ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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114話 緊急赤信号

 

 記憶奪還作戦に参加するメンバーが決定して、もう2日が経つ。

 だが、やはり幾ら調べても、ルイ達の足取りは掴めず、一同は出航できずにいた。

 

 スタートから難航し、天運に任せての出航の可能性も浮上し始める。

 

「はぁ……」

 

 アクアマリン号の手入れの為、港へと赴いていたマリンは雑な掃除と点検を終えて、大層なため息を吐いた。

 港では朝から船の往来が絶えない。

 

「マリーン、部屋の準備終わった〜!」

「ありがとー!」

 

 一時的に船員が増える為、各部屋の掃除などを任せていたポルカから終了の知らせ。

 とは言っても、一味も増えて客室として機能する空き部屋が1つしかないので、一部は相室となる。

 部屋割りは話し合いの結果次の様になった。

 

 マリン部屋――マリン。

 ポルカ部屋――ポルカ、ぼたん。

 トワ部屋――トワ。

 フブキ部屋――シオン。

 おかゆ部屋――おかゆ、ミオ。

 あくあ部屋――ラミィ。

 みこ部屋――ルーナ、ちょこ。

 ノエル部屋――ノエル。

 空き部屋――いろは。

 

 大方はマリンの勝手な采配となっている。

 当初はラミィをノエルと相室にしようかと考えたが、想像以上に2人の仲が悪いので止めた。

 元シエロソニード騎士団メンバーは、総じてラミィを嫌っているらしい。

 裏切りが原因なので、自業自得としか言えないのだが、とても可哀想。

 

 

 港を眺めるマリンの隣にポルカが並んだ。

 

「どうするよ。このままじゃ無限に船出せねぇけど」

「そうなんだよなぁ……ポルカ、何とかしてよ」

「そこは船長なんだからマリンがなんとかしろよ」

「船長をサポートするのが副船長の役目でしょ」

 

 無茶苦茶理論で押し付け合う2人。

 だが語気は弱く、相当参ってるようだ。

 特にマリンは抱える物が多く、今尚のしかかる重圧は大きい。

 

「まあ、我々が焦っても仕方ないんで――この件は調査班に任せましょうよ」

「――そうですね」

 

 かなた城を遠目に見つめ、2人は一度重荷を振り払う。

 

「――ん、マリン。あれトワ様じゃね」

「どこ――?」

「あれ、走ってくるの」

「ホントだ」

 

 昼前の賑わう街を、人混みを掻き分けて港へ向かってくる者がいる。

 目を凝らしてみれば、確かにトワだ。

 ヤケに焦っている様に思えるが。

 

「どしたんだろ」

「またみこちが『マリンたんと一緒がいーいー』、とかごねてんじゃね?」

「似せる気ないでしょそれ」

「あんな声出せんて」

 

 雰囲気だけの物真似に物申すとポルカからそんな反論が。

 みこの声質は確かに誰にも真似できない愛らしさだ。

 

 そうこうする間にトワが船まで到達。

 大きく手を振って声を張り上げる。

 

「マリーン‼︎ ポルカー‼︎」

「はーい、なんかあったー⁉︎」

「分かったぞ‼︎」

「「――⁉︎」」

「分かったんだ‼︎ 居場所が‼︎」

 

 マリンとポルカは弾かれた様に船を降り、トワの下へ飛んで行く。

 

「マジ⁉︎」

「マジ‼︎ 兎に角一緒に城へ来て!」

「あい!」「おう」

 

 

 

         *****

 

 

 

 トワの案内の元、かなた城の会議室に赴けば、各組織の長に加えてみこ、すいせいが同席していた。

 そこへ、マリン、トワ、ポルカも入室。

 

「ルイの居場所が分かったって、本当?」

 

 開口一番、マリンは真っ先に確認を取った。

 間近の空席に座るよりも先に。

 

「トワ〜?」

「急いでたんだから仕方ないだろっ!」

「ん? どゆこと?」

「……違うみたいっすね」

 

 かなたの揶揄う視線にトワが激しく反論する。

 その様子を見て理解できないマリンと、理解したポルカ。

 

「とりま座りな、マリリン」

「隣失礼」

 

 ぺこらに指摘されたのでぺこらの真横に座ったが、嫌な顔ひとつせず流されたので逆に悲しかった。

 ポルカとトワも席に着くと、みこが誰よりも早く口を開いた。

 

「居場所が分かったのは、鷹嶺ルイじゃなくて、はあとちゃんだよ」

「はあちゃまの?」

「うん」

 

 席を近付けて身を寄せるすいせいを引き離しながら、みこは主にマリンに伝達する。

 それを耳にしたマリンは納得仕掛けたが、ふと思った。違いは何かと。

 2人は行動を共にしている筈で、どちらかの居場所が割れればどちらの居場所も分かる。

 

「順序立てて説明するから、まずは聴いてね」

「はい!」

 

 内心を見透かした様にAZKiが説明に入る。

 誰よりも適任なのでマリンは口にチャックして聞きに徹した。

 

「はあとちゃんの『ナウナウの実』の力で、みこちゃんに位置情報が送られて来たの」

「ほうほう……ほうほう」

 

 はあとの能力を思い出す事に数秒費やした。

 以前のみこの説明では、自身と一度記憶した者の「今」を知る事ができ、それを他人に伝える事も可能、との事だった――はず!

 

「そこはみんなも知ってる場所――記憶の跡地」

「「「――――」」」

 

 マリンがまつりと出会った場所であり、みこと再開した場所でもある。

 

「で、みこちゃんに送られて来た様子からするに、はあとちゃん1人しかいない」

「うん!」

 

 随分と自信満々に頷くが、罠である事を考慮しているのだろうか。

 

 AZKiが一息吐いたので、話の区切りと見てマリンは早速チャックを開く。

 

「はあちゃまはあの2人と仲間じゃないの?」

「少なくとも私が昔対峙した時は、はあとちゃんはいなかったから、仲間でない可能性はある」

「でも当然、罠である可能性も?」

「ある」

 

 これに関しては、恐らく考えても答えは出ない。

 実際に会って確かめる他にないだろう。

 

「居場所が分かったから、一応どうするか聞きたいんだけど――」

「行きますよ」

「――いい?」

「んな」

 

 マリンの即答の後、AZKiはルーナに視線を移す。

 同様に首肯が返され、最後に待機メンバーも一瞥。

 首を横に振る者はいない。

 

「いつ出発する?」

「……明日の朝、で、間に合う?」

「んなたんは行けるのらよ」

「いろはちゃんは問題ないよ」

「ラミィちゃんも行けるぺこ」

「ししろんも、もう元気だから」

 

 異論は無く、この流れで明日朝の出航が決まる。

 

「では直ちに全員に報告しましょう」

「そうだね。準備に人手が必要だったら、僕たちも手伝うよ」

「ありがとう」

「それじゃあ一旦解散」

 

 一同は早速、明日の出航準備に取り掛かった。

 

 

 

         *****

 

 

 

 そして翌日、マリン号前に集う者たち。

 

「待っててねフブキ。きっと記憶を取り戻して来るから」

「うん……ありがとう」

 

 フブキの頭に優しく手を乗せて微笑むミオ。

 たった数日だが、寝食を共にした事で微かに心を開いてくれた。

 それでもフブキの笑みがぎこちないのは、最早どうする事もできない。

 

 フブキの隣に立つあくあの前に、おかゆが進み出る。

 

「きっと強くなって、みんなを連れて帰って来るから――それでも、好きでいてね」

「うん、いってらっしゃい」

 

 あくあはおかゆの頰にそっと口付けをした。

 恥じらいを見せず、2人は見つめ合い……。

 

 おかゆとミオは乗船した。

 船には既に、ポルカ、トワ、ぼたん、シオン、ラミィが乗っている。

 

「わための事、任せたよ」

「んなたんはしゅばとラプちゃんを助けに行くのら」

「……うん、それでいい」

「姫、行きましょう」

「ん」

 

 ルーナとちょこも船へ。

 

「ノエルちゃん」

「――」

「楽しい航海をね」

「ありがとうね」

 

 ノエルとかなたも挨拶を交わす。

 

「…………」

「あずきち」

 

 いろはが言葉を詰まらせるAZKiの肩に手を乗せた。

 AZKiはずっと、言いたい事と言わなければならない事を、言えずにいる。

 

「大丈夫。全部、取り返して来る」

「……」

 

 毅然としたいろはの佇まいに、AZKiは頷くしかできない。

 事態を悪化させて、結局いろはに丸投げする羽目になって……面目が立たない。

 

「みこちさん、すいちゃんの事、頼みます」

「任せてー!」

「んにゃ! お前が言うな!」

 

 いろはの呼び掛けにすいせいが機嫌良く返事する。

 迫るすいせいの口を必死に遠ざけながら、みこが怒った。

 

 いろはも地を後にする。

 

「ぺこらもまつりも、そっちのことは任せた」

「マリンも気を付けてね」

「うん。では」

 

 船長であるマリンも漸く船へ向かう。

 その背へみこが駆け寄る。すいせいを振り払って。

 

「マリンたん」

「どしたん、みこち」

「はあとちゃん、悪い子じゃないから……」

 

 不安げに視線を彷徨わせて、マリンに告げる。

 マリンは登りかけた階段を降りてみこの頭にぽんと手を乗せた。

 

「大丈夫、分かってる。連れて帰って来るから、待ってて」

「うん……」

 

 終始みこの顔は浮かない。

 

「帰ったらさ、色々話しよう。色々」

「いろいろ?」

「うん。まだ一度も、答えた事がなかったから」

「――」

「じゃあすいちゃん。みこちの事、頼みますよ」

「任せて‼︎」

 

 みこをすいせいに預け、アクアマリン号へと乗船した。

 

 甲板から港に立つ皆の顔が一望できる。

 

「じゃあ行きましょうか」

「あいよ!」

 

 ノエルが舵を握った。

 

「再び、サイトオブメモリアへ向けて、出航!」

「「ヨーソロー‼︎」」

 

 アクアマリン号はシエロソニードを発ち、記憶の跡地への進路を取った。

 

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