インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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静夢VSヴァルト、中編です

次回こそは決着させますので、もうしばらくお待ちください。


第8話

赤い光が青に変わり、エクスプロードの出力はまだ上がっていく。

 

「転醒……?」

 

初めて聞く言葉に静夢は警戒するが、何が来るかも予想ができない。暴走している様子もなく、エクスプロードはヴァルトがしっかりと手綱を握っているようだ。

 

「赤き龍の雄たけびよ、革命の青き号砲を打ち鳴らせ!」

 

エクスプロードの赤い装甲が量子となり、青い装甲が新たに展開されてヴァルトを包んでいく。

特徴的である腕部は掌が天球のようになっており、翼に似たアンロックユニットは巨大な腕へと変貌する。エクスプロードに比べ、とげとげしい姿となった青き魔神は静夢を前に産声を上げる。

 

 

 

 

 

「転醒―――『ビッグバン』!!」

 

 

 

 

 

ヴァルトの雄たけびに呼応するかのように、大気が震えた。様変わりしたヴァルトのISに誰もが息をのんだ。

 

「これがヴァルト君の……」

 

「これで終わったと思ってないよな?」

 

「ッ!?」

 

静夢の体に激痛が走った。いきなり縛り上げられたかのような、強い痛みだった。

 

「一体、なにが……!」

 

「自分の機体をよぉく見てみろ」

 

「エネルギーが、減っている……!?」

 

ヴァルトの言葉と同時に、ユニコーンから警報が鳴る。システムを調べると、ユニコーンのシールドエネルギーが少しずつだが減少している。

 

「どうして……いや、まさか……!」

 

頭をよぎる推測に、静夢はヴァルトを睨み付ける。睨まれても平然としていたヴァルトだが、余裕が出てきたのかニヤリと笑みを浮かべた。

 

「あの弾丸に、細工がされていたのか……?」

 

「お前は本当にすごいな……そうだ、あの弾丸には仕掛けがある」

 

ことごとく自分を飽きさせない、そんな静夢にヴァルトはクスクスと笑っていた。

 

「エクスプロードの弾丸には、あるウイルスが仕込まれている。打ち込まれた弾丸、弾痕から機体の内側に入り込んで機体を蝕んでいく。このビッグバンは、そのウイルスを発動させる機能もある」

 

ビッグバンはあくまでウイルスのトリガーだ、普通の相手ならエクスプロードで勝つことができるのだ。奥の手であるビッグバンを出すのは、静夢がそれだけの相手だからなのである。

そういうことか、ヴァルトの説明で冷静になった静夢はヴァルトから受けた傷を見る。

弾丸が撃ち込まれた痕があり、青い光が不気味に、明滅している。

 

「ここから勝つには、エネルギーが尽きる前に君を倒すしかないのか……」

 

静夢がボソリと呟いくと、ヴァルトが眉をしかめた。ここから静夢が逆転するには、その通りだった。しかし、こうして話している間にもユニコーンのエネルギーは刻一刻とゼロに迫っていく。

 

「やけに余裕じゃないか?」

 

「そんな事はないさ、とても焦っているよ」

 

静夢の返答にヴァルトは苛立ちを感じた。自分は切り札を出したにも関わらず、静夢の冷静な様子が気に入らなかった。

 

「言ったよな?お前は俺と同じだと」

 

「うん、覚えているよ」

 

「だったら何でそんなにヘラヘラしていやがる!俺は全力を出した、そうでなければお前を倒せないと感じたからだ!」

 

静夢の様子に、ヴァルトの怒りが爆発した。こうでも言わなければ、自分の気が済まないのだ。静夢を認めた自分が、情けなく思えてしまった。

 

「俺とお前は同じだ!弱い奴らに飽きて、自分を満たす相手を探している!!」

 

感情が爆発したヴァルトが仕掛けた。天球のような掌を握りしめ、思い切りユニコーンを殴りつけた。アンロックユニットとして浮遊しているサブアームでも殴りつけた。エクスプロードのような一撃の威力はないが、単純に増えた腕の質量でのゴリ押しだった。

 

二倍となった拳の質量に押され、ユニコーンは地面に向かっていった。

 

「クッ……!」

 

静夢は姿勢制御で体勢を整え、地面との激突を回避する。土煙を上げながら、壁際で止まった。大きく息を吐き、ゆっくり立ち上がると、上空に浮かぶビッグバンを見つめる。

 

「本気を出せよ!そして、本気のお前を倒した時……俺は真の勝利を手に入れる!」

 

静夢は思った―――いつから自分を押さえつけてきたのだろうかと。

 

生きていく上で、自分に仮面を着ける必要があった。そうでもしなければ、生きていくことが出来なかったのだ。結果として、それは今の自分を構成する礎となった。さらに言えば、仕事で大いに役に立ったのだ。

 

このユニコーンを授かり、この機体に込められた願いを知った。―――同時に、この機体が持つ大きな力を恐れた。

その片鱗に触れた際、静夢の中に流れ込んだ感情の濁流にのみ込まれたこともあった。自分が初めて過ちを犯したときと同じく、長く葛藤をした。

それ以来、ユニコーンの力をセーブして来た。自身や仲間たちが命の危機に瀕した時にだけ、ユニコーンの力を使おうと心に決めて来たのだ。

 

しかし、目の前にユニコーンの全力を望むヴァルトがいる。そして、微かな可能性を感じてもいる―――。

 

「苛立たせる……ああ、イラつくぜ!こんな奴を見込んだ俺が馬鹿だった!」

 

もはや、問答は無意味だと思った。ほんの少しだが、期待していた自分が恥ずかしくなった。

 

「これで沈め……!」

 

再び加速し、ヴァルトは静夢に肉薄する。ウイルスのおかげで、ユニコーンはもうすぐ力尽きる。この試合の意味はもうない、また退屈な日々に戻るだけ―――そう思っていた。

 

―――渾身の力で振るったビッグバンの二つの拳は、ユニコーンの腕によって止められた。

 

「ッ!?」

 

「すまない、君を侮っていたわけじゃないんだ……ただ、この強すぎる力が怖かったんだよ。もし、使い方を誤ってしまえば……これはただの殺人兵器になる」

 

倍となったビッグバンの拳を、たった一本の腕で止めた静夢の独白―――ヴァルトは体全体に雷が走るような感覚を覚えた。

アームド・アーマーの砲撃を躱した時の比ではない。それ以上の何かを、今の静夢から感じたのだ。

 

「そうさせないために、僕がしっかりしないといけない。これは僕の覚悟の証だ……」

 

静夢の決意―――それに呼応するかのように、ユニコーンから赤い光がこぼれ始める。

 

「全力でキミに勝つ……もし暴走しちゃったら、躊躇わないでね?」

 

急いでユニコーンから離れたヴァルトは、両腕とサブアームの天球を体の前で合体させた。エネルギーを収束させ、やがて荷電粒子砲として撃ち放つ。

光の渦となったそれは、ユニコーンに向かっていく。しかし、静夢は動く素振りを見せなかった。

 

誰もがヴァルトの勝利を予感した。しかし、轟音と共に上がる土煙が晴れると、そこには悠然と立つユニコーンがいた。

観客席のざわめきが耳に入るが、ヴァルトにとってはどうでも良かった。

 

「前言撤回だ……やっぱり、お前は強い。さぁ、来いよ!楽しもうぜ!」

 

やはり、自分の目に狂いはなかった。モチベーションは一気に頂点まで登り、ヴァルトは静夢に拳を向けた。

 

「『父さん』……行くよ」

 

この力を託してくれた人に誓い、静夢はユニコーンの真の力を解き放つ。白い装甲が展開し、赤い光は段々と強くなっていく。

脚部から展開した装甲は、やがて頭部にまで及ぶ。特徴的な一角のインターフェースが割れ、ユニコーンは真の姿を現した。

 

 

 

『NT-D』―――「ニュータイプ・デストロイヤー」と呼ばれるそれは、赤い光を煌々と放ち始めた―――。

 

 

 

 

 

 

 

はるか遠くの海洋上、『一羽の鳥』が飛んでいた―――。

 

特に目的は無く、己が望むままに翼をはためかせる。そのスピードは従来の比ではなく、レーダーで捉えることができても追いつくことは不可能だった。

 

「……?」

 

今日も気ままに飛んでいると、何かを感じてスピードを落とした。やがて、「彼女」は完全に停止する。

その何かのある方向へ振り返るが、何を言うでもなくただジッと見つめていた。

 

「………」

 

そして、腑に落ちたのか彼女は再び飛翔した。過去に問答をした少年を思い浮かべ、彼女は加速を止めなかった。かの少年なら、この世界に変革をもたらす存在となるかもしれない。

今の彼なら心配はないだろうという、信頼の証でもあった。

 

その後、青い光を纏う彼女を見た者たちは、流星を見たと噂するのであった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

変貌を遂げた二機のISに、アリーナの観客席は沸いた。二人の少年による激闘は、学年を問わず目を惹いた。

 

「ねぇ、すごいよ!」

 

「姿が変わった!」

 

語彙力の低下を感じながら、観客席の少女たちは盛り上がりを見せる。姿を変えた赤と青の光が交差し、戦いは更に激しさを増す。

二人の少年は、どこか楽しそうに笑みを浮かべている。

 

「…………」

 

過去に出会った少年を思い浮かべながら、『篠ノ之 箒』は目の前の戦いを目に焼き付けた。累 静夢という少年をこの学園で見かけた時、彼女は言葉を失った。

彼が過去に別れた幼馴染の少年とそっくりだったからだ、それは織斑 千冬も同じだ。

 

しかし、彼女は静夢に何も聞かなかった。いや、聞くことが出来なかったのだ。彼の持つ雰囲気や表情が、過去のものと異なっていたからだ。口元を隠しており、真意を図れないということも事実だ。

だが、自分の知っている織斑 一夏とは思えなかったのだ。優しい表情は同じように見えるが、その隠された口元や意図は暗い何かを感じた。

 

そんな彼の過去に、踏み込んで良いものか否か―――今の彼女に、明確な答えは無かった。

 

「…………」

 

「かんちゃん、ライオンみたいな目になってる♪」

 

「え?あぁ、ごめん……」

 

そんな箒とは離れた場所で、更識 簪は食い入るように試合を見ていた。幼馴染である『布仏 本音』が隣に座り、稀に見る簪の目つきにケラケラと笑った。ヴァルトと同室である簪は、意外にもヴァルトと馬が合った。

 

日本の代表候補である簪だが、自身の専用機を持っていない。正確には開発中なのだが、彼女は四苦八苦しながら完成を目指している。一企業の代表として専用機を持つヴァルトは、そんな彼女に手を貸した。

自身で作り上げるという信念を持つ簪は、ヴァルトの助力を断った。しかし、自分の力には限界を感じていた。結果として、折れた簪がヴァルトの力を借りることとなったのだ。

 

隣に座る本音や、メカニックの卵である先輩たちの力を借りて、専用機である『打鉄弐式』は完成に大きく近づいたのだった。

ヴァルトからエクスプロードのデータをもらっており、同時にビッグバンの詳細も知らされていた。そこから荷電粒子砲のデータを研究し、武装面の大幅な強化も施されていた。

 

「『パーくん』にぞっこんだもんね、そりゃ応援するよね」

 

「ち、違うよ!彼はそういうのじゃ……」

 

最初はヴァルトを警戒していた簪だったが、打鉄弐式の開発に関わるうちに、二人の関係は深まっていた。そこには、友と言える感情があった。

ヴァルトに関しては不明だが、簪は自分が彼に対して持つ感情を自覚しつつある。

 

「大丈夫だよ。『しずむん』も強いけど、パーくんを信じよ?」

 

「……うん、そうだね」

 

ヴァルトに信頼を置く本音に頬を膨らませ、簪は自身の勉強も兼ねてヴァルトを応援するのだった―――。

 

 

 

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