インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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お久しぶりです。

今回で今年の投稿は最後になると思われます。読者の皆様、本当にありがとうございます。


past.4

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた―――地球の周りの巨大な人工都市は、人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった………。

 

宇宙世紀0079―――地球から最も遠く離れたサイド3は「ジオン公国」を名乗り、独立戦争を仕掛けた。

一ヶ月余りの戦いで、総人口の半分が消える事となる。

 

―――彼らは、自らの行為に恐怖した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「事の始まりはこんな所だ。自分たちで地球を汚し、不要な人間を宇宙に追放する。結果、戦争で人類は半分に減った」

 

クスィーに搭乗し、尚も調整を続けるハサウェイさんは呆れたような口ぶりで語ってくれた。宇宙で人が暮らす時代、そう云われれば聞こえはいいが、実態は権力者による横暴……。

 

「この世界がまだマシだと、初めて感じました……」

 

「良いことさ、戦場では簡単に人が死んでいく。当たり前だと思っていることが、実は幸せだと改めて気づけるんだ」

 

僕は頷いた。安穏として生きていること、衣食住があること……それが普通だと、誰にでもあることだと思っていた。

でも本当は違った―――自分の普通は他人にとって普通ではない。つまり、自分の正しさが全てでは無いということ。

 

「でも、どうして貴方たちはこの世界に?」

 

「それがどうにも分からねぇ、くたばったと思ったらここにいてよ…」

 

僕の問いに答えたのは顔に傷のあるガウマン・ノビルさんだった。その様子は言葉通りぼんやりとしている。意図せずこの世界に来たのだろうか、答えを知る者は誰もいないのだろう。ここにいるメンバーが同じような反応をした。

 

「ハサウェイさんも同じだったんですか?」

 

「いや、僕は束に助けられたんだ」

 

「ホントに驚いたよ、いきなり秘密基地に堕ちて来るんだもの……」

 

コンソールの操作をしながら、束さんは過去を明かしてくれた。ISの発展後、束さんは白騎士事件を機に身を隠した。世界中がISを求め、コンタクトを図ったが束さんはそれを拒絶。

ISを製造できるということは、裏を返せば停止もできる。束さんはそれを脅し文句として使い、世界中からの縁を切ったそうだ。マフティーの拠点と同じく、各地に隠れ家を持つ束はんは隠居に近い生活を送っていた。

 

そんな時に、ハサウェイさんがこのクスィーと共に堕ちてきたのだそうだ。他人に興味を示さない彼女がハサウェイさんを救ったのは、ISと共に堕ちて来たからというのは言うまでもない。

彼を救い、宇宙世紀の事を聞いた束さんは、この世界がやがて宇宙世紀と同じ道を辿るかもしれないという予感が芽生えたという。

 

それからというものの、束さんは人が変わったようになった。女尊男卑の風潮を無くすために、自身の声で呼びかけた。信用できる企業への技術提供を申し出た、筆頭になったのは「日本のある会社」だそうだ。

 

「よし!終わったよ」

 

「ありがとう。レイモンド、試運転だ!合図を出したらターゲットを出してくれ」

 

束さんの力を持ってすれば、とは考えていたものの、ほんの数分でハサウェイさんの準備が終わった。ハサウェイさんもやる気満々のようで、すぐに動かす用意をしていた。

 

「ちょっと、MS(モビルスーツ)みたいに扱わないで!精密機器なんだから!」

 

「通常兵器と違って頑丈だ、MSと変わらない!」

 

「キャッ…!」

 

「うわ…!すごいな…」

 

束さんの静止を遮り、ハサウェイさんはドックを飛び出した。あまりの衝撃に束さんも僕も耳を押さえて頭を下げた。耳鳴りが残るなか、同じ経験をした僕は呆然と見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通常飛行、武器の操作、一通りの行動を終えてハサウェイさんは戻ってきた。膝を着いてからISを解除し、彼は地に足を着けた。

 

「凄いな、あの頃と変わらない」

 

「オーバーテクノロジーに触れられたから、私も感謝してる。性能は今のISの比じゃないね」

 

タブレットを操作し、表示されるデータを見ながら束さんはゴクリと喉を動かした。ハサウェイさんが束さんのタブレットをのぞき込み、感じたことを報告している。ハサウェイさんが離れたクスィーは、静かに鎮座して彼を待っていた。その近くに立ち、僕はそのISを見上げる。

どこか見覚えのある大きさとシルエットに首を傾げながら、周りを歩いてどんなものかと見ていく。

 

「―――邪魔」

 

後ろから声をかけられ手振り返ると、一人の女の子がそこにいた。褐色肌で僕よりも幼い印象のその子は、物怖じしない目で僕を睨んでいた。

 

「あぁ、ごめんなさい…」

 

「……」

 

申し訳なくて謝り、僕は横に避けて彼女の道を空ける。彼女は何も言わずISに近づいた、提げていた工具箱であろうものを足元に置き、持っていたタブレットとISを見比べていた。

 

「ごめんね、無愛想な子で…」

 

「いえ、邪魔をしていたことは事実ですので…」

 

続いて歩いて来た女性は女の子の事を謝り、クスィーに近づいて行く。他にもメカニックと思われる人たちが続々と集まってくる。

再び邪魔をしないためにも、僕は下がってその様子を見つめる。

 

「―――じゃあ、そろそろ帰ろっか」

 

目的を果たし、束さんは晴れやかな表情だった。これから僕はどうなるのか、僕がどうしたいのか―――揺れ動く中で、時間は刻一刻と迫っているように思えた。

 

「一夏くん、これからは君の心が向くままに生きるんだ」

 

ハサウェイさんは僕を真っ直ぐ見つめていた、その言葉に僕は目を閉じて逡巡する。ISが発展してから歪んだ世界、搾取され圧力に押し潰される弱者―――腐敗を目の当たりにしたつもりが、僕が見ていたのは氷山の一角にも満たないものだったんだ……。

なら、僕がこれまでに得た経験を無駄にしないため、今のこの世界をどうしていきたいか……。

 

 

 

「ハサウェイさん、お願いがあります―――」

 

 

 

―――僕は決めた。僕に出来る事は少ないかもしれないし、何も出来ないかもしれない。

 

―――それでも……。

 

 

 

「僕を、僕をマフティーのメンバーに入れてくれませんか…!」

 

 

 

ドックの空気が一変する、自分でも豪語したという自覚がある。

 

「いっくん、何言ってるの……そりゃ、元の生活に戻れるかは分からないけど」

 

「遊びで言ってるわけじゃありません。どの道、戻れないならどうなっても同じです」

 

「ダメ、絶対にダメだよ。そんなの…」

 

束さんは理解できないといった表情で青ざめていく。もし、この道を進めば、その先は地獄かもしれない。だが、現実に絶対な安全は存在しない。茨の道だろうと、未開の地であろうと―――。

 

 

 

僕はこの世界を変えたいんだ……!

 

 

 

きっと言葉だけでは理解されない、かと言って戦えるだけの実力もない。この交渉は失敗する、そう思っていた……。

 

「キミがふざけてそう言っているわけではないと理解している。しかし、君が進もうとしている道は、想像以上の地獄だぞ」

 

「はい。もう戻れないのなら、僕はひたすら前に進みたいんです」

 

「………」

 

ハサウェイさんが歩みよって僕の前に立つ。これまでにハサウェイさんと同じ年齢の人、それ以上の人とこうやって話した経験はある。しかし、この人はこれまでに感じたことが無い不気味な感覚がある。

背筋が凍るという言葉どおり、ゾッとする感覚に包まれた。品定め、見極めるかのような目でハサウェイさんは僕を見ていた。

もし、彼が僕を認めないのなら、その時は素直に諦めよう。しかし、ほんの少しでも希望があるのなら―――僕はそれに賭けてみたい……。

 

「……いつだって危険が付いて回る、それでもいいのか?」

 

「構いません、覚悟はあるつもりです…」

 

「辛いものを見ることになるぞ?」

 

「……これまでも、少しは世界の歪みを見てきたつもりです。僕は戦う、迷いはありません」

 

短い会話を経て、ハサウェイさんは考え込むようにして目を伏せた。

 

「おい、ハサウェイ…」

 

「アンタ、まさか…」

 

後ろにいるレイモンドさんとエメラルダさんが、ハサウェイさんの反応に困惑した表情を浮かべる。それが何を意味するのか分からず、僕はハサウェイさんを見る。

彼は僕をしっかりと捉えて右手を差し出していた―――。

 

「オイ、正気かよ…!」

 

「男の子はこれくらいの方がいい」

 

咎めるガウマンさんに、ハサウェイさんは淡々として有無を言わせなかった。

 

「一夏くん、僕たちは遊びでやっているわけじゃ無い。時には人々を救うかもしれないが、時に多くの命を奪うこともある。困難は無数に君を襲うだろう……」

 

僕は頷いた。同時にハサウェイさんの手を取った。これから先、何が起ころうとも僕は迷わない。世界を変えたいという、この揺るがない意志を見つけたときから覚悟を決めていたんだ。

 

「―――よろしく頼むよ」

 

「―――お世話になります」

 

 

 

 

 

「絶対にダメ……!!」

 

 

 

 

 

束さんが限界を迎えたのか、叫びがこだまする。一瞬にして視線を集め、空気が再び変わる。

 

「行かせない、いっくんに何かあったら、私は…」

 

「ありがとう、束さん。こんな僕を救ってくれて」

 

またいつも通りの日常に戻れるか分からない。なら、僕は心の向くままに行動してみようと思った。誰かの指示じゃない、僕がやりたいこと、夢中になって成し遂げたいと思うことを―――。

 

「貴方やあの人が悪いとか、そういう問題じゃないと思うんです。でも、今の世界は好きになれない。あ、めちゃくちゃにして壊したいって意味じゃなくて……」

 

誤解されないように慌てて注釈を入れておく。僕は幼いながらに経験をしてきたつもりだ、夜の街で出会った人たちから教わったこと、そこから見えてきた世界の歪み、ISによって変わった世界は普通ではないんだ。

 

「他にも方法はあるよ。だから、私と一緒に…」

 

「それじゃあ意味が無いんです、僕が自分の手で答えを見つけたいから」

 

お互いに一歩も引かない。平行線を辿り、決着は付きそうにない。そう思っていたときだ―――。

 

 

 

 

 

「ならば、こうしよう」

 

 

 

 

 

レーンさんが僕たちの間に割って入る。どちらかが折れれば話はそれで終わるが、そんなつもりもなく事態は始まらない。レーンさんはそれを分かって、提案をしてくれたのだろう。

 

―――と、思っていた僕の予想は意外な方向に進む。

 

「私とマフティーで模擬戦をしよう。私が勝てば少年は博士が連れて帰る、ヤツが勝てば君は晴れて我々の仲間入り。どうだ?」

 

レーンさんの提案にざわざわとする面々、僕もその一人でレーンさんに問う。

 

「な、なぜハサウェイさんと?」

 

「君と私では、戦わずとも結果が見えるだろう?それに、ヤツとは因縁がある…」

 

僕の問いに簡潔に答えたレーンさんは、向き直ってハサウェイさんを睨みつける。鋭くなるレーンさんの雰囲気に僕はゾッとした。それは明らかに怒気を含んでいて、普通の人間が機嫌を悪くするそれとは思えなかった。

 

「貴様は過去の行いから何も学ばなかったのか?」

 

「……」

 

レーンさんの問いにハサウェイさんは何も言わない、僕の時と同じように、淡々とした態度でレーンさんを見ていた。

 

「言葉はいらない、どうせ何を言ってもムダだろう?」

 

そう言ってハサウェイさんはクスィーに搭乗する。レーンさんも同じように、ペーネロペーまで走ると準備を始める。また一つ空気が変わった、これから始まる戦いの予感に鳥肌が立つ。

僕が言い出した事とはいえ、とんでもないことになるかもしれない―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備が整い、二機のISが向かい合う。どこか似たような様相の機体たち、詳しくないけど因縁のある二人のパイロット、この戦いは避けられないものだったのだろうか……。

 

スタートの合図が刻一刻と迫る、ゼロになった瞬間、二機の機体は瞬間移動をしたのかと思うほど遠くにいた。レーンさんの持つ銃が光る、それを躱したハサウェイさんも反撃に出る。大きな銃を向けて、レーンさんを狙い撃つ。

―――回避と反撃、これが素早く繰り返されていく。

 

「………」

 

束さんから借りたタブレットで模擬戦を眺め、僕は言葉が出なかった。知識も経験も無い僕には何も分からず、目で追いかけるしかできない。ため息を吐くと背中を叩かれ、ビクリと肩を揺らした。

 

「どうした、座って見てろよ?」

 

そう言われて、自分が立っていることに気づいた。促されて椅子に座ると、再びタブレットを凝視する。「機体から飛び出した幾つもの何か」が飛び交い、模擬戦は激しさを増す。

 

「にしてもレーンのヤツ、腕を上げたな」

 

「そうなのか?まぁ、ハサウェイと競るくらいだしな」

 

ガウマンさんが懐かしむように僕の後ろからタブレットを覗いた。レイモンドさんはハサウェイさんと互角に戦う様子のレーンさんを見て、ガウマンさんの言葉に納得していた。そして二機は左手に新たな武器を握る。

ハサウェイさんは左肩の後ろから抜き放った、それが緑の線となり接近する。レーンさんも左腕から淡いピンクの線が伸ばし、同じように接近した。

 

やがて火花と閃光を放ち、レーンさんがハサウェイさんを蹴り飛ばした。

 

「あの、今のって……」

 

「はい、これ。二人のマシーンのスペック」

 

いきなり現れた束さんから別のタブレットを渡され、僕はそれを受け取った。二つのタブレットが両手に余ると、見兼ねたのかレイモンドさんが模擬戦のタブレットを僕から取った。

 

「こっちがレーン、それでこっちがハサの乗ってるISだよ」

 

タブレットを操作し、詳細なデータを見るものの、羅列されている文字と数字を目の当たりにして思考が働かない。こういった時にすぐ対応出来れば良いのだが、何分にも畑の違うことで困惑してしまった。

 

「あんまり分からないよね。ハサはこれを使ったの、ビームサーベル。クスィーの近接武器なの」

 

「レーンさんにも同じものが?」

 

「レーンにはね…これ。腕のこれからビームサーベルを展開したの」

 

タブレットを操作して、束さんが指差したところは腕の部分。普通の腕に何かが装備されていた。これが一つの武器らしく、様々な用途へ転換できるそうだ。ハサウェイさんみたいにタイムラグがない分、楽なように見えた。

 

 

 

 

 

 

―――La〜La〜……。

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。声が聞こえた、歌のように柔らかくて少し不気味な声だ……。

 

「どうしたの?」

 

束さんに声をかけられハッとする。思わず立ち上がり辺りを見回すも、特に異常は無い。みんなが僕を見ていた。僕の聞き間違いかとも思ったが……。

 

―――まだ声は消えていない。

 

「誰…?」

 

「いっくん?どうしたの?」

 

「なんだ……?」

 

耳を澄ませ、声に集中する……。

目を閉じたその先には―――。 

 

 

 

―――鳥がいた。

 

 

 

「……ッ!?」

 

今度は激しい頭痛が襲う。膝を付き、徐々に強くなる痛みに耐えかねる。

 

「いっくん!」

 

「接近警報!?ハサ!」

 

「すぐに戻る!第一戦闘配備、ISで出る準備を!」

 

途端に周囲が騒がしくなる。緊張が走り、慌ただしく人が行き交う。

 

「いっくん、しっかり!」

 

束さんに肩を抱かれ、ヨロヨロと立ち上がる。模擬戦どころではなく、本当の緊急事態だということが見て分かる。

 

「最低限でいい!迎撃の準備をしろ!」

 

「ダメ、間に合わない!」

 

「目標、来ます!」

 

来る、なぜかそんな予感がした。得体の知れない何か、大きな力が迫っていると分かった。震える手で僕の肩を抱く束さんの手を握る。

 

「誰だ、誰なんだ…!」

 

突如、ドックに大きな衝撃が走った。地震でも起きたように建物が揺れ、物が散乱していく。揺れに耐えられず手を付く人、移動中の出来事で倒れている人もいた。海に面しているせいか、海水を浴びたブロックもあるようだ。

ISに搭乗している人たちが既に準備をしている、エメラルダさんを始めとした三人。

 

 

 

その先に佇むのは……青い光を放つ金色の鳥だった。

 

 

 

 




過去編の第四回でした。

あんまり話は進みませんでしたが、重要な回でもあると私は思っています。

前書きの通り、今回が今年最後の投稿になると思われます。

気が早いですが皆様、よいお年をお迎えください。




のらり くらり
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