インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

26 / 54
あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

皆さまのおかげで、UA20000を超えました。ありがとうございます。

本年も皆さまにとって良い年であることを祈っております。




第20話

「ん……」

 

心地よい温もりに包まれたベッドの上で、鳳 鈴音は目を覚ます。朧気な意識のまま体を起こすと、部屋の模様で自室にいないことを理解する。ベッドには自分以外の人間はいない。

しかし、少し前までいたような気がする。ベッドの温もりがその証だろう。

 

「……うん」

 

どこか納得し、鈴音は再びベッドに身を委ねる。心地よいこの温もりに浸り、夢の中へと沈んでいく―――。

 

「……起きた?」

 

そんな鈴音に声をかけた累 静夢は、両手に淹れたばかりの紅茶を持っていた。今はマスクを外して、本来の自分をさらけ出していた。鈴音は横になったまま、顔を出して静夢を見つめた。

 

「要る?」

 

可愛らしい様子の彼女に、カップを差し出す静夢。その変わらない微笑みに、鈴音は観念して体を起こす。静夢から紅茶を受け取り、息を吹きかけて冷まして飲み始める。

意識がハッキリとして、冷静になった途端に鈴音は頬の紅潮を感じる。封じ込めていた感情が溢れ出し、行為にまで及んだのだ。今は一糸纏わぬ姿でいる。

 

「大丈夫だった?どこか具合が悪くなったりしていない?」

 

「え!?あ、ああ……大丈夫、大丈夫だから」

 

「そっか」

 

再び優しい笑みを向ける静夢。鈴音は飄々とした様子への悔しさと、自分だけ焦っていることへの恥ずかしさが入り混じっていた。純潔を捧げた結果となるが、静夢の手慣れたリードに身を任せ、一時の快楽と安心を味わった。

そこに悔いや怒りといった感情は存在しなかった。

 

「あまり遅くなると怪しまれちゃうし、早いうちに帰った方がいいね。シャワーは浴びれそう?」

 

「そうね」

 

「一緒に入る?」

 

「い、いいわよ……もう」

 

意地の悪い言い方をする静夢に、鈴音は頬を膨らませる。時計は早朝を示しており、遅れると織斑 千冬やケネス・スレッグといった教師たちに見つかる可能性がある。鈴音は気だるい体を動かし、シーツを脱いでベッドを出た。

 

「あ―――」

 

足に力が入らず、膝を折って転びそうになる鈴音。それに反応した静夢が鈴音を受け止めた。

 

「ごめん、ありがと」

 

「……」

 

「あ、んん……」

 

苦笑いを浮かべる鈴音に悪戯心が沸いたのか、静夢は優しく口付けを交わす。驚く鈴音だが、それを受け入れる。唇から感じる温もりが行為を思い出させ、鈴音の気持ちを揺さぶる。

 

「もう、急ぐんでしょ?」

 

「…そうでした」

 

鈴音に諌められ、静夢は鈴音を離した。シャワールームへ消えていく鈴音を見送り、静夢はベッドへ倒れ込む。鈴音の温もりがまだ残るベッドで、昨夜の行為を思い返す。

無意識に彼女を求めて、少し強引になっていた自分が情けなく感じてしまう。仕事で教えられた相手の要求に応える姿勢を保てず、ただ欲望の向くままに鈴音の体を貪った。

 

「まだまだ、だよな……」

 

見知った相手だからか、自分への思いを吐露したからか―――どちらにしても、まともに仕事をこなせたとは言えないだろう。自分がまだ半人前であることを思い知る。

 

色々と考えていると、シャワールームから物音がする。鈴音が出てくる前に、彼女の脱いだ服を集めた。更に、ドライヤーと櫛を用意して彼女の帰りを待った。

 

「はぁ~、ありがとう」

 

「いいえ、目が覚めたかな?」

 

長い髪を拭きながらタオルを巻いた鈴音が出てくる。静夢の問いに頷くと、静夢が集めた服を身に着けていく。ジャケットのボタンを留め、鈴音は静夢の膝に腰を下ろす。

そんな彼女に笑みを浮かべ、静夢は鈴音の髪にドライヤーの温風を当てる。適切な距離で優しく当て、片方の手で髪を梳く。

 

「―――よし」

 

ドライヤーを止め、櫛を手に取って髪を梳かしていく。鈴音のトレードマークである二つの髪留めを取り、髪を纏めてセットしていく。

 

「完成、これでいい?」

 

「……うん、合格」

 

髪留めを触りながら、静夢の腕前を確かめる。振り返って笑みを浮かべると、静夢も釣られて笑う。鈴音は立ち上がって歩き出し、静夢もそれについていく。

扉の前にたどり着くと、鈴音が振り返って静夢を見つめる。

 

「送っていくよ」

 

「遠慮するわ、謹慎中でしょ?下手に噂が立つのは良くないだろうし」

 

「……そうだね」

 

逆に気を遣われて、申し訳なくなる静夢は顔を伏せる。

 

「―――『静夢』」

 

名前を呼ばれ、静夢は思わず顔を上げた。その視線の先に、目を閉じてジッと待つ鈴音がいる。彼女の頬に手を当て、静夢は再び口付けを交わした。唇が離れると、二人は見つめ合い、抱きしめ合う。

しばらくそのままで、温もりを感じ合う―――。

 

「―――それじゃあ、行くわ」

 

「うん、またね」

 

そう言って、鈴音は手を振って静夢の部屋を出る。扉が閉まり、静寂の中で腕をダラリと下ろす。全てが終わり、緊張の糸が切れた静夢から欠伸が出た。

彼の予定は未だに決まっていない、再びベッドに倒れ込む。彼女の匂いと温もりが残るベッドで、静夢は再び夢の世界へ落ちていく―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

謹慎から五日が経過した、静夢はロンド・ベルのメカニックと通話をしていた。パソコン越しに、画面の端にデータを映しながら意見交換をしていく。

 

『俺が過去に使ったものをISで再現した形だけど、あの時は総力戦だったからな…』

 

画面の向こう側で遠くを見つめるメカニックの『タクヤ・イレイ』は、どこか複雑そうだった。かつて、ユニコーンガンダムの強化プランを設計した人間であり、宇宙世紀を生き抜いた人間でもある。

ISというモビルスーツとは違う新たな技術に目を輝かせるが、それによって蔓延した女尊男卑の風潮にげんなりとしていた。

 

「いや、これだけの武装だけど、デザインというのかな?戦闘に支障をきたすことが無いような設計はありがたいよ。早速、帰った時に試したいな」

 

『お、おう。準備はしておくよ』

 

「わざわざありがとう、『タクヤくん』」

 

静夢が意見を述べ、屈託のない笑顔を向ける。その顔を見て、タクヤは溜息を吐いた。

 

「どうしたの?」

 

『ああ、いや……まだ、慣れなくてな』

 

頭を掻きながら呟くタクヤは、未だにしっくり来ない呼び方に歯がゆさのようなものを感じた。初めて会った時も、「タクヤさん」という静夢の謙遜ぶりには困惑したものだ。

タクヤとしては、静夢と対等でありたいと思う部分がある。対して静夢は、自分の方が下であるべきと、見事に食い違う部分があった。

 

―――静夢が妥協して、今の呼び方になったそうだ。

 

「言ったでしょ?僕の方が下なんだから、当然だよ」

 

『俺は別になぁ……』

 

「最低限の礼儀としてだよ、タクヤくん」

 

再び溜息を吐くタクヤは、頑張って飲み込んで良しとする。このまま問答をしても何も解決しそうにない。

 

『それじゃあ、準備は始めておくからな』

 

「うん、ありがとう」

 

そう言って通信は終わった。静夢はパソコンの電源を落とし、コーヒーを淹れようとキッチンに向かう。ケトルを火にかけ、沸騰を待つ間にドリッパーやフィルターといった道具を準備する。

 

コンコンコン―――。

 

そんな中、来客を告げるノックが聞こえた。静夢は机に置いたマスクを着け、扉の前に立つ。

 

「……はい」

 

「はーい。お姉さんだけど、いいかしら?」

 

「…どちら様です?」

 

全く心当たりのない来客に、静夢は首を傾げた。

 

「いやねぇ。私よ、私」

 

「この部屋に簪ちゃんはいませんけど……」

 

「分かってるじゃない!バカにして…」

 

「どうされたんです?」

 

仕方なく扉を開ける静夢の前に、扇子で口元を隠している楯無がいた。扇子に書かれた「屈辱」の文字は、彼女の心情を表しているようだった。うんざりとした態度で、静夢は返事をしていた。

 

「謹慎は今日で終わりよ、その知らせに来たの」

 

「わざわざそれを言うためだけに?しかも、こんなに早く解除されるなんて」

 

「いちいち引っかかる言い方ね…」

 

棘のある言葉に楯無は眉間に皺を寄せる。

 

「貴方が手引きをしたという証拠が見つからなかったし、これ以上の謹慎に意味が無いと判断されたわ」

 

「最初から違うと言っているのに…まぁ、形でもやっておかないと後が怖いですものね。こんな世界だし」

 

静夢が目を伏せて文句を言う。その言葉に、楯無は何も言い返せない。静夢の言う通り、この世界は大きく歪んでしまった。女性の小さな一言で、事が大きく一転してしまう事がある。

 

それはこのIS学園でも例外ではない―――。

 

平等に接する人間もいれば、セシリアのように女尊男卑主義の人間もいる。大人も子供も関係なく、敵や害悪と判断されて排斥しようとする動きもあるという。

 

「分かりました、わざわざありがとうございます」

 

本題が終わり、静夢は扉に手をかけた。

 

「―――待って」

 

楯無が部屋に戻ろうとする静夢を引き留める。

 

「どうしました?」

 

「あなたは一体、何者なの…?」

 

疑問と書かれた扇子を広げ、口元を隠す楯無の目は鋭かった。幾度も超えて来た場面だ、静夢にとっては脅威にはならない。

 

「御覧のとおり、僕はごく普通な子供ですよ。隠すことは何もありません」

 

マスクの下でニヤリとしながら、静夢は堂々と言ってのける。楯無の意図の凡そは理解できる、楯無も静夢のことを完全には信頼してはいない。

簪に協力しているとはいえ、疑いを晴らすには説得力に欠ける。

 

「そんなに疑うのなら、釈放なんてしないでここで始末すればいい。そうすれば悩みの一つは消えますよ?」

 

「ッ!」

 

「疑わしきは罰せずですか…失礼します」

 

それだけ言い残し、静夢は扉を閉める。一人になった部屋でマスクを外し、吐息で蒸れた口元を拭う。

そして、再びコーヒーを淹れようとキッチンへ向かったのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ジオニック社の一室でシャア・アズナブルは一枚の書類を眺めて思考の海を泳いでいる。

書類に記載されている一人の少女、そして少女のものと思われるISの情報が添付されている。

 

「『シャルロット』を送るのですか?」

 

「ああ、彼女の方が適任だろう」

 

部屋に入って来たナナイ・ミゲルは、シャアが持つ書類を見て尋ねる。頷いたシャアは、書類を机の上に置いた。そして、パソコンに映る詳細なデータを見つめる。

 

「『ザク』が再び日の目を浴びるとは、思いもしませんでした」

 

「宇宙世紀ではあり得なかっただろうな、この世界だからこそだろう」

 

宇宙世紀で発展したモビルスーツの開発と運用。自身も搭乗し、生涯のライバルと激闘を繰り広げた機体。汎用性の高さから、様々な姿で戦場に出てきたが、時代の流れと共に姿を消していった。

 

「話を通しておいてくれ。彼のところなら、喜んでいくだろう」

 

シャアの指示にナナイは小さく頷いた。候補がもう一人いたのだが、性格からして潜入には向いていない。無邪気で天真爛漫な面が強く、事態が悪化してしまう可能性があった。

ナナイとしては、もう一人が行ってくれることを願った。あまりにも無邪気で、我の強いあの少女とは何度も衝突してきた。しばらく自分から離れてくれれば、気も楽になっただろう。

 

「『クェス』には向いていないことだよ、仕方がないさ」

 

考えていることを言い当てられ、ナナイは言葉に詰まる。シャアもナナイの考えは理解できる。

候補に挙がった『クェス・パラヤ』は、あまりにも純粋だ。故に大人の考えを理解できず、周囲の反感を買うことがある。静夢でさえも、やり辛い相手と言わしめたほどである。

 

溜息を吐いてナナイはシャアに敬礼をすると、部屋を出て別の場所へ向かう。当の本人がいるであろうファクトリーに通信を入れて、搬入する資材や機体の調整をすべく、ナナイは感情を押さえ込んで廊下を歩いた―――。

 

 

 




次回からようやく原作2巻に入ります。

気ままにゆっくりと投稿する形になりますが、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。