インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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今回よりタッグマッチに入ります。

あと2.3話で締めようと思ってます。


第29話

数日後、学年別トーナメントの開催が宣言された。轡木と千冬の言葉を始め、今大会の細かなルールの説明を経て、トーナメント表が発表される。タッグの申請をしていない者たちは抽選でパートナーが決められる。

 

「結局、ここで抽選になるな」

 

「まぁ、いいんじゃない?余計な騒ぎになるくらいなら」

 

特定のタッグを組まず、静夢とヴァルトは当日の抽選で相手を決めることにした。そうした場合の混乱を望まなかったからだ。選ばれた人間を妬み、自分が成り代わろうとする者の存在もあり得るからだ。

 

「あ、出るよ」

 

教室のディスプレイにトーナメント表が映し出された。それぞれの対戦相手やパートナーに一喜一憂する少女たち、静夢たちは自分の名前を探しながら、それぞれのブロックにいるメンバーを確認する。

 

「本音、頼んだぞ」

 

「お~、任せて~!」

 

ヴァルトはタッグを組む事となった本音に声をかける、本音は相変わらずの間延びした声で返事をする。いまいち力の入らない感覚だが、いざという時の爆発力には機体出来るだろう。打鉄弐式の開発で顔を合わせるようになったこともあり、ヴァルトは知り合いと組むこととなって安堵を覚えた。

 

「神楽ちゃんとだ、よろしくね」

 

「はい。微力ながら協力させていただきます」

 

「そんなに固くならないで、楽しくやろうよ」

 

どこかぎこちない様子の神楽に声をかけ、静夢はいつも通りに柔らかな物腰で対戦相手や同じブロックの相手を確認する。

 

「違うブロックだね」

 

「ああ、そうだな」

 

静夢のいるブロックにヴァルトの名前は無かった、勝ち進んだ先で会うことになりそうだ。

 

「負けるなよ?」

 

「僕はどうでもいいんだけど、君に言われたら仕方がないな」

 

友との約束を交わし、教室はいつも通りの空気が流れる。今回のイベントは午後から始まる。午前はいつものように授業が行われる。

千冬が教室に顔を出すと、緩んだ空気が引き締まる。ホームルームを終え、授業の準備のためにザワザワとする教室。イベントに浮足立つ雰囲気は、千冬を以ってしても抑えることができなかった。

 

授業を終えた生徒たちは昼食のために食堂へ向かう。午後のイベントもあり、普段よりも人が集まっている。静夢とヴァルトは人で溢れる食堂を前に呆然とする。空席を探すどころか、入れるかどうかさえ分からないほどの盛況であった。

 

「どうしようか?」

 

「時間があるとはいえなぁ…」

 

購買部で適当に済ませようかとも考えたが、同じように人で溢れ返っているだろう。そんな二人に救いの手が差し伸べられるーーー。

 

「やっぱりここにいた!」

 

「教室にいなかったから、もしかしてと思ったけど…」

 

二人に声をかけたのは鈴音と簪だった。声を聞いて振り返る二人、よく見ると鈴音たちの手には巾着袋が握られている。

 

「どうしたの?」

 

「この様子じゃ食い損ねるぞ?」

 

食堂を指さすヴァルトに対し、鈴音は溜息を吐いた。

 

「こうなるかもしれないから、自分たちで用意したのよ…」

 

「ヴァルトさえよければだけど…」

 

鈴音と簪は持っていた巾着袋を二人に差し出した。困惑するヴァルトは静夢を見た。静夢は二人の意図に気づいて、肩を竦めて見せた。

 

「わざわざありがとう、嬉しいよ」

 

「……悪いな」

 

二人の気遣いを受け取り、一同は食堂から場所を移す。賑わう廊下や教室の前を通り、屋上に到着した四人はようやく落ち着いて腰を下ろした。

 

「はぁ、疲れたね…」

 

「まったくだ…」

 

屋上にたどり着くまでに声をかけられ、もみくちゃにされた静夢とヴァルトは溜息を吐く。途中の自販機で買ったドリンクを飲んで気分を落ち着かせる。

 

「さて、いただこうか?」

 

「…だな」

 

二人からもらった昼食を前に、静夢とヴァルトは姿勢を正した。背筋を伸ばして手を合わせた。

 

「「いただきます」」

 

巾着袋の紐をほどき、中の昼食を取り出す。中身は二つのタッパーになっていた。

 

「わぁ、豪勢だ」

 

静夢の方は中華一色となっており、酢豚にエビチリ、焼売といった本格的なものとなっていた。もう一つのタッパーには、海苔に包まれたおにぎりが敷き詰められていた。

静夢の明るくなった表情を見た鈴音は、どこか自慢げだった。

 

「おぉ…!」

 

ヴァルトの方はタッパーが一つだけだった。サンドウィッチが詰まっており、色とりどりの昼食に声を上げた。

簪はヴァルトの口に合うかどうか、不安を隠せなかった。

 

箸を取って酢豚を口にする静夢、程よい酸味と柔らかさがマッチしていた。咀嚼の後におにぎりを齧る。中に見えた具材は塩気のある昆布だった、他の具材が何なのか、興味を惹かれる。

ヴァルトはベーコンとレタスのサンドウィッチを手に取る。空腹を刺激するそれに、ヴァルトは大きな口を開けて噛みついた。新鮮なレタスの触感に、ジューシーなベーコンの厚みが食欲をそそる。一口、また一口と進んでいく。

 

「うーん、おいしい」

 

「……うまい」

 

静夢の率直な感想とヴァルトの噛みしめるような言葉に、少女たちの顔が明るくなる。それを見て安心した鈴音と簪も昼食を摂り始める。

 

「簪は誰とペアになったの?」

 

「二組のハミルトンさん、あんまり知らない人なんだけど…」

 

進んで人と関わらない簪が不安な表情を見せると、人となりを知っている鈴音と静夢は背中を押すように声をかける。

 

「大丈夫よ、ティナはサバサバしてるタイプだから」

 

「うん、本音ちゃんと同じタイプだと思えば気が楽だよ」

 

静夢の言葉に余計な不安を覚える簪、それはヴァルトも同じだった。整備の腕は確かなものだと知っているが、のんびりとした性格の本音とうまく連携が取れるのか今更ながらに頭を抱えた。

 

「そういえば、同じブロックだよね?」

 

「そうね、ようやく戦えるわ」

 

ふと思い出した静夢に、鈴音は闘志を剝き出しにする。二人が戦ったのは武道場での一戦のみ、本気で戦えることを喜ぶ鈴音に静夢は仕方なさそうにほほ笑む。ヴァルトといい鈴音といい、静夢の本気を望む存在が彼を悩ませる。

 

「君に勝たないと、ヴァルト君とは戦えないな…」

 

「俺とやる前に負けたら承知しないからな?」

 

「おっと?私が負ける前提で話を進めないでくれる?」

 

「私もいるんだけど…」

 

少なからず実力を持った者たちが高め合い、自然とライバル意識が目覚める一同であった。

 

「ところで、シャルロットは?」

 

いつも静夢の隣を陣取る彼女の存在に気づき、鈴音が尋ねる。

 

「ああ、シャーリーなら整備室だよ。戦いを前にすると、僕に構っていられない質だからね」

 

「もはやバーサーカーだな…」

 

「うふふ、本人に言ってあげるといい。きっと喜ぶよ?」

 

「遠慮しておく…」

 

シャルロットの本性を知っているヴァルトはげんなりとして、最後のサンドウィッチを口に放り込む。そして立ち上がると、三人に堂々と宣言するーーー。

 

「俺は全力でぶつかる。簪、俺はお前が相手でも手加減はしないぞ?精々、楽しませてくれよ」

 

うまかった、そう言い残してヴァルトは屋上から出て行った。それに続き、鈴音が後片付けを済ませて立ち上がる。

 

「あいつの言う通り、私も全力を出すわ!負けてなんかやるもんですか!」

 

持ち前の元気で自分を奮い立たせ、やる気に満ちた瞳が静夢と簪を捉えていた。巾着袋を持って屋上を後にしたーーー。

ヴァルトの分の巾着袋を手に、簪が立ち上がった。

 

「あの二人みたいにまだ強くはないけど、負けるつもりでは戦わないから…」

 

静かながらも闘志を漲らせ、簪は決意する。静夢はそれに反応するわけでもなく、ポケットから飴玉を取り出した。

 

「君とシャーリーの晴れ舞台だ、そう思うとこのイベントには意味があるかもね。お互いに頑張ろうよ」

 

その飴玉を簪に差し出すと、彼女はそれを受け取って屋上を出て行った。最後の一人となった静夢は端末を見て時刻を確認する。まだ自分の番には時間がある、もう少しだけ休んでいこうと体を横にする。

 

「まぁ、ゆっくりやらせてもらおうか……」

 

アラームをセットし、ギリギリまで仮眠を取る静夢であった。

それぞれの戦いが始まろうとしていたーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うりゃぁぁぁ!!」

 

甲龍を駆る鈴音は鬼気迫る勢いで相手を圧倒する。どこか物足りない感覚を覚えながらも、手加減をすることは無かった。ラファール・リバイブの弾幕を搔い潜り、龍砲で相手を狙い撃つ。相手の直撃を確認すると、決着をつけるために接近する。

双天牙月を握り、間合いに入った瞬間に突き刺す。反撃のチャンスを与えないために、肉弾戦に突入する。

 

「『閃虎』!!」

 

左右に腕を振り抜き、防御の手を無くした相手への連撃。素早い二発の拳と蹴りで吹き飛ばすと、ラファール・リバイブはエネルギーがゼロとなった。

 

「クソ!!」

 

仲間がやられたことを知り、鈴音の背後を狙うのはもう一人の相手。打鉄の近接ブレードである「葵」を振りかぶり、渾身の一振りを狙う。

 

しかし、これはタッグマッチーーー。

 

彼女を狙う相手が、鈴音以外にもいることを忘れてはいけないーーー。

 

「そこ…!」

 

鈴音とタッグを組んだ少女の駆るラファール・リバイブによる狙撃が炸裂する。アサルトカノンである「ガルム」が火を噴いた。その一撃に気付かなかった打鉄は直撃を避けられなかった。

それによって鳴り響くブザー、それは鈴音たちの勝利を告げるものであった。

 

「やった!」

 

「助かったわ、ありがとう」

 

勝利に喜ぶパートナーに感謝する鈴音。それは心の底からのものであった。閃虎の後の隙を狙われたことで、被弾を予知していた。寸でのところで助けられた。何よりも彼女がもう一人を押さえ込んでくれたからこそ、この戦いに勝つことが出来たのである。

 

「今回の反省もしながら、次の相手の情報も集めましょう」

 

「うん…!」

 

勝利を手にしたにも関わらず、上昇志向である鈴音の凜とした瞳。それに頷いて答える少女は、鈴音のように強くありたいと願った。それが届かないものであったとしても、間近で見た鈴音の戦闘は良い刺激だった。

 

まだ興奮冷めやらぬ中、鈴音たちはピットに戻って明日以降の二回戦に備える。鈴音は無事に初戦を勝ち抜いたーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉらぁぁ!!」

 

ヴァルトの咆哮が響き、エクスプロードが宙を翔ける。二機のラファール・リバイブの弾幕を浴びながら、エクスプロードは肉薄する。ノーガードで迫るエクスプロードに、対戦相手の少女たちは恐怖する。

 

「どうした、ビビッてんのかぁ!」

 

弾幕が薄くなる一瞬の隙を狙う。加速を続け、至近距離まで接近する。鋭い右フックで相手の体勢を崩すと、すかさず左のアッパーカットが襲う。その勢いのまま、回し蹴りを見舞う。

 

「ッ!」

 

今度は左の拳をかざすと、中距離からの砲撃を行う。虚を付かれたラファール・リバイブは反応できず、その砲撃を受けてしまう。

 

「本音!」

 

「任せて~!」

 

砲撃を受けて止まったラファール・リバイブを本音に任せ、もう一人にとどめを刺さんとするヴァルト。

 

「こんなやつに…!」

 

「やり返してみろよ、悔しかったらなぁぁ!!」

 

サブマシンガンを展開して狙いを定めるが、ヴァルトには何の脅威にもならない。サブマシンガンが火を噴く。ヴァルトはそれを甘んじて受け、両拳からの砲撃を返す。

二つの弾丸がぶつかり、爆炎が広がる。

 

「クッ…!」

 

「もらったぁぁぁ!」

 

その爆炎を抜け出したのはヴァルトだった。弾幕によって破損の見られるエクスプロード、装甲の表面にはひび割れや小さなスパークが見られた。しかし、ヴァルトは止まらなかった。

 

「ハァァァ!」

 

「キャアァァ!!」

 

ヴァルトは渾身の力で拳を振り抜いた。強烈な一撃を浴び、ラファール・リバイブのエネルギーがゼロになる。同時になったブザーに、ヴァルトは後方にいる本音を見る。

 

「パーく~ん、勝ったよ~」

 

「負けちゃった…」

 

間延びした声でヴァルトに声をかける本音が手を振っていた。さっきまで本当に戦っていたのかと疑問に思うほどの空気に、ヴァルトは苦笑いを浮かべながら手を振り返す。

 

「最悪…」

 

「あ…?」

 

ヴァルトが倒したラファール・リバイブを駆る少女が溜息を吐いた。

 

「男にやられるなんて、こんな屈辱を味わうなんて」

 

「何が気に入らないのかは知らないが、勝敗は変わらないぞ?」

 

キッとヴァルトを睨み付ける少女だが、ヴァルトは天を仰いで大きく息を吐く。

 

「悔しかったらもっと強くなってみろよ…お前にそれだけの根性があればな」

 

「なんですって…!」

 

「本音、引き上げるぞ」

 

「ほ~い」

 

「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

少女の声に振り返らず、ヴァルトはピットへ帰還していく。残された少女は悔しさを露わにする。

 

「案外、優しいんだね。とっつきにくいと思ってたけど」

 

「え?」

 

パートナーの少女が近寄って来て、そう言った。思わず振り返るも、少女はそうでしょ?と続ける。

 

「そうじゃなければあんな事、言うわけないよ」

 

「……最悪」

 

態度といい、言動といい気に食わなかった。しかし、ヴァルトの実力をその身で感じた。その強さは自分たちとは一線を画すものがあった。

認めざるを得ない、それだけの実力差と自分の現在地をーーー。

 

全力を注いだ二人は、観客席から降り注ぐ拍手を浴びてピットへと戻っていった。

 

 

 

 

 

その後も、実力を持つ者たちが勝ちぬいていった。初の実践に緊張する簪も、ヴァルトの激励を受けて奮起。マルチロックオンシステムを駆使して、相手を封殺した。タッグを組むティナも、それをフォローするかのように簪の背中を守っていた。

静夢は打鉄の神楽をアシストするように動いた。接近戦をメインにした神楽の道を開き、相手にインパクトを与えて神楽から視線を自分に移し換えて戦っていく。

さして作戦を伝えたわけではないが、神楽はそれを知っていたかのように動いた。それぞれの特徴を活かした戦闘で勝利を飾り、面々は次の戦いに臨む。

 

「見たか?明日のカード」

 

「まだ。おもしろい試合でもあるの?」

 

夕食を終え、静夢は部屋で植物監察官としての仕事をしていた。内容は二か月先にある学会の予習だ。教授からも声がかかり、ハサウェイと共に参加することとなったのだ。

部屋にはヴァルトがおり、静夢が淹れた紅茶を飲みながら端末の対戦表を確認していた。一通りの予習が終わった静夢は、眼鏡を外して振り返る。

 

「ほら、こいつ」

 

「なに?」

 

紅茶を淹れ直そうと立ち上がる静夢に、ヴァルトは端末を見せる。対戦表を上から順にみていくと、知っている名前を見て止まる。そこにはラウラの名前があった、タッグを組むのは同じクラスのナギだった。

 

「へぇ、あの二人なんだ」

 

「意外だろ?相手はもっと意外だぞ」

 

ヴァルトは画面を下にスクロールすると、ラウラたちの対戦相手の名前が出てくる。それを見て静夢は興味を無くしたかのように溜息を吐く。

明らかな嫌悪感を出し、ヴァルトはそんな静夢を見て笑う。

 

「紅茶、淹れ直すよ」

 

「ああ、頼む」

 

「茶葉をいっぱい使ってあげるよ、濃い味は好きでしょ?」

 

「おい、そういう嫌がらせはやめろ」

 

静夢が空になったヴァルトのカップを受け取ってキッチンへ移動する。ヴァルトは端末を覗き、再び笑った。

 

「これじゃあ、戦いにすらならないな…」

 

憐れみか、諦めか、ヴァルトは端末を閉じて脱力した。

 

明日の第二試合、対戦カードはこうなっているーーーーー。

 

 

 

 

 

 『ラウラ・ボーデヴィッヒ 鏡ナギ』

 

        VS

 

   『織斑 春十 篠ノ之 箒』

 

 

 

 

 

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