インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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お久しぶりです。

ようやく投稿ができました。
静夢VSヴァルト、決着です。


第9話

「ようやくその気になったか!待ちくたびれたぜ!」

 

NT-D―――ニュータイプ・デストロイヤーという真の姿を現したユニコーンを前に、ヴァルトは狂乱したかのように雄たけびを上げた。自身が望んだ静夢との本気の戦いに、人生で最も高揚しているといってもよい。

 

「……」

 

対して、ユニコーンを操る静夢はディスプレイからの情報に目もくれず、ビッグバンを観察している。

 

(スピードは変わらず、近接よりも遠距離が得意なのか……?)

 

ビッグバンに変わってからの行動を思い起こし、分析を重ねて対策を練る。冷静かつ迅速に、軍人のような人間たちと関わってから、静夢にはやはり大人の一面が芽生えていた。

 

(しかし、僕にデストロイモードを操れるだろうか……)

 

静夢には不安の種が存在した。過去の記憶が甦り、モヤモヤとした感情や思考が生まれる。ユニコーンの性能を何度か解放した時、静夢はユニコーンが自分の手から離れる感覚を覚えたのだ。

意識がはっきりとあり、視覚や聴覚も正常だった。

 

―――にも関わらず、自分が操作するよりも速く、ユニコーンが動いていたのだ。

 

まるでこの機体に意思があるかのようで、その時の無駄の無い動きは今でも脳裏に焼き付いている。恐怖を覚え、静夢は自分からデストロイモードを封印したのだ。

 

自分の手から離れ、他者を傷つける前に手を打つしかなかった―――。

 

"啖呵を切ってこのザマ、ヴァルト君はがっかりするだろうな……けど"

 

しかし、今となっては引くに引けない。静夢は決意し、ビッグバンをその目に捉えた。

ディスプレイを見て、エネルギー残量を確認する。ビッグバンのウイルスによって、少しずつ蝕まれるエネルギーは三十パーセントを切ろうとしている。

 

「何もしないわけにはいかない……!」

 

一息に飛び出し、ユニコーンはビッグバンに迫る。大した策は浮かばなかったが、静夢は夢中で飛び出したのだ。

本気を望むヴァルトに答えるため、自身の中にある推測を確信に変えるために―――。

 

「ここで落とす!」

 

接近するユニコーンへ目掛けて、ヴァルトは荷電粒子砲を使う。エクスプロードに比べ、ビッグバンは近接戦闘を得意としない。代わりに遠距離を得意とし、転醒の二面性を体現していた。

 

「威力もある、食らったら大変だ……!」

 

体を捻って、その砲撃を回避する静夢。その姿はさながら曲芸で、観客席からは歓声が上がる。

 

「チッ……!」

 

砲撃を回避され、さらに接近する静夢に舌打ちするヴァルト。前で構えていた四本の腕を解除し、接近戦に備える。

 

「撃って来ない……連射はできないと見た!」

 

射撃の構えを解いたヴァルトを見て、静夢は一筋の光を見た。デストロイモードによって、背部に展開されたグリップを掴んだ。

 

「ッ!?」

 

「ハァァ!!」

 

間合いに入ると、勢いよくグリップを引き抜いた。グリップからビームサーベルが展開され、ビッグバンに向けて振り下ろす。

 

「させるかよ!」

 

ユニコーンの右腕を受け止めたビッグバンは、ビームサーベルの一撃を回避する。

 

「オォォォ!!」

 

「なにッ!?」

 

鍔競り合いの中、ユニコーンのパワーが勝った。徐々に押され始めると、ヴァルトはより濃厚となる敗北にゾッとする。

 

「舐めるなぁぁぁ!!」

 

負けじとヴァルトは右腕を振り上げる。このままユニコーンを遠ざければ、チャージした荷電粒子砲をぶつけることができる。

 

しかし、静夢の行動はヴァルトの予想を大きく上回るものだった―――。

 

「フッ!」

 

「なッ、足場にして……!」

 

ヴァルトの振り上げた右腕を、静夢は足場にして宙返りを決める。体勢を直し、啞然とするヴァルトの隙を突いてビームサーベルを横に振る。

 

バシィィィィ!!

 

―――激しい火花を上げ、ビッグバンのサブアームに横一文字の傷がついた。

 

「なんて動きだよ……信じられねぇ!」

 

「一気に押し込む……!」

 

静夢は追撃に出た。お互いにエネルギーは残り僅か、どれだけ我慢が出来るかの勝負となる。

 

「ハァァ!」

 

大きく振りかぶり、静夢はビームサーベルを振り下ろした。しかし、ヴァルトは直感的にそれを予測した。

 

「何でか知らないが……読めたぜ、その動きが!」

 

ビッグバンの左手を開き、今度はユニコーンの右腕を掴んだ。動きの止まったユニコーンに対し、右の拳をぶつけた。

 

「グゥゥ!?」

 

咄嗟に左手を挙げ、直撃を免れた。しかし、衝撃を打ち消すまでには至らなかった。

左手から体にかけて衝撃が走る。だが、静夢は勝負を諦めることはしない。

 

「ッ!」

 

バババババ!!

 

側頭部に設置されている小径のバルカンを連射する。本来は飛来するミサイルを撃ち落とすための弾幕だが、ここで静夢が使ったのは策があったからだ。

 

「どこに向けて……ハッ!?」

 

それを静夢の悪あがきと思ったヴァルトだったが、突如として起こる衝撃に驚く。思わずユニコーンの手を離し、静夢はその間に脱出する。

 

中距離の間合いを取り、自分と相手の状況を分析する。

 

「チッ!やられた……」

 

ヴァルトはビッグバンの状況に舌打ちをした。先ほどの爆発で、サブアームの一つは使い物にならない。静夢のバルカンが、サブアームの傷に直撃して誘爆したのだ。

 

油断によって招いた現状に、自分の弱さを実感する。同時に静夢への敬意と畏怖を感じた。

 

「その状態では、もう砲撃は使えないね?」

 

「本当にそう思ってるのか?高を括ると痛い目を見るぜ?」

 

静夢の推測は当たっている。四本の腕の天球を合わせることで荷電粒子砲を使えるのだが、その一つでも封じられればもう使用はできない。

ブラフと悟られないように、ヴァルトは平静を保った。

 

しかし、どちらも窮地にいるのは事実だ―――。

 

お互いのシールドエネルギーは残り僅か―――決着はすぐそこまで近付いている。

 

「さぁ、行くよ!」

 

再び仕掛けたのは静夢だった。ビームサーベルを構え、加速してビッグバンへ接近する。ヴァルトの言葉が本当なら、再び荷電粒子砲を撃ってくると踏んでの行動だ。

 

"不思議なやつだよ、お前は……"

 

静夢の接近に、ヴァルトは溜息を吐きたくなった。苛立ちも落胆も今はない、純粋に静夢との決着を望む自分がいた。

 

 

ビームサーベルに対して、防御の構えを取るヴァルト。どっしりと構え、振り下ろされるビームサーベルに備える。

ヴァルトの予想通り、静夢は正面から接近した。間合いに入り、ビームサーベルを振り下ろす。

 

左手を挙げ、ヴァルトは静夢の一撃を防ぐ。ここまでは、お互いに予想していた展開だ。勝負はここからだ―――。

 

「フン!」

 

「ウワッ!?」

 

防いだ左手を大きく振り、静夢の体勢を崩した。

決めるならここしかない、ヴァルトは勝負に出るしかなかった。

 

右手に力を込め、全力で振り上げる。この一撃が当たれば、ユニコーンのエネルギーは文字通り尽きるのだ。

 

「勝った……!」

 

ヴァルトは思わず声に出していた。押し殺していた欲が顔を出し、確信と共にあふれ出していた。

 

しかし、決着の瞬間というものは、最後まで何が起こるか分からない。それが勝負の醍醐味、面白味というものだろう。

 

―――静夢も笑っていたのだ。

 

「じゃんけんは、グーよりパーの方が強いって知ってる?」

 

不敵な笑みだった。その瞬間、ヴァルトの頭に音が響いた。静夢の攻撃はまだ終わりではなかったのだ。

 

刹那、左手のアームド・アーマーが大きく展開した。

四方向に展開されたアームド・アーマーは、甲高い音を立てて振動していた。

 

「なんてものを使いやがる……!」

 

ナイフや銃などの凶器の比ではない、そう感じさせるほどのプレッシャーがあった。ヴァルトが突き出した右手は、もう止められない。合わせるかのように静夢は左手のアームド・アーマーVNを振るった。

 

ガシャァァァァ!!

 

アームド・アーマーVNの四本の爪が、ビッグバンの右腕を粉砕した。破片が飛び散り、ヴァルトの右腕が露わになっていた。

―――試合終了を告げるブザーが響いた。

 

『勝者、累 静夢』

 

アナウンスに続いて、歓声と拍手が鳴り響く。全力を出し切った二人は、息を切らして天を仰いだ。

 

「負けたぜ、こんなに強い奴がいたとはな……親父に感謝しないといけなくなった」

 

「偶然かもね、君の云う本当の勝利には程遠いんではないかな?」

 

「そこは「ありがとう」や「お前も強かった」と言うところだよ……」

 

静夢の言葉が嫌味に聞こえて、そんなことを口にするヴァルトは笑っていた。初戦の時とも違う、憑き物が落ちたような顔だった。

 

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど……」

 

「なんだ?」

 

「どうして、あのビームを避けられたんだい?その後の接近も、動きが違っていた」

 

静夢が気になっていた、ヴァルトの動き―――かつて戦った、アムロ・レイやシャア・アズナブルに似たものを感じ取っていた。

 

「ああ、あれな……」

 

どこか歯切れの悪い口調で、ヴァルトは露わになった右手で頭を掻く。

 

「俺にもよくわからないんだが……偶にあるんだよ。こう、直感的に何か来るって……あ、でも、そうなったのは最近だぞ?」

 

「……そうか」

 

自分にもよくわからないが、自分なりに何かを伝えようとヴァルトの手振りは大きくなっていった。

静夢は腑に落ちたのか、それ以上は追及しなかった。

 

アームド・アーマーを収納し、静夢は左手を掲げた。

 

「ありがとう、楽しかったよ」

 

「…次は負けねぇ」

 

ヴァルトも左手を掲げ、互いの腕をぶつけ合う。互いへのリスペクトに、再び拍手が起こる。

こうして、クラス代表決定戦の幕は下りたのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑 春十をクラス代表とすることで折り合いがついた談論は、累 静夢とヴァルト・パークスのエキシビションマッチを持って幕を閉じた。

激戦の後となると、余計なことに頭を使う余裕はなかった。静夢もヴァルトも、思いのほか疲弊していた。

千冬やケネスの話は聞き流し、汗の始末をして普段着になったことで、ようやく安寧を享受するに至る。

 

ロンド・ベルの人間としてIS学園にいる静夢は、今日の戦闘をレポートとして提出しなければならない。自室のベッドに身を沈めてから、それを思い出して体を起こしたのだった。

 

ユニコーンが集めた戦闘データをもとにレポートを作成、デストロイモードになってからの機体性能の比較をグラフなどで簡潔に表現する。一か所に留まることで、植物監察官の仕事から離れてはいるものの、学園周囲の植物についてのレポートも課題として受け取っている。

 

「はぁ、目が疲れるな……」

 

かけていた眼鏡を外し、累 静夢は大きく息を吐いた。椅子にもたれて、目を閉じた。

 

暗闇となった視界で思い浮かべるのは、今日の戦いだった―――。

 

 

 

ヴァルトとの闘いに、静夢はアムロやシャアを始めた強者の雰囲気を感じ取った。そして、ヴァルトの語る直感はおそらく自分の想像通りだろう。

同時に見たビジョン―――ヴァルトの過去を……。

 

父の影に身を落としながら、ヴァルトは自分の居場所を探していたのだろうか……。

 

暴力でしか自分を表現できないヴァルトが出会った友、その出会いはヴァルトを少しずつ変化していった。ヴァルトから聞いた通りのことを自分の視点で見た静夢は、そこに怒りや悲しみといった感情を覚えた。

 

過去にも経験した、他者の記憶を垣間見る感覚。ヴァルトはこれを予見して、同類と言ったのか―――彼の口ぶりからすれば、それはNOだ。

感覚的に自分と似た何かを感じての言葉か、静夢は思考の海に身を落としていった―――。

 

 

 

「ニュータイプ―――」

 

 

 

一人しかいない部屋で呟いた静夢の言葉は、誰にも知られず虚空に消えていく。目を開き、静夢は疲れた体を起こした。

そして、途中のレポートに向かって手を伸ばしたのだった―――。

 

 




キリになったので、次はキャラ設定や紹介にしようかと思います。

描写のない設定もあるので、そのあたりも詳しくやって行ければと思っています。
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