インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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あんまり話は進んでいません

次は戦闘まで行きたいところです


第2話

食堂にたどり着いた静夢は、券売機で食券を発行した。受付の職員に渡して、待っている間に空いている席を捜した。

 

偶に他の生徒たちと目が合うと、手を挙げて応えるか、ウインクをして見せた。黄色い歓声を聞きながら、出てきた昼食を受け取って歩き出した。丁度、空いている席を見つけて座ると、ようやく落ち着けて息を吐いた。

 

「ここ、空いているか……?」

 

「ええ、どうぞ」

 

静夢と同じように、昼食を抱えたヴァルトが傍にいた。断る必要もないので、静夢は着席を勧める。ヴァルトの着席を見届けると、静夢は口元のフェイスマスクを外した。

 

「いただきます」

 

手を合わせて昼食に手を着ける静夢、対面に座るヴァルトは文化の違いから、呆気に取られていた。

 

「………?」

 

自分もやるべきかと、ヴァルトも手を合わせた。

 

「無理にやる必要はないと思うよ?僕は、君の習慣に文句は言わないから」

 

「……そうか」

 

短いやり取りを終え、ヴァルトも昼食にありつく。それからの二人の間に会話は無い。限定的な環境で、まだお互いに距離を計りかねているのだ。

 

「悪い、遅くなった」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ」

 

「…………」

 

そこに千冬と別れたケネスが合流する。彼は静夢の隣に座ると、対面のヴァルトを一瞥して食事を摂る。

 

「お前さんがヴァルト・パークスか……」

 

「どうも…」

 

「俺はこのIS学園の一年三組の担任、ケネス・スレッグだ」

 

二人の鋭い視線が重なる。ケネスはヴァルトに対し、静夢とは正反対の印象を抱いた。

決して静夢が浮かべないであろう、見た者を竦ませるような視線から自分と似たものを感じた。

 

「お前さんのことは調べたよ…手が先に出る、問題児ってな」

 

「荒れた環境にいたんでね……」

 

ケネスの言葉にヴァルトは、一拍置いて話始めた。

 

「あんなことがあれば、そうもなります」

 

「災難だったな……」

 

理由を知っているケネスは気づかうように話す一方、何も知らない静夢は口をはさめずにいた。

 

そんな中、部屋の隅に設置されたモニターからニュースが流れる。

 

『次のニュースです。日を追うごとに過激さを増していく、「反政府勢力運動組織 マフティー」。無差別攻撃も垣間見える彼らの行動に、世間からの反応は様々です』

 

静夢とケネスはそのニュースをじっくりと聞き入る。対面の二人の反応に、ヴァルトは首を捻ってモニターを見た。

 

「……マフティー、か」

 

「ケネス先生はどう思っているんです?」

 

「あん?何がだ?」

 

「マフティーの事ですよ、どうなんです?」

 

静夢の問いにケネスは言葉を詰まらせた。言いたいことは腹の内にあるのだが、それが喉に詰まったかのようになったのだ。

 

「ああ、いや、その……彼らの言い分は正しいとは思うんだがな……」

 

やがて言葉を飲み込んで、当たり障りのないことを口にして昼食に目を落とした。不審な言動にヴァルトは怪訝な表情を浮かべる。

 

「…………」

 

静夢はそんなケネスを横目に、それ以上は何も言わなかった。ニュースが流れた時、ケネスの顔が曇ったのだ。

 

"意地悪だったかな……"

 

静夢はケネスの事を知っていた。恩人である人物が彼を知っており、事前に情報をもらっていたのだ。

それを含めて、静夢はケネスに問うたのだ。我ながら、汚いやり方だと少し後悔したのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食を終えた静夢は廊下を歩いていた。視線を落として、考えを巡らせていた。

 

"これから三年はこの鳥籠の中、焦って気付かれるよりは大人しくしておいた方が楽かな"

 

彼の入学の目的は、この学園の情報を集める事だった。組織がこの場所を危険視しているということと、自分が偶然にもISを動かしてしまったということも含めての潜入調査でもあるのだ。

これから長い期間をこの場所で過ごすのだ、慎重になりすぎるくらいが丁度良いのかもしれないと考えることを止めた。

 

「……おい」

 

そうして歩いていると、またも声をかけられる。またか、と内心はうんざりとした気持ちで静夢は振り返る。

 

「なにか?」

 

努めて冷静に、静夢は問い返す。相手は予想通りの人物であった。

 

「なんでお前がいるんだよ……!お前みたいな底辺が…!」

 

織斑 春十は声を荒げながら静夢に近づいた。

 

織斑 春十―――織斑 千冬の弟であり、『世界で初めてISを動かした男』である。

幼い頃から千冬のような才能に溢れた存在であり、世間は彼を持ち上げた。彼の周りには常に人が溢れ、彼はそれを持て余すことなく使った。

千冬が謙虚とするのならば、春十は強欲であった―――。

 

彼は自分のために、言葉巧みに周りの人間たちを操ってきた。自身が気に入らない人間に対し、様々な噂を流して破滅へと追いやった。周りの人間を使い、自分の手を汚さない。常に高みの見物をしていた。

彼は千冬の弟という立場を存分に使ったきたのだ。

 

「あの、誰かと間違えていませんか?僕はご覧のとおり、ごく普通の子供だよ」

 

千冬と同じように、うまく言葉で彼を誘導する。植物監察官の訓練生として、彼は世界中を飛び回っていた。

結果として、植物監察官の知識と経験だけでなく、大人とのやり取りを身に着けた。

今となっては、大人も苦い顔をするくらいに口が上手くなっていた。

 

「ふざけるな!お前、どうやってここに来た。どんな手を使った!」

 

織斑は静夢の胸倉をつかんで、怒りをぶつける。

 

「ハァ……ここにいる、それが何よりの証拠だと思う。噂で聞くわりには、オツムは大した事ないみたいだね」

 

自身のこめかみの辺りをトントンと叩き、静夢はマスク越しに笑って見せる。彼の顔は目に見えて赤くなっていく。余程、静夢の言葉が頭に来たようだ。

ついに織斑は、怒りに任せて拳を振るった。

 

しかし、その拳には何も触れなかった―――。

 

拳の軌道を予測した静夢は、首を傾げると同時に織斑の脇腹に拳を打ち込んだ。織斑の拳は空を切り、予想外の腹部の痛みに苦悶の表情を浮かべる。

織斑の手が静夢から離れると、彼は織斑の腕を取って床に叩きつけるようにして組み敷く。

 

「揃いも揃ってしつこいんだよ……!」

 

そう言って溜息を吐いた静夢は、織斑を解放した。これ以上、自分の時間を無駄にするつもりは無いからだ。

 

「先に手を出したのそっちだから、正当防衛ってことにしておくよ。これ以上、僕に関わるな」

 

―――床に伏せる織斑を睨み付け、静夢はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業が終わると、静夢とヴァルトは放課後の教室にいた。

 

「長いな……」

 

担任の千冬から教室で待機するように言われたが、いつまで経っても当の本人は来ない。段々と苛立って来たヴァルトが席を立って、教室をウロウロと徘徊する。

 

「まぁまぁ、落ち着きなよ。これ、良ければどうぞ?」

 

機嫌を悪くするヴァルトを宥める静夢は、ポケットから二つの飴玉を差し出すとヴァルトはズンズンと足音を立てて歩み寄る。

乱暴に飴玉を一つ攫うと、包みを破いて口に放り込んだ。

 

それが幸か不幸か、ヴァルトの苛立ちを収めた。改めて冷静になると、自分の席に再び座った。

そんな彼を見て、静夢も余った飴玉の封を切った。

 

「お前は何も聞かないのか……?」

 

しばらくの沈黙を破ったのはヴァルトだった。本に目を落としていた静夢は、声に気づいて顔を上げた。

 

「無用な詮索はしない主義でね、聞かれたくないなら聞かないよ」

 

「…………」

 

それで会話を終わらせた静夢は、再び本に目を落とした。再び訪れる沈黙―――。

 

「まぁ、でも……」

 

「…………?」

 

妙な切り返しをする静夢に、ヴァルトは振り向いた。

尚も、本に目を落とす静夢が続けてこう言った―――。

 

 

 

「君が話しても良いと思ったら、その時に話してよ。僕を信頼してくれるのなら、僕も同じように君を信頼しよう」

 

 

 

その言葉に、ヴァルトは呆気に取られた。

幼い頃の、親友の言葉を思い出した―――。

 

『みんなが君を悪く言っても、僕はいつでも君の味方だから。でも、ケンカはだめだよ?君も相手も傷つくからね』

 

今は亡き親友の言葉が脳裏によぎると同時に、親友の影が静夢と重なる。

 

「昔のことなんだがな……」

 

そして、ヴァルトは自分の過去を静夢に語り始める―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

静夢はヴァルトの言葉に真摯に向き合った。

 

暗い表情で語られるヴァルトの過去は、聞いていて苦しくなるものだった。

 

ヴァルト・パークス―――その正体は、過去にイギリス貴族として繁栄した、パークス家の嫡男であった。

 

父であるルシアン・パークスは、その誠実な姿勢から様々な人間と良好な関係を築いていった。「親の七光り」と侮辱されたヴァルトが、何度も喧嘩をしても不問とされたのは、偏にルシアンを含めた大人たちの信頼関係があったからだ。

しかし、突如として時代のうねりが、彼とヴァルトを翻弄する。

 

 

ISの登場である―――。

 

 

これまで対等な関係を築いていた者たちは、掌を返してパークス家から離れていった。

そのほとんどが、オルコット家を始めとした女性の権利を主張する者たちだった。

濡れ衣を着せられ、ルシアンはヴァルトや信頼する者を連れてイギリスから亡命したのだった。

 

「どうにか流れ着いた場所でも、現実は対して変わらなかった。だから、同じように拳で黙らせてきたんだ」

 

「そうか……」

 

ヴァルトの話を聞いて、静夢はとあるニュースを思い出した。

 

発展途上国のインフラが整備され、ニュースに取り上げられたことだ。そこにある有名な家が関わっていたことを思い出したのだ。

 

 

 

その場所の名は―――。

 

 

 

「―――『バニラ』」

 

「ああ、荒れ放題のあの場所は、慣れるまでに時間がかかった」

 

バニラ―――発展途上国と聞いて、最初に名が挙がるほどの治安の悪い国であった。窃盗や暴行、先進国では罪に問われることが横行していた。ルシアンは当時、その町に住むアバレス・レヴォという人物と共にバニラの変革を決意する。

 

ルシアンもアバレスも、人との繋がりを駆使して、資金と物資を集めた。

根も葉もない噂が流れたパークス家であったが、ルシアンの人となりを知っている者たちが集まった。かつて彼に救われた者、彼と親交のあった者たちが噂を聞きつけて協力を申し出て来たのだ。

 

そんな中でも、ヴァルトは街の不良たちを相手にしていた。どんな環境にいても、ヴァルトには七光りという肩書が付いて回った。

大人になり切れないヴァルトは、煽られるとすぐに拳を突きだす性格だった。

その度にヴァルトの親友が間に入って、仲裁をしていたという―――。

 

「まぁ、こんなところだ……」

 

「ありがとう、話てくれて」

 

「はぁ?」

 

ヴァルトは思わず声を上げた。何も感謝されるようなことは話していない、静夢を怪訝な目で見た。

 

「僕を信頼してくれたから、話てくれたんでしょ?だから、ありがとう」

 

「……はぁ」

 

そんな言葉を言われて、ヴァルトはむずがゆい気持ちになった。よく考えてみると、どうしてこんなことを静夢に話したのか、自分でもこの感情が分からなかった。

 

「お待たせしてすいません!」

 

そんな折、息を切らした副担任の真耶が教室に駆け込んでくる。どうやら、二人の部屋割りの件についてらしい。

事前に二人が入学することは通達があったらしいが、如何せん滑り込みだったのだ。

 

二人の相部屋が用意できず、一人は一人部屋、一人は女子生徒との相部屋らしい。

 

「アイツはどうなったんです?」

 

「ああ、織斑くんは篠ノ之さんとの相部屋です」

 

「ここも色々とあるんですね……」

 

「はい、大変なんです……」

 

どんよりとする真耶に、静夢はせめてもの労いとして、彼女の肩を叩いた。

 

「さて……」

 

「どうした……?」

 

「ヴァルトくん……」

 

「な、なんだ……」

 

スッと顔をあげ、静夢はヴァルトを見据えた。声色は普通だが、目からは先ほどのような優しさはない。

思わず後ずさるヴァルトだが、静夢は容赦をしなかった。

 

「じゃ~んけ~ん、ポイ」

 

「ッ……!」

 

―――不意を突かれたヴァルトは、思わず手を伸ばしたのだった。

 

 




キャラ紹介 その2

ヴァルト・パークス

元々はイギリスの名家、パークス家の嫡男。父であるルシアン・パークスの七光りと噂され、ケンカ騒ぎが後を絶たなかった。
ISの登場によって、濡れ衣を着せられて国を追われる。
たどり着いた発展途上国のバニラでもケンカに明け暮れ、その拳で勝ち抜いてきた。
かつての親友を捜しているらしい…。

バトルスピリッツ赫盟のガレット&ミラージュのキャラクター
本作では荒々しい性格にしています。
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