ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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111話 異色のメンバー

 

 マリンの精神が完全復活し、一味の絆もより強固な物となった後、一同は医務室に介していた。

 いろはとぼたんも目覚め、フブキも別室から連れて来たので、現在シエロソニードに滞在しているホロメン全員が集う大所帯に。

 

 ぼたんといろははベッドに寝かせたまま、大方が組織の枠組みで固まっている。

 どの組織にも属さず、社の大先輩であるロボ子も居ない為、フレアは気まずそうにポルカの背後に隠れていた。

 

「……こう見ると、多いね」

「これでも一応、半分以上は居るからね」

 

 ぐるりと室内を見渡し、揃った面々を前にそう口にした。

 ホロメンが一同に介することは、EXPOなどでも極めて珍しい事例。

 全員が揃った事は、過去に一度も無いはずだ。

 

「それで、態々全員を集めたって事は……記録の話だね?」

 

 かなたからマリンへ問いかける。

 記録、と言う単語が何を指すのか、5秒ほど悩んだが、何とか飲み込めた。

 マリンは首肯する。

 

「フブちゃんの事や、その他みんなの事もあるので、当然助けに行こうと思うんですけど……この中で同行する者はどれほど居ますかね」

 

 一味は一旦全員参加と仮定して挙手を控えさせる。

 その他で手が挙がるのは――

 

 ミオ、シオン、ルーナ、ちょこ、いろは……だけ。

 予想より遥かに少ないが、マリンは頷くだけにする。

 

「……まつり、行かねえの?」

 

 ぼたんが自身のベッドに腰掛けるまつりへ、尋ねた。

 ぼたん自身は行きたい様だが、頭であるまつりが意思を表明しないので、上げかけた手を下ろしていた。

 

「うん、まつりはちょっとね、他にやる事があるの」

「――何すんの?」

「ししろんはマリンに同行してほしい」

「――――」

「ルーナとの約束もあるんでしょ?」

「……うん」

「メルメルの事、頼むよ」

「分かった」

 

 と言う事で、ぼたんも参戦が決まる。

 更に――

 

「ラミィちゃんも行ってあげて」

「はーい」

 

 ぺこらの指示でラミィも参加。

 

「かなたは行かねえの?」

「ん? ああ、僕は国の復興とかがあるし、あと調査も済ませたいから、悪いけど不参加になる」

「――へぇ」

「あやめちゃんは僕に着く。それとねねちゃん、フレアちゃんも僕が借りるから不参加ね」

「ぇ?」

 

 かなたが追加で不参加メンバーを挙げるとフレアが素っ頓狂な声を漏らした。

 どうやら本人も初耳らしい。

 困った顔でポルカを見つめた。

 

「いんじゃね? そもそもフレアは、全く関係ない一般人なんだし」

「――――」

 

 洗脳下にあるフレアと軽く一戦交えたが、全くと言っていいほど戦い慣れしていなかった。

 ずっと平穏な暮らしをしていたのだろう。

 

「――――お給料出ますか?」

「へ? 給料?」

「うそ、無償で働かされるの?」

「……いや、出すよ! 勿論出すよ!」

 

 社畜経験のあるフレアを無賃労働で雇うなど不可能。

 フレアの有無を言わせぬ物言いに、かなたは早々に折れた。

 まあ、かなたはお金に困っていないし、雇った者の人間性が成っていれば十分だと考えている。

 

「ん、まあそんなわけだから、僕たちは行かないけど、わためとか、みんなの事宜しくね――ルーナ」

「……わためはどうでもいいのら」

 

 マリンではなくルーナに笑いかけて締めたが、ルーナは刺々しい態度で答えた。

 2人の会話について行けるのは、この場ではノエルだけだ。

 ノエルは苦笑と共に嘆息した。

 

 理解できない会話は無視して、マリンはAZKiに視線を向けた。

 よく見ると、こっそりいろはの手を握っている。

 

「AZKi先輩は、行かないんですか?」

「――――」

 

 黙っていろはと目を合わせる。

 お互い困惑した様に見つめ合い、最後にすいせいを見た。

 

「ん? どしたの?」

 

 すいせいは何食わぬ顔で視線を返す。

 だが集まる視線はとても重苦しい雰囲気だ。

 

 指示通りきちんと静かにしているが、ずっとみこにくっ付いて離れない。

 今尚手を握ったり、匂いを嗅いだり、胸元に触れたりと。

 

 てぇてぇで済ませられない状況に暗雲が立ち込める。

 

「すいちゃんがこんなだし、私はここを離れられないよ」

「大丈夫あずきち。風真が全部取り返してくるから」

「…………」

 

 謝礼か謝罪かで悩み、結局言葉は出ない。

 

「それと……申し訳ないんだけど、みこちゃん」

「――んにぇ?」

「はぅっ!」

「「…………」」

 

 AZKiがみこに声を掛けると、可愛らしい反応をする。その反応にすいせいが気持ち悪くトキメクのでみこが嫌悪感を露わにした。

 

「みこちゃんはここに残って」

「えぇ‼︎ なんでなんで‼︎」

「分かるでしょ? 今のすいちゃんを外には出せない。みこちゃんが島を出れば、すいちゃんも――」

「ついてくよー!」

 

 すいせいの躊躇いない返答に「ほらね」と。

 みこは膨れてすいせいを睨む。

 

「おーよちよち可愛いね〜」

「やめろ! キモい!」

 

 みこの全てを肯定する、みこ限定の全肯定すいせい。

 確かにこれを航海に同行させ、戦いに繰り出すわけにはいかない。

 みこがピンチになれば本領発揮するだろうが、それ以外では足手纏いになる可能性が高い。

 

「AZKi先輩の言う通りですね……」

「そんな! マリンたん‼︎」

「ごめんみこち、今回は我慢して」

「いやだぁ!」

「お願い、今度何でもするから」

「いやだいやだぃやだぃやだやだ‼︎」

「駄々捏ねみこち可愛い」

「キモい! 来んな! お前嫌い! 大っ嫌い!」

 

 マリンの「何でもする」発言さえ蹴るのだから、余程同行したいのだろう。

 ベッドに倒れ込んで暴れまくるみこすら、すいせいは可愛いと言う。

 しかし、みこに直球の暴言を吐かれ、ガーンとショックを受けた。

 酷く肩を落として――直後にマリンを鋭く睨む。

 殺人鬼の目だ。

 

「みこち‼︎」

 

 だがそれとは一切関係なくマリンが怒鳴った。

 すいせいの目付きが和らぎ、みこの駄々捏ねも止まる。

 

「船長命令です!」

 

 場が静まり返った。

 かちかちと時計の秒針を刻む音が聞こえる。

 

「今回はここで待ってて。いいね」

 

 様変わりしたマリンの態度に皆絶句し、みこも頷く以外にできなかった。

 それでもずっといじけていたのは、せめてもの抵抗なのだろう。

 マリンもそこそこ可愛いと思ってしまったが、それ以上にすいせいを惹きつけるものだから、逆効果な気もする。

 

「それとあくたん」

「……え……まって、いやだ!」

「まだ何も言ってないじゃん」

「いやだよ! あてぃしも行く!」

「フブちゃんを1人には出来ませんから」

「――――」

 

 みこ同様に反抗するあくあ。

 フブキの名前を上げて其方に視線を向けると、ミオの隣で申し訳なさそうに目を伏せていた。

 

「で、でも――! みこちが残るんなら――」

「みこちはすいちゃんに付きっきりになると思うし、それにあくたん医者でしょ、一応。フブちゃんの事もよく知ってるみたいだし」

「じゃあ医者やめる! って言うか医者になるなんて言ってないし!」

 

 論点が少しズレるが、やはりあくあも必死に抵抗する。

 その抵抗にまたマリンが表情を変えたので、若干怯む。

 だが負けじとあくあも顔を強張らせて――

 

「あくあ」

「――」

 

 おかゆが握っていたあくあの手を持ち上げて、両手で包み込んだ。

 

「だめだよ」

「――――」

 

 2人の視線が絡み合う。

 おかゆの変化には誰よりも敏感だ。

 あくあは気付いている。おかゆの心境の変化に。

 それは嬉しいようで、どこか悲しい……。

 

「あたしがいなくても、へーき?」

「そうなりたい」

「――――」

「お願い。僕に最後の、チャンスをちょーだい」

「……」

「ここで祈って、待ってて」

 

 いつだってあくあは、おかゆの味方だ。

 どれだけ恋敵が憎らしくとも、おかゆの恋は応援する。

 どれだけ成長が妬ましくとも、おかゆの努力は応援する。

 例えおかゆが、またあくあから遠ざかるのだとしても、本当におかゆを思うのであれば――応援しなければ。

 

「……うん。分かったよ、おかゆ」

 

 また失敗してあくあの下へ泣きに来て、なんて願いは胸の内に秘めておく。

 

「……ぃよし」

 

 マリンはぐるりと全員を見渡し……頷く。

 

「船長、ポルカ、トワ様、おかゆ――、ノエちゃん。ミオ先輩、ルーナたん、ちょこ先生、シオンたん、ぼたんさん、ラミィ、風真いろは。この計12名で向かう、と言う事で良いですかね」

「……色々気になる点はあるけど」

「――? どの辺に?」

「名前の呼び方に」

「もう、そんな事はどうでもいいでしょうって!」

 

 作戦と無関係な部分を指摘された。

 それは一先ず置いておき、その他の異論を求めてみる。

 だが異論はないようだった。

 しかし――

 

「所でマリンさん、ルイさんたちの居場所は知ってるんですか?」

「はへ……?」

 

 いろはの素朴な疑問にマリンは呆けた面を見せた。

 めちゃくちゃバカっぽい。

 

「誰か知ってんじゃないの? ぺこらとか、まちゅりとか、AZKi先輩とか」

「ぺこーらは知らんぺこ」

「まつりも聞いた覚えはないよ」

「私が知ってるわけないでしょ」

「……あれ? 誰か知ってる人いないの?」

 

 …………。

 

「うそでしょ……」

 

 そう、実は誰1人としてルイたちの行方を知らない。

 かなたやAZKiは幾つかの推測を立てているが、やはり確実性に欠ける為、そこへ向けて出航はできない。

 

「心当たりある人とかいないの?」

「心当たりはあるよ、幾つか。でも可能性の話だし、証拠も無しに行くのはね」

「――因みに、どこ?」

「僕が推測するのは2箇所。『記憶の跡地』か『記しの島』」

「4大能力か……」

 

 かなたの挙げた島から連想される物をマリンは呟く。

 マリンの持つ魅惑の能力が『魅惑の火山島』、ぺこらの持つ洗脳の能力が『従属半島』。

 ルイの持つ記録の能力が『記しの島』で、所在不明の改竄の能力が『記憶の跡地』。

 この2つを本命として挙げるのも納得だ。

 どちらもマリンが上陸した事のある島で、何となくの位置は覚えている。

 

「何にせよ、今すぐには船を出せない。もう少し検討してからでもいいと思うよ」

「……そうかもしれん。ありがとかなた」

 

 かなたに諭されマリンも冷静に判断を下す。

 確証もなく船を出して無駄な体力を使う必要はない。

 攫われた者たちが殺される訳でも無いのだから――恐らく、きっと……。

 

「他に何かある?」

 

 最後にもう一度だけぐるりと一周。

 今度こそ本当に何も無い。

 

「じゃあ……締めていい?」

「おっけ」

「では……はい、解散です……」

 

 場を取り仕切るのはどれだけ配信を重ねても慣れない。

 主催や司会進行は向いていないんだ。

 

「ねねちゃん、フレアちゃん、話があるから一緒に来て」

「ん!」

「……ポルカ」

「――行ってこいって。悪い人じゃ無いから」

「……うん」

 

 かなたを退室を火切に続々と退室して行った。

 

「みんなも疲れたでしょ。出発がいつになるか分かりませんし、それまでゆっくりしてて下さい」

「マリンの家じゃないけどね」

「かなたの城だから気にせんくっていいって」

 

 一味も疎に散り行く中、みこはいつまでもすいせいに纏わりつかれて嘆いていた。

 

 

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