インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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個人的にやりたかった回です。

リメイク前を思い出してたら、こんなに長くなりました。


past.7

次の作戦は十日後、そのための作戦会議が行われる。僕たちはそれに参加すべく、移動を開始した。ハサウェイさんを先頭にメンバーが続いて歩いていく。その背中はさっきまでとは違う、ピリピリとした雰囲気があった。

 

会場となる食堂へ向かう途中、マシーンの駆動音を耳にした。船上の甲板にヘリコプターらしき物が到着したようだ。それは他の面々も気づいたようで、上を見あげた。

 

「…着いたか」

 

「お客さん、ですか?」

 

「まぁ、そんなところ…だな」

 

ヘリコプターに気付いたガウマンさんに僕が尋ねると、イラムさんが苦笑いを浮かべた。

食堂に辿り着くと、部屋には他のメンバーが詰めかけていた。椅子に座れず立っている人もいて、ハサウェイさんとイラムさんがモニターに近い席に座る。ガウマンさんやレイモンドさんもその近くに座った。

 

下っ端の僕はモニターから遠く離れた後方へ向かう。すると、ケリア・デースさんやベッチーさんといった裏方の人たちと目が合った。会釈をしながら近くに待機させてもらった。

 

「ここ、座りなよ」

 

「いえ、大丈夫ですよ。女性を立たせてまで座るなんて…」

 

席を譲ろうとするベッチーさんを制し、僕はその後ろに立つ。ポケットにしまっていたノートとペンを取り出し、会議の開始を待つ。

すると、遅れて食堂のドアが開かれた―――。

 

「お待たせしてごめんなさい、また世話になるわ」

 

「いや、こちらも協力に感謝している」

 

部屋を訪れたブロンドの女性、船内の雰囲気に馴染まないドレスを身に纏っていた。その護衛だろうか、粗野な雰囲気の女性が控えている。イラムさんが挨拶を交わしている。実は何度か遠目であの人を見かけた事がある、それも作戦の前だ。

 

「あちらの方は?」

 

「彼女は「スコール・ ミューゼル」。『亡国企業(ファントムタスク)』の実働部隊のリーダーよ」

 

「亡国企業?」

 

「何十年も前からある組織だって話、この世界のマフティーみたいなものかな」

 

僕の問いにケリアさんが答えると、ベッチーさんが補足をした。昔からある組織、別世界のマフティーと手を組むことは特別おかしい事ではない。

 

「……?」

 

「……ッ」

 

スコールという女性と不意に目が合い、会釈をする。彼女は僕を見て微笑むと、モニター近くの席に座った。

イラムさんが咳払いをして、リモコンを操作する。食堂の窓にスモークがかかり、暗くなった部屋でモニターの輪郭がはっきりした。

 

「今回のターゲットはフランスでデュノア社、そして社長もしくは社長夫人の暗殺にある。敵は世界で高いシェア率を誇る企業だ、戦力は相応にあると見ていい。そのため、今回は陸戦部隊とIS部隊と二つのルートで攻略をする」

 

「陸戦部隊がヘリで国境付近の拠点に移動、陸路から展開をしていく。勿論、襲撃に備えてメッサーを配置する。IS部隊はヴァリアントとシーラックから発進、陸戦部隊の配置に合わせてデュノア社を包囲する形だ」

 

ハサウェイさん概要を発表すると、ゴルフさんを始めとしたパイロットの人たちが湧き上がる。イラムさんが咳払いをして、レーザーポインターでマップを指した。マフティーの創始者である「クアック・サルヴァー」将軍と束さんが協力して、拠点や物資の確保は余裕があるらしい。

どこに行っても人が少なく、いる人間だけで事に当たらなければならない。

 

「ここまで、何か質問は?」

 

大方のブリーフィングが済み、イラムさんが仲間に向かい合う。みんなは詳細を理解して聞く事が無いのか、沈黙を保っていた。

 

「―――ハイ」

 

「どうした?」

 

どうしても、というわけでは無いけれど、僕は手を挙げてイラムさんに尋ねた。

 

「目標はISの企業として有名ですが、正確な戦力差はどれくらいあるんでしょうか?」

 

「良く見てるのね、坊や」

 

僕の質問に答えたのはスコールさんだった。イラムさんからレーザーポインターを借りて、デュノア社の近くを示す。

 

「勿論、本社にだって戦力があるわ。でも、その性能は第二世代のものばかり。数はあっても質が伴ってはいないハズ。フランスの空軍基地から少し離れた場所だから、援軍が来る前には目標をクリアする必要があるの」

 

「因みに、二機のガンダムの性能は?」

 

「どちらも第三世代、ドクターはまだ発表を控えているみたいだがな」

 

レーンさんもガウマンさんの近くにいて、展開について意見をする。

曰く、ISの発進は二手に分かれての行動。レーンさんのペーネロペーを中心にした部隊が先行し、時間差でハサウェイさんの主力部隊が後を詰める事となった。

宇宙世紀の経験、個人の練度がアドバンテージとして働けば数の差はカバー出来るかもしれない。

 

同時に湧き上がる想いが、無意識に僕の口から出た―――。

 

 

「あの…!」

 

「なんだい?」

 

「この作戦、僕も参加させてください!」

 

「ダメよ!」

 

僕の頼みに反応したのはケリアさんだった。椅子から立ち上がり、その目つきは鋭い女性特有の凄みがあった。

 

「あなたが戦場に出ては行けない!束とも約束したじゃない、危険な事はさせられないわ」

 

「ケリアさん…でも、僕は」

 

「ハサも、本当に彼を前線に出すつもり?だとしたら、あなたは何処まで……」

 

ハサウェイさんを睨みつけるケリアさんだが、ハサウェイさんは僕をジッと見つめている。叱責を覚悟し、僕は顔を伏せた。

 

「一夏くん、組織に入ってどれくらいになる?」

 

「は、半年くらいだと思います」

 

そうか、と呟いてハサウェイさんはガウマンさんに尋ねた。

 

「ガウマン―――」

 

「筋はいい、吸収力もある。他の訓練もこなしているんだろ?案外、良いタイミングかもだぜ?」

 

「レーンは?」

 

「……なぜ私に聞く?」

 

「一夏くんに稽古をつけているんだろ?どうして隠しているのか分からないが、今の彼を最も知るのは君のはずだ」

 

苦虫を噛み潰したような表情をするレーンさん。ハサウェイさんの言っている事は事実で、軍属だったレーンさんに小隊としての動きや銃の使い方や構造を教えてもらっていたのだ。

ため息を吐いてレーンさんは口を開く―――。

 

「着実に力を付けている、前線に出れば手っ取り早く経験を積めるだろう」

 

「いいんじゃないか?オレは賛成だ」

 

「スリーマンセルで組むなら、俺のチームに入れよう」

 

レーンさんの評価は嬉しかった。シベットさんも僕の参加を肯定してくれて、レイモンドさんも歓迎するように提案をしてくれた。

嬉しさを感じている僕の横をすり抜けたケリアさん、真っ直ぐにハサウェイさんの元へ向かう。

 

そして―――。

 

 

 

パシィィィン!!

 

 

 

右手を振りかぶったケリアさんの右手が、ハサウェイさんの頬を捉える。乾いた音が響き、食堂の空気は静まり返る。ケリアさんは何も言わない、ジッとハサウェイさんを睨んで食堂から出て行った。

 

「では予定通り、作戦は十日後。解散だ」

 

しかもハサウェイさんは気にした様子もなく号令をかけた。隣にいるイラムさんもスコールさんも呆れた様子で肩を竦めた。緊張の糸が解けて、ガヤガヤとした喧騒が部屋を包む。僕が原因と考えると、申し訳なさが心を支配する。

 

ベッチーさんは僕の肩に手を置いた、気にしないようにと言われている気がした。ペコリと頭を下げ、とりあえずハサウェイさんのところへ向かう。

 

「あの、すいませんでした…大丈夫ですか?」

 

「あぁ、気にしなくていい。昔、親父に殴られた時を思い出したよ」

 

「お父さん、ですか…」

 

そう言うと、ハサウェイさんも自嘲するような笑みを浮かべて叩かれた頬に手を当てる。段々と頬が赤みを増して、立派な紅葉が形成される。

 

「二人の衝突は昔からだ、気にするな」

 

「ハァ…」

 

イラムさんが僕の肩を叩く。昔からそうだったのかという思いと、ケリアさんの気を悪くしてしまった事実に心が重くなる。

兎にも角にも、僕はこの作戦で戦場に出る事となった。言葉にしてしまえば簡単で薄っぺらいものに聞こえるが、きっと現実は残酷だ。前にハサウェイさんが言った、恐ろしいものを目の当たりにするだろう。それまでに本当の覚悟を決めなければいけない…。

 

もしかしたら、これは自分で逃げ道を断った事でもある。勿論、逃げるつもりはない。これが僕が選んだ道なんだ……。

 

「コイツが織斑 一夏か?」

 

声の低い女性に呼ばれた気がした。振り返った先にいたのはスコールさんの後ろに控えていた女性だ、スラリとした体型に対して雰囲気や言動は粗く感じた。

ペコリと頭を下げると、女性はフンと鼻を鳴らした。どうやら笑われたようだが、何に大してかは図りかねて沈黙を続ける。

 

「あの「ブリュンヒルデ」の弟がテロリストかよ」

 

「……」

 

ああ、そう言う事か。この人は姉さんの弟である僕が、ここにいる事が可笑しかったのか。まぁ、今までもこうして姉さんと比較される事があった。気にする必要は特に無い。

 

「レイモンドさん、時間があれば訓練に付き合ってほしいのですが…」

 

「おお、いいぜ。ついでにチームの動きも復習だ、先に行っていろよ」

 

レイモンドさんが快諾すると、僕は一礼して食堂を出ようと足を進めた。次の作戦までに準備をしっかりしなければいけない、妙な心の締め付けを感じた。

 

「おい、シカトすんな!この野郎、舐めてんのか?」

 

女性の脇を抜けようとすると肩を押されて戻される。胸ぐらを掴まれてしまい、動くに動けない。

 

「おいおい、坊や相手に情けない事するなよ。スコールが見てるぜ?」

 

「大人げないわよ、「オータム」。離してあげなさい」

 

ガウマンさんとスコールさんが咎めると、オータムと呼ばれたこの女性は僕を離す。

ごめんなさい、とスコールさんが僕に謝罪をしながら歩みよる。気分を害したわけでもないので、首を振って答える。

 

「でも私も聞きたいの。なぜ貴方がマフティーに参加したのか」

 

「あの二人に嫌気が差したから、では駄目ですか?」

 

「それにしては、悲しそうな顔をするのね―――」

 

屈んで僕の頬を撫でるスコールさんは微笑む、これが建前だと言う事を理解しているみたいだ。香水が思考を惑わせる、この人のやり口なのだろうか…。

 

「将来、いい男になるわね。お兄さんより貴方の方が好みよ?」

 

「……どうも」

 

可愛い子―――スコールさんの唇が頬に触れた。少し前までそんな事を日常にしてたからか、思い出して心臓の鼓動が速くなる。赤くなっているんだろう、スコールさんも他のメンバーも笑っている。

 

「けど、覚えておきなさい。戦場に出たら生きて帰ること、それが出来たら一人前よ」

 

そう言ってオータムさんを連れて食堂を出た。

生きて帰る―――その言葉が重くのしかかる。遊びでもゲームでもない、次の無い戦い…そう考えたら、次第に手が震えて来る。それをみんなに悟られないように、もう一方の手で包んだ。

 

「やるじゃねぇか、坊やちゃん」

 

「いい女に目をつけられたな〜、羨ましいぜ」

 

後ろからガウマンさんとゴルフさんが肩を組んでくる。一見すればそういう事なんだろうけど、遊ばれていたというのが本当のところだろう。それから皆で食堂を出る、裏方の人たちと別れてパイロットの人たちと行動を共にする事となった。

 

ついに僕の戦いが始まるんだ―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲板の上、一夏はハンドガンを構えて目標に銃口を向ける。ゴーグルをした目で目標の中心点を見据え、腕をしっかり伸ばして引き金に指をかける。ジッと狙いを定め、引き金を引いた。

伸ばした腕が反動でバランスを崩すと、放たれた弾丸は中心からズレた位置に穴を空ける。

 

「腕がブレて狙いが外れているぞ!動いていてもそれでは、自分も仲間もやられてしまうだろ!」

 

「はい…!」

 

後方にいるレーンの叱責に一夏は返事をして、再び腕を伸ばして狙いを定める。レーンは隊長の経験もあり、一夏がしっかりと戦場を生きられるように指導した。時には優しく丁寧に、時には荒く厳しい指導があった。一夏のような子供が死んでほしくないという願いもあった。ガウマンの言葉通り、一夏は吸収力がある。今の言葉で、一夏はしっかりと修正をするだろう。

彼が一人前の戦士となれば、嬉しさの中に子供を戦場に出すという後ろめたい感情が隠れていた。

 

そんな一夏を見つめている人物がいる、ハサウェイだ。一夏のがむしゃらな様子は昔の自分を見ているようだ。父が指揮を執る戦艦で、MSのシュミレーターを体験した時だ。それが思わぬ形で活き、あんな道を進むとは……。

ため息を吐くと、側にケリアが来た。昨日から会話がない二人、居た堪れないハサウェイにはその沈黙が痛かった。

 

「昨日はごめんなさい…」

 

「いや、僕も悪かったよ。キミの気も知らず…」

 

ケリアが先に口を開き、ハサウェイも彼女に謝った。互いの謝罪で、ひとまずは空気が変わって安心を覚えた。

ケリアはハサウェイ同様、一夏を見つめる。再び引き金を引くと、銃を左手に持ち替えて右腕を伸ばしている。先程の感覚を思い出しているのだろう。レーンが近づいてアドバイスをしている。

 

「私はまた、見ているしか出来ない。あの時のあなたを止められていたらって…」

 

「それに関しては……本当にすまない」

 

視線を反らしたハサウェイに怪訝な目を向けるケリア、矢のように刺さる視線に耐えられずハサウェイはグッと身を縮める。そんな彼の様子が可愛らしく見えるのは、まだ自分がハサウェイを愛しているという事だろう。

思えば、地球に来たハサウェイと出会えた偶然は奇跡だった。心を病んだ彼のためにと薦めた反政府運動にのめり込み、あんな結果を齎した自分が恨めしかった。

 

「彼は必ず守る、みんなで生きて帰るよ……約束する」

 

「………」

 

決意を秘めたハサウェイに身を寄せるケリアは何も言わない、悲劇が繰り返されるかもしれないという一抹の不安が彼女の口を固く閉ざした。ケリアの温もりを感じ、ハサウェイはぎこち無い手で彼女の手を取った。

驚いて手が震えると、じんわりとした安心が二人の蟠りを無くした。手を繋ぎ、それぞれの体温が二人を包む。最後に手を繋いだのはいつだろう、ハサウェイは無性にこの感覚が惜しくなって手に力が入った。

 

ケリアの差し出された手は、同情や憐れみといったものでは無い。彼女を想っていた、彼女に愛されていたのだ。今になってそれを理解するとは―――。

 

「バカは死ななきゃ治らない、か……」

 

「え…?」

 

「……なんでもないさ」

 

ケリアに向き直り、彼女を抱きしめた。

―――今、この時だけは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、と……」

 

「これ、忘れてる」

 

「はい」

 

日が落ち、闇に包まれたヴァリアント。ドックで先輩メカニックのジュリアのフォローをしている。彼女は僕と同じくらいの年で最年少、薄着が褐色の肌が露わになっている。女性の身体を見慣れていなければ、まともに話せなかっただろう。

彼女の作業を後ろから見る時間が多く、仕事を覚えられることが個人的に助かる。

 

「ねぇ……」

 

「はい…?」

 

ハサウェイさんの専用機であるクスィーの整備を終え、後片付けをしている僕にジュリアが声をかけた。コンテナを置いて彼女の後ろに控えるが、ジュリアはそのまま作業を続ける。

 

「前線に出るんだって…?イラムが言ってた」

 

「え、あぁ、そう。レイモンドさんのチームに入るんだ」

 

「……なよ」

 

「うん…?」

 

「ちゃんと帰ってきなよ…」

 

小さな呟きだった。普段から必要以上に喋らず、ツンケンとした態度のジュリアから出たとは思えなかった。

 

「もしかして、心配してくれてる?」

 

「…そんなものじゃない」

 

返答までに間があった気がしたが、踏み入ったことは聞かないようにした。彼女を誂うつもりは無いし、度が過ぎると何が返ってくるか分からない。

 

「ここに来るまでは、深く踏み込まないようにしてたんだ。お別れする時に悲しまないで済むようにって…でも、今はさ…きっと、この空間が好きなんだ」

 

「………」

 

「帰ってくる。まだ教わる事もあるからね、ジュリア先輩に」

 

「……バカ」

 

先に休むようにとジュリアにドックを追い出され、僕は外に出る。昼は湿った空気と暑さでうんざりしていたが、夜になってもあまり変化はない。生温い風が少し鬱陶しく感じた。一頻り静かな海を眺めて、僕は仮眠室に向かった。

 

出発は明後日、もうすぐだ―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後、日差しが差す中で甲板のヘリコプターが快調を示すようにプロペラを回転させている。作戦自体は明後日、陸戦部隊は前乗りという形で出発する。大きなヘリコプターの中は思った以上に広く、人員も物資もたくさん乗せれそうだ。

感心していると、肩を叩かれる。レイモンドさんと、同じチームのヘンドリックスさんだ。

 

「緊張しているか?」

 

「…はい、とても」

 

「そうでなきゃあな、存分に味わえよ」

 

不安が顔に出ていたのだろう、二人の言葉はとても有難かった。まだ作戦までには時間がある、それまでに落ち着かせないと…。

 

「一夏くん…!」

 

ハサウェイさんが僕を見つけて駆け寄って来る、ペコリと頭を下げるとレイモンドさんと同じように肩に手を置いた。

 

「初めての実戦だ、辛いぞ?」

 

「理解しているつもりです…」

 

「生きて帰ってくるんだ、僕も君も…」

 

力強い言葉だった。リーダーという事もあるんだろう、誰よりも強い覚悟を感じた。ハサウェイさんが差し出した拳に、同様に拳を出して答えた。

 

「おう…」

 

「全員で、ですね」

 

レイモンドさん、ヘンドリックスさんも拳を合わせて誓いを立てる。すると、近くで見ていたのか男性陣がゾロゾロと集まってくる。一気にむさ苦しさが増すが、妙な居心地の良さは男だから感じることなのだろう。

一人じゃないと改めて感じ、心強さを覚えた。

 

「ホラ、レーンも」

 

「おい、よせ…!私は…」

 

遠くから早足でイラムさんが近づいて来る、レーンさんの手を強引に引っ張って輪の中に入れる。全員が拳を出す中、レーンさんは頑なに手を出さない。

空気を読め―――と言わんばかりの白い視線がレーンさんに突き刺さる。仕方ないと諦めたのか、レーンさんは拳を差し出す。

 

「ホラ、これで良いのだろう?」

 

「まったく、分かりゃいいんだよ」

 

「中尉サマは潔癖だからな」

 

「私は大尉だ…!」

 

同行するメッサーのパイロットである「ロッド・ハイン」さんが呆れた様子を見せ、ガウマンさんの言葉にレーンさんが噛み付く。向こうの世界では昇進したらしいが、ガウマンさんがキッカケで中尉の愛称が付いているみたいだ。

僕が誂うわけにもいかず、レーン大尉と尋ねると分かりやすく顔を綻ばせる。一回り近く年が上にも関わらず、愛らしさを感じた。

 

『………』

 

「……え、僕ですか?」

 

すると、今度は僕に視線が集まった。何かをした訳でもなく少し焦ったが、間を置いて事態を把握した。気合いを入れるための音頭や円陣という事だ、僕は目を閉じて深呼吸を一つ―――。

 

 

 

「必ず、生きて帰りましょう。絶対に…!

では―――行くぞ!!」

 

『ッシャア!!!』

 

 

 

歓声のように沸き、気持ちが入ったと思う。仲間たちが背中を叩き合い、拳や腕を合わせる。僕もそこに含まれていて、みんなに応えて拳や腕を合わせる。

 

「まったく…男ってさ」

 

「ホント、ガキなんだから」

 

横を通るエメラルダさんと「ハーラ・ モーリー」さんが呆れたようにため息を吐く。何も言えない僕が苦笑いを浮かべていると、横からゴルフさんとフェンサーさんが肩を組んでくる。

 

「いいのいいの!」

 

「作戦前だしさ!」

 

気をつけろよ、またな―――そう言って、二人は女性たちの横を通って船の方へ戻っていく。僕は心の中で礼を言い、頭を下げた。そして、振り返ってヘリコプターの方へ駆け出した。

何だか、この作戦は上手く行く。根拠のない自信が僕の心を満たしていた、昨日までの手の震えは、いつの間にか消えていた―――。

 

 

 

 

 




リメイク前はオータムに噛みつかれた一夏をジュリアが庇ったり、最後の円陣が無かったり…そもそも、リメイク前はこの過去回から始まりました。

次回より戦闘回、今回の銃の描写とか前回の訓練のシーンはネットで調べた程度です。有識者の方がいればご教授願います。

では、また次回
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