前から書きたかったネタです。少し続きます。
ふと、千手扉間は眼を覚ました。いつも通りのことだ。さっさと起きて、そうして兄が起きているか確認しなくては。寝坊でもすれば、父から大目玉を食らう。
そう思ったとき、眠気から覚醒した瞬間、自分がやたらとやわっこいものにぎゅうぎゅうに抱きしめられていることに気づく。
(なんだ!?)
扉間はかっと目を見開いた。視線の先には、真っ白な、柔らかそうな何か。
(は?)
あり得ない光景に固まった。それと同時に、頭上から声がした。
「んん・・・・」
(女?)
扉間は女の顔を確認しようとしたが、それよりも早く自分の体に巻き付いていた腕がぐいっと自分を引き寄せる。
「んん゛!?」
ぼすりと顔を埋めたのは柔らかくて、甘い匂いのする、女のはだけた着物から見える谷間だ。
「んんんんんんーーーっ!?」
柔らかい、いい匂いがする、味わったことのない感触に扉間は頭の中でどたどたと暴れる。
じたばたとさすがに暴れた扉間に気づいたのか、手の主は力を緩めた。それに扉間は潜り込んでいたらしい布団から逃れる。
布団で自分を拘束していたらしい女を警戒したのと、脅せるような武器もないためにともかく距離を取ることにした。
周りを見回すと、どう見ても覚えのない部屋だった。そうして、自分の着ている寝間着さえも大きさが合っていない。というか、ふんどしさえもゆるゆるで扉間は慌ててずるずるの寝間着の袷を直した。
「あれえ、扉間様?」
(おれの名前は、知っているのか?)
ならば人違いだとかではないはずだ。けれど、拐かしにしてはあまりにも共にいる人間の態度が緩すぎる。女を差し向けるには、自分はあまりにも幼すぎる。
逃げるか、そう考えたが、どこにいるかもわからない状態で下手に逃げ出して逃げ切れるのか?
それならば、このまま従順な態度を取って情報をうかがった方がいいのか?
顔を上げた女は、黒い髪に黒い瞳、そうしてどこか品のある美しい顔立ちをしていた。自分の一族にはいない種類の顔立ちだ。
「・・・・まだ、暗いですよお、今日、早い日でしたっけ?」
扉間はなんというか、うぞうぞと起き上がるそれの声に肩の力が抜けるような心地がした。
なんだ、そのふにゃふにゃの甘ったれた声は。
そう思って起き上がった存在の姿に扉間は固まった。
何故って、その女の寝間着、寝ている間に乱れたのだろう、ぱっかーんと袷が開かれ、白い胸から腹まであらわになっていたのだ。
扉間は固まった。
別段、女の裸を見たことはないが、それはそれとして、ぽやぽやとした女の、その、白い胸と腹は何というか、今まで見たものとは違う気がした。
表情はやたらと幼いのに、何故か、その女は
「あれ?扉間様?」
それはようやく暗い中でも目が覚めたのか、慣れたのか、ずいっと扉間に視線を向けた。そうして、ぱああああと顔を輝かせた。
「わあ!可愛い!」
女はとてとてと警戒心の欠片もない足音を立てて自分に近づいてくる。その仕草に、扉間は、あ、こいつってもしかして忍じゃないんじゃないかと考える。
その気の緩みの所為か、扉間は女が自分に近づくのを許してしまった。それは不躾に自分の脇に手を入れて、軽々と抱き上げる。その華奢な体から考えられない怪力に、扉間は改めてそれが忍であることを理解した。
「は、離せ!」
「少しぐらい、いいじゃないですか!わあ、小さい頃の広間みたいですねえ。あれ、でも、どうして子どもの姿になんて?」
女はそう言ってまたむぎゅむぎゅと自分の顔をその白い胸に押しつける。そこまで力はないため窒息なんて事はないのだが。
柔らかい、いい匂い、すべすべしている、なんてことが頭の中を駆け巡る。けれど、扉間は何か、ダメな方向に行くことだけは理解して思いっきり暴れる。
不思議そうなそれに扉間は怒鳴る。
「子どもの姿だと!?お前、おれがなんなのかわかって攫ったはずだ!」
「ええ、攫ったなんて、ひどいですねえ。というか、ここはあなたのおうち・・・・」
そこまで言った後、女は扉間を己の胸から離し、そうして顔色悪く言った。
「あ、あの、もしかして、何も覚えてない?」
「だから、お前は何を言っているんだ!?」
その言葉に女はかちんと固まって、そうして、扉間を抱えて廊下を走り出した。
「広間ああああああああああ!!!」
「はあ、それで、私の所に来たと。」
「えーん、どうしましょう!扉間様、子どもになっちゃって!」
扉間は目の前のそれに固まった。幾分、年を取っているとはいえ、自分にそっくりな青年ともいえる年かさのそれに混乱したのだ。
いや、容姿だけならばそっくりなのだが、纏う空気は今まであった人間で異質だ。強いて言うのなら、纏う空気はどこか兄の柱間に似ている気がした。
「うーん、父上の術。私も、さすがに父上の術の全てを把握しているわけではないのですよねえ。」
困り果てた様子の、千手広間の様子に千手イドラはうるうると目を潤ませた。
「どうしましょう・・・」
「ともかく、父上の仕事関係は伯父上たちに相談するとして。」
「兄上?」
「どうかされましたか?」
扉間は固まっている間に、ふすまが開けられた。その先にいたのは、二人の男女だった。
その二人の容姿に扉間は度肝を抜かれた。
「え、父上どうしたの!?ちっちゃ!」
「わあ、可愛らしいですねえ。」
少年は、亡くなった弟の板間にそっくりだった。いいや、彼が成長していればきっとこうであったのだろうと想像させる姿だった。
そうして、その片割れの少女と言える年かさのそれは、扉間の散々に恐れる姉に似ていた。
けれど、その少女の髪は自分と同じ真っ白な色をしていたし、何よりもとある一件以来無表情であり、そうして更にもまして恐ろしくなっただろう姉とは違い表情豊かだ。
「蔵間に、スズラン、起きたんですか?」
「あんだけ母上が騒いだら、そりゃ起きるよ。」
「何かあったのかと心配で。でも、ふふふ、父上、どうされたんですか?」
スズランと呼ばれたそれは、にこにこしながら広間の目の前に仁王立ちをしている扉間に微笑んだ。
「どうもこうも、まったくわからないんですよねえ。いいや、何か、そう言った術を開発しているみたいな話は聞いたような。」
「珍しいね、父上が失敗するなんて。」
「でも、記憶も無くて、どうしましょう・・・・」
後ろでめしょめしょと泣く女の気配を感じる。
扉間は混乱の極みの中で、泣きたいのはこっちだと叫びたくなかった。
待て、父上って何だ!?
父!?
いや、わかる、言葉の意味はわかる。だが、自分の年を見ろ、父なんて無理だろ?
いいや、なんとなく察しているのだ、なんとなくは。
「わあ、父上、可愛い。」
自分に近づいたスズランはにっこにこで己の頬を指で突いてくる。
「ほっぺたぷにぷにだ!」
「え、本当ですか?」
今までめしょめしょしていたらしい女が自分に近づいて、そうして、同じようにほっぺたを突く。
「本当だ!扉間様、このごろお仕事ばっかりでお肌、ガサガサでしたのに。さすがは、子ども、艶々だ!」
「可愛いなあ、広間の兄上もちっちゃい頃、こんなんでしたか?」
「はあい、こんなんでしたあ。」
「いいなあ、私も可愛い兄上のお世話をしたかったなあ。」
「仕方が無いですねえ、産まれてないから。」
「そうですねえ、仕方が無いですねえ。」
扉間はなんだか脳が溶けていくような感覚だった。
なんだ、この馬鹿みたいな会話は。
聞いているだけで気が狂いそうだった。なんというか、似たようなぽやぽやした空気に溺れて死にたくなる。
広間は母と妹ののんびりとした空気に感化されて、よかったですねえと自分ではあり得ないようにふにゃふにゃの笑みを浮かべている。
助けて欲しい。扉間は切に、誰でもいいから、この地獄のような空気から助け出して欲しかった。
「おい、母上、スズラン、そろそろ本題に入らねえとダメなんじゃねえの?」
そう言って、扉間をその地獄から助け出したのは、蔵間であった。母と娘に挟まれた扉間をひょいっと抱えてそのまま二人から遠ざける。
「そうでした!」
「父上が可愛くて忘れてましたねえ。」
「そうですねえ。」
扉間はもう一度あのぽやぽやの中に返されないように蔵間の足を掴んだ。それに蔵間は思わず兄の方を見た。
わざと放っておいたでしょ?
それに広間はにっこりと微笑むことで答えた。
「・・・そうですね。ともかく、私だけじゃどうしようもないですし。何よりも、今日の父上の処理する仕事のことがありますからねえ。」
広間は少しだけ悩むような仕草をした後に、蔵間に話しかける。
「蔵間、伯父上たちを呼んできてください。事情は話さず、至急と言えば来てくださるでしょう。」
「わかったよ、支度してくる。」
そのまま蔵間は扉間に申し訳なさそうな顔をして、部屋を出て行く。扉間の縋るような視線をそのまま引きちぎっていった。
「スズラン、父上の着物が合わないようなので、私や蔵閒の子どもの頃の服が残ってないか探してきてください。」
「はい、わかりました。」
「母上は、早めに朝食の用意をお願いできませんか?」
「ああ、兄様達、ご飯食べられないでしょうし。わかりました。」
そのまま二人が部屋を出て行った後、広間は扉間に、おそらく、齢数才程度の年になった父に目を向けた。
「さて、もうすでに自分の状態に関して理解が出来たのでしょうか?」
「・・・・ああ、理解、出来た。」
「ここは、あなたからすれば数十年ほど先の世で有り、私はあなたの息子で広間と申します。」
「これだけのことが起こって、理解できんほど愚かではない。」
「ええ、ですが、あくまで時空間による過去と未来の父上の入れ替えというよりは、着ているものからして肉体年齢に引き合わされた記憶障害と見るべきでしょうね。」
困り果てたそれに、扉間は気になっていることを口にした。
自分が、例えば、全てを忘れているとして、今いる彼は確かに幼い頃の彼のままなのだ。
「・・・・戦は、変わらずか?」
その言葉に広間は少しだけ驚いた顔をした後、くすりと穏やかに微笑んだ。その仕草はひどく自分らしくなくて、ああ、それは顔はそっくりでも自分に似ていないことを理解する。
「いいえ、今のところは落ち着いていますよ。現在、千手は多数の氏族と同盟を結び、一つの里として機能しています。大きな戦も、今のところは起こってはいませんよ。」
それに、それに、扉間は驚いた顔をして、そうして、どこか切なそうな顔をした。
「そうか、兄者は夢を叶えたのか・・・・」
「あなたの夢でもあったでしょう?」
「ふん、始まりは兄者だ。」
「素直じゃないですねえ。まあ、あなたはそんな場所で色々と頑張っていますよ。ほら、先ほどの私の母も他氏族の方ですよ?」
「ああ、政略結婚か。だが、あんな氏族がいたのか?」
「おや、何を言うのですか。誰よりも、何よりも、千手である方ならば、知っている氏族ですよ?」
「は、どこの・・・」
そこまで言って、扉間は女の容姿を思い出す。
黒い髪に、黒い瞳、整った容姿、そうして清廉そうであるのに妙な暗さの混ざる色気。
扉間はそれに一つの氏族が思い至る。
いいや、まさか、そんなことが、あるはずが・・・・
そこで広間は混乱の中にあるだろう父親をからかいたくなってしまった。
「そんなに言うのなら、ほら、見てください。」
言葉のままに向けた視線の先、そこには、二つの赤い瞳。
その瞳の名前ならば、ああ、何よりも知っている。
(写、輪眼?)
「我らが母、千手イドラこと、うちはイドラは、ああ見えてうちはの頭領のマダラ様の妹に当たります。」
混乱の中で決められた、その言葉。
マダラ、知っている。
だって、自分は少し前にそれと密会をする兄を締めたばかりで。
「嘘だ!!!」
吐き出されたそれに、広間はどこまでも無慈悲に告げる。
「本当ですよ?」
蔵間
名前の元は、お察し狐様。
板間そっくりのツートンカラーの髪の色をしている。
ぽけぽけした身内の中で唯一色々はっきりしている。ぽけぽけした母と妹を守るために奮闘中。
ツッコミ。
何かあった未来では産まれなかった人。
スズラン
顔はアカリにそっくりだが、中身は母親そっくり。髪は白。
母親からはアカリの2Pバージョンみたいだなあと思われている。
母親との会話を聞いていると、脳が溶けそうになると話題。
イドラ似の娘が欲しかった父親が戦々恐々としていたが、中身は母親似であると理解してガッツポーズをした。
扉間は
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女の子が欲しいが、息子しか産まれない
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女の子がすぐに産まれる
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女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
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どっちでもいい