インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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今回はガンダムキャラを出しました。

戦闘は次回からです、すいません。


第6話

試合を終えた静夢は、気を失って動かない織斑を抱えて、ピットに戻った。

 

そのままにしても良かったが、他の教師への手間や自身の周囲への印象を考えると、仕方なしにこうするしかなかった。

 

ピットへ戻ると、既にストレッチャーが用意されていた。千冬が指示を出していたのだろう。ストレッチャーに織斑を乗せると、自分もISを解除した。

 

「すみません、お願いします」

 

「ええ、お疲れ様」

 

「さっきの試合、とっても格好よかったよ」

 

ストレッチャーに付く二人の教師からの称賛に、静夢は微笑みながら一礼した。二人は織斑が乗せられたストレッチャーを押して、ピットを後にした。

 

「さて……山田先生、向こうのピットと通信はできますか?」

 

「え?ああ、はい!可能です」

 

「申し訳ありませんが、繋いでもらってもよろしいですか?」

 

丁寧な口調で真耶に話しかける静夢、真耶は少し慌てた様子で通信の準備を始めた。

 

『こちらケネス・スレッグ、どうした?』

 

「ケネス先生、静夢です」

 

『おお、お疲れさん。そっちはどうだ?』

 

慣れた口調で静夢は反対側のピットにいるケネスと話す。内容は、ヴァルトの招集とこの後の試合についてだ。

静夢もヴァルトも、クラス代表への就任には後ろ向きだ。かなうなら、この試合は棄権したいとさえ考えている。織斑が戦闘不能になった今、セシリアとヴァルトは不戦勝で白星が一つずつ加わる。

この後も続行するのか、ヴァルトやセシリアを交えて話す必要があったのだ。

 

『わかった、ヴァルトを呼ぶ。それまでは休んでいろよ』

 

「休むほど、疲れていませんよ」

 

それもそうか、ケネスは笑って返す。通信を終えると、ヴァルトを呼ぶアナウンスが流れる。

 

「山田先生、立て続けに申し訳ありませんが―――」

 

「オルコットさんですね、連絡します」

 

「……申し訳ありません」

 

「そんなに謝らないでくださいよ」

 

どこか遠慮した態度の静夢に対し、真耶は笑って見せた。その後、セシリアを呼ぶアナウンスと同時に、観客席の生徒たちにもアナウンスが流れる。

 

「累くん、ISの修復とエネルギーの充填をしますので―――」

 

「ああ、いえ……どうせ棄権しますから、大丈夫ですよ」

 

「ですが……」

 

「本当に大丈夫ですから、ご心配なく」

 

食い下がる真耶を押さえつけるように、静夢は矢継ぎ早に制した。

 

少しの暇ができて、手持無沙汰となった静夢は後ろに下がった。意図せず千冬の隣に立ったことを後悔した。千冬の視線が突き刺さり、どうにも鬱陶しく思えた。

 

「なんですか?」

 

「いや、慣れていると思ってな……」

 

「世界中を歩いて、色々な人と会いましたからね。自然とこうなりますよ、お国の仕事でもありますから」

 

怒気を孕んだ静夢の声に、千冬は口ごもる。沈黙が訪れると、好機と見た静夢は目を閉じた。

自分から話しかける必要はないし、向こうから声をかけられてもうまく誤魔化せるからだ。

 

「……すまなかった」

 

「…………」

 

小さな千冬の呟きに、静夢は顔を下げたまま瞼を開いた。

 

「私は何もしてやれなかった、お前が苦しんでいることにも気づかず……」

 

過去の行いを懺悔するかのよう、そんな言葉が千冬からこぼれた。

 

"今更、何を言っているんだ……"

 

静夢は声に出さず、心の中で吐き捨てる。静夢は決して彼女を恨んでいるわけではない。しかし、良く思っているわけでもないのだ。

自分を育ててくれたことには恩を感じている。だが、それだけだった。

 

心配はしてくれるが、何か対策をしてくれるわけでもない。ただただ様子を眺める千冬を、好きにはなれなかった。

家にいることも嫌になり、夜の街で小遣いを稼ぐようになってからは話す機会も減っていった。最後に話した記憶さえ思い出せないくらいだ。

 

「許してほしいとは言わない。ただ、謝りたかったんだ」

 

「僕に謝って、どうするんです?」

 

静夢の冷たい言葉が、千冬の思考を鈍らせる。

 

「懺悔なら教会でやってください、そんなことを聞く僕や山田先生の身になってもらいたいよ」

 

「ま、待ってくれ……私は」

 

「それに―――」

 

縋るように言葉を絞り出し、手を伸ばす千冬。付き合うつもりはない静夢はバッサリと切り捨てる。

 

 

「貴方の罪を許せる人間は、もうこの世には存在しませんよ」

 

 

横目で千冬を睨んだ静夢、伸ばされた腕がダラリと力を失う。

すると、セシリアがピットへ入って来た。振り返った静夢と目が合う。

 

「あ……」

 

「………」

 

静夢は何も言わず、会釈で挨拶をする。同時にケネスからの通信が入った。

 

『よう、揃っているか?』

 

「問題なく」

 

『この後の事なんだが、お前さんたちはどうするんだ?』

 

「僕は棄権しますよ。元々そのつもりでしたから」

 

『右に同じだ』

 

簡単な説明を終えると、静夢が棄権を申し出る。通信越しにヴァルトも棄権を表明する。

 

「私も、辞退致します……」

 

セシリアがそう言うと、千冬と真耶は驚いて振り返った。自信に満ちて、実力も兼ね備えている彼女の棄権は予想外であった。

静夢も驚いたが、一瞥するだけに留めた。おそらくヴァルトも驚いているだろうと、ピットにいる彼の様子を思い浮かべる。

 

『どういう風の吹き回しだ?』

 

想像通りのヴァルトの言葉に声を漏らしそうになる静夢だったが、それをこらえて平静を保つ。

 

「貴方と戦って、分かったのです。女だから強いわけでも、立場があるから強いわけではないと……」

 

『…………』

 

「私のように、驕った者が上に立つべきでは無いと思ったのです」

 

『なるほどな。結論を言うと……織斑の不戦勝でいいな?』

 

「『意義なし』」

 

ケネスの提案に、静夢とヴァルトは賛成した。セシリアを見ると、彼女もまた頷いていた。

 

こうして、クラス代表決定戦は幕を下ろす―――ハズだった。

 

『……静夢』

 

「なに?」

 

通信を切ろうとした静夢だが、ヴァルトに呼ばれて手を止める。

 

『勝ったんだろうな?』

 

「それを聞くの?負けるわけないよ」

 

何を聞くかと思えば、笑って答える静夢。通信越しのヴァルトも、愚問だったと笑っていた。

 

『お前が時間をかけてくれたおかげで、俺もエクスプロードもすっかり元通りだ』

 

「そう?ならよかった、僕も大したダメージは無くてね。もう一戦は余裕だよ」

 

『「…………」』

 

段々と雲行きの怪しくなっていく会話に、ついに両者は沈黙した。

 

『俺もこいつも、まだ満足してなくてな……』

 

「奇遇だね、僕もだ。あまりにも呆気なく終わって、退屈してたところだ」

 

ヴァルトは笑っているだろう。かくいう自分も、どこか浮かれている。

 

『お前たちな……』

 

「元々、時間はとってあるんでしょう?一試合くらいは大丈夫ですよ」

 

ケネスの溜息を聞きながら、静夢は真耶にユニコーンを渡した。ヴァルトを待たせる形となるが、万全の状態で臨むのなら仕方がないところである。

 

二人の試合はエキシビションマッチ、イベントに近いものだ。静夢は同じピットにいるセシリアに、ヴァルトの情報を聞き出す。

同じように、ヴァルトもピットにいるケネスから静夢の情報を得ることで、公平性を保つことにする。

 

互いにルールを確認し、静夢は通信を切った。

 

「格闘特化、ケンカのやり口か……」

 

「はい、遠距離からの攻撃が有効と思いましたが……」

 

「被弾しながら距離を詰められたと?」

 

「はい……」

 

シュンとするセシリアに、静夢は苦笑いをした。

代表候補とはいえ、百戦錬磨というわけではない。ヴァルト・パークスという人間の戦い方は、教科書には載らないものだ。

 

「しかし、その敗北は君にとって、価値のあるものだったんじゃない?」

 

「……ッ、はい」

 

「『失敗を気に病むことは無い。ただ認めて、次の糧にすればいい』」

 

「え……?」

 

静夢の言葉に、セシリアが顔を上げた。驚いているセシリアを見て、静夢はニヤリとした。いたずらが成功した子供のようだった。

 

「とある人の受け売りだよ。敗北という失敗を経験した君は、それを糧にして変わろうとしている。少し前の君からは想像できないな」

 

「そ、その節は申し訳ありませんでした……」

 

その様子に、静夢は朗らかに笑ったのだった。

 

「累くん!準備ができました!」

 

「ありがとうございます、行きます」

 

真耶からの連絡を耳にして、静夢の雰囲気が変わる。柔和な空気から一変、笑顔は影を潜めた。

 

「オルコットさん」

 

「は、はい……」

 

真耶からユニコーンを受け取った静夢が、セシリアに声をかける。消えたと思った笑顔を浮かべながら、彼は言葉かける。

 

「君はまだ強くなれると思う。いつか、強くなった君と戦いたい」

 

「私も、貴方と戦いたいと思っています。今よりも、もっと強くなって……!」

 

「お互いにベストな状態で戦いたいね、それじゃ……」

 

ユニコーンを展開した静夢は、カタパルトへ移動する。ウィンドウに映る機体の状態を見ながら、目を伏せて集中力を高めていく。

 

"さっきとは違う、気を抜いたらやられるな……"

 

浮かれつつある自分を律し、目を開いた。カタパルトの準備が整うと、静夢は一呼吸の間を置いて発進する。

 

「累 静夢、ユニコーン…行きます!」

 

純白なる獣は、新たな可能性を求めて飛び立つのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハサウェイたちが静夢の戦況を見ていた時、束は他所にも映像を回していた。

 

日本のIS企業『ロンド・ベル』―――静夢が所属する新進気鋭の企業である。

そのロンド・ベルのトップにいる「ブライト・ノア」は、束からなんの報せもなく届いた映像に困惑した。

それを自分だけでなく、静夢に関わった者たちにも共有する。

 

「…………」

 

「気がかりですか?」

 

「ああ、いや……うむ」

 

秘書である「メラン」に言われ、頷くしかなかった。ハサウェイ・ノアの実父であり、久しくの再会と同時に静夢と邂逅したブライト。ハサウェイは自身の決意を明かし、ブライトは陰ながら息子の支えになることを約束した。

 

「かつての少年」と似た雰囲気を持つ静夢を、息子同様に思っている。だが、幼くも世界の歪みを知った静夢を心配している。

 

「これは他にも回しているのか?」

 

「ドクター束から受信した映像ですから、『ジオニック』にも同じものが行っているはずです」

 

そうか、と相槌を打ち、椅子へ深く座り直した。メランはその様子を一瞥し、映像を覗き込む。「かつての宿敵」である者たちも、自分のようにハラハラとしているのだろうか。

 

否、武人気質の彼らは、心配などしないだろう―――溜息を吐き、何事もなく終わることを願うブライトであった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

ブライトから映像を受け取ったロンド・ベルの製造部門では、映像を食い入るように見る者と、作業を続けながら映像を注視する者に分かれていた。

どちらも静夢を信頼し、その実力を知るが故の対応である。

 

「…………」

 

そんな中、その映像をジッと見つめる青年がいた。眉間に皺をよせ、小さい声で唸っていた。

 

「『リディ』!ミーティングだぞ!」

 

「す、すみません……!」

 

上の立場である人間に叱られ、「リディ・マーセナス」は後ろ髪を引かれる思いで去っていく。

 

「あいつなら心配ない……」

 

「え……」

 

「『財団』とブライト艦長はあいつを認めてユニコーンを託した。お前もまた同じだろう?」

 

上司である「ナイジェル・ギャレット」は、例に漏れず静夢を認めている。似たような立場であるリディのことも、同じように評価をしている。

左手に巻き付けているお守りを撫でながら、リディは伏せていた顔を上げた。

 

「隊長、お疲れさんです」

 

「おい、お坊ちゃん。また隊長に迷惑をかけたのか?」

 

「そう虐めてやるな。一夏を心配していただけだ」

 

訪れた部屋には、細身の男と大柄の男がいた。「ダリル・マッギネス」はナイジェルに挨拶を交わし、「ワッツ・ステップニー」はその風貌でリディをからかう。

 

「さて、『ジェガン』と『ジェスタ』のテストについてだが……」

 

ナイジェルとリディが着席すると、四人は次に舞い込む仕事についてミーティングを始めるのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『アムロ』!一夏の試合が始まりましたよ!」

 

「なに?そんなものをどうやって……」

 

「ブライト艦長からです、ドクター束からの通信みたいで」

 

ロンド・ベル所属の製造部員である「チェーン・アギ」は、端末を一人の男に見せた。その男は、チェーンから端末を受け取った。そこに映るユニコーンを駆る静夢と、エクスプロードを駆るヴァルトの対戦をジッと見る。

 

「全く、束の無茶は学生の頃から変わらないな……」

 

学生の頃の束を知る「アムロ・レイ」という男は、危険な行動をやってのける束に目を伏せた。

 

「大丈夫でしょうか……」

 

「確かに、あれは危険なマシーンだ。しかし、一夏ならうまく使いこなせるだろう」

 

「『サイコフレーム』の共振には、驚きましたよ……」

 

過去に、このアムロは静夢と戦った経験がある。その時に発生した事態に、誰もが恐怖を感じた。

しかし、その時の現象に『温もりと安心』を感じた者も―――。

 

「あいつがただの子供だったなら、『カーディアス・ビスト』もユニコーンを託したりはしなかったさ」

 

端末をチェーンに返すと、アムロは愛機のもとへ戻った。

アムロの言葉は理解が簡単であって、簡単ではない。恋人である自分よりも、彼を理解した静夢の事が、羨ましいくも憎らしいと思ったこともあった。

 

そんな自分でさえ、静夢は受け入れたのだ。ユニコーンとの出会いは、静夢の心を大きく動かすこととなった。運命の出会いに泡を食うも、しっかりと受け止めた彼は前に進むこととなる。

 

「やっぱり、『ニュータイプ』なんだ……」

 

「え?」

 

「いいえ、なんでもないわ」

 

チェーンの呟きに反応するアムロだが、首を横に振るチェーンを見て作業に戻るのだった―――。

 

 




次こそは戦闘に入ります。

他のガンダムも出しつつ、原作キャラと絡めていければと思っています。
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