ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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121話 1億2360万

 

「ロボち! 早く船出して‼︎」

「分かってるって‼︎」

 

 とある国にて。

 ゼロ海賊団はとある冒険家と正面衝突し、見事勝利を収めた。

 折角なので金品を強奪して去ろうとしていたが、海軍が沿岸に現れた為、一部を盗んで逃走を図る。

 

「あの軍艦、以前交戦した人達だよ!」

 

 海軍の旗のマークを見てロボ子が警鐘を鳴らす。

 酸を分泌する触手にトラウマのあるいろはも、旗を見るなり顔を顰めた。

 

 気絶したすいせいと、負傷したいろは、AZKi、更に戦利品を甲板に乗せると、そらは周囲の警戒にあたる。

 船は大急ぎで島を離れ、運良く海軍の追跡を受けることはなかった。

 

 

 波が穏やかになるとロボ子は操舵席を離れて甲板に出向く。

 すいせいは相変わらず目覚めない。

 

「全く……またあずちゃんのせいだよ」

「だってぇ〜!」

 

 戦いの始まりは敵が仕掛けて来たから。

 だが、その後作戦も無しにAZKiとすいせいが張り合って突撃したせいで被害は大きくなった。

 

「まあまあ、今回はあずきちのお陰で助かった面もあるんだし」

「あずちゃんのお陰というか、敵のお陰でしょ。そらちゃんはすぐ甘やかして……」

「兎に角先に手当しよう? みんなボロボロでしょ」

 

 そらが戦利品の財宝に躓きながら救急箱を取りに行く。

 

「いろはは傷大丈夫?」

「――――」

「……?」

 

 いろはに声を掛けたが、そらの消えた方を見つめて黙り込んでいる。

 不思議に思ってそちらを見るが何もない。流石のそらも、この船内で迷子にはなるまい。

 ロボ子はいろはの前で手を振って意識があるか確認した。

 

「いろは? だいじょ――」

「んあー、ごめん。風真今何も聞こえないや」

「「えっ⁉︎」」

 

 まさか、と思い2人が慌てて両耳を検査すると――どちらからも流血していた。

 傷が多く、耳の負傷に気付けなかった。

 

「大丈夫⁉︎ って言っても聞こえないのか!……ええっと、ええっと……」

「――しばらく耳が聴こえないだけだから気にしないで。あずきちも怪我してるんだから、落ち着いて」

 

 AZKiとロボ子の口の動きを見ても、AZKiの「大丈夫」しか読み取れない。

 気休め程度に伝えるが治療なしの自然治癒となれば治るまでに3週間ほど掛かるだろう。

 その間の円滑なコミュニケーションは難しくなるし、今回の様な非常事態で連携が取れない。

 

「医療キット持ってきたよ〜……? どうしたの?」

 

 そらが腹の前に医療キットを抱えてやって来た。

 あたふたする2人に不思議がって尋ねると、AZKiが腹の出血を増やしながら叫ぶ。

 

「いろはちゃんの耳が! 耳がどっちも!」

「ん? そうだね、早く治るといいね」

「そうだね、って――!」

「いいから落ち着いてあずきち。傷が広がっちゃうよ」

 

 鼻息荒く喚くAZKiを寝かせて、そらは救急箱を開けた。

 長い旅路で身につけた応急処置の技術。迅速な手当てで瞬く間にAZKiのお腹は包帯で巻かれた。

 

「私よりいろはちゃんの手当てしてあげてよ……」

「耳は手当できないからね〜」

「できないって言っても……洗うとかは――」

「洗うのは逆にダメ。簡単に覆って耳には触らないようにしないと」

 

 と、当人では無くAZKiに伝授した。

 そらはAZKiの下を離れて横たわるすいせいの手当に入る。

 合わせて、今し方耳にした方法でロボ子がいろはの耳を簡単に覆って安静にさせる。

 

「…………」

 

 静かな治療現場を、波の音を聴きながら見つめるAZKi。

 今まではいろは達の強さもあって、窮地も大きな負傷なく乗り越えてきた。

 だが、今回は大きな被害が出た。

 

 防ぎようの無い音響能力、無限増兵してくる作成能力が極めて厄介で、予め人質を取れていなければ大敗を喫していた。

 しかもその際、人質の能力をパクっていたが故に音響から身を守れたに過ぎない。

 運に味方された偶然の勝利。

 

 自分が突っ走って自分が勝手に死ぬのはいい。

 でも――それで仲間を死なせるのは違う。

 過去に何度も痛感した実力不足に、AZKiは再び直面した。

 

「よし、一先ずはこれで大丈夫かな」

「――」

「ありがとう」

 

 いろはの耳の処置が終わりロボ子が立ち上がる。

 いろはの両耳は白いガーゼで護られていた。

 

 お礼に返答しかけてロボ子は口を閉じ、自室へ駆け込んだ。

 10秒ほどで戻るとメモ帳にペンで「どういたしまして。いろはも守ってくれてありがとう」と記し、いろはに見せた。

 素早く機転を効かせて引き出した意思疎通の方法。

 いろはは笑って頷いた。

 

「よし、こっちも終わった――――お、すいちゃん。おはよ」

「…………」

 

 手当て完了と同時にすいせいが目を開けた。

 全身の傷と治療跡を一瞥すると片膝立てて上半身を起こす。

 短パンの端からパンツがチラリと見えた。

 

「クッソ……」

 

 気絶していたのが自分だけだと状況から察し、すいせいは舌打ちした。

 戦闘員と言う対人特化な役職を与えられてこれでは立つ瀬がない。

 

「……」

「……」

 

 影を落とす約2名が船上の空気を重くする。

 

「ね! 戦利品確認しようよ。面白いものあるかもよ?」

 

 パチンと空気を書き換えてそらが宝の小山に駆け寄った。

 数個の宝箱と包み。

 ジャラジャラと音の鳴るものや、音のしないもの。重いものや軽いもの。

 そらは如何にも重厚そうな宝箱を開いた。

 

「おお〜! 見て見て! 凄いよこれ!」

 

 遠目にも確認できる金品の輝きに惹かれ皆駆け寄った。

 その中を見た瞬間――全ての悩みが吹き飛ぶ。

 

「うひゃ〜…………幾らになるんだろ、これ……」

「一生……遊んで暮らせるかな?」

「こ、こっちはなんだろう⁉︎」

 

 AZKiが素早く別の宝箱に飛びついて中身を確認する。

 金貨や銀貨の入った箱だった。

 すいせいも別の箱を開ける。

 宝石が詰まっていた。

 ロボ子は包みを解いた。

 金の延べ棒が崩れ落ちてきた。

 

 騒ぎ立てる声は聞こえないが、大層興奮する仲間を見ていろははにっこりと笑った。

 

 所が――とあるロボ子の一言で現実に引き戻される。

 

「まって……これ、本当に金?」

 

 ひとつの延べ棒を無造作に掴み上げて指紋を付けまくる。

 鑑定できる目は無いが、直感が告げた。

 鼻を近づけて匂いを嗅いでも金の匂いだ。

 だが、何かが不自然。

 過去に数度、金を目にしたり手に取った事があるが……輝きが心に届かない。

 

「どこからどう見ても金じゃん! ほら! こっちは宝石だよ!」

 

 すいせいの開いた箱からダイヤやアメジスト、ラピスラズリと思われる結晶を掴んで見せた。

 

「いろは……あ、そっか、えっと……」

 

 ロボ子は思い付きでメモ帳にこう記した。

 

『この金切ってみて』

「ええ⁉︎ 金なんて切れないでござるよ⁉︎」

『多分大丈夫だから、やってみて』

「えぇ……刀が壊れたら弁償してよ……?」

 

 渋々と愛刀チャキ丸を抜き取って太刀筋を確認する。

 金の延べ棒ひとつを箱の上に置いて――スッ、と刀を振り下ろした。

 

 パキッ、と心地良い音と共に砕ける金の延べ棒――ではなかった。

 

「「「「え……」」」」

 

 重なる声。

 転がる真っ二つの木の板。

 

「何……コレ……どゆこと……?」

 

 金の延べ棒だった木の板を掴んで観察するすいせい。

 いろはの美しい刀捌きにより、断面には棘一つない。

 

「これ……あのビジュアル能力⁉︎」

「みたいだね。となると、ここにあるのは全部――」

 

 ロボ子が右腕をトンカチに変形して宝石を打ち砕いてみた。

 ダイヤモンドは軽々と砕け、ボロボロの石と化す。

 

「マジか‼︎ 全部ゴミ⁉︎」

 

 すいせいも暴れて宝石や金貨銀貨を破壊しまくると、大量の石焼の残骸が散らばる。序でにすいせいの血も飛散した。

 形状を損なうと纏ったビジュアルが消滅するらしい。

 そんな性質は露知らず、ロボ子はただ偽物とだけ直感していたが、これで明白となった。

 

「これを売ってお金にしてたのかな?」

「かも知れないけど……流石に多すぎない?」

「確かに」

 

 一同は冒険家の意図を考えてみた。

 そらはふと、宝箱の比重を思い出した。

 サイズの違い以前のレベルで軽い箱が一つだけあったはず。

 その箱を探して手に取ると、やはり驚くほど軽い。

 ぱかっと開いてみると……

 

「……」

 

 久しく見る異形の果実とご対面。

 2、3度目をパチクリさせた。

 

「みんな。これ……」

「んー?」

 

 3人がそらの下へ集まるので、いろはも数歩近寄って中身を覗いた。

 

「――‼︎ これ――!」

「能力のやつじゃん」

 

 禍々しい紋様に似合わない鮮やかな色と金属光沢のような輝きを放つ果実。

 いろは以外は過去に似た果実を口にしている為、一目で分かった。

 

「……なるほどね。つまりこの財宝達はダミー。万が一船に盗みが入っても宝箱はこの倍以上あったから、そりゃあ全部は持ち出せないよね」

 

 たった一つの果実を守る為に施した偽装。

 金品を狙っての盗みであれば、まず適度な重さの箱の中身を確認して持ち出す。

 そもそも船への侵入難易度が高いのだから、十分すぎるセキュリティだ。

 

「で……」

「…………」

 

 理由はどうあれ。

 結果としてゼロ海賊団は悪魔の実を手に入れたのだ。

 そして現在非能力者はいろはだけ。

 4人の視線がいろはへ向いた。

 

「風真は食べないからね?」

 

 いろはは布石を打つ。

 能力は確かに便利だが、そらやAZKiのパターンが起こり得るし、何より海に入れない。

 毎日の入浴は絶たれ、海水浴も出来ないのだ。

 能力なんて……。

 

「…………」

 

 AZKiがうずうずと期待の眼差しでいろはを見つめていた。

 新たな能力との巡り合いこそがAZKiの冒険の意義。

 確かにこれは絶好のチャンス。

 

 いろははそらと目を合わせた。深い意味はなく何となく、ちらっと見ただけ。

 

 …………能力、なんて……ね。

 

 そらは純真な瞳で見つめ返し首を傾げた。

 100歳を超えるとは思えない可愛さ。

 

「……ロボ子さん、それ頂戴」

「――え。食べるの?」

 

 高値で売れることは周知の事実。

 無理に食べずとも価値は見出せる。

 だから急な心変わりにAZKi以外は怪訝そうに眉を寄せた。

 

 ロボ子は慌ててメモ帳に『本当に食べるの⁉︎』と記していろはの眼前に押し付ける。

 近くて見えないので一歩引いた。

 

「食べない方がいいかな?」

「いや、それは……」

 

 ロボ子が助けを求めてそらを見やる。

 

「『いろはちゃんが食べたい』んなら、私はそれでいいと思うよ」

 

 そらの眼差しはいろはに釘付けだった。

 鼓膜が破れて声は聞こえない、はずなのに。

 

「じゃあ風真、食べるね」

 

 アイコンタクトで繋がったのか、不自然さの無い返しと共にいろはが果実を手に取った。

 暫し果実と睨めっこ。

 

「それまずいから気をつけろよ」

「あー――」

 

 すいせいの忠告は聞こえない。

 ロボ子が慌ててペンを走らせるが――

 

「――む……」

 

 果実がいろはの歯牙にかかる。

 煌めく果実をざっくりと半分ほど喰らい、咀嚼。

 じょりじょりと気味の悪い食感と果汁が広がる。

 

「ん゛っ゛――⁉︎」

 

 直後、吐き気を催した。

 顔が真っ青になって喉に詰まらせた様に胸を叩く。

 

 経験者達が苦笑気味に傍観していた。

 

 吐き出したい感情を抑え、息を止めて残りの半分も喉奥に突っ込んだ。

 1秒も口内に溜めず嚥下し、そらがすかさず持ち出した口直し用の水を一口――二口――。

 

「ぶふっ――‼︎」

 

 水を噴き出した。

 焦って水を気管に流してしまったらしい。

 

「ぇっ! げっほ、ごほっ! うっ、いでで……」

 

 強く咳き込むと振動やらが耳に響いて傷がじんと痛んだ。

 苦行を乗り越えて能力を獲得……したのか?

 

「大丈夫?」

 

 いろはの顔を覗き込むAZKiの顔はまだ期待に染まっている。

 他3人もAZKiを宥めつつ、内心いろはの能力に興味を示していた。

 

「……?」

 

 いろはの全身に違和感が走った。

 能力はまだ完全に馴染んでいないが、輪郭は掴めた気がする。

 この力は――相性が良い。

 

 何か切るものが欲しい。

 目に付くのは最早ゴミと化した財宝とその残骸。

 

 板材、宝石、宝箱を足元に並べていろはは手刀を構えた。

 

 喋りかけても聞こえないので、皆静観するよう努める。

 

「――――」

 

 スッと手刀を振り下ろし板材に打ち付ける。

 板材すら割れるとは思えない力加減だった。

 

 とん、パキッ――。

 

 板材が綺麗に真っ二つに。

 断面には棘一つない。

 

「すっげ……」

 

 目を見張るすいせい。

 AZKiが歓喜して板材を手に取ろうとしたので、ロボ子が静止する。

 いろはは宝石を握った。

 手の中に小さな嵐が発生。

 再び手を広げれば――粉砕された石の粉が甲板に舞い散る。

 

「――!」

 

 誰もが直感した。

 これは戦闘向きの強能力。

 

 いろはは最後に右足を高く掲げた。

 肩足立でも崩れないバランス。

 美しく体勢を保って――宝箱へ振り下ろす。

 

 踵がカンっ、と宝箱の天辺に直撃すると箱はパックリと切断された。

 

「…………」

 

 脅威の切断力に船上は唖然としていた。

 

「これはジャキジャキの実。何でも切断する能力でござるな」

「何でも切断⁉︎ 凄い! カッコイイ!」

 

 いろはの能力実験が終われば、AZKiがいろはに詰め寄る。

 素手で石や木を破壊する力に興奮していたが、すいせいが水を差す。

 

「でもいろはにはハズレじゃね? 自力で事足りるっしょ」

「刀無しで戦えるのは大きいよ! それにロマンがある!」

 

 すいせいとAZKiで意見は食い違う様だ。

 いつもの事だが。

 

「ロボち! メモ帳貸して!」

 

 ロボ子からメモ帳とペンを奪い取ってAZKiはすらすらと言葉を綴る。

 

「いろはちゃん!」

 

 と息巻いて見せたメモ帳には『暫く安静にだからその間能力貸して』だった。

 ロボ子は頭を抱えてため息を吐いた。

 しかし当のいろはは笑顔で快諾。両手を恋人の様に繋ぎ合わせていろはの能力をAZKiに譲渡した。

 

「いろはちゃんの復帰までに私が研究しておくね!」

 

 ペンとメモ帳をロボ子に投げ渡した後、幾つかのゴミを手に自室へと籠った。

 

「……ま、あずちゃんの言う通り、いろはは特に安静にしないと。ケガは耳だけじゃないんだし」

 

 いろはにアイコンタクトを送り、視線をそらにパス。

 いろはの事はそらに任せてロボ子は船の整備等に移った。

 

「…………」

 

 いろはの部屋へ2人が消え、甲板に残ったすいせいも今回の失態を反省して特訓へと向かった。

 

 

 

         *****

 

 

 

 それから約1週間後。

 一行が踏み入れたとある島でロボ子はとんでもない物を目にしてしまう。

 

 2枚の紙を手にロボ子は大至急船へと戻る。

 

「みんな大変‼︎」

 

 船には全員集合していた。

 ロボ子の叫び声を聞きつけて甲板に集まる一味。

 

「どうしたのロボちゃん?」

 

 いろはと手を繋いで最後に甲板に出てきたそらがきょとんとした目でロボ子に問い返す。

 息を切らしたロボ子は百聞は一見にしかずと2枚の紙を突き出した。

 一同が紙を凝視する。

 

「……⁉︎」

「それっ――⁉︎」

 

 WANTEDと記され、勇ましい姿のいろはと和やかに笑うそらの写真が添えられた紙。

 そう、手配書。

 

「何で風真たちが⁉︎」

「多分、この前の冒険家との戦闘が、あったから!」

 

 ロボ子から手配書をひったくり、いろはは金額を確認した。

 

 ときのそら、7000万。

 風真いろは、5360万。

 

 いろはですら、冒険家のトップより懸賞金が高い。

 

「何も悪い事してないのにぃ‼︎」

「多分……海賊があの冒険家を倒した、って事実からつけられたんだろうね」

「そっか……あん時海軍が来てたし、目撃者もいる」

 

 経緯についてあれこれ考える外でそらがいろはから手配書を受け取り自分の写真を見ていた。

 手配書には似合わない、のほほんとした微笑み。

 対していろはは手配書に相応しい、戦闘中と思われる一瞬の写真。

 いつ誰がとったのやら。

 

「いろはちゃんの写真、もっと可愛くして欲しいなぁ」

「ええ⁉︎ そんなのどうでもいいよ‼︎」

 

 そらが不服に思う点はそこ。

 いろはの嘆きも笑って躱していた。

 

「…………」

 

 手配書を眺めて笑っているそらの横顔を見て、そらとの出会いを思い出した。

 

「…………」

 

 命を狙われる羽目になったが、案外これで良かったのかも知れない。

 

「ねえロボちー! 私は⁉︎ 私のは〜⁉︎」

「無いよ! ってかいらないよ!」

「チッ、何だよ。海軍も見る目がねぇな」

「す、すいちゃんまで……!」

 

 賞金首に志願者2人に挟まれてロボ子が喚き散らした。

 ロボ子を跨いで2人が熱い火花を散らす。

 

「どっちが先に賞金がつくか――」

「どっちの賞金が高いか――」

「「勝負だね‼︎」」

「そんな勝負しないで‼︎」

 

 ロボ子は懸賞金になど1ミリの興味も湧かない。

 何故こんな危険な紙切れ一枚に熱くなれるのか。

 闘争心の塊だ。

 

「まあ手配されちゃったものは仕方ないけど……こうなった以上、流石に何処か落ち着ける場所が欲しいでござるな」

「そうだね。人の居る島に長期滞在し辛くなる訳だし」

 

 そらといろはは早々に頭を切り替えて、これからの活動方針を練る。

 海賊を止める気は毛頭無いが、多少は気を休められる場所が欲しい。

 今の所、船上が最も安全地帯。だが船上ではどうしてもストレスが溜まる。

 

「ああ。それならあたしいい場所知ってる」

「――え、ほんと?」

「おん」

 

 そらの顔の動きに合わせていろはもすいせいを見た。

 どうやら名案がある様だ。

 

「あたしの故郷――アルメンドラの近海に無人島があっからさ。そこ行ってみね? 近くに海軍基地とか無いし、アルメンドラ自体クソみてぇなとこだから危険は少ないと思う」

「おお……愛国心ゼロ」

「ある訳ねぇだろあんな島」

 

 そらといろは以上に故郷への当たりが強い。

 すいせいは故郷で特別酷い扱いを受けたわけでも無いが。

 どうやら退屈は人を狂わせるらしい。

 

「うん。でもいい案かも。あずちゃん、ここからアルメンドラまでどのくらいかかる?」

「んーっとね〜……1週間くらい」

 

 お手製簡易地図を見て最短航路を考え、時間を割り出す。

 さすが航海士。

 

「よーし。それじゃあ、次の目的地は再びアルメンドラ!」

「「「おー‼︎」」」

「おー!」

 

 ゼロ海賊団は再びアルメンドラへ向けて、舵を取った。

 

 

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