インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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第15話

静夢と鈴音がいる武道場、休憩に入った剣道部員たちは休息の最中で、武道場の二人に注目する。その中には箒の視線も含まれていた。

 

中学時代、全国大会に出場した経験のある彼女は、IS学園に入学しても剣道を続けていた。放課後に武道場に訪れた三人を気にせずにはいられなかった。

 

「……」

 

「…気になるのか?」

 

「ッ、ああ……」

 

壁に背を着けながら眺めているヴァルトに声をかけられ、肩を揺らす。流れる汗を気にも留めず、二人の戦いを見つめる。

彼女のその眼差しに、羨望のようなものを感じたヴァルトは、自分とは似て異なる何かを感じた。静夢との戦いで彼の過去を見たヴァルト、その中には箒の姿を垣間見た。

 

「最初は互いに様子見だろうか……」

 

「中華娘の方はな。静夢は…おそらくだが、裏をかかれて焦っている」

 

「……よく見ているんだな」

 

「当然だ、俺が認めたヤツだからな―――」

 

そう言うヴァルトの目が変わった、同時に静夢の様子も変わった。鈴音との距離を置いて、目を伏せた。

 

「な、なぜあんなに距離を…」

 

「アイツも本気を出すみたいだな、そろそろ動くぞ」

 

戸惑うばかりの箒に、ヴァルトは静夢の全てが手に取るように理解できた。

二人の戦いは加速していく―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を伏せた静夢は、気持ちを落ち着かせる。彼女のスタイルに気持ちを乱したが、攻略法はいくらでもある。自分の経験と、持ち得るテクニックを信じるだけだ。

 

彼女の鋭い『爪』と荒々しい『牙』を崩すには―――。

 

"何のつもりか知らないけど、見逃すわけが無い……!"

 

静夢の思惑が読めないものの、膠着状態を放置するわけにはいかない。元々、せっかちな性格も相まってか、鈴音は臆することなく駆け出した。

未だに目を閉じて動かない静夢に目掛けて、渾身の力を込めた拳を放った―――。

 

「ッ!」

 

静夢が目を開いた。咄嗟に右手を出し、鈴音の拳を逸らした。驚いた鈴音だが、追撃の手を止めない。右手によって隠されていた左手で、同じように脇腹を狙う。

 

「!!」

 

「ッ、ウソ!?」

 

鈴音が声を上げた。追撃さえも読まれたのだ、静夢は鈴音の左手をしっかりとつかんでいた。

 

「そぉれ!!」

 

鈴音の右手を掴み、完全に彼女を拘束した静夢は、力いっぱい彼女を放り投げた。左手だけを離し、彼女を武道場に叩きつける形となる。

 

「ッ~~~!?」

 

驚いたのも束の間、気が付いたら天を仰いでいた鈴音。苦悶の表情を浮かべていた。静夢が追い打ちをかける、右手を掴んだまま、左拳を振り下ろす。

 

「舐めんな~~!!」

 

鈴音がそれに対応する。小柄な体格を十二分に使い、小回りの利く動きで切り抜ける。左脚を大きく回し、続いて右脚を振り回した。

静夢は思わず鈴音の手を離してしまい、彼女の自由を許した。

 

「フッ!」

 

膝を胸に着けるようにして体を丸めた彼女は、畳に着けた両手を一気に押し上げる。その勢いを使って、体を起こした彼女は何事もなかったかのようにして静夢に向き直る。

 

「「……」」

 

お互いに構えると、再び相手の出方を窺う。

すると、鈴音は構えを解いた―――。

 

「降参するわ、これで終わりにしましょ」

 

まさかと思われた決着に、見学していた剣道部員が溜息を洩らした。静夢は構えを解かず、鈴音の一挙手一投足に注目する。

静夢は覚悟を決め、思考ではなく直感で動くことを決めた。相手の動きに合わせて、その場で対応していたのだ。

 

そんな中で、彼女の降伏宣言だ。まだ何かあるかもしれないと、警戒を解かずにはいられなかった。

鈴音は未だに自分を睨み続ける静夢を見て、苦笑いを浮かべて手を振った。

 

「だから、私の負けよ。約束は守るわ」

 

「……ハァ」

 

彼女の言葉にようやく力を抜いた静夢は、武道場に体を沈めた。決着を見届けたヴァルトは武道場に足を踏み入れる。

 

「生きているか?」

 

「どうにかね…」

 

上から井戸を覗きこむように見下ろすヴァルトは、静夢の疲れた表情を見て、気分を察する。手を伸ばすと、静夢がそれを掴む。引っ張ってやると、思ったよりも重かった。余程、力んでいたのだろう。反動で力が入っていなかったのだ。

 

「苦戦したみたいだが……」

 

「うん、ちょっとね。さすが、『竜爪虎牙拳』だ」

 

「知ってるの!?」

 

静夢の言葉に反応したのは鈴音だった。鈴音の驚いた顔に納得した。

 

「ということは、君の師匠は『的 劉信(ディー リュウシン)』?」

 

「師匠のことまで……」

 

「仕事で中国に行ったことがあってね。道に迷った時に助けられたんだよ」

 

「どこにでも行くんだな……」

 

「わがままを言ってね、強引についていったんだよ」

 

植物監察官の研修生となって間もない頃、ハサウェイに無理を言って中国に渡ったことを思い出す。まだ経験の浅い彼は案の定、道に迷った。携帯電話も使用できず、途方に暮れていたところを、鈴音の師である劉信と出会ったのだ。

それから数日の間、彼のところで世話になっていた。そこで知ったのが、竜爪虎牙拳である。

 

「あの人に会わなかったら、今頃どうなっていたか……」

 

「じゃあ、師匠が言ってたヤツって、アンタだったのね」

 

「え、悪く言われてた?」

 

鈴音が思い出したように呟くと、静夢は困惑した。迷惑をかけた自覚があったが、門下生に愚痴をこぼすほどに疎ましく思われているとは思いもしなかった。

 

「逆よ、弟子にしたかったらしいわ。育てたかったって」

 

「なんだ、そっちか……師範は元気?」

 

「ええ、まだ若い人でもあるしね」

 

最後はわだかまりが解けて、劉信のことや流派のことを話しあっていた。汗の始末をして着替えると、武道場を後にしても、話は尽きなかったようだ―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴音と別れ、ヴァルトと合流した静夢は肩を並べて歩く。目指す場所は食堂だ。

 

「ハァ、面倒だな……」

 

「そう言わないの。折角、お呼ばれされたんだから」

 

「あいつが居れば十分だろうが……」

 

「彼にそんな甲斐性はないさ、食費が浮くと思えば楽だろう?」

 

不貞腐れたヴァルトに対し、静夢は肩を竦めてみせた。今回は一年一組のクラス代表が決定したことの集まりだ。主役はクラス代表である織斑なのだが、同じクラスであるために二人も招待されている。

 

ISを動かせる男が三人もいるということで、別のクラスからも参加を希望する生徒も多かったらしく、クラス会というよりも学年を通じてのオリエンテーションに近いものとなる。

本音に引きずり込むようにして簪も参加するらしく、気乗りしていない様子をヴァルトは知っている。鈴音は織斑とのこともあって、自室に籠るらしい。

 

「あ、来たよ!」

 

食堂に入ると、予想よりも参加者がいた。ガヤガヤとする食堂を歩くと、二人を見つけた清香が声を上げた。あまり目立ちたくないヴァルトが溜息を吐き、静夢はマスクの下で苦笑いを浮かべた。

 

「これで揃いましたね」

 

「さ、早く早く!」

 

神楽が周囲を見渡し、『鷹月 静寐』が静夢とヴァルトに着席を促す。席には既に織斑が座っており、ヴァルトは静夢の背中を押して着席を促す。何事かと思って振り返ると、ヴァルトが真剣な顔で首を横に振っていた。

 

「仕方がないな~」

 

ヴァルトの気持ちを察した静夢は、溜息を吐いて織斑の隣に座ると、その隣にヴァルトが座った。よっぽど織斑を嫌悪しているらしく、静夢を壁にして着席したのだ。

 

"イヤな役回りだな……"

 

自分が行かなければヴァルトは参加しないだろうし、織斑だけだと色々と危ぶまれる。ましてやこの二人だけとなると、また変な騒ぎになるだろう。

自分でも損をしていると思いながら、平静を装う静夢は目を伏せた。

 

静夢とヴァルトが来たことで、一組の面々は揃ったらしい。二人の飲み物が用意される。

 

「えー、それでは!織斑くんのクラス代表決定を祝して、かんぱーーい!!」

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

 

静寐の音頭を皮切りに、食堂は大賑わい。幼い彼女たちの喧騒が辺りを包む。

 

「月末のクラス代表対抗戦、頑張ってね。織斑くん」

 

「食堂のスイーツ無料のためにね!」

 

「ああ、頑張るよ。ありがとう」

 

クラスメイトが、月末に行われるクラス代表対抗戦に参加する織斑にエールを送る。優勝したクラスには、半年間のスイーツ無料がもたらされる。甘味の好きな少女たちは、それに夢中だ。故に、織斑には何があっても勝利してもらわなくてはならないのだ。

 

そんな彼女の裏側も知らず、織斑は張り付けたような笑みを向ける。静夢はそんな彼の態度を嫌悪して、ヴァルトの方に身を寄せた。

 

「お前もかよ…」

 

「仕方がないだろ、許してよ」

 

お互いに険しい顔をして、テーブルの食事をつまみながら、時間の経過を待つのだった。

 

「はーい、新聞部です!噂の三人に取材しに来ましたー!」

 

「「「「「「おぉーー!」」」」」」

 

人の波をかき分け、カメラを首に下げた少女が現れる。

 

「どうもー、新聞部の黛です。あ、これ名刺ね」

 

素早く三人に寄る『黛 薫子』は、三人に名刺を渡す。ヴァルトと織斑は、受け取った名刺を怪訝な顔でジッと見る。

 

「ありがとうございます。累 静夢です、よろしくお願いします」

 

「お、これはご丁寧に……頂戴します」

 

「「「「「「……大人だぁ~~」」」」」」

 

静夢は懐からケースを取り出し、名刺を一枚取って黛に渡す。普段では見慣れない光景に少女たちが何故か盛り上がる。

 

「ガチなやつだ、いつも持っているの?」

 

「ええ、上の人に持たされました。良くも悪くも役に立ってます」

 

ハサウェイと共に行動している時から、いざという時のために名刺を持たされた。黛のものに比べてしっかりとした作りに、彼女は感嘆の息を吐く。

 

「それじゃあ、早速聞いていこうかな。まずは織斑くん、クラス代表になった意気込みを」

 

「え、いきなりだな……とりあえず、頑張ります」

 

「えー、ちょっとインパクトに欠けるな……もっと無い?俺に触れるとやけどするぜ、みたいな」

 

無難な意気込みに、黛は顔を顰める。記事にする身としては、もっと人目を惹くようなものが欲しいのだ。真向から否定された織斑も顔を顰めると、何とか捻り出そうと考え込む。

 

「自分、不器用ですから…」

 

「うわ、前時代的!ま、それでいいや。適当に書いておくから」

 

「いいのか、それ…」

 

「世間に出回らないし、良いんじゃない?」

 

黛の態度に、ヴァルトは彼女の仕事を疑った。静夢は世間の情報操作の闇を知っているため、大して気に留めなかった。

 

「次に累くん、織斑くんに快勝したみたいだけど、どうして辞退したの?」

 

織斑から静夢に矛先を向けた黛の純粋な質問、近くにいる誰もが耳を傾ける。機体性能や操縦技術など、どれをとってもトップクラスだ。クラスメイトの誰もが、静夢が代表に就くと思っていた。

 

「そうですね、企業の代表でここにいるという事と、仕事の方もあるので辞退しました。まぁ僕自身、就任するつもりがなかったというのが、本音ですけどね」

 

顎に手を添えて、考えるような素振りをした静夢は、マスクの下でクスクスと笑った。その答えでいい感触を得たのか、黛も周りの生徒たちも笑顔を浮かべた。

 

「じゃあ、パークスくんにも聞いちゃおうかな。ズバリ、ライバルは?」

 

「累 静夢。こいつを追い越す事しか考えていない」

 

迷いなく宣言し、ヴァルトは静夢の肩に肘を置いた。その堂々とした態度に再び歓声が上がる。肩に乗せられたヴァルトの肘に、静夢は首をもたげる。

 

「そんなに言われたら照れちゃうよ」

 

「本心だ」

 

「ほほぅ、仲の良さも垣間見えて情熱的、と。それじゃあ、最後に写真、いいかな?」

 

メモを終えた黛がカメラを向けた。織斑が立ち上がると、仕方なく静夢とヴァルトも立ち上がる。移動する際に、セシリアと目が合ったヴァルトは彼女に手招きをする。

ヴァルトも静夢もセンターを嫌って、織斑を立たせる。そうすると、必ず織斑の隣に立つこととなる。

壁として彼女を呼び、押し付けるように織斑の隣に立たせた。

 

"とことん嫌うね……"

 

"言わなくても分かるだろ…"

 

目が合っただけで会話し、二人は両端に立った。

 

「私まで、良いのですか?対象は三人でしょうに…」

 

場違いのように感じていたセシリアが事情も知らず、異性に挟まれてオロオロとしている。そんな彼女に、織斑は一歩近付いて声をかける。

その瞳にはドロリとした淀みがあった。彼女に優しさを向け、気を惹こうという下心があった。

 

「当然さ、だって―――」

 

「自信を持って、君はここに立つ資格がある」

 

「もっと堂々としていろ、いつぞやの時みたくな…」

 

「な!あの時は……!」

 

「まぁまぁ、そこまでにして。ほら、さっさと撮ってもらって終わりにしよう?」

 

織斑が声をかけた瞬間、静夢とヴァルトがセシリアに声をかけた。織斑の声は、大きな波にさらわれたかのように消えていった。

 

「はーい、撮りますよー」

 

黛の準備が整い、織斑は行き場のない怒りを飲み込んだ。悟られないように、グッと堪えていつものように平静を保った。

 

「行きまーす。はい、チーズ!」

 

姿勢を正した四人を見て、黛はカメラを構えた。フラッシュが焚かれると、四人の後ろにはクラスメートたちの姿があった。

 

「貴方たち……」

 

「いいじゃん!セシリアだけズルい!」

 

「そーよ!」

 

「すいません、もう一枚撮ってもらっていいですか?」

 

クラスメートたちに呆れるセシリアは溜息を吐き、クラスメートたちは逆ハーレムのような彼女の立場に不満を漏らす。

静夢は黛に頼み、再び撮影を申し込んだ。静夢の意を理解し、ヴァルトはクラスメートたちを指示して整列させた。

 

黛は段々と和んでいく雰囲気に笑みを浮かべ、彼らの姿をシャッターに収めたのだった―――。

 

 

 

 




濃密な戦闘を期待していた方々、申し訳ありません。次回はガンガンやっていくつもりですので、ご容赦ください。

もう少し書きたかったのですが、ここで一度切ります。
次回はもう少し頑張ります。

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