千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

がっつり、イルカ先生とカグヤの話しです。
申し訳ない、もう一話だけ続きます。


番外編:カグヤという女について 4

 

教師の仕事は過酷だ。

 

(・・・・課題の処理は終った。あと、授業計画はまだ期間がある。ああ、そうだ、あいつの補習内容を考えないと。)

 

深夜、とまではいかないが、そこそこ遅めの時間にうみのイルカは帰宅した。

実家はあるが、それはそれとして自立がしたいと独り暮らしをしているイルカは自宅であるアパートの目の前まで帰ってきた。

そこで、ふと、上を見上げる。

そうすれば、時分の部屋に明かりが付いていることに気づいた。

 

イルカはそれに、部屋に誰がいるのか理解して、慌ててアパートの階段を駆け上がった。

 

 

変わること無く明かりの付いた部屋にイルカは慌てて飛び込めば、なんだか腹の空く匂いが鼻をくすぐる。

 

「イルカせんせー、おかえりー。」

 

これまたまったりとした声音でそれはひょっこりとイルカの方に視線を向けた。にっこりと笑ったうちはカグヤはにこにこと菜箸を持ってイルカを出迎えた。

 

 

 

「今日のご飯、鯖味噌ー。」

「お、おいしそうですね!」

 

極端に散らかっているわけではないが、片付いてはいない部屋にてイルカは使い古されたテーブルについて返事をした。

机の上には、言っていたおかずや味噌汁が置かれている。

 

「ご飯、どれぐらい食べますか?」

「え、えっと、普通で。」

 

それにカグヤはイルカの茶碗に米を盛り、自分に差し出してくる。イルカはそれを受け取り、そうして、茶碗を見下ろした。

 

(・・・・これは、いいのだろうか?)

 

イルカは何故、こんなことになっているのかを改めて思い出した。

 

 

 

「イルカせんせー、お野菜いりますか?」

「野菜、ですか?」

 

そんなことを聞かれたのは、とある帰り道でのことだ。今日の夕飯はどうしたものかと考えていたとき、ひょっこりとどこからともなく現れたカグヤはそう言った。

丁度、人通りのある道で、皆がカグヤに注目していたが、本人はどこ吹く風で、イルカの腰に抱きついてにこにこと笑う。

イルカは腰に感じる暖かな感覚にどぎまぎしていたが、ふと視線を感じた。

イルカは、警備隊のうちはの人間の視線に、背筋を正した。彼からすれば、うちのお嬢になにしとんじゃいという意味合いだと思ってのことだが、どちらかというかカグヤ、怪我させるなよ!?というどきどきの視線である。

そんな中、イルカにカグヤは言った。

 

「サクモのおじ様がたくさんくれたんだけど、いらない?」

「ええっと、そうですね。ありがたいんですけど。なかなか、料理をする暇が・・・・」

 

イルカも料理が出来ないわけではないが、それはそれとして時間が足りずに出来合いで済ませることも多い。

せっかく貰ったものを腐らせる可能性を考慮して、イルカがそう言えばカグヤはじとっと視線を向ける。

 

「イルカせんせー、ちゃんとご飯食べてます?」

「え?」

「ナル君から、ラーメンを食べに行くところをよく目撃してると聞いてますが?」

 

それに少しだけ図星を指されて、イルカは視線をそらす。それに、カグヤはふむとうなずき、イルカににっこりと笑った。

 

「じゃあ、ご飯、作りに行ってあげるね!」

「え?」

 

それからあれよあれよというままに何故か、カグヤがイルカの自宅で夕飯を作っていた。

野菜をはちゃめちゃにいれられた豚汁は普通に旨かった。

 

「父上と母上、いつ死んでも可笑しくないからって家事は兄様と叩き込まれたから得意だよ。」

 

まったりとした台詞に混ざる物騒な諸事情を聞きながら飲んだ豚汁は、旨かったが同時になんだこの夢はとも思った。

というか、夢でしかないと思っていた。

だって、考えて欲しい。

里で一番に有名な家の、お姫様といって差し支えのない、とびっきりに可愛い女の子が家まで来て食事を作ってくれるのだ。

なんだその都合のいい夢は、と自分だって思うのだ。

が、目の前のそれは変わること無くもくもくと夕飯を食べている。

 

カグヤはそれを機に、時折イルカの元に材料を持参しては食事を作る。

そんなことをしなくても、と言うと。

 

「・・・・今日、父上も、母上も、兄様もいないので。ご飯、独りで食べるの寂しいから。」

 

上目遣いに、一緒に食べてくれると嬉しいと言われると、女慣れしていないイルカはそれだけでノックアウトしてしまう。

頭の中で、世間体とか、カグヤの評判だとか、天秤がぐらんぐらんと揺れはすれど。

最終的に、ねえ、だめ?いいでしょう?なんて甘えられると天秤はかこーんと簡単に傾いた。

一度、家の前で待ちぼうけを食らっていたことも有り、それに鍵まで渡してしまっている。

 

ダメだろう、こう、色々と。

え、お前まさか等々同棲間近なのか!?と同僚からざわつきが起ったが、なんとかそれを否定した。

自分のことを心配して、食事を作りに来てくれるだけだと。

それに、同僚達のしらっとした目を覚えている。

 

何言ってんの、こいつ?

 

(俺だって、わかってるけどさ!!)

 

そりゃあ、異性が何の意味も無くわざわざ自分の元に来て、食事を作ってくれるとか。

ないとは、理解している。

けれど、なら、なんでだと言われると。

 

「・・・イルカせんせー?」

「あ、はい!?」

 

もごもごと考えていたイルカの耳元に柔らかな声が飛び込んでくる。そこには、不思議そうな顔をしたカグヤがいた。

 

「な、なんですか!?」

「お風呂わいてるから、入ってきたらどうですかー?」

「え、ありがとうございます!」

「着替え、干してあったの畳んでおきました。」

 

イルカの返事にカグヤは勝手知ったると寝間着と下着まで渡される。それにイルカはとぼとぼと浴室に向かった。

湯治が趣味の男であるために、風呂場だけはこだわって選んだ部屋だ。

かこーんと、暖かな湯に浸かりながら、イルカは頭を抱えた。

 

冷蔵庫にあったお豆腐と、御ネギ使いました。あと、白菜が腐りそうだったので味噌汁にいれちゃいました。

洗濯洗剤無くなりそうなので、買ってきたほうがいいですよ。

この靴下、穴開いちゃったので捨てますねー?

 

完全に、自分よりも家の諸諸に対して掌握されている。

というか、自分の家なのに、一瞬日用品をどこにしまったのか悩むときがあるのはやばくないか?

それ以前にカグヤの茶碗とか箸だとか、貰ったものを飾る棚だとかイルカの家を占拠し始めているのだが。

 

うちはカグヤはうみのイルカが好きである。

それはもう、里の中でも当たり前の事実のような扱いになっている。

というか、千手やうちはの人間からも、カグヤ様のこと頼みますみたいなことを言われるし、やっかみ半分、祝福半分、いつ結婚するの?なんて言われている。

この前など、三代目にわざわざ声をかけられて倒れそうになった。

両親からも、大丈夫か!?と連絡が来たぐらいだ。付き合ってないことを伝えても、照れるな嘘をつくなと言われる。

 

だが、悲しいかな。

本当にイルカとカグヤは付き合っていないのだ。

何故か、カグヤがイルカの通い妻を勝手にしているだけだ。

意味のわからない字面であるが。

 

それにあの世でとんでもない巻き込み事故で結婚まで逝った卑猥様がわかるぞ!うちはの女には気をつけろ!と叫んでいたが。

イルカの知るところではない。

 

(いや、というか。俺はあくまでカグヤさんのことは、こう、可愛いとか思ってただけで。)

 

クラスで一番可愛い女の子を遠目に見るような感覚だった。

けれど、その女の子は何故か自分の生活に潜り込んでにこにこと笑っている。

イルカはぶくぶくと風呂に沈んだ。

 

(ダメだ、そんな、不誠実だ。)

 

正直に言おう、イルカだってカグヤのことは好きだ。誰だって、自分に好き好きとしてくる可愛い女の子とか大好きだろう。

でも、俺は俺のことが好きな子が好きだとかちょっと即物的すぎないか?という想いもあって。

 

なんで?

その一言に尽きるのだ。

 

正直、イルカを好きになる理由がない。容姿もいいというわけでもなければ、特別優秀というわけではない。カグヤの回りの男は、太鼓判を押すほどに優秀で、おまけにうちはの人間なのだから顔がいいものが殆どだ。

ならば、男を見る目だって肥えているだろう。

ならば、何か企みがある?

いいや、そんな企みに巻き込む理由がないのだ。

 

「イルカせんせー?」

「え、あ、はい!?」

「大丈夫ですか?寝てませんか?」

「あ、い、今出ます!」

 

考え込んでいるうちに時間が経っていたのか、カグヤが声をかけてくる。それにイルカは慌てて風呂から上がった。

寝間着に着替えて部屋に向かえば、そこには身支度を調えたカグヤがいた。

 

「お帰りですか?」

「うん、明日、お休みだからお昼にまた来てもいい?」

「え、あ、それは、大丈夫です!」

 

そう言えばカグヤがにこにこと笑って、イルカの腰に抱きついた。そうして、イルカを見上げてやったーと声を上げる。

幼い子どものような無邪気さで微笑むそれに、イルカはやっぱり可愛いなあと思ってしまう。

そのままカグヤは玄関にて靴を履き、ばいばーいと暢気に出て行こうとした。

そこで、イルカは、ようやく思い立つ。

 

「あ、あの、カグヤさん?」

「なんですか?」

 

やはり、のんびりとした声で答えたそれに、イルカは恐る恐る声をかけた。

 

「あの、なんでわざわざ俺の、その、世話というか、いろいろとよくしてくれるのかな、と。」

 

それにカグヤはきょとりとした顔をした。

 

イルカとカグヤが関わったのは、偏に彼女がうずまきナルトを介してのことだった。

イルカは、ナルトについてよくよく気にかけていた。贔屓にならないようにと気を遣いながらもだ。

それは、ナルトの現状に対して思うところがあったせいだ。

イルカの両親は優秀な忍で、今でも任務を受けている。が、イルカは未だに中忍だ。それは、イルカの実力が足りないというよりは、彼の資質の問題だ。

忍として非情な判断を下すことが難しかった。

教師としての在り方には納得している。けれど、自分の実力に対して思うことがないわけでもなく。

 

火影の息子で有りながら、お世辞にも優秀とは言えないナルトのことを、自分と重ねてしまっていた。もちろん、自分とナルトでは色々と違う部分が多いのだが。

 

そんなナルトとカグヤが一緒にいるときに、偶然イルカがいたのだ。ナルトは普段通り、イルカに話しかけてきた。

イルカはナルトに対応しながら、ちらりと少しだけ離れた所にいたカグヤの存在が目に映る。

それは、じっと、無表情に見つめていて、真っ暗な夜色の瞳が見開かれていた。けれど、すぐに、淡く笑って見せた。

それはもう、可憐な笑みだった。

にっこりと、花が咲くような。

 

その笑みにイルカの顔は見事に真っ赤に染まったのだ。

 

(いや、だって、可愛かったんだ・・・・)

 

遠い昔に自分を助けた彼女の、ナルトに向けられたとはいえ、これ以上無いほどに愛らしい笑みだったものだから。

ナルトに顔が真っ赤だとからかわれたのが懐かしい。

それからカグヤはよくよくイルカに絡んでくるようになったのだ。最初はナルトのアカデミーの様子を聞きに来る程度だったが、段々と距離が近くなっていった。

が、さすがに里の中での評判もある。何よりも、なんというか、このままずるずると続けるのもどうかと思う。

というか、イルカが辛い。

ただの親切心でこれが行われているとすれば、なんというか、自分の思い上がりに死にたくなると言うか。

 

「も、もちろん、カグヤさんが俺のことを心配してくれてて、それで、こんなにも色々としてくれてるのはわかってるんですけど!ただ、周りの目があって、なんでか、色々と、知りたいというか!」

 

しどろもどろにそう言ったイルカの顔は真っ赤になった。イルカも自身の顔に熱が集まっていることを理解した。

自分自身で何を言っているのだろうと考える。そこで、カグヤはきょとんと目を瞬かせた。

そうして、次の瞬間、カグヤはイルカに対して両手を伸ばした。肩が掴まれ、強制的に屈み込まされたイルカの、頬、というか、口の端に柔らかい感触が伝わる。

 

「へ?」

 

間抜けな声を出して、イルカはその感触を探るように、口の端を指先で撫でた。

 

「え、あ、えっと、え???」

 

動揺で何を言っているのかわからない。ただ、一つだけわかるのは自分の顔がまるで、ゆでたこのように真っ赤になっていることと。

そうして。

 

「あ、ほっぺ、に、あ、え?」

 

理解できない、いや、わかったのだ。

 

ほっぺたにチューされた!!??

 

茫然と、かきんと固まるイルカの耳にくすくすと少女のような笑い声が入り込む。

そこには、まるでいたずらに成功したような、けれど、緩くかすかに弧を描く口元と、緩く細められた笑みは、ひどく大人びていて、かすかに香る色香さえあった。

 

カグヤはイルカに顔を近づけて、楽しそうに囁いた。

 

「言わないと、イルカ先生は、わからない?」

「それは、その、どういう意味、なのかと。」

 

それにカグヤはくすりと笑って、イルカに微笑んだ。そうして、イルカの口の端をとんと突いた。

 

「さっきの意味、わかったら教えてね?」

 

柔らかく、なんだか甘い匂いのするような声音でカグヤは告げた。カグヤはそのままバイバーイと家を出ていく。

それにイルカはがんと、壁に頭を打ち付けて、ずるずるとその場に蹲った。そうして、顔を両手で覆う。

 

心臓がばくばくと音を立てている。顔から火が出るように熱い。

 

「・・・・意味ってなんだよーっ!」

 

叫んだそれに、返事をしてくれる存在はいなかった。強いて言うのなら、わかるぞと頷く卑猥様の幻影が存在していた気がした。

 

 

 

 

自分が、他とは少しだけズレた生き物であるというのは、何となしに自覚していた。

それをカグヤは別段気にしてはいなかった。

大おじである千手柱間は、その寂しさを賭博で埋めていたようだが、カグヤはそれさえも別段気にしていなかった。

 

戦争でも起きれば、カグヤの強さは大々的に宣伝され、祭り上げられるか、恐れられるか、どちらかになっていただろうが。

ただ、平和な世の中は小さな小競り合いや、災害などはあっても、おおっぴらな大戦は起らなかった。

そのおかげで、その少女は、愛らしい娘のままでいられた。

ただ、カグヤは、知っている。

 

それでも、任務で知られてしまった、人よりも強いという事実に遠巻きにされることもあった。

別段、疎まれるというわけでもなく、少しだけ距離を置かれるだけで。

恐怖と言うよりも、畏怖されて。

別段、それを気にしない。

大好きな人はたくさんいる。兄や姉、いとこたちに一族、そうして里の皆はカグヤのことを可愛がってくれる。

何よりも、可愛い弟分の二人がすくすくと育っている。

だから、カグヤは、必要の無いときはうとうとと微睡むだけだ。

 

けれど、あるときのこと。

一人の中忍を助けたことがある。

当たり前のように助けて、敵を蹴散らして、そうして振り返る。その先には、自分を恐れる誰かがいるはずだった。

 

が、そんなことはなかった。

確かに、そんな感情もあったのに。そこにあったのは、無邪気な感謝で。

 

変な人。

こわがってもいいのに。そんなこと考えていた時、また会った。可愛い弟分が懐いているらしい、その先生。

見覚えがあって、けれど、自分が近づいて、暴れたときのことを思い出して嫌な思いをさせるのも忍びなかった。

だから、遠巻きに見ていた。

そこで、ふと、カグヤは笑った。可愛い、弟分が笑うから。思わず笑いかけてしまった。

 

それに、うみのイルカというのは、ぼおっと、美しい女を見るように、見とれるように、頬を赤らめていたものだから。

 

「イルカせんせー、顔真っ赤!」

「ち、違う!ちょっと、その、暑いんだ!」

 

そんな会話が聞こえて、愉快になってカグヤはけらけらと笑った。

 

 

カグヤはてとてとと夜道を帰る。

それを襲える存在などいないから、暢気に、夜道を帰る。

 

カグヤは、己の頬をむにむにと揉んだ。冷たい夜風が頬に当たって心地が良い。

 

自分が微笑むだけで照れて。

自分が近づくだけでそわそわして。

自分が話しかけるだけで浮き足立って。

自分が抱きつくだけで固まって。

 

自分のことを、焦がれるように見つめてきて。

 

(可愛いなあ・・・・)

 

カグヤはそれにえへへへへと笑って、ちょっと踊るみたいにぴょんぴょんと飛んだ。

 

「次に会ったら、言ってくれないかな?」

 

顔を真っ赤にして、好きなんて、言ってはくれないだろうか?

カグヤはそう考えて、ふふふふと笑って家路を歩いた。

 





なあ、狭間?
何、オビト?
お前さ、正直、うみの先生のことどう思ってんの?
どうしたの、急に?
いや、だって、お前シスコンじゃん。
はあ?どこがよ、うちって結構ドライでしょ?
・・・全てのシスコン、ブラコンの基準をうちはに置くな。お前も一般的に考えたら十分にシスコンだ。

・・・いや、そりゃあ、うちの究極で完璧な、天才的なカグヤに釣り合う男かはわからないな。
急な手のひら返しに魂が追いつかねえ。
だが、お前、考えてみろ!
自分の身内で、ああいった系統の男を連れてきたら、確かに頼りがいはねえけど圧倒的に見る目があるなと思うだろう?
よくわからねえけど、お眼鏡に適ったのはわかった。そうして、気持ちはわかる!

扉間は

  • 女の子が欲しいが、息子しか産まれない
  • 女の子がすぐに産まれる
  • 女の子が欲しくて、末っ子に産まれる
  • どっちでもいい
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