千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

前から大分あいて申し訳ないです。


番外編:それが自分であるなんて、絶対に認めたくはない 5

 

「乱心!扉間様、乱心!!」

「落ち着かれよ!扉間様!」

「おい、印組めないように手のひら握れよ!」

「落ち着け、扉間よ!」

「離さんか!!」

 

キレ散らかした千手扉間(IFバージョン)こと二代目は、千手扉間の胸ぐらを掴んで叫ぶ。それに、扉間は抱えていたイドラを高く掲げて叫んだ。

千手柱間こと初代は二代目を後ろから羽交い締めにしている。そうして、足や手をうちはや千手の人間で止める。

うちはマダラや、こちらの千手柱間たちはやべえやべえと子どもたちを抱えて、一旦、二人から遠ざかる。 

 

「あーあ・・・」

「まあ、こうなるか。」

「おい、止めなくていいのか?あっちのお前は止めてるぞ?」

「本当に止めるべき時に俺は入ろうと思ってな。」

 

なんてことを暢気に言いながら、二人の兄と一人の弟は子どもの安否だけは確保した。

イドラに関しては、まあ、扉間がなんとかするだろうと信頼を持ってそのままにした。

 

「離さんか!?」

「誰が離すか、貴様、言うに事欠いて、うちはの女と、おまけに頭領の妹と密通など!?」

「密通などしとらんわ!」

 

そうだ、扉間は絶叫した。目の前の二代目の言いたいこともわかる。

同盟後の、政略結婚であるならば、仲睦まじい様子を見せるのも必要であるだろう。

いいや、もう、自分の膝の上に当たり前のように置いてある時点で全てが度外視なのだが。

話題のうちはイドラはぶらーんと扉間に掲げられるままにえーんと泣いている。

 

だが、こいつ、なにやらかしたって?

 

「貴様!?戦時中に、戦時中に、敵の女と通じるなどと!?恥を知れ!忍の三禁を忘れたか!?」

 

もう、何か、ぶっつんと来てしまっていた。

意味のわからねえ状況に放り込まれ、なごやかな茶会に迎え入れられ、見ろ、この、周りのうちはの人間を!

千手のことも見てみろ!

牙の抜けた獣ではないか!

何をそんなにふにゃふにゃしている、しゃきっとせんか!

 

が、それについてまだ、まだ、我慢できた。

もう、百歩譲って、自分から遠ざけるように高く掲げられてぷらんと抱き上げられているそれ。

 

まあ、いい。もう、それと仲睦まじいことは、もう、百歩譲っていいだろう。切り替えなければいけない、血管ぶち切れそうになっても、なにしてんだよてめえという感情があふれ出しても、もう、仕方がねえだろう。

政略結婚して、子どもまで作って、そこまで言ったらもう、何も言えないだろう?

 

だが、だが、何だ、それは。

 

「貴様!忍術をなんだと思っておる!?いいや、その前に分身の術を、閨でどうやって使った!?それが!何故!周りに知られておるんだ!?」

「ワシだって不本意に決まっておろうが!」

「何故なのか、はっきり言え!」

「知らんわ!いつの間にか漏れておったんだ!」

「ワシの分際でそんなことが漏れ出るはずがなかろうが!!」

 

首元をがんがんと掴んで叫んだ。それに、イドラはなんとかこの場を収めようとした。何と言っても、その、扉間の汚点と言えるべき評価の元凶は自分なのだ。

ならば、今こそ、扉間のことを庇うときではないだろうか?

扉間が知れば、全力で止めろ止めろと叫んでいただろう。イドラは扉間に確保されていた手の中からぬるんと脱出した。

さすがはうちは、イヌ科ではあるがやはりネコ科らしい。

 

「扉間様、扉間様は悪くないのです!」

 

聞いていると訳がわからなくなる台詞をイドラは吐いて、びしりと二代目に宣言をした。扉間は二代目に意識が向けられていたためにイドラを逃したことを後悔する。

やべえと思った。

 

(止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!!!!)

 

今まで、散々に爆破された誤解起爆札に吹っ飛ばされた身だ。嫌な予感しかしなかった。扉間はイドラの口をふさぎ、捕獲を試みる。けれど、悲しいかな。

扉間は二代目にがっちりと拘束されており、そんなことは出来ない。

イドラは自分の夫に大丈夫だとアイコンタクトをする。

 

悲しいかな、何も安心できない。不安しかない。

 

「・・・貴様が、マダラの妹か。」

「はーい!えっと、兄様の妹で、イズナのお姉ちゃんのイドラです!」

 

二代目は何というか、行動として理解していたが、改めてまじまじとそれを見た。

これは本当にうちはの人間なのか?

あの、マダラの?

 

それは、扉間の知るマダラからあまりにもかけ離れた生き物だった。

 

焔のような激情を秘めた暗い黒の瞳は、まるで夜のように穏やかで。

冷たく、頑なな表情を浮かべる顔には、朗らかで明るい笑みが浮んでいる。

 

夜に潜む猫のような一族の見目をしたそれは、まるで春の日に外を駆け回る子犬のようだった。

同じ家に育ったにしては、まるで正反対の生き物のように見えて仕方が無かった。

それは、ふんすと、やるぞやるぞと鼻息を荒くする。

扉間は嫌な予感しかしない。けれど、それを止めたとしても、絶対に面倒なことになる予測しか立てられない。

予測が付かない、それ故に咄嗟にどんな行動をすべきなのかわからない。

そんな扉間の焦りなんて気にすることもなく、イドラはにこにこしながら言った。

 

「扉間様が忍術を開発したのは、あくまで真面目なものばかりです!互いが敵対していたとき、柱間様はもちろん、扉間様のことはそれはそれは恐れられておりました!」

 

その言葉に、うちはの人間はうんうんと頷く。

イドラは手をバンザイしながら、聞いて聞いてと二代目を見つめる。

 

「扉間様の術はあくまで、うちはのために開発した物!不埒な理由などではないのです!大体、そのような、ええっと、まあ、不埒な理由で作った術を戦で使うなどするはずがないのです!」

 

どうだとイドラは得意げに言った。一応は弁解と言えば弁解だ。扉間は、あくまで普通の弁解に一応は誤解は浮ばないだろうと考えた。

 

「・・・・閨で術を使ったことについては?」

 

二代目のそれにイドラはそっと視線をそらした。それについては、本当に弁解のしようが無い。というか、その術を使った理由も自分の拒絶のせいだ。

何も言えない、というか、自分で婚姻生活に巻き込んでおいたくせにあれだけドタバタ劇を繰り広げた自分に羞恥を感じて思わず顔を赤くした。

弁解できない、いや、弁解など、どうして出来るだろう。

 

(いや、ですが!ここで否定せねば!)

 

イドラは一念発起して、嘘をつくことにした。嘘が何だ、こちとら忍だ!

 

「ふっつうでした!めちゃくちゃふっつうの、初夜でした!!」

「嘘をつくのが下手くそか!?」

 

二代目のそれに皆がさもありなんと頷いた、扉間は天を思わず仰ぎたくなった。

 

周りの目から見ればどうだろうか?

完全に下手くそに、扉間を庇うための嘘をついているだろう。一瞬黙るその仕草は、わざとらしく見えたことだろう。けれど、イドラの性格や扱いからして、それの仕草はひどく自然だった。

それが、イドラの言葉が嘘であると表していた。

 

「違う、絶対に違う!不埒なことで術を使ったことなどないわ!」

「嘘をつけ!これでどんな言い訳が付く!?」

「はああああああ!?なら、ワシの作った術をどうやって不埒に使うと!?」

 

誤解がどれだけ回っていたとして、さすがに己にまで誤解をされて堪るかと扉間は叫んだ。それに、二代目は一瞬だけ確かにと考えた。

自分の忍術はあくまで、チャクラの効率的な使い方、そうして、奇襲などに特化しているはずだ。

何に使うのだ?

 

二代目の動きが止まり、そうして、思考に入った瞬間、千手の一人が呟いた。

 

「・・・・飛雷神の術で、ばれずに夜這いが出来る。」

 

それに二代目の動きがピタリと止まる。それに扉間が咄嗟に叫んだ。

 

「そんな暇があると!?」

「影分身使えば、時間も作れるじゃないっすか!」

「大体、あの術って仕事が多すぎて自分がもう一人欲しいって作った奴でしたもんね。」

「なるほど、もう一人自分が欲しいと。」

「おい、ワシの敵になりたいと取っていいのか、貴様らは!」

 

二代目は、頭を抱えたくなった。というか、どんな状況だ?

自分の向かい側に立つそれの足下ではみいみい泣きながら、違うんですと哀れに泣いている女がいる。

それにうちはの人間も、そうして、千手の人間もああ、いつものことだなあと頷いた。

 

妙なところで理性的な我らが扉間様は、イドラという女に惚れ込んでいるくせに、それを指摘されると否定するのだ。

まあ、恥ずかしいのだろう。

何と言っても、扉間は理性的で、合理的で、それは事実であるし、自負があるのならば、自分が恋に茹だった頭を持っているなんてプライドが許さないのだ。

その程度、かっこつけたくなる感覚もわからなくはないのだと。忍として、建前があるのだってわかっている。

基本的に里の人間にはスルーされている。

 

はいはい、いつまでも新婚気分になってるぐらい、ベタ惚れなんですね。スケベなことも、まあ、子が多いのは悪いことじゃないですもんね?

 

なんて思われている現状を扉間は直視したとき死にたくなる。なんだ、その評価は?

こちとら、巻き込み事故でとんでもないことになっただけなんだが!?

 

「でも、政略結婚とか、あくまで義務での結婚とか。継承問題で揉めたくないから結婚しないって公言してた男が、柱間のおじ上以上に子ども作ってる時点で言い訳のしようが無いのでは?」

 

なんて息子に言われているのを扉間は知らない。

 

おかげで、里の人間から向けられる生ぬるい視線について扉間も諦めの境地だ。もう、見たけりゃ見ろよ。

表立って言われなくなっただけましだろ、まし、うん、多分。

 

築き上げられた無類の信頼により、すっかり扉間という男は愛妻家のスケベ男の名前をほしいままにした。

生き恥である。

 

というか。やることやってると言ってもノーマルなことしかしたことないのに、理不尽すぎないだろうか。

扉間はいつも思っている。

 

顔はいいだろう、善良そうだ。けれど、それだけだ。

そんな女に自分が?

 

二代目は己がどれだけ理性的かを理解している。

 

悲しいことならば、苦しいことならば、地獄のような世界で、それでも彼は理不尽へ立ち向かうためにどうすればいいのかと正確に理解していた。

 

弟が死んだ時でさえも、泣くことなんてなかった。

 

だからこそ、二代目は理解していた。

自分はきっと、誰かに恋をするだとか、誰かに一方的に心を傾けること何てないのだろうと。

誰かを好ましいと思ったとして、それはあくまで親しみだとか、その程度で。

自分の身持ちを崩すような何かが訪れることはないのだと。

それが、千手扉間という男だった。

 

二代目は深くため息を吐いて、扉間の胸ぐらから手を離した。

怒りに染まっていた思考は冷めていく。それに、扉間は自分から離れていった手を驚いた顔で見つめる。

 

「兄者、離せ。頭が冷えた。」

「お、おお。わかった。」

 

あくまで冷静な弟の声に初代はそっと拘束を解いた。それに、千手の人間やうちはの人間もならう。二代目は扉間に背を向けて初代の方に視線を向けた。

 

「兄者、やはり、これは幻術だろう。」

「は、何を今更。大体、幻術にしてはおかしいだろう?」

 

初代は現実逃避を始めたかと二代目を見たが、彼は冷めた目で自分の後ろにいたそれに顎で指した。

 

「ならば、何かしらの術に嵌まったと言うことだろう。」

「貴様、まだ認めんと?」

「あれが、ワシであるはずがない。」

 

二代目は初代の目をじっと見た。そうして、冷たく笑った。

 

「他人に狂えるほど、器用な性格などしておらん。何よりも、だ。敵対している女の寝床に滑り込むようなこと、ワシがすると思うか?」

 

冷たく吐かれたそれに、柱間はそれもそうだと頷いた。

忍者に色の任務があるのは、そう言った場は誰もが緩むせいだ。初代は、二代目がそんなことを安易にしないということを理解していた。

二代目はそれ故に、目の前のそれは自分でないのだと改めて理解した。

それ故に、怒りを収めた。怒る理由がないのだ。

それ故に、思考は冷め、改めて現状がどんなものであるのかを思考し始める。

 

いや、扉間だってそうなのだ。そんな、戦時中に頭領の妹の女なんてやばい案件に手を出す男ではないのだ。

が、現在の里では、もう、色々ととんでもない大恋愛をしたことになっている。

一人の女の、間の悪さと、かみ合いによって。

悲しい話だ。まあ、扉間も本来ならおんなじように巻き込み事故を起すはずだったので仕方が無いのだろう。

マダラの後ろの幽霊が頷いた気がした。

 

初代がそう納得しかけたとき、はああああと扉間だけがバチキレる。

 

何、一人でシリアスめな空気を出しているので?

こちとら、お前と同じ路線で行きたかったんだが?

いけなかったんだが?

何、こっちのことだけ可笑しい奴であり得ないと切り捨ててるんだ???

 

扉間だって不本意だ。

そりゃあ、子どもは可愛いし、うちはの管理だってくそ楽だし、大名達は自分の恋愛事を面白がっているので付き合い自体は楽な部分がある。

それはそれとして、自分だって、そっち路線で行きたかったんだが!?

 

だが、もう色々と取り返しが付かない。

扉間はそれに、そっちがその気ならと口元をひくつかせた、元より、誤解ならば散々に産んできた自分だ。

ならば、答えは一つだけ。

 

「ほう、貴様、そのようなことよく言えたな?」

「何を。」

 

扉間はにやりと笑った。

 

「貴様こそ、先ほどまでイドラの胸をガン見しといてよく言うわ!!」

 

地獄に行くならば道連れ一択、それだけだ。男は、どこまでも卑劣である。

 

それに、皆の視線が二代目にばっと向けられる。自分に向けられる、写輪眼の混ざった視線に二代目は叫んだ。

 

「はあああああああああ!!??そんなわけ無かろうが!写輪眼を避けてのことだと!」

 

そこで、ふと、扉間の後ろにいた初代が呟いた。いや、だって、余計なことだとわかっていたが。それはそれとして、確かにと思ってしまった。

 

「確かに、熱心に見ておったな。」

 

とんでもない勢いで繰り出された援軍(扉間側)からの攻撃に皆はやっぱりだと理解した。

 

「違う!写輪眼と目を合わせんようにしていただけだ!」

「ほう、ならば、イドラのことを拘束して、後ろを向かせればよかっただろうが!何故、わざわざ、胸をガン見していた?」

「おい、貴様にだって被害があるだろう!?」

 

んなことしらん、地獄に行くなら道連れだ。扉間は、良い笑顔、若干泣きそうなそれで二代目を見つめた。

それに、うちはの一人が思わず二代目に話しかけた。それは、あくまで慰めで、深い意味は無い。

 

「ま、まあまあ。扉間様!そう怒らずに!男なんてみなスケベですよ!」

 

その言葉に、二代目は確実に、自分が扉間側に引っ張られたことを理解した。

 

「・・・きさ、ま。」

「ふ、どうした?スケベ野郎?」

 

勝ち誇った、いや、自分自身にも確実にダメージは受けている中、扉間は笑った。それに、二代目の中でびきりと何かがキレた。

 

「水遁・・・・・・・・!!」

「ちょ、ここで水遁は!?」

「止めろ、止めろ!!」

 

柱間とマダラまで飛び出した中、まあ、父が行くなら大丈夫かと暢気していたカグラが呟いた。

 

「・・・イドラのおば様って、扉間のおじ様にだけ効く変な匂いでも出てるのかね?」

 

それに、横にいた広間が肩をすくめた。

 

「まあ、春ですからねえ。」

 

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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