ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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107話 致命的な誤算

 

 かなた城医務室――。

 ベッドに横たわるは、いろは、ぼたんの2人。

 みことあくあが能力で傷や体力を回復させつつ、簡単な処置をする。

 因みに傷口は殆どシオンが復活直後に治してくれた。

 

 その甲斐あって、もう1人のこの場へ運びこばれた者――AZKiが目を覚ました。

 

 それを聞きつけ、まつりとぺこらが医務室へ駆けつける。

 

「ありがと2人とも」

「ありがとうございます」

 

 あくあとみこに軽い会釈をして入室するまつりとぺこら。

 更にその後ろから1人――

 

「みーこーち!」

「うげっ‼︎」

 

 治療が一旦落ち着いたと聞き、みこを訪ねてきたすいせい。

 入室するや否やみこに飛び付く。

 激しい「みこめっと」の供給にまつりとぺこらは若干引いていた。

 

「ま、ちょっ――はーなーせ‼︎ キモい‼︎」

「はぁ……あてぃしもおかゆのとこ行こ」

 

 あくあはおかゆを求めてそそくさと退室。

 頬擦りしてくるすいせいを強引に引き離して医務室内を逃げ回る。

 

「こっち来んな‼︎」

「何照れてんのー?」

 

 足首をパズル化して切り離し、浮遊してみこに抱きつく。

 髪に鼻を当てて匂ったり、胸を揉んでみたり、キスを迫ろうとしたり。

 とにかく過激。

 何にせよ、これ以上ここで騒がれては堪らない。

 

「すいちゃん、ここは医務室だから静かにしてね」

「――はーい。ね、みこち外行こ」

「え⁉︎ みこはマリンたんのとこに――」

「――――だれ、それ」

 

 AZKiの注意に素直に従うすいせいだったが、みこがマリンの名を挙げると突然目付きが悪くなる。

 恋敵を襲わんとする目。過去にあくあが見せた物と同じだ。

 みこは慌てて取り繕う。

 

「み、みこんとこの船長……だけど」

「そっか、じゃあすいちゃんも仲間に入れてもらわないと」

「――‼︎」

 

 みこが助けを求めてまつりたちに視線を向ける。

 やれやれと皆一様に肩を竦めた。

 

「すいちゃん。みこ先輩はこれからマリリンの容態を見に行くらしいから、今は待ってあげてほしいぺこ」

「えぇ〜。一緒に行けばいいじゃん」

「お願い。今は大変な状況だから」

「……はーい」

 

 渋々といった態度でみこから離れ、足首を元通りに嵌める。

 そして近場の空いたベッドに腰を下ろした。

 

「じゃ――みこ行ってくるにぇ――!」

 

 みこは逃げ去る様に部屋を抜けた。

 途端に室内は静まり返った。

 

「…………」

 

 AZKiがベッドから降りた。

 ベッドがぎしっと軋む。

 ゆったりと2つ隣のベッドまで歩き、その端に腰を下ろした。

 

「……いろはちゃんがこんなに寝込むなんてね」

 

 姿勢良く眠るいろはの髪と頬を優しく撫でて、女神の様な微笑を浮かべた。

 惚れ惚れする姿だが、どこか切なさを感じる。

 

「起きたばっかりで悪いんだけどさ、あずきち」

「んーん……いいよ。分かってる」

「あずちゃんは、ぺこーらやみんなを使って、何がしたかったの?」

 

 まつりがぼたんの手を握って前置くと、AZKiは首を横に振った。

 なのでぺこらは遠慮無く尋ねる。

 AZKiもいろはの手を握った。

 

「私は仲間を増やしながら情報を集めて、そらちゃんの記憶を取り戻したかったの」

「ルイちゃんから?」

「うん」

 

 案外簡単に口を割って、まつりとぺこらは一瞬戸惑った。

 

「信じられないだろうけど、全部終わったらみんなの事はちゃんと元に戻す予定だったんだよ。本当に……信じられないだろうけどね……」

「あずちゃんが立ててた計画、聞いてもいいぺこ?」

 

 ぺこらとまつりは表情を和らげた。

 しかしAZKiの顔はほんのり強張る。

 他人――特にぺこらを利用しただけあって、面と向かっては話し辛い。

 だが――こんな自分にも能力等で治療を施して、親身になってくれる人たちをまた裏切ることもできない。

 これ以上この人達と敵対しても、利点がない。

 能力だって、ぺこらの中へ還ってしまったし。

 

「4大能力って言うのがあってね。洗脳、記録、魅惑、改竄の能力がこの世界には存在しているらしいの。洗脳はぺこらちゃん、記録は鷹嶺ルイ、魅惑は多分マリンちゃんで、改竄は分からない」

「……なーんかまつりだけ仲間外れな気分」

「でも強いぺこじゃん」

「どうかな〜」

 

 ここで2人は初めて4大能力なる物の存在を知る。

 そしてまつりは、ぺこら、マリン、ルイがその能力を手に入れている事から、転移組の中での疎外感を覚えたらしい。

 チアチアの実が本当は改竄の能力だった、なんて有り得ない話だ。

 

「過去に鷹嶺ルイと衝突した事があって、その時に記録の能力者である事は気付いたんだけど、名前とか組織名とか全然分からなくて、色々調べたの」

「うんうん」

「それで鷹嶺ルイと沙花叉クロヱの名前を知って、『秘密結社XXX』っていう組織名も耳にしたの」

「秘密結社……トリクロス?」

 

 中々のネーミングセンスに2人は感心した。

 少なくとも、ぺこらの名付けた「秘密機構『希望の花』」よりはいい。

 こよりとラミィは気に入ってくれたが。

 

「2人は4大能力を集めてるらしい、ともね。それを知った数日後だよ――ぺこらちゃん、キミに出会ったのは」

 

 その時からAZKiの作戦が大きく動き始めたのだ。

 ぺこらはこくりと一度頷いた。

 

「すいちゃんの故郷でもあるアルメンドラに一時滞在してる時、キミたちの会話を盗み聞いてしまった。殆どは理解の及ばない話だったけど、ぺこらちゃんの能力だけは、直ぐに理解できた。それが洗脳だってね」

 

 今から約3年前、ぺこらはアルメンドラの林付近にある小さな洞窟に突如転移した。その洞窟に隠された小箱を見つけ、そこに入っていたのがペコペコの実だった。

 それを食べた後、訳も分からず洞窟を出て林の小道を進むと浜に出た。

 その時に出会ったんだ――ラミィとこよりに。

 訳の分からないことで喧嘩していた事を、今でも鮮明に思い出せる。

 

「作戦を頑張って考えて、結果導き出したのがぺこらちゃんを洗脳にかける作戦」

「「――――」」

「友好的に行こうとも考えたよ。だけど私たちは元が海賊だし、3人の話や考えは全く理解できなかったから、上手くいかない気がしたの。それよりかは、自分で全部操ったほうが早いって思った」

 

 AZKiは用心深い性格だ。

 その言い分は残念ながら理解できてしまう。

 

「ぺこらちゃんを洗脳にかけて、そこからこよりちゃんとラミィちゃんを動かしつつ、洗脳兵を増やして勢力を広げる。更に『秘密結社XXX』の情報を集めながら、洗脳の存在を徐々に世界に広めていく」

「自分から存在を明かしたの?」

「そう。鷹嶺ルイは4大能力を狙ってる。だから食いつくと思ってたんだ。でも中々尻尾を出さなくて、捜査も難航してた所に飛び込んできたのがサクラカゼの情報」

「――サクラカゼ? みこちの曲じゃん」

「――曲?」

「いらん事言わんでいいぺこだから」

 

 とある島の名前にまつりが反応すると、AZKiが疑問符を浮かべて話を中断した。

 先が気になるぺこらはまつりを嗜めてAZKiに続けるよう促した。

 

「サクラカゼって島に、悪人の手に渡ってはいけない、と言われる能力があると情報を手に入れたから訪ねてみたらね……」

「「――?」」

 

 まつりもぺこらも知らない事。

 その時にAZKiは出会ってしまった。作戦を破壊してしまう程の「脅威」に。

 

「出会っちゃったんだよ、マリンちゃんと」

 

 すいせいも出会っているが、当然今の彼女にその記憶は無い。

 ベッドでごろごろと転がって暇そうにみこの帰りを待っている。

 

「そこからはもう、負の連鎖」

 

 CTでフブキを失い、DCでおかゆを手放してぼたんも逃してしまう。

 メモリアでははあとを捕らえ損ない、アルメンドラで張った罠もCSで見事なまでに破られた。

 そして従属半島の決戦で大敗を喫し、そこに付け込まれてルイに全てを奪われる羽目になる。

 転落人生の様だ。

 

 全てを取り戻そうとした結果、AZKiの手元には何も残らなかった。

 そらの記憶は無いままで、ロボ子の記憶は改変され、すいせいの記憶も弄られた。

 いろはも大怪我を負って……。

 

「本当に、いろはちゃんには合わせる顔がないよ……」

 

 いろはの顔を繰り返し撫でてそう口にした。

 

「そらちゃんやいろはちゃんとは、どんな関係?」

「仲間だよ。そらちゃんといろはちゃん、私、ロボ子さん、すいちゃんの5人でゼロ海賊団ってのをやってたの」

「みこちは?」

「え――?」

「ゼロ海賊団なのに、みこちはいないの?」

「……? どう言う事? よく、分からないんだけど……」

「そっか……ならいいや」

 

 まつりが過去にマリンが感じた疑問と同じ事を口にした。

 ぺこらはその質問に一瞬焦りを見せるが、何事も無く片付いたので安堵した。

 

「……ごめん、色々聴きすぎて」

「いいって。どうせ抱えきれなかったし」

 

 話がひと段落つくと、何となくぺこらの口からそんな言葉が出た。

 AZKiは一切気に留めていなかったが。

 

 ぺこらは座っていたベッドから腰を上げた。

 

「ぺこーらはラミィちゃんと話してくる」

 

 まつりに視線を送りながらそう呟いた。

 するとまつりも立ち上がる――その前に一度ぼたんの頰に手を添えて……。

 

「じゃあまつりも一旦抜ける。あずきちはもう少し休んでて」

「……うん」

「じゃあ」「じゃーね」

 

 

 聞くべき事を聞き終えて、2人は静かに医務室を後にした。

 

 





 「現在明かせる時系列」

 7年半前――秘密結社XXX結成
 7年ほど前――ゼロ海賊団結成
 4年半前――ゼロ海賊団vs秘密結社XXX
 3年前――ぺこら転移。AZKiとぺこらの接触。
 2年前――かなたのCT訪問
 1年半前――シエロソニード国王失踪事件
 1年前――まつり転移。フブキ達洗脳。
 半年前――キャンディータウン陥落
 今年――マリン転移

 分からない事とか気付いた矛盾点とかがあれば教えてください。
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