいのだとわかっているのだと。

イワナガも囁いた。

 

「・・・・止まらんとわかっていた。」

 

二人の妻を前に、ハゴロモは言った。

 

「どこかで間違えてしまったのだろう。インドラは、真摯でありすぎた。アシュラは、ある意味で兄を神聖視しすぎていた。そうだ、あまりにも、多くの理解が足りなかった。わしもインドラも、神にはなれん。永遠の守護ができないのなら、いつかに手を離されなければいかん。アシュラも、兄も悩み、間違う可能性を考えなければいけなかった。」

それが出来ず、あの子達は争ってしまった。あの結末に至ってしまった。

 

それでも、と。

ハゴロモは二人に近づいた。それにイワナガは警戒するようにサクヤを抱きしめる。それにハゴロモは躊躇するように足を止めた。けれど、一歩、足を動かす。

 

「それでも、確かに、彼らはこの結末に至ったのならば。信じなくてはならん、託さねばならん。我らも又、所詮、有限の命の中にあるのだから。死人のあるべき場所はここではない。」

 

いいやと、ハゴロモは拳を握りしめた。

 

「全て、わしで終らせねばならなかった。だが、それが出来なかった。インドラのことを、止められなかった、いさめられなかった。それをアシュラに託した時、わしとてどれほど悔やんだことか!」

 

それは今まで平淡な印象を受けた仙人の、むき出しの言葉だった。

 

「忍宗もあの子たち、二人に任せたかった。二人で、生きていてくれればと思った。当たり前だ。兄が、弟を害したいなどとどうして思いなどするだろうか!」

 

けれどと、ハゴロモはまぶたを固くつぶり、開いた。

 

「出来なかった、それ故に託した。託して、死んだとというならば、それに口出しなどできん。わしはその時点で死人だ。生者の世界は生者だけのもの。わしが口を出せば、アシュラに託した意味は無くなる。」

 

己の子が争って、辛いのは己だけだと思っているのか?

 

それは胸を抉るような言葉で。それは、イワナガも、サクヤも、目をそらしていた事実で。

 

「信じていただきたい。」

 

柱間が割って入った。

振り向いた先にいた男はイワナガを見ていた。

 

「確かに、その、この同盟に至るまで色々とありました。」

 

それにその場にいた一同が思わず扉間を見た。

 

「見るな!」

 

それにそっと皆で視線をそらした。いや、本当に色々。いや、いろいろで済まないことがあり過ぎるのだが。

 

「失ったものもまた、多くありました。」

 

柱間のそれを引き継ぐようにマダラが口を開く。

 

「弟たちが死んだとき、それでも変わるものなどないのだと。だが。」

 

マダラはちらりと、隣の男を見た。

 

「殺し合うべき一族に、同じ願いを持つものがいた。」

 

柱間はそれに心底嬉しそうに笑った。

昔、向かい合わせになって刃を交えた運命は、今、隣り合わせに立っている。肩をならべて、立っている。

その後ろには、互いの弟がいて、そうして、そのまた後ろには両氏族の人間が入り乱れている。

そうだ、それこそが、きっと証明だ。

 

「これから間違いが起こらないと、なんの憂いもなく、悲しみもなく、進んでいけるなどと思ってはいません。」

「そんなことはわかりきっている。理想とは、叶わないが故に理想だ。だが、それを叶えるためには荒んだ道でもゆかねばならない。」

「・・・・少しだけ垣間見た未来は、それでもなお、愛らしいものでした。」

「楽な道を向かっても願った先にはゆけませんので!ならば、困難な道を行きましょう。けして、一人ではないのなら。」

その道はきっと、苦しくも、心強いもののはずだ。

 

昔、自分たちの袂は違えられた。きっと、二度と、その道を同じにすることはないのだと。

けれど、また自分たちは道を同じにした。

悲劇は起きないなんて、奇跡でしかないと思っている。

けれど、それを言うのなら、奇跡は確かに起きたじゃないか。ならば、自分たちは信じるしかない。

 

尾獣たちは言った。

何度も、何度も、お前達は殺し合った。幾度も、幾度も、わかり合えずに、またダメだったと繰り返した。

けれど、確かにこの結末に至ったのだ。

 

そこでイズナも口を開いた。

 

「・・・納得できないことは、多くある。いなくなった誰かのことも、信用できるかも、わからなかった。それでも、交わった末に出来た未来がある。」

 

イズナの脳裏には、姉の子であるのに、まったく似ていない銀の髪をした甥っ子のことを思い出す。それを、己が息子は嬉しそうに笑って抱きしめる。

唄が、耳の奥で響いている。

歌詞は違えど、千手にもまた同じ旋律で伝わっている唄だ。

ああ、そうかと、思えば、憎しみ以外で伝わったものがあったのだ。

 

「その未来のために、その未来が幸せになってくれるのなら。その憎しみを飲み込むと、決めました。」

 

許すこと何て出来ないと思っていた。

父に、そうして、優しかった一族は憎めと、怒れとわめき立てる。

いいや、本音を言うのならイズナはうちはとは滅びゆく一族であることをどこかで理解していた。

濃い血はいつかに途絶える。少なくなった自分たちでは、依頼をこなしていくのも難しくなる。

だから、イズナはせめて仇を討って、戦いの内に死にたかった。

まあ、そんなことも吹っ飛ぶとんでもないことが起こってしまったわけだが。

それでも、よかったと、イズナは思う。

よかったのだと、今は思える。

 

それにイワナガはサクヤを抱いた腕の力を強めた。

そこで、サクヤはその腕の中から抜け出した。そうして、扉間に視線を向ける。

 

「・・・・あなたは、どうですか?」

 

それに扉間は改めて、その女が何よりも自分にそれを問いたかったのだと理解した。

 

それとイドラがどんな会話をしたのかわからない。ただ、それは聞いているのだ。

いつかに、里と、そうしてその女と、己が子を天秤にかけたとき、どちらに傾けるのだと。

答える義務はないのだろう。答えたところで、イドラの体を返して貰うことに変わりは無い。

ただ、それはいつかに、己の正しさに飲まれるかも知れない犠牲の欠片。

 

「・・・・奇跡など、起きることを期待する方が愚かでしょう。」

 

静かな声にじっと、イドラの瞳でそれは自分をじっと見つめる。

 

「昔、神に祈ったこともありました。母は、自分たちの無事を神仏に祈っていると。ですが、神も仏も、私の弟を救ってはくれませんでした。」

 

言葉が一つ漏れ出した。

 

「昔、大人たちに何故と問いました。憎いからと、恨めしいからと、宿敵だからと、そんなことしか語りもせず。永遠に争い続けることなどできん。目の前のことしか頭にない時点で、いつかは打ち止めだと。」

 

扉間の脳裏には、幼い頃、兄と、そうしてうちはの少年の後ろ姿が思い出される。

呆れる想いがあった。そんなことをして、父や氏族にもどんなことを思われるのかと。

けれど、その後、兄の話したこと。

 

自分と同じ思いの奴がいたんだ、うちはに、そいつも確かに、この戦乱を憂いていた。

 

「だからなあ、扉間。信じたいんだ。」

 

呆れた。その言葉がどれほど真実なのか、幼い頃のことをどれだけ信じられるのか。

そう思った。それと同時に、こうも思った。

それが、本当であるのなら、それを信じていいのなら。

 

世界には希望が持てるのではと。

 

「憎み合った氏族にも、今を憂うものがあるのなら。同盟を組み、争いを止める一歩になるのだと。」

 

皮肉なことに。

本来ならば、散々に憎みあい、信用できぬとマダラを切り捨てた扉間にとっても、確かに兄と男が願ったそれは希望であったのだ。

憎んだ相手にも、この世界を憂うというのなら、いつか足並みをそろえてやっていけるかもしれない。

それは確かに希望だった。

 

「私は、いつか、その必要があるのなら。妻も子も、切り捨てるやも知れません。」

 

それにマダラとイズナ、そうしてうちはの人間たちからもどよめきが起こる。けれど、扉間は続ける。

嘘はつけない。偽ることは出来ない。

 

「だからこそ、それが起きぬように我らはタネをまくのです。そうならないために、その悲劇が起きる前にそれを回避する。悲劇が起きたとして、それを次の世代に続けさせない。それこそが、今を生きる我らがすべきこと。」

 

扉間は息を吸った。息を吸い、そうして、いつかに、その女に最初に言われたことを思い出す。思い出して、そうして皮肉も交えて言った。

 

「責は取ります。共に生きていくと決めたその時に、それは決めたことですので。命を賭けて。」

 

揺るがないそれに扉間は一瞬だけリップサービスが過ぎたかと後悔した。けれど、もう、命を賭けるのもかすむようなことばかり起きているので諦めた。

うちは勢からの熱視線も無視した。断固として無視した。

 

その言葉に、サクヤは一度だけ頷いた。

 

「姉様。」

「サクヤよ、何故だ。どうして、お前は納得できる!?」

「・・・イドラがね、言ったのです。そんなにも信用できないのなら、このまま自分の体に同居すれば良いと。」

「は?」

 

サクヤは目を細めた。

それは、未来を選ぶと言って、けれどと言った。

 

悲劇が起きないか、起きるか、わかりません。私が知る上でたくさんのことがそれてしまっているから。大戦は、起きるでしょう。風の里は火の国の肥沃な大地を欲しがるだろうから。

でも、それでも、互いでなんとかやっていく術を探します。

あなたのことは選べない。でも、一緒に行くことは出来るでしょうから。見届けてください。今度こそ、インドラとアシュラが仲直りするのを見届けてください。

 

「・・・もし、だめだったらどうするのと。そう言ったら、何と言ったと思います?」

「なんと?」

「その時は、一緒に泣いてあげますって。」

 

サクヤはそれにふふふふふと笑った。涙を流して、それは笑った。

 

「一人はとても辛いから。だから、一緒にいてくれると。そうして、叱られたのです。夫に不満があるのなら、ちゃんと喧嘩をしないとと。姉様、私、怒ってませんよ。私、インドラに幸せになってと言ったけれど。でも、それは、姉様もでした。ハゴロモ様もでした。姉様、もう、いいんです。信じましょう。ちゃんと、仲直り、してくれたんですから。あの子たちも、もういいと言ってくれたのだから。」

 

それにイワナガは唇を噛みしめた。そこで、ハゴロモがそっとその背中を撫でた。

イワナガはそれを振り払わなかった。

 

「いいのか?」

「いいのです。もう、いいのです。」

「・・・すまなかった。本当に、すまなかった。」

 

その言葉と同時に、イドラとアカリの体からするりと何かが抜けた。それはマダラたちが見た、豪奢な衣装を纏ったイドラによく似た女と。そうして、まるで若武者のように武装をしたアカリによく似た女だった。

 

「ようやく、自由になれた。」

「よかったあ。これで一生兎生活にはならない。」

 

それに千手とうちはの人間は群がった。

 

「イドラ、違和感はないか!?」

「扉間様!!」

 

イドラはべしりと扉間の頭に飛びついた。アカリもマダラに大丈夫だと答える。

 

「イドラ。」

 

そこで名前を呼ばれる。それにイドラは扉間から離れて、サクヤに向き合った。

きっとと理解する。

それは、夢の中、一度問われたことをもう一度聞かれるのだと理解した。

 

 

「ほんとうに良いのか?」

「保証など、どこにもない。」

「変わらないだろう。」

「血縁でさえも食い合い、殺し合い、その末は何もかも忘れて、ただ、憎いとがなり立てる。」

「今はよくとも、先はわからない。」

 

それでも?

 

優しい声だった。泣きたくなるほど、それは優しい声だった。

その声は、まるで狂いゆく嵐のような雨粒の音と、吹きすさぶ風のように怒りに満ちていて。

なのに、何故だろうか。

ひどく、ひどく、優しい声だった。

もういいんだと、ただ、もう、止めてくれと。

全ての罪悪を引き受けてくれる、優しい声だった。

 

ああ、と頬に涙が流れていく。何のための涙なのか、自分にだってわからない。

けれど、ぼたぼたと涙が零れていく。

イドラはええと、頷いた。夢の中で、問われても、同じように答えたのだ。そうして、イドラに続くようにアカリも答えた。

 

「それでも、私、これからも生きて欲しいと思います。例え、そうであるかも知れなくても、私たちはその時いないとしても。生きて欲しいんです。」

「ずっと、全てが憎かった。ずっと、父や母が、いいや、この血族全てが憎かった。あの日、過去は私たちに、未来に、過去のために死ねと言ったから。」

 

悲しみの願いと、憎悪の決別が二人から漏れ出した。それに、二人はまるで全てがわかり合っているかのように目の前の、遠い昔、生きて欲しいと思った、幸せで会って欲しかった子を徹底的にねじ曲げられた母に、言った。

 

「生きてと言って欲しかったです。」

「誇りも、知らない人間の復讐も、どうでもいい。」

「幼いあの子が死んだのは罰でしたか?」

「弱さはあの子の罪だったのか?」

「違う、あれは、振り上げた拳を振り下ろせなかった大人の弱さだった。」

「それに逆らえなかった幼い私たちの業だった。」

「兄はずっと泣いていたのに。」

「弟は初めての理解者に救われたのに。」

「父はそれを奪いました。」

「あれの父はそれに怒りを抱いた。」

「どうして、苦しめるんだって。」

「敵同士だった。」

「でも、言って欲しかった。」

「私たちは、あの日、父に、母に、一族に。幼い、弟や妹たちへ、せめて。」

「生きてと、言って欲しかった。」

 

それはきっと、目の前の女だって同じだった。自分が死んでもよかった。ただ、愛しい誰かが生きてくれれば、それだけでよかった。

愛していた、一族も、母も、父も。

けれど、心のどこかで怒っていた。

 

「未来は変わるかも知れません。」

「変わりはしないと思ったことは確かに変わった。」

「ならば、歩いて行くしかないんです。」

「もう、私たちは決めたのだ。共に生きていくと。」

 

だからと、イドラは目の前の母を見た。自分たちの先祖を産んだ、この血族の母へ。

 

「だから、さようなら。」

ありがとう、優しいあなた。

 

でも、でも、ごめんなさい。

 

それらは互いに酷く、優しげに、穏やかに言った。

それはとてもひどい言葉だった。それは、捨て去るためで、否定のためで、どうしようもなく放り捨てるための言葉で。

けれど、決めたのだ。

 

あの日、殺せと憎めと、そう言われて。

そう願われた、受け継がなければならない因縁を自分たちは捨て去った。

あの日、憎んでと、奪われた誰かの感情を自分たちはそっと捨て置いてしまった。

亡くした人の嘆き、奪った存在への憎悪。

自分たちだって理解している。復讐をと、思う気持ちがある。けれど、もう、決めたのだ。

 

いらない、もう、いらないから。

もう、自分たちは選んでしまった。

 

「過去を背負うのは私たちだけです。」

「もう、そんなものは受け継がない。」

「託すのは、一つだけ。」

「いつかよりよき者になれることだけを。」

 

サクヤはそれにああと頷いた。

ああ、振られてしまった。彼女と自分は違うのだ。散々に、間違えてしまった自分とは違うのだ。

いいや、何よりも、憎しみと怒りで盲いた瞳はイドラの言葉で醒めてしまった。

 

「一緒に行きましょう。そうしたら、広間のこと、抱っこしてあげてください。彼の人から続いたものは確かにここまでたどり着いたんです。」

 

抱っこしてあげてください。

息子から母を奪うなんて、自分が一番に望んでいなかったことなのに。

イワナガはそれにああと言った。そうして、じっと柱間の方を見た。

 

「・・・・サクヤよ。」

「はい。」

「似てないな。」

 

アシュラは、もっと、脳天気そうな子だったのに。

 

 

わかっていた。わかっていた。けれど、諦めきれなくて、憎くて、どうしても駄々をこねるように嫌だと叫んでいた。

でも、いいかもしれないと、イワナガは息を吐いた。

もういいと、彼女の足掻いた理由はことごとく、未来に全てを託してしまったのだから。

 

(私たちは、ずっと、聞きたかった。)

 

後悔していると、男から、それだけを。

 

 

「・・・・・イワナガ、サクヤ。もう行こう。わしらのあるべき場所に。」

「・・・・・わかった。ただ、その前に頼みがある。」

「私も。」

 

イワナガとサクヤはそう言って互いの氏族たちに近づいた。

 

「・・・・こう見れば案外似ていないな。」

「あなたの子にですか?」

「ああ、そうだな。」

 

イワナガはハゴロモの手を引き、そうして、ちらりとマダラたちに話しかけるサクヤのことを確認した。

 

「おい、千手の子どもたちよ。散々に迷惑をかけたが。」

「真に。」

「体を乗っ取りかけてたくせに堂々としていますね。」

 

憑き物が落ちたかのようなイワナガにアカリと扉間が皮肉そうに言った。それにイワナガはすまないと付け加えた。

 

「まあ、それに対して詫びとして。少しだけ忠告をする。」

「忠告?」

「いいか、詳しいことは月兎と、ああ、八咫烏のことを忘れていたな。」

 

月兎に引きずられている八咫烏を見てイワナガはその封印を解いた。

 

「イワナガ姫!よろしいのですか?」

「・・・・すまないな。八咫烏よ。ただ、目的としていたあの子たちも消えてしまった。消えるのが忍びないと、共に封印されて朽ちていくはずだったが。」

「我は、あなたがそう望むのであれば。」

「・・・ありがとう。アカリよ。」

「はい?」

「これはお前に託そう。生意気な口を利くが、火遁と良き目を持っている。よく仕えてくれるだろう。」

 

八咫烏はその言葉にアカリの肩に止まった。

 

「・・・・これから、大筒木、つまりはお前達の遠い先祖が攻めてくる。詳細は月兎と八咫烏に聞け。それで、だ。」

 

イワナガと、そうしてハゴロモは少しだけ気まずそうな顔をした。

それに千手の人間はひどい不安感に襲われる。

イワナガは声を抑えて話をする。

 

「・・・これから、千手とうちはの人間に我らのチャクラが少しずつ広まることになる。まあ、悪いことではない。それは、陽遁や陰遁の要素を強く持った子どもが産まれやすくなる。そうすれば、木遁や写輪眼が発現しやすくなるからな。あー、それでだ。」

 

イワナガはちらりとハゴロモを見た。

 

「写輪眼が?」

 

驚きの声が上がる中、ハゴロモは口を開く。

 

「・・・・そのな、写輪眼は精神的な負荷がかかったときが発現条件になるのだが。そうすると、うちはの人間達はまあ、精神的に不安定になる。だが、安心するといい。イワナガとサクヤのチャクラが氏族内で広がればそういったことも憂わなくていい。」

「それは、何故?」

「ざっくりと言うとな、精神的な負荷への耐性ができる。あれだ、今後、だんだんとうちはの人間達の性格がぽやぽやし始める。あれだな、イドラみたいな性格のが増える。」

 

それに思わず千手の人間はうちは一族の方を見た。少しだけ離れているせいと、サクヤに気を取られているせいで気づかれてはいない。

というか、すごい情報が出てきたが、それ以上にとあることに気を取られる。

 

え、あのど天然わんころみたいなのが増えるの?

 

「それは!」

「はっはっは!いや、我らのチャクラが氏族内に広まれば、能力的にいいこともあるが、そう言った面もあるから不安だったが。いや、大丈夫だな!」

共に生きていくって決めたんだものな!

 

イワナガはやたらと爽やかな笑みを浮かべ、そうして、ハゴロモ共々距離を置く。

 

「まあ、大丈夫だ!私の子ならば、サクヤの子どもたちと上手くやっていける!頼んだぞ!普段はど天然でも戦闘の時とかはちゃんとするから大丈夫だ!」

「ちょ、待て!」

「もう少し、詳しい話を!」

 

扉間や柱間が追いすがろうとするが、それよりも先にイワナガはサクヤを回収し、そうして、ハゴロモと振り返る。

 

「それじゃあ、達者でな!」

 

言い逃げのようにそう言った後、三人はそのまま霧のように消え失せた。

それに千手の人間はあああああああああああと叫んだ。

 

「謀られた!」

「言い逃げぞ!」

 

千手の人間は、頭を抱える中、うちはの人間達がそれぞれにどうしたどうしたと駆け寄った。

 

「扉間様?大丈夫ですか?」

 

きょとりとした、己の妻が自分の顔をのぞき込む。

ちらりと見たそれは、にこにこと愛想良く笑っていた。

 

「・・・・・とんでもないものを押しつけられた気分だ。」

「え、何をですか?」

 

扉間のそれに、うちはたちは大丈夫かとそれぞれの千手のことを心配そうに見つめた。

ちらりと、よくよく見れば空が白み始めている。

もう、夜明けなのだ。

それに扉間は、あーあとため息を吐いた。

そうして、女を見る。

 

「・・・・・イドラよ。」

「はーい?」

「貴様のせいで、ワシの人生はめちゃくちゃだ。」

 

考えていた同盟だとか、うちはとの付き合い方だとか、もう、諸諸が完全にまがってしまっていた。

おまけに自分の一族は下手をすると、駄犬が多くなったうちはの世話まで焼かないといけないのだ。

けれど、明け始める空を見つめていると、どこか悪くない気分だった。扉間はイドラの頬を掴んで、むいむいと揉んだ。

 

「責任を取れよ。」

 

その言葉にイドラはにっこりと微笑んだ。

 

「はい、扉間様は、責任、取ってくれましたから!ちゃんと、人生を賭けて責任、取って見せますよ!」

 

弾んだ声が聞こえてくる。それと同時に、ゆっくりと夜が明けた。

 

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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