インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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指が走り、少し長くなりました。
まだ数話ほど続きそうです、お付き合いいただければ幸いです。


第30話

夜が明けた。それぞれの思いを胸に、戦いに臨む若者たちは緊張感を高めていた。客席でぼんやりと試合を眺める累 静夢は、今日の試合の予定を思い出す。

 

「退屈そうね?」

 

「そう見えますか?」

 

アリーナを訪れた更識 楯無は、そんな静夢を見て声をかけた。声の主に気づいた静夢は、見向きもせずに応答した。その態度に頬を膨らませる楯無だが、今は観衆の目がある。

彼女はグッと堪えて咳払いをすると、それに気づいた周りの少女たちが振り返る。それが楯無のものと知ると、ギョッとした顔で会釈をする。

 

「そういえば、偉い人でしたね」

 

「あなたが入学する前から偉いのよ…」

 

思い出したかのように言う静夢に楯無の怒気が高まる。すると、ブザーが鳴り響く。試合が終わり、次の試合の準備が始まる。一区切りとなり、観客席にいる人が動き始める。

 

それに合わせて、静夢も立ち上がってアリーナを後にする。

 

「あら、見ていかないの?」

 

引き留めるわけではないが、楯無は問いかけた。何しろ、次の試合はもっとも注目されている試合だからである。

 

「興味ないですよ、どうせ試合にすらなりません」

 

静夢は一言そう吐き捨てて、今度こそアリーナから出て行った。楯無は、その声色から静夢が本当に興味が無いのだと感じた。楯無としても、この試合の結末はある程度が想像できた。

 

「まぁ、ドイツのあの子の実力を見る分には良いのかしら…」

 

彼女もまた、大して興味を示すことはなかった。静夢の言う通り、次の試合は戦いになるかどうかも怪しい。情報では千冬の昔の教え子で、千冬を盲信している節があるらしい。

そんな彼女だが、人が変わったように態度が変わったという噂だ。

 

これも噂だが、イギリスと中国の代表候補である二人を相手に、ほぼ無傷だったらしい。

相応の実力を持っているということが分かる、一見の価値はあるだろう。

 

楯無は溜息を吐きながら、これから試合が始まるアリーナを見つめていた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナを離れ、彷徨うように歩く静夢は行き場もなく徘徊する。参加人数の多い大会で、試合の無い彼は時間を持て余していた。マフティーの脅威になる人間の情報を集めることも考えた。専用機持ち、つまり代表候補がIS学園の主な戦力といえるだろう。

それを束ねるのが更識 楯無、ひいては織斑 千冬である―――。

 

マフティーとIS学園が全面戦争となったら…今の戦力でシミュレーションをしてみる。

実戦経験の少ない学園側が劣勢となるだろうが、千冬や楯無、ラウラといった強者たちの粘りが壁となってくるだろう。おそらく、鈴音も学園側に付くだろう。ハサウェイやレーンといったガンダムのパイロットたちが中心となるマフティーは、楽に勝つことはできないだろう。

 

「厄介なところだな……」

 

「ああ、まったくだな」

 

静夢の独り言に誰かが返事をした。静夢は驚き、振り返った。自分の正体を知られる可能性がある。

 

久方ぶりの緊張が走るーーー。

 

「権力を持つと傲慢になる、人間の悪いところだな」

 

「……僕もそう思います」

 

それはこの世界を憂えるような言葉だった。その考えは正しい、静夢はそれに同意する。ISによって生まれた歪み、この場所はその象徴ともいえる。世界の枠組みから外れ、介入を認めないルールはあまりにも勝手だ。

 

「まさかとは思ったが、こんなところで再会するとはな…」

 

「え…?」

 

まるで自分を知っているような発言に静夢は戸惑った、コツコツと近づく足音は徐々に大きくなっていく。

 

「久しぶりだな、静夢」

 

「貴方は…」

 

近づいた事でその声の主が明らかとなる。式典用の軍服に身を包み、ただ頭に乗っているだけのような帽子を取って、その男は帽子を脇に納めた。

 

「ミシェル大佐…!」

 

かつて、アメリカで自分に手を差し伸べてくれた恩人との再会に、静夢の声が舞い上がる。手を挙げてそれに応えたピーター・ミシェル大佐は、静夢との再会を喜んでいた。差し出された静夢の手を握り、微笑を浮かべる初老の男は握手を終えて静夢の肩に手を置く。

 

「どうして、こちらに?」

 

「学園からの案内でね。毎年、この時期に視察があるんだ。見込みのある人間を見る為に」

 

ピーターは歩きながら、事の経緯を話す。そういえば、と静夢はそんな話を聞いていた事を思い出す。

 

今回のイベントでは、各界からの来賓が訪れる。ISが生まれたことにより、軍だけでなく様々な分野が様相を変化させていた。

 

「うちの方でもISの部隊が当たり前になりつつある。近い将来、俺たちのような人間は必要なくなるかもしれないな」

 

ピーターは寂しそうに呟いた。ISの普及、それは軍としての戦力の変化。通常の兵器を凌ぐISの配備は、彼ら戦闘機乗りの立場を奪う形ともなる。結果として、空母の甲板には戦闘機の代わりにISがズラリと並んでいるらしい。

 

「それでも、今すぐ無くなることは無いでしょう?まだ、貴方を必要とする人間はいますよ」

 

「嬉しいことを言ってくれるね、ありがたいよ。そういえば、どうしてこんな場所に?植物監察官だったんじゃないのか?」

 

静夢の言葉に嬉しさを感じるピーターは、静夢がどうしてここにいるのかと思い出して尋ねた。記憶が正しければ、彼は植物監察官の一人だった。

こんな人工の島の上にある学園に、求められるような人材ではないと思っていた。

 

「ええと、僕にもISの適正がありまして…」

 

「……本当か?」

 

ピーターは足を止めて、聞き返した。静夢は頷いて、小さく頭を下げた。

 

「ニュースではたった一人だと聞いていたが…」

 

「余計な混乱を避けるためです。仲間の紹介で、今は日本の企業でテストパイロットをしています」

 

思わぬ告白にピーターは呆気に取られ、言葉を失くしていた。打ち明けるか迷った静夢も、下手に隠しても意味がないことを悟っていたのだ。

何よりも、正規の軍人である彼に正体を知られる事を避けたかったからだ−−−。

 

「そうだったのか…まぁ、なんと言葉をかけていいのか」

 

「申し訳ありません、余計な気を遣わせてしまって」

 

「いや、責めているわけじゃない。ただ―――」

 

「……ただ?」

 

ピーターは言葉に詰まった。驚きを隠せず、戸惑った表情のままで歩き出した。

 

「いつか、君が戦場に出ると考えると、な……優しい君が、兵士となって駆り出されるなんて」

 

ビーターの口からは凡そ軍人とは思えない言葉が出てきた。短い時間だが、ピーターは累 静夢という人間を知った。

 

―――優しく、善良な彼がいつか戦場に立つ。ピーターは、それが苦しかった。

自分のように、祖国のためと覚悟を決めた人間なら兎も角、植物や自然と触れ合う静夢が……。

 

「そうなら無いような世界になれば、いいんですが…」

 

「難しいだろうな…今の世界では」

 

ISによる性差別、マフティーによる武力行使、世界はあまりにも歪んでいる。二人の理想が叶うほど、世界は簡潔にはなれないのだ。

 

「勝手に歩き回らないでください。来賓が迷子なんて笑えませんよ」

 

「おぉ、久しいな。元気か?『スネーク』」

 

そんな中、駆け足で寄る者がいた。ケネスだ。ピーターを探していたのか、少し息が上がってスーツが乱れていた。そんなケネスの心情も、ピーターはあっけらかんとしていた。

 

「『スネーク』?」

 

「それは昔の呼び名です、今はただのケネスです」

 

「あぁ、すまない。どうも癖が抜けないようだ」

 

イタズラが成功した時の子供のように、ピーターは笑ってやり過ごす。ケネスはため息をこぼしながら、息を整えてスーツの襟を正す。

 

「静夢、どうしてここに?今日は試合じゃないのか?」

 

静夢に気づいて尋ねるケネス、静夢は事実を話す。来賓と会った事をケネスに咎められると思ったからだ。

 

「いえ、今日は対戦が無くて暇だったんです。ぼんやり歩いてて、ミシェル大佐とお会いに」

 

「彼とは知り合いだ、アメリカで会ったことがあって…迷っていたら彼とここで再会してね」

 

助け舟を出すかのように、ピーターは言葉を添えた。

 

「そうでしたか…お前、随分と太いパイプがあるんだな?驚いたぜ…」

 

「助けられた身ですから、厚かましい態度なんて取れませんよ」

 

「なに、私は気にしていないさ。何かあったら力になるよ?」

 

それは職権乱用だろう、静夢が伝えると二人は笑っていた。ケネスはピーターを連れて、来賓席に向かった。静夢はそこで言伝をして別れ、再び何処かへと歩いていった。

 

「驚きました。まさか、あいつが大佐と知り合いだったなんて」

 

「私も驚いているよ、彼がここにいることを」

 

「ええ、全くです」

 

肩を並べて歩く二人の男、ケネスはピーターの言葉に頷くと、ピーターはそれに首を傾げた。

 

「自分も、静夢とは日本に来る時に出会いまして……」

 

「―――ということは、『あの事件』に?」

 

ケネスは静かに頷いた。今でも鮮明に覚えている、日本に向けて航海をする船舶での出来事だった。

 

そこで起きたとある事件―――静夢とケネスはそこで初めて出会ったのだ。

 

その船には各国の要人が乗っていた。それを狙ってか、マフティーを名乗る集団に襲撃されたのだ。二隻の船舶に囲まれ、四機のISが銃口を向けたいた。あっという間に掌握されてしまったのだ。

 

彼らの目的は各国の要人を人質として、軍資金を調達することだった。それ以外の目的は無く、船内で怪我人の処置や混乱の沈静化を図ったという。

 

「それで、か。刑事警察機構の長官が浮かれていたのは」

 

「えぇ」

 

ピーターはその事件の一部の噂を聞いていた。上層部の人間から出た言葉だと聞いていたのだ。一部の者がそれを機に、日本への援助を申し出ていたらしい。

 

何でも自分たちの命を救ってくれた少年がいたとの事だ―――。

 

「何か動きでも?」

 

「さぁ、お偉いさんの考えまでは」

 

ピーターは帽子を被り、ケネスの後に付いて行く。やがて、アリーナの来賓席に戻ると、噂に聞いたドイツの代表候補の試合が始まっていた―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二試合、今日で最も注目される対戦に、アリーナの席はほとんど埋まっている。その理由は、やはりラウラの存在だろう。

千冬の教え子であり、正規の軍人でも彼女の実力を間近で見られる。こんなチャンスは滅多にない。先日のセシリアと鈴音を混じえたバトルロワイヤルでは、常に優位に立っていたという。

 

入学当初は織斑 春十を敵視し、寄せ付けない雰囲気を放っていたという彼女。それが数日後には丸くなり、すっかりとクラスの一員となっていた。

小柄な体型からは想像も出来ない身のこなし、子供とは思えないリーダーシップに周囲は強い影響を受けた。今となっては彼女に教えを乞う生徒たちもいるという。

 

「作戦、どうしようか?」

 

「ふむ、そうだな…」

 

タッグを組むことになった鏡 ナギの問いに、ラウラは前もって集めた情報を思い出す。対戦相手は因縁の織斑、近接専門という話だ。

しかも、実際に見たこともあり、実力の程度は知れている。

 

そのタッグを組む篠ノ之 箒も、訓練機の打鉄という近接のみの組み合わせだ。

果たして、戦いになるのだろうか―――ラウラは別の意味での懸念があった。

 

両者ともに近接、つまり中距離や遠距離との相性は最悪ということだ。

 

「お前はどう思う?」

 

「え?」

 

「お前の意見が聞きたい、どうだ?」

 

思わぬ切り返しに、ナギは顔を顰めて考え込む。最も強いと噂されるラウラとのタッグ、彼女はラウラへ頼ることを前提に準備をしていたのだ。

いざ尋ねられると、どうしたらいいものか…ナギはオロオロとしていた。

 

「相手は打鉄と近接の専用機、ヒントはちゃんとあるぞ?」

 

そんな彼女を見兼ねたのか、ラウラが助言をする。そのヒントを中心に、ナギはこれまでの知識と経験を総動員する。

 

「えっと、近接だから…近寄らせない、とか?」

 

それがナギの精一杯の答えだった。ラウラはチラリとナギを見る。眉間に皺を寄せた険しい表情に、ナギが強張る。

しばらくの沈黙が流れる、答えを誤ったのか…ナギは失態を感じて目を瞑る。

 

 

 

 

「―――正解だ」

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「つまりはそういう事だ。相手を近づくよりも先に、遠くから撃ち続ければ勝てるということだ」

 

柔らかい笑みを浮かべ、ラウラは極論を放つ。ナギも言っていることは理解出来たが、作戦というには粗末であった。

 

「わざわざ相手の土俵に立つ義理は無い、遠くから撃ち続ける。それが作戦だ」

 

「いいのかな、それで…」

 

「いいんだ。ルールを破っているわけではないだろう?ある意味では、これも作戦だ」

 

おおらかな様子でラウラは笑みを浮かべた。彼女がそういうのなら、とナギも深呼吸で自分をリラックスさせる。相手は専用機、自分に出来るのかという不安と、ラウラとなら勝てるという安心感が入り乱れる。

 

そう思っていると、向かいのピットから対戦相手が出てくる。白いカラーリングが特徴の白式を纏う織斑、グレーの甲冑を想像させる打鉄を身につける箒が現れる。

 

「随分と遅かったな、負けた時の言い訳でも考えたいたのか?」

 

「言わせておけば…!前は初見だったから負けたんだ、タッグならお前なんて!」

 

ラウラの売り言葉に噛みつき、織斑はラウラを睨みつける。普段との態度とは一変した姿に、ナギは思わず身を引いた。そんな織斑とタッグを組む箒と目が合う。

 

箒は謝るかのように顔を俯かせる、彼女は織斑とは違っていた。ナギにとってそれが唯一の救いだった。

 

「笑わせる!素人に負けるほど、慢心をするつもりはない」

 

試合開始のカウントダウンが始まった―――。

 

 

―――5―――

 

 

「足を引っ張るなよ、箒」

 

 

―――4―――

 

 

「ああ、分かっている」

 

 

―――3―――

 

 

「私もタッグを組んでいるという事を知っているか?『ナギ』、勝ちに行くぞ」

 

 

―――2―――

 

 

「…!うん!」

 

 

―――1―――

 

 

「叩き潰す!」

 

「精々、頑張ってくれ」

 

 

―――0―――

 

 

『第二試合、開始してください』

 

ゼロのカウントと同時に、開始を告げるアナウンスが聞こえた。期待と視線の集まる中、激しい銃声が響いた―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

左腰の雪片弐型を抜刀し、織斑はラウラへと向かう。両手で得物を握りしめ、渾身の一振りを放つ。

 

「本当に学習能力の無いやつだな……」

 

心底、呆れたように呟くラウラは左手を翳す。AICで織斑の一撃を難なく受け止める。

 

「クソッ!なんなんだよ、これは…!」

 

「春十!」

 

織斑の危機を見て、箒はそれを助けようと向かう。しかし、ナギの弾幕がそれを許さない。

弾丸の雨に進路を塞がれ、箒は減速して停止してしまう。

 

「マズいか…!」

 

仕掛けに乗せられたか、箒は身動きの取れない状況に顔を歪ませる。

 

「近づかせない!」

 

ナギの仕事は近付かせないことだ。相手の二人を離し、自分たちへと近寄らせない。ただただ弾幕で相手を足止めし、疲弊させることに徹する。

 

「うん、いい調子だ」

 

ナギによる箒の足止め、ラウラば順調に作戦が進行していると感じた。レール砲に弾丸を装填、AICで拘束した織斑をロックする。

 

「ッ!?」

 

「いい加減に目障りだ、消えろ」

 

レール砲を放ち、織斑を遠くへ吹き飛ばした。すぐさまターゲットを箒に変更、ワイヤーブレードを飛ばして打鉄の脚部に絡ませる。

 

「なに!?」

 

そのまま引きずるようにして引き寄せると、右手のプラズマ手刀を展開、地面を這う箒に向けて突き刺す。

 

「フッ!」

 

「む…」

 

箒はやらせまいと振るったブレードが、偶然にもプラズマ手刀を掠めた。プラズマ手刀は軌道を変え、アリーナの地面に突き刺さる。

思わぬアクションに目を見張り、ラウラの眉がピクリとする。

 

「驚いた、直感で受け止めたか」

 

「実力差はハッキリしている。だが、簡単にやられるのは納得しない…!」

 

「その意気や良し…!」

 

ワイヤーブレードを離し、プラズマ手刀を引き抜いて箒を蹴り飛ばす。地面を転がった箒は体勢を立て直し、ブレードを支えにして立ち上がった。

 

「お前は織斑 春十よりも骨がある、戦う価値がありそうだ」

 

「褒め言葉として受け取っておこう!」

 

ブレードを構えた箒が駆け出す。ワイヤーブレードで対応するラウラに苦戦を強いられる。一本目、二本目と受け流すも、追撃を対象できなかった。

乱舞するワイヤーブレードに翻弄され、やがて力尽きて地面へと膝を着く。

 

「ここまでか…」

 

「筋は悪くない。が、近接だけで勝てるほど戦いは単純ではないということだ」

 

箒は自分の力を知り、相手との差を認められる。ラウラは彼女の姿に感心した。

篠ノ之 束の妹でありながら、それに慢心せず自分と現実を受け入れられる器。がむしゃらにも前進しようとする姿勢にラウラは関心を寄せる。

 

「箒、なにやってるんだ!そんなやつに負けるなんて…!」

 

レール砲を受けた織斑が体勢を立て直したのも束の間、ラウラに代わって足止めをするナギの弾幕に手も足も出ないでいた。

ラウラは憤る、自身が力を出して制した箒への罵倒が許せなかった。

ましてや、共に戦う仲間に対しての仕打ち。ラウラの瞳に怒りが宿る。

 

「貴様、タッグの意味が分かっていないらしいな。全力を出した仲間に、労いの言葉さえかけられないとは…」

 

「うるさい!俺は天才だ、一人になってもやれる!」

 

ラウラの冷酷な瞳が織斑を射抜く。もうラウラには、手心を加える優しさはなかった。未だ弾幕を超えられない織斑に、再びレール砲を向ける。

 

「しまった…!」

 

「ならば、醜いプライドと共に散れ…!」

 

ロックオンに気づいた織斑の動きが止まった、ラウラはレール砲を放つ。凄まじい砲撃音と放たれた薬莢が宙を舞う。

ナギもその隙を見逃さない。アサルトライフルからアサルトカノンに切り替え、仕留めるつもりで撃ち抜く。

 

「こんな、こんなところで俺は…」

 

二方向からの砲撃に手も足も出ず、白式のエネルギーはゼロに近づく。ボロボロになったその姿に、観客席からは溜息が零れる。

 

「己の力しか信じていないお前に勝利はない、最初から勝負は決していた」

 

プラズマ手刀を展開したラウラは、地面を蹴り白式に向かう。接近するラウラに、織斑は雪片弐型の奥の手を使う。

 

零落白夜―――自身のエネルギーが大量に消費することで、強力な一手を放つ諸刃の剣。しかし、発動するだけのエネルギーは白式には残されていなかった。

 

オーラを纏ったかと思えば、それは一瞬で消え去った。その後ろから、ナギはハンドグレネードを投げつけた。

爆風とダメージに押され、織斑は体勢を崩して落下していく。

 

「ハァァァァ!!」

 

最適なアシストを受けたラウラは、落下する織斑をプラズマ手刀で切り裂いた。

それこそがラストアタック、試合終了のブザーが響く。

 

 

 

『試合終了。勝者、ボーデヴィッヒ・鏡ペア』

 

 

 

アナウンスと同時に起こる拍手と歓声、慣れないラウラは戸惑いを見せるもそれを一身に受け止める。

 

「やった、勝ったよ!」

 

「あぁ、やったな」

 

専用機を持った織斑からもぎ取った勝利、ナギは心の底から嬉しさを見せた。ラウラはそれに頷いて見せた。

 

「作戦通り、これは私とお前で得た勝利だ」

 

武装を収納し、ラウラはナギに手を差し出す。まさか、彼女からこんなことをするとは…ナギは一瞬の戸惑いを見せるも、笑顔でそれに応じた。

 

固く交わした二人の手、友情と信頼の象徴が勝利を呼んだ瞬間であった。

 

第二試合は幕を閉じ、二人はピットへ帰還する。迎えた教師たちの称賛を受け、一礼と敬礼で答えた。

盛り上がりを見せるタッグマッチトーナメントは、まだその熱量を留めたまま続いていく―――――。

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