千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

結構続きそうです。


番外編:認めたくない未来ほど無慈悲なまでに真実だ 3

 

 

「・・・・扉間さまあ、大丈夫ですか?」

 

間延びした声に扉間は痛む頭を押さえた。そうして、デローンとうつ伏せに伸びた女のことを見た。

 

「誰のせいだ?」

 

むすりとしたそれにイドラは謝罪するように頭を下げた。そうすれば、まるで猫がごめん寝をしている時のようになる。

その幼い仕草に千手扉間はため息を吐いた。これは、本当に子どもをすでに三人産んだ女なのか疑問が出てくる。

けれど、そんな疑問は柱間に落とされた拳骨の痛みで飛んでいく。

 

 

 

イドラにからかわれたことを理解して、怒り狂った扉間は次の瞬間、茫然としたイドラの顔を見つめているとその瞳がみるみると水気を帯びていく。

顔をくしゃくしゃにして、目からぼろぼろと涙をこぼし始めた。

 

「うううううううううう!!」

 

次の瞬間、それはめしょめしょになって泣き出した。

 

「ごめんなさいいいいいいいいい!!」

 

年甲斐もなく、大泣きをする女に扉間は固まった。

何と言っても、それの時代というのはそこまで感情の発露がよいとされているわけではなくて。

そんなにも、大勢の前であけすけに大泣きをするなんてあり得ないことだった。何よりも、自分の言葉だけでそんなに動揺するなんて考えもしなかった。

その時、がんと、頭に降り注いだのが一発の拳骨だ。

まさしく、目の前の星が散るほどの痛みに蹲るが、それと同時に後ろに感じる威圧感に固まった。

 

「扉間よ?」

「・・・今、うちの妹をブスっつったか?」

「お前、まっじであとで後悔するよ?」

 

それに扉間は思わず黙り込んで、後ずさりをする。

殺される。

びりびりとした怒りは、幼い頃の比ではない。扉間の瞳にうっすらと涙が浮び、ふらふらとその場に崩れ落ちそうになる。

そう思ったとき、ぱあんと何かを打ち鳴らす音がした。

 

「伯父上たち、そこら辺で止められた方が・・・・」

 

千手柱間とうちはマダラ、うちはイズナが振り向いた先にはふにゃふにゃと笑う、自分の息子らしい、千手広間がいた。

 

「広間よ、これは重要なことだ。」

「この馬鹿にしっかりとわからせないといけないだろうが?」

 

あふれるような威圧感に扉間は体を震わせたが、その青年は慣れた様子で困ったように首を傾げた。

 

「・・・・父上に、ひどいことを、されるのですか?」

 

それに扉間は目を見開いた。なんというか、顔は自分にそっくりだ。切れ長の瞳に、いかめしい顔立ちもしているのに。

けれど、決定的に表情の作り方が違う。

眉を下げ、視線を下に向け、そうして、物悲しそうに目を細める様は見ているものの罪悪感を誘った。

 

「子どもの父上にそのようなことをされるのですか?」

 

何よりも纏う空気感だろうか。

耳にぺたんと下がった犬の耳が見える。それが、他人の庇護欲だとか、そんなものを煽った。扉間は一周回って感心した。

自分と同じ顔で、ここまで違う空気を出せるのはすごいだろう。

というか、うっすらとにじんだ涙に、唖然としていた。その間に、自分の腰を抱えるものがいた。

 

(はいはい、父上はこっちね。)

 

そう言って、自分は促されるようにイドラの元に連れて行かれる。いつの間にか、スズランがそっとイドラのことをなだめている。

そうして、イドラと言えばぐずぐずと、それはもう情けないほどにぐずぐずに泣いている。

目からも、鼻からも、顔から出せそうな水が全部出ている状態だ。

なんというか、そこまであけすけに、何もかもを殴り捨て大泣きする妙齢の女には引いてしまう。

なんだあの、この世の終わりのような顔は。

それを見かねて、スズランが手ぬぐいでイドラの鼻などを拭えばだいぶましになる。

大きな、ガラス玉もかくやという黒い瞳が自分を見つめる。それに扉間は思わず後ずさりそうになる。

なんというか、陳腐な表現ではあるが、吸い込まれそうな瞳だった。いいや、黒いそれは普段ならば恐怖さえ浮ぶものだろう。

うちはの黒い瞳は、まさしく、死への誘いだ。その、真っ黒な瞳はいつだって、鋭く、殺意と憎しみを宿しているものだ。

けれど、なんだろうか、その女の目は。

淀んだ、虚のような目のはずだ。

なのに、まるで黒蜜のような甘さを含んで自分を見ている。

じいっと、それこそ、見つめていると喉が焼けそうな甘さを含んで。

 

嫌いになった?嫌いにならないで?大好き、大好き、ごめんなさい、大好きだから。

 

そんな言葉が聞こえてきそうな顔で自分を見つめてくるのだ。

扉間はなんだか落ち着かなくなる。

 

(警戒、そうだ、警戒しているんだ・・・・)

 

扉間は己の落ち着かなさを警戒心だと思い至る。

いくら、同盟込みの婚姻だからと言って、あのうちはがここまで自分に好意を見せるのなんて間違っている。

 

(父上、母上のことなだめてくれよ。)

(なんでおれがそんなこと・・・)

(あー、もう。このままだと伯父上たちからぼこぼこにされるよ?それでもいいの?)

 

それに思わず扉間は動きを止めた。彼には基本的に恐れるものはないが、それはそれとして姉と、そうして後ろの大人になったらしい兄は恐ろしい。

扉間の中で、意地よりも、兄からの怒りを回避することに天秤が向けられる。

 

「・・・・わかった、もう、怒っとらんから泣くな。」

「・・・・本当?」

「本当だ。」

 

それにイドラはぱあああああと顔を輝かせた。そうして、ぴょんと扉間に抱きつく。

 

「よかったああああああああ!扉間様、ごめんなさい!」

 

むにゅりとした感触が顔一杯に広がり、扉間は叫んだ。

 

「貴様!離れんか!!」

 

 

 

 

その後、広間がなだめすかして、うちは兄弟と柱間は拳を収めてくれた。けれど、それはそれとして拳の決まった頭はずきずきと痛んでいる。

 

「痛いですか?」

「痛いに決まっておろうが!」

「・・・・まあ、それは確かに。」

 

イドラはそんなことを言いつつ、部屋の真ん中であぐらをかく扉間の前に寝転び、ごろんごろんと上機嫌そうに揺れている。

その仕草の幼さに、扉間は辟易したようにため息を吐いた。

 

(・・・兄者にはおいていかれるし。)

 

柱間達は、それはともかく仕事があるとそのまま火影邸に向かってしまった。そうして、扉間の身代わりを務める広間も又それに同行した。

 

(何か、こそこそと話していたのは気になったが。)

 

そう言えば、いいの、言わなくて?

いや、子どもに教えるのは少しなあ。

だがのう、ここにいる内に知ったときの方が衝撃なのでは?

まあ、戻ることを前提にすれば、その時はその時としか。

 

扉間は盗み聞いた話に首を傾げた。

 

蔵間もまた、はいはい父上の書庫とか行ってくるから。立ち入り?ダメに決まってんでしょ、お子様厳禁だよ、あそこは、とさっさとどこかに行ってしまった。

そうして、残った娘だというスズランは、私は家事してきますー母上、父上とゆっくりしてくださいねえと消えてしまった。

 

「・・・・貴様は、何をそんなにうれしがっている?」

 

その言葉にイドラは転がったまま手足をばたばたさせる。

 

「嬉しいですよ?だって、扉間様が一日中おうちにいるなんて夢みたいですもの!」

「・・・妻というのは夫が家にいないのを喜ぶ物だと思うがな。」

 

脳裏に浮ぶのは、千手のよくも悪くもたくましい女衆だ。それにイドラはぷくりと頬を膨らませ、そうしてじたばたと暴れ始めた。

 

「だってえ、扉間様、全然この頃おうちにいてくださらないんですもん!」

 

むすっとしたイドラが自分に顔を近づけてくる。鼻をくすぐる甘い匂いに、扉間は何か、むずむずとして女から距離を取った。

 

「里の調整が終ったら、他の里との調節でお忙しいですし!それ以外は広間達の修行に付き合うとか、あと、他の氏族の子どもたちにまで手を回してるんですよー!夫婦の時間なんて、いいえ、夜には構ってくださいますが、そういったことではないんですよ。」

 

後半はごにょごにょとしてしていて聞きづらいが、なかなかに不満そうなそれを見た。

畳に転がってのっぺりとふてくされるその様を扉間はじっと見つめた。

そうして、ぷくぷくに膨れたほっぺたをじっと見つめた。そうして、なんとなく、自分に懐く獣を撫でるような感覚でその頬に手を伸ばした。

 

なるほど、しっとりとした肌はもちもちとしている。

 

(女どもが嫉妬しそうなことだな。)

 

それにイドラは驚いた顔をしたが、上半身を起して懐く猫のようにその手のひらにすり寄った。ゆるゆると微笑んで自分を見上げるその様は、甘えた子犬のような愛嬌があった。

 

(・・・・まあ、確かに、このぐらい懐くならば。)

 

猫を愛でるように気に入った自分がいたのかもしれないと、未来の自分を夢想した。その時、イドラはむくりと起き上がって扉間に近づいた。

一瞬、何をするのだろうかと考えた。けれど、その唇が自分に迫ってくるのを理解し、咄嗟に手でそれを防ぐ。

柔らかなその感覚に扉間は叫んだ。

 

「き、貴様、何をしてるんだ!?」

 

防がれたことに驚いたイドラはきょとりとした顔をした。

 

「あれ?そういう空気でしたよね?」

「どんな空気だ!?くっ、うちはでは色事が相当盛んなのだな!?」

 

扉間は女がそういったことに詳しいことが妙に腹立たしくそう吐き捨てると、イドラはよかったあと暢気に笑った。

 

「そうですか!?得意そうですか!?扉間様に、子ども過ぎるとよく怒られてたんですよ!でも、そう見えるぐらいに慣れたんですね!扉間様のご指導のおかげですね!」

「は?」

 

扉間はイドラのそれに固まる。そんな扉間の様子などどこ吹く風でイドラはにこにこと笑う。

 

「お、おれが?」

「はあーい?そうですよお、子どもっぽいから、こういう空気とか読めるように、指導を受けて上手くなったんですよ?」

 

にこにことイドラは笑う。

イドラの脳裏には、扉間の厳しい指導を思い出す。

 

イドラよ、顔を寄せるときにくしゃみをするなと、だああああ、鼻水垂れておるじゃないか!

イドラよ、こういうときは、静かにしておくものだ。お腹減りました?じゃないんだ!

イドラ、イドラ!寝るな、え?今日は広間と森の中で遊び倒して?そうか、楽しかったか、そうか・・・・・

 

思い返す、扉間の厳しい指導?にイドラはうんうんと頷いた。そんなイドラの脳裏など知るはずのない扉間は茫然とする。

 

え?自分が?

こんな、ぱっやぱやで、ふにゃふにゃで、空気も読めなさそうな女に、そんなことを教え込むのか?

自分の妻に?

 

(す、スケベ、親父ではないか!)

 

扉間はその事実に膝を突く。

いいや、忍になるというのだから非道をなすことも考えていた。けれど、なんというか、え、そっち方向なの?という衝撃は計り知れるものではない。

 

(な、何故だ、未来のおれ!)

 

がっくりとまたうなだれだした扉間の様子に、イドラはおろおろとその周りをぐるぐると回り出す。

 

「扉間さまあ?大丈夫ですか?痛みますか?アカリ様ももうそろそろ来られると思いますが・・・」

「・・・姉者か。」

 

沈んでいた精神に渇を入れ、扉間は顔を上げた。

何か、違う話題に気をそらしたかった。全力で全てから目をそらしたかったのだ。

 

「だが、里の長の妻ならば、忙しいのではないか?」

 

扉間はどこか、感慨深さを感じていた。姉と兄の婚姻話には驚いたが、それはそれとしてあの姉の手綱を持てるのなんて兄ぐらいだろうとも思った。

昔から、兄には比較的厳しく、そうして、甘かった。

それにイドラは不思議そうな顔をした。

 

「いいえ?アカリ様、柱間様と結婚されてませんよ?」

「は?」

 

扉間は固まってイドラを見た。

 

「ま、まさか、あの人未婚か!?」

「いいえ?ご結婚されて、女一人に男二人のお子さんもいますよお?」

「な。ならば、誰だ!?兄者以外に姉者の手綱を取れる者なんて・・・・」

「兄様ですよ?」

 

それに扉間の中で時が止まる。

 

「あ、あの、マダラ?」

「はーい!」

 

扉間はあんぐりを口を開けて、そうして叫んだ。

 

「同盟のためとはいえ、体を張りすぎだろう!?」

「扉間様、アカリ様に怒られますよ?」

 

それに扉間は口をふさぐ。

 

「仲良い夫婦ですよ。あと、お子さん達もいい子ですし。特に、長女のカグラちゃんがですねえ。」

「叔母様!私を呼びましたか?」

 

その声に思わず庭先を見ると、何かがそこに降り立った。

 

「面白いことがあると聞いてはせ参じましたが、これは、とんでもないことになっていますね!」

 

そう言って現れたのは、イドラにそっくりな女だった。

ただ、違うのは、イドラが日向で居眠りをする猫ならば、その女は勇猛果敢な狼のように荒々しく、けれど妙な愛嬌を纏っている。

それに、扉間はどこか、兄のことを少し思い出した。

 

「あ、あと、これは土産です。」

 

そういったうちはカグラの腕には、三人の幼子が抱えられていた。

 

 

 

 

「おや、今日は、何やら雰囲気が違うようで。」

 

それにちらりと、扉間の姿をしたそれは視線を向ける。そこには、うちはの青年が立っていた。

黒い髪に、黒い瞳は典型的なうちはの人間であった他、右に流した髪に一房だけ赤い色が混ざっているのが印象的だった。

その姿は、うちはの古参たちは、マダラの父であるタジマにそっくりだと太鼓判を押す。

 

「カザリか。」

「ええ、扉間の叔父様。カザリでございますが。」

 

わざとらしい叔父呼びにそれは少し考えた後、口を開いた。

 

「どうかしたか?」

「いいえ、今日は空気が柔らかいようでしたので。何か、ありましたのかと。それに、今日は広間の従兄様の姿も見えませんから。」

「・・・あれなら、少しな。ワシの私用だ。」

「おや、それはそれは。扉間の叔父様は抜けられない身ですので、それは仕方がありませんね。」

「ふむ、どうした、カザリよ。今日はやけに言ってくるでは無いか?」

 

ゆっくりと目を細め、楽しそうに浮かべた笑みはどこか皮肉気だ。その、扉間の姿にカザリは満足したのか口を開く。

 

「いいえ、ただ、今日は姉上が楽しそうなことがあると家を飛び出していかれたので。」

「・・・待て、カグラはまだ、任務のはず。」

「ただの届け物でしたので、昨日の遅くに帰ってこられたんですよ。」

「聞いてない!」

 

その言葉と共に、ぼふんと音を立てて、変化の術が解かれた。そうして、そこには眉をしょげさせた、扉間によく似た青年が現れる。

 

「聞いてませんよ!なら、今日、カグラは休みなんですか?」

「おや、扉間様ごっこは止めるんですが?」

「お前の前では、必要ないでしょう?やりたがっていたからわざわざ乗ったんですからね?」

 

むすりとしたそれにカザリは淡く笑った。その笑みは、タジマに非常に似ていると身内では評判だ。

 

「ああああああ、カグラがいないからって引き受けたのに。なら、予定を合わせれば構ってもらえたかもしれないのか・・・・」

「まあ、元々仕事なんですから、無理な話でしょう?」

「やりようならいくらでもあるんですよ・・・」

 

しょげたその様にカザリは呆れた顔をした。

 

「にしても、何があったので?」

「聞いてませんか?」

「さあ、扉間の叔父様の穴埋めに父様達は必死ですので。何かあったことだけしか。」

「まあ、術の失敗でね。少し、幼くなってるんだよ。」

 

それはそれはとカザリは楽しそうに目を細めた。

 

「収まる見込みは?」

「術の系統による。」

 

広間は指先で机を叩いた。

 

「ただの変化と暗示による記憶の退行ならチャクラ切れを狙えばなんとかなる。幻術でもそうだ。けれど、本当の意味で子どもに戻っているようなら、もう一度育て直しに成る可能性がかすかとはいえある。」

「それはそれは大変なことで。」

「・・・カザリ?」

「はい?」

「大変という顔じゃないんだけど?」

「・・・これは失礼を。」

 

そう言ってくすくすと笑うカザリの姿に広間は軽くため息を吐いた。

 

「そう言えば、何ですが。」

「うん、なに?」

「クズハの従兄様から聞いたんですが。今日、確か、猿飛、志村、あと、うちのカガミの指導日だったはずですけど、大丈夫なんですかね?」

「え?」

 





カグラ
イドラ似の愛嬌と元気ましまし娘。楽しいことが大好きで、顔が広い。
表面的には元気ましましで柱間に似ていると言われるが、根っこの部分は母親似。何も考えてないようで、勘はいいほう。
目の色は母親譲り。ファザコンであるが、それについて母親はさすが私の子だと言っている。父親は妹似で嬉しいが、嫁さん似の娘も欲しかったなあと思っている。
広間との関係性はギリギリのところでいろんなものを無意識に避けている


カザリ
いつもにこにこ笑っているが、何を考えているのかよくわからないと評判。父親は父と弟に似ている長男のことを気に入っている。それはそれとして思考が読めないとは感じている。姉や従兄が起す騒動については安全地帯で見物している。
絡繰りが好きで、傀儡を持っている。

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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