千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価、ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

すみません、めちゃくちゃ忙しくて暫く更新等は大分スローになります。依然書いていた小ネタがあったので肉付けしたものです。

柱間の甘えについてです。


番外:とある火影の甘え

 

「父上。その、このようなこと言いたくは無いですが。」

 

そう言ったのは、己の長男の榊だった。

 

「アカリの叔母上に対してもう少しだけどうにかなりませんか?」

 

ちょっとしょっぱい顔をした息子の顔に、千手柱間は少しだけ驚いた顔をした。

 

 

 

 

「おい、柱間、どうした?」

「うん?いや、のう。」

 

柱間はぼんやりと空に浮んだ月を眺めて、考え込んでいた。それに、隣から声をかけられて我に返る。

そうして、隣に視線を向けると、そこにはくつろいだ様子のうちはマダラがいた。

二人は、千手の屋敷で月見酒をしていた。

ちょうど、仕事が一段落付き、久方ぶりに二人で飲もうという話になった。

弟たちにも話を振ったが、彼らは彼らで予定があるそうだ。

 

いいや、柱間の弟である千手扉間はこの頃、末の娘が生まれて丁度フィーバー中だ。まあ、誘いを断ってもさもありなんだろう。

 

歯切れの悪い柱間の言葉にマダラは不信そうな顔をした。

 

「なんだ?」

「いやのお・・・・」

 

柱間はその顔にマダラの言いたいことは察せられたが、それはそれとしてどう言えばいいのだろうか。

柱間の長子である榊は、従兄達よりも少しだけ年が下だ。そうは言っても、温和で有りながらしっかりとした性格で非常に頼もしい。

それこそ、木遁は受け継がなかったものの、自由奔放すぎる兄貴分と姉貴分の手綱を握れる程度には、まあ、抑止力になってくれるのでありがたい。

 

(・・・木遁を発現したのがカグラと広間だけだったときはどうなるかと思ったが。)

 

広間自体、千手に興味は無く、どうしてカグラもうちはの人間で千手という家自体は今後、榊が担っていくことだろう。元より、今後、里という枠組みが出来た今、家という概念がどれほどゆらがないかはわからないが。

 

それはそれとして、今日、榊にそんなことを言われて柱間は少しだけ悩んでしまう。というのも、榊にそう言われる少し前に柱間は実際、アカリに散々に叱られていた。

こっそりと賭博場に行って服まで引っぺがされたのがばれたのだ。

基本的に、柱間自身、叱られてけろっとしているタイプなので、一番にお叱りが効くアカリにお鉢が回ってくることが殆どだ。

そうして、それを見ていた榊が心配して声をかけてきたのだ。

 

まあ、もう、一つの里の長で、おまけに父である柱間が、それこそ、忍において最強である彼が未だに姉に迷惑をかけているのはあまりにも情けなく映ったのだろう。

柱間は息子に言われたことには堪えたが、それはそれとしてどうするべきなのだろうか?

 

「のう、マダラ・・・」

 

それはそれとして柱間は人に頼ることの出来る素直な男のため、自然に義兄に悩みを打ち明けた。

 

 

 

 

「んなの、前からのことだろうが。つーか、嫁さんに言われて懲りずに賭博なんぞするお前が全面的にわりいだろう。」

 

みぞおちに来るその一言に柱間は撃沈しそうになった。いや、まさしくごもっともとしかいいようがない。

うなだれる柱間にマダラは呆れた顔をした。

 

「・・・・つって、短気だ、こええだ言われてるが、あいつに怒られてる内が華だろ。アカリの奴に見捨てられるって、おしまいっていっても良いぐらいだろ。」

 

柱間は、まあ、それはと頷いた。

アカリは誰かを見捨てると言うことを滅多にしない。

 

戦争で子どもを失った親がいるのならば、親を失った子どもは多くいた。もちろん、そういった存在は家の中で世話をする。けれど、一人一人に情をかけるなんて無理な話だ。

 

荒れて、爪弾きにされるものは存在した。

アカリは、特にそんな子どもに構った。悪さをすればひっぱたき、用を命じて常に側に置き、そうして、頭を撫でてやる。

 

柱間も別の意味で人を見捨てないと言われるが、それは柱間が強い上での上下関係が関係しているのも否めない。

けれど、アカリは違う。

 

(姉上は弱いからこそ、誰かの前に立ち、言葉を聞ける。)

 

千手でアカリの発言権が強いのは、妻のいない柱間たちの代わりに内を仕切っていたこともあるのだろう。けれど、それと同時に、彼女にケツをしばかれ、頭を撫でられた人間が多いのもあるのだろう。

 

柱間だって理解している。

アカリという存在に見捨てられたら、結構ダメなほうのアウトゾーンに入ってしまうことぐらい。

けれど、それはそれとして賭博を止められない自分がいる。あのアカリに叱られて、止められないのだから業が深いと己でも思う。

 

「・・・そういえば、マダラよ。お前は、そこら辺に怒らんよな。何故だ?いつもなら、もう少し怒るだろうに。」

「・・・賭け事つっても、自分のこづかいの範囲だから目をつぶってんだよ。これで借金でもして見ろ。アカリと一緒に説教だからな。」

「・・・・はい。」

 

柱間はしゅんとしながら頷いた。そうだ、この男、腐っても千手の頭領、金ならばそれこそ唸るほどあるわけで。

けれど、さすがにそこまで溺れたらアウトゾーンは越えているだろう。

しょぼくれるそれを前に、マダラは息を吐いた。

 

「・・・・大体、姉に甘えてる弟を止めるほど無粋でもねえよ。」

 

それに柱間は顔を上げて、そうしてマダラの顔を凝視した。それは、驚愕と、そうして、図星を突かれたかのような顔だ。

それにマダラは呆れた顔をした。

 

 

「知っていますか、旦那様。」

 

以前、アカリが呆れ半分に話したことがある。

 

「賭け事に嵌まる理由というのは、もちろん、金を得るという理由もありますが、それ以上に賭け事に勝った瞬間だけ、どんな凡人でも特別になれるそうですよ。」

 

柱間の賭け事について苦言を漏らしたマダラにアカリは口を開いたのだ。

 

「あの子が賭け事が好きなのは、あの子が味わえない凡人の気持ちを味わえるからでしょう。まったく。」

 

一息吐いたアカリは、物悲しそうに目を細めて、哀れな子だと囁いた。

 

それにマダラは、何と言えばいいのかわからなかった。

 

「・・・・あいつの心は、我らでは慰めたりんか。」

「あれが欲深で、人一倍寂しがりなだけですよ。」

 

物憂げなマダラのそれをアカリはバッサリと切り捨てる。それにマダラは妻を見るが、不機嫌そうなそれは、心底そう思っているようだった。

 

「昔から、人の中でわいわいするのが好きなくせに、どこか、あれはズレていました。まあ、怪我をしてもすぐに治るような性質では、死生観やらからして逸脱しているのも道理です。何度、止めろと怒鳴ったか思い出せませんが。」

 

アカリの体から立ちこめる怒気に、マダラは思わず後ずさった。いいや、内にあった柱間へのもやもやとした感情はそれに薄れる。

んなことより、この、怒ると誰よりもやっかいな女を優先するべきだろう。

 

「せ、戦場でのこともあるだろうから、な!?」

「そうだとしても、です!あの馬鹿、何があっても自分の力でひっくり返せるせいで、変な方向に傲慢になって。」

 

呆れたようにため息を吐いて、それは思い悩むように額に手を当てた。

 

「・・・私は、あれを育てているとき、恐ろしくて仕方が無くなりました。あれは、周りを愛していますし、大事にしているけれど。裏切られたとき、あれはそれを何のためらいもなく、あっさりと許すのでしょう。」

 

それが、恐ろしくてたまらない。

 

 

 

「あ、甘えておるか?」

 

柱間は動揺のあまり、そんなことを言った。

いいや、それはそうだろう。

情けないなあと思いはしても、さすがに、甘えなどと言われても素直に受け入れるわけにはいかないだろう。

もう、良い年だ。多くを率いた、それこそ、上に立つ人間だ。

ならば、そんな情けないことはないだろう。

柱間のそれにマダラは自覚していなかったのかと呆れた顔をした。

 

「・・・・お前な、アカリよりも強さも何も上なんだから、押さえつけようと思えば出来ただろうが。そのくせ、叱られる度にへーこらしてあいつの周りをうろついてる時点で甘えてるだろう。」

 

真っ向からばっさりと言われて、柱間はそうだろうかと背中を丸めた。それを見つめながら、マダラは酒をあおった。

 

甘えて、は、確かにいるのかもしれない。

それこそ、この年になっても物悲しい気分になるとマダラの家に行ってはアカリの膝の上で昼寝をしているのだから情けないのだが。

 

お前、ミトの所に行きなさい。

 

そう言われてもやっぱり、柱間の足はアカリの元に向かう。

いいや、わかっている。

わかっている、

アカリぐらいだったのだ。

 

柱間が、どれだけ情けなくたって、愚かでもあっても、それを許してくれたのはアカリぐらいだったのだ。

 

 

小さい頃は、柱間は誰かの下で、甘やかされて、庇護におかれて過ごしていた。

その時、柱間は弟だった。

彼を守ってくれる兄がいた。

それは、アカリの兄で、そうして、彼は死んだ。

 

木遁を発現すれば、柱間にも責任というものが現れた。それを柱間は是とした。

彼は兄で、守るべき者があるのならそうすべきだと理解していた。

何よりも、柱間の再生能力は自己犠牲という点では相性が良すぎた。それを周りは是とした。

 

それこそが強者の責であり、役目であった。

扉間も、それにねぎらいだとか、心配の言葉を口にしても、本格的にそれを止めることはなかった。

 

(思えば、姉上だけか。)

 

戦場帰りに怪我の心配をするのも、治るからと火遁に突っ込んでいったことにキレ散らかしたのも、吹っ飛んだ腕をひっつけた自分に安静を命じたのも。

 

彼女はずっと、自己犠牲を己に課し続ける柱間を怒り続けていた。

彼女だけが、柱間が死ぬことも、敗北することも、そうして、傷つくことを恐れ続けていた。

 

ああ、と柱間は思い出す。

 

姉と結婚するのだと父に言われたとき、勘弁してくれと父に言った。

その時から、とっくに自分と姉の上下関係は決まっていて、身内からはこれから先尻に敷かれ続けると合掌されていた。

 

柱間だって泣きたくなった。

姉とこのままずっと一緒なんて!

なんて、思っていたのだ。けれど。

 

「私は嬉しいよ。ずっと、どこにも行かなくていいから。」

 

それに柱間は、そうかと思った。姉は女で、ずっと一緒に何ていられず、いつかに自分の知らない誰かの元に嫁に行くかも知れなかったのだ。

 

(そうか。)

 

柱間の手を握って、姉が今日のおやつの話をする。普段ならば、ほかの小さな子どもの手を握るはずのそれが、自分の指に絡まっている。

 

(・・・・唄を、うたっていた。)

 

それは、千手に伝わる唄。柔らかな、それ。

 

(そうか、ずっと一緒か。ずっと、一緒ならば。)

 

この人と一緒ならば、それはとっても良い気がする。

 

 

(ま!ばっきばきに振られたのだが!)

 

何をどうあっても、弟にしか思えん。男には思えん。

 

それは自分もですけどおおおおおおおおお!

自分だって、姉を女に思ったことはない。ただ、家族がもっと近しい家族になるだけで。

それはそれとして、そこまでばっさりと言われると、やっぱり男として色々あるのだ。

ちなみに、大々的にそう振ったアカリに千手の人間はさもありなんと頷いた。

 

馬鹿クソ強い柱間に意見を言える人間は限られていたし、やらかしを叱れる人間はそれこそごく少数だ。そんな中、一番お叱りが効くアカリが引っ張り出された。

 

そりゃあ、母親張りに叱り続け、ケツを蹴っ飛ばしてきた存在を男には思えなくなっても仕方が無いだろうと。

 

柱間はそれでも抵抗したのだ。

だって、自分と結婚しないのなら、いったい誰と結婚するんだという話だ。

 

「俺をおいて誰の所に嫁ぐんだ!?」

「人聞きの悪いこと言ってんじゃ無い!今更、いけるとこなんてないから行かず後家じゃ!」

 

その言葉に柱間はならいいかと結婚を破談にすることを認めた。嫁に行かずに、ずっと千手にいてくれればそれでよかった。

 

「・・・・甘えておるなあ。」

「自覚は出たか?」

 

マダラの呆れた声音に、柱間はちらりと隣を見た。隣にいるそれは、誰よりも優しくて、あの日、柱間の暗かった世界を晴らしてくれた。

 

柱間の希望で、柱間の光で、柱間の夢の証。

 

「・・・のう、マダラよ。」

「なんだよ?」

「俺は、姉上と結婚したかったのかもしれん。」

「お、寝取り宣言か?」

「末恐ろしいことを言うな!違う、そうじゃなくてだな!あのだな、なんというか、俺は姉上がずっと自分の側にいてくれると信じて疑っておらんかったんだ。それこそ、何があっても俺のことを優先してくれると。」

 

マダラは義弟になった男のあまりにも甘ったれた言葉に呆れと、これは、警戒しておいた方がいいのだろうかと考える。

 

「だから、正直、お前と姉上が結婚してくれてよかった。そうでなければ、俺も難癖を付けて邪魔しておったかもしれん。」

「・・・・・お前な。」

 

呆れたような顔をした後、マダラは口を開いた。

 

「お前、もう少し、分かりやすく甘えろよ。アカリの奴、心配してたぞ。」

 

それに柱間はなにを思ったか、あぐらを掻いて縁側に座っているマダラに近寄った。そうして、彼の脇に頭を突っ込んでその膝に頭をおいた。

 

「おい!?どうした、お前!?」

 

マダラはどうしたのだと驚愕する。イズナも同じようなスキンシップをするときはあるが、この男がそんな仕草をすることなんて今までなかった。というか、気色の悪い方向で甘えてくるなと言う感想しかない。

柱間は自分が無意識のようにした甘えに何をやっているんだろうと思った。

というか、こういった懐き方はしたことがないのだ。

いや、本当に、どうしてだと思う。

ただ、うっすらとした記憶の中で、自分は誰かに甘えるとき、膝に顔を埋めていたことを思い出す。

そうすれば、泣いた顔を見せなくて良いから。

 

「お前、まじでどけ!」

 

無理矢理に膝から落とすかと考えたが、それよりも先に柱間が口を開いた。

 

「・・・マダラよ。どこにもいかんでくれ。」

「・・・・どうした、急に。」

 

呆れたような声を出した後、マダラは柱間の頭上で呆れたようにため息を吐いた後、その頭を乱雑に撫でた。

それに柱間はほっとした。

 

柱間という男はきっと、大抵のことは許してしまう。自分から離れていくことも、自分を裏切ることも、他人には他人の願いがあって、それを仕方が無いと立場故の行動をするとしても、それ自身は許してしまうのだろう。

扉間さえも、きっと、そうなったとしても、苦しんで、悲しんで、怒っても、許してしまうのだと思う。

けれど、そうやって子どものように縋る男と、そうして、自分の尻を蹴飛ばし続けた女のことだけは諦めきれずに引きずり続けるのだと思う。

 

それは遠いいつかに、神様になろうとした男の在り方に怒った女が引き留め続けた寂しがりの弟の甘えだったから。

 

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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