ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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124話 切断人間

 

 ゼロ海賊団の過去を拝聴し一部の者が同情の声を上げた。

 

「ありきたりな闇堕ちパターンだな……」

 

 いろはの語るAZKiの人物像がマリン達の認識と乖離し過ぎていた。

 その詳細な経緯を知れば心底妬んでいたAZKiにも同情が湧く。

 そして負の感情の矛先は新たにルイとクロヱへ向けられる。

 

「話聞いた感じだといろはとそら先輩はそれ以降ずっとあの島に居たって事でしょ?」

「はい……島を離れるのは今回が初めてです」

 

 ずっと一緒にいると約束した手前置いてはいけない。

 それがいろはの思想であると本人は明かした。マリンもその他の聴者も理解できた。

 しかし、それはつまり2人がゼロの島から一歩も出ていないことの証明。

 

「あの島に……そら先輩が居たんか?」

「……はい。居ましたよ」

 

 マリンの疑問にいろはは躊躇無く首肯した。

 

「気付かんかった……」

「気付かれてたら困りますよ」

「因みにどうやって隠してたん?」

 

 最後は興味本位で尋ねた。

 今更味方に隠す必要も無いとしていろはは簡単に口を割る。

 

「ロボ子さんと一緒に島の地下に空洞を作ったんでござるよ」

「ほへ〜地下室」

「基本はロボ子さんの接合能力で閉じられてて開けられないけど、風真は切断能力で強引に地を切って侵入可能。一度切ってもロボ子さんの能力で直ぐに割れた土地も接合されるから、まず見つからない作りでござる」

 

 2人の能力ありきのセキュリティ。

 確かに強固な作りだ。

 

「気付けんはずだわ」

 

 トワの電波受信も圧倒的圏外。

 

「つーかいろはさん賞金首だったんだな」

「確かに。ノエちゃん知らんかった」

「一国の団長してたのに?」

「いやさ、なんかそんな手配書があった気もするけど……何ちゅうか、ホントに一発屋みたいな感じで風化したけん……」

「そうなのらね。実際、手配書発行当時は噂にもなってたけど、その後はもっと別の重大事件とかが取り上げられてたし――何より2人の手配と同時に冒険家が捕まってるから、そっちの方が騒がれてたのらよ」

「もしかしてアレ? 政府の隠蔽みたいなやつ」

「多分そうだろ」

 

 某海賊マンガでありがちな展開だ。

 問題の海賊を倒したのが海賊なんて報道を政府は望まない。

 捕縛に向かった海軍の手柄にしたに違いない。

 だからそらといろはの手配理由は世間に浸透せず、早々に忘れられたのだ。

 

「あのさ、そんな話よりもっと重要なこと聞こうぜ」

「それはそう」

「――重要なこと? はて……?」

 

 ぼたんの話題変換にポルカが同調するがマリンは十分に満足して切り上げる気でいた。

 ルーナが肩を竦めてやれやれと言わんばかりに首を振った。

 

 

「鷹嶺ルイが何故そらさんの記憶を狙ったのか」

 

 

 ストレートにぼたんは口にした。

 マリンがポンと手を鳴らす。

 

「いろはさん心当たりあるのら?」

「それが――風真にもさっぱりなんでござるよ」

「とすると――いろはさんと出会う前の約100年の中に答えがあるんだな」

「なんか愈々某マンガっぽくなってきましたね……」

「は?」

「ほら、空白の100年みたいに」

「いらん事言って混乱させんな」

 

 マリンの異世界ネタはぺこらとまつり以外には通じない。

 2人のいない場でそのネタを繰り出しても煙たがられるだけである。

 このように。

 

「鷹嶺ルイの狙いについては本人捕まえて直接聞くしかないですね」

「そうっすね」

 

 ルイとクロヱの目的を考える事は諦め、今度こそマリンは話を締め――る直前にもう一つ思い出す。

 

「そうだ! 交戦になった際の戦う相手について話しときたいんです」

「ああ、確かにそうだな」

「それでまず船長が鷹嶺ルイと話し合いがしたいんで――」

「話し合い?」

「ええまあ、色々聞きたいことがあるんですよ。そんで一緒にルーナたんに来てほしいですね」

「――妥当なのらね。これ以上記憶取られちゃ終わりだから」

 

 ルーナは敵味方共にキーパーソンとなる。

 マリンとルーナが行動を共にすれば敵側も2人を狙い難くなる。

 

「他のメンバーは皆さんに任せたいんですけど、ルイだけは船長が話しつけたいんでお願いします」

「オッケー」

「ええ……そんだけなんですけどね」

「細かく割り振らんくていいんか?」

「多分そう上手くいかないでしょうし、下手にその形を意識しても空回りしそうなんで」

 

 元も子もない発言だがマリンの言う通りだ。

 ある程度の理想や想定はあるが細かく交戦相手を決めておく必要はない。

 

「それもそうじゃね」

 

 話は円滑に進んでゆるゆると会議は終わりを迎える。

 ラミィが今度こそドアノブに手を掛けて退室して行った。

 それを機にぞろぞろと食卓を後にした。

 

 

 ――――。

 

 

 その後も一行は問題無く航海を続け――数日後、サイトオブメモリアへと到達した。

 

 

 ――――。

 

 

 周囲に警戒しつつアクアマリン号を浜辺に停泊させるが、人の気配はまるで無い。

 一同が甲板から浜に降り立つ。

 

「……以前から変化は見られませんが」

 

 前回の上陸から1ヶ月と経っていないのだからある意味当然。

 しかし……歓迎出来ない出迎え程度は想像していたが故にこの静けさは足を踏み外したような気分になる。

 

 シエロソニード残留組からの追加情報は無いため、あれ以降はあとからの交信も無いと思われる。

 

 呼び出しておきながらこの肩透かし……。

 嵐の前の様な静けさだ。

 

「どうします?」

「半々に分かれた方が良さそうだな」

 

 全員が浜に滞在しても埒が明かないと見て調査班と待機班に分かれる事となる。

 

「船長は出ようと思いますが、他誰が来ます?」

「姫、どうします?」

「んなたんはマリンさんといた方がいいのらね」

「ではちょこもお供します」

「あたしも行きます」

 

 ルーナの意向を聞くとちょこ、ぼたんも同行する事を決意。

 

「風真はここに居ますね」

「船長が行くならポルカは残るしかねえな」

 

 迷子常習犯のいろはと副船長のポルカは滞在を明言。

 ポルカと呼吸の合うトワと続迷子常習犯のノエルも滞在に偏りつつ、おかゆ、ミオ、シオン、ラミィは考えあぐねている。

 

「悩むならまあ残ってればいいんじゃない?」

 

 マリンは決めかねる者達に助言した。

 殆どがそうすると首肯したが、ラミィだけは調査班へ。

 滞在班にノエルとトワが居るからだろう。

 

「じゃあこれでいいね」

「気をつけて〜」

 

 間延びした声でポルカは全員を送り出す。

 マリンが振り返った。

 

「ポルカー、いつも言ってるけど――」

「いざってときは船捨てろ。分かってるって」

「ヨシ‼︎」

 

 思い入れはあるが船はいつでも生成できる。

 ポルカは分かった分かったと雑に答えてもう一度送り出す。

 

 調査班が漂着物や研究所の残骸が散らばる浜から密林へと足を踏み入れた。

 その時、

 

 ごごごごごごごご………………

 

 

「――⁉︎ 地震⁉︎」

 

 突如大地が呻き声をあげて震えた。

 木がざわめき鳥が一斉に飛び立つ。

 波が荒れて船が揺らいでいた。

 甲板にいる滞在組も何かにしがみ付いて転倒防止に努めている。

 

 揺れが止まない。

 

 ほぼ等間隔の振動が続いていた。

 

「長くね……?」

 

 体が揺れになれる始末。

 一体島で何が起きているのか――

 

「船長‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 ポルカの大声が響いた。

 咄嗟に振り向くが何も――――

 

「――――⁉︎⁉︎」

 

 いや、何かある。

 浜一面を覆い尽くす巨大な影が落ちていた。

 丁度木々が邪魔で角度的に見えないのだ。

 だからマリン達調査班は慌てて浜へと足を戻し、振り返った。

 

「「――――――――」」

 

 視界に飛び込む巨大な物体に誰1人空いた口が塞がらなかった。

 絶句して、腰を抜かすと止まない振動に足を取られて転んでしまう。

 

 ごごごごごごごっ…………ズシン‼︎

 

 大きな衝撃を大地に響かせて振動が停止した。

 

 森の中央に立つ「それ」を見つめて硬直する一行。

 数秒後に漸く口が動いた。

 

「な……あれ……」

 

 瞠目して口を大きく開けたまま辛うじて出せた声。

 甲板ではミオとおかゆが身を寄せて全身を震わせている。

 ぼたんやポルカ、ちょこ――ましてやいろはまで冷や汗を見せている。

 

 

 ――――。

 

 

「巨大ロボ……!」

 

 

 島の中央に聳え立つ一体のロボット。

 目測でも高さは40メートル越え。10階建てのビルよりも高い。

 

 そんなロボが突如として島の中央に立ち上がった。

 前回上陸した際には目にもつかなかった。

 間違いなくルイ達からのプレゼント。

 

「おいおい…………マジかよ……」

 

 言葉を失って感情がうまく口にできない。

 

「ま、さか……ね……」

 

 ラミィが頬を引き攣らせてダラダラと冷や汗を流す。

 そしてそのまさかは起こるのである。

 

 がががががが……とロボット頭が回転し宝鐘海賊団他数名に視線を向けた。

 

「や、やば、くね?」

 

 トワが警鐘を鳴らす。

 驚きのあまり感情がバグって苦笑が溢れた。

 

 ドシン、と一歩大地を踏み鳴らしロボットが距離を詰める。

 あと十数歩で浜まで辿り着く巨体。

 動きこそ鈍いが――。

 

 ロボットの発生させた地震で漸く身体が硬直から解放された一行――

 

「あわわわわわわわわわわ――‼︎」

「やばいやばいやばいやばい‼︎‼︎」

「ぎゃああああああ‼︎」

 

 数名が騒ぎ立てて混乱を呼ぶ。

 その中にマリンもいるものだからポルカとトワは暴れる姿を見て嘆息した。

 

 だが一見すると冷静なポルカやトワも内心は動揺している。

 何せあの巨体への対抗策が浮かばない。

 能力があれど生身の人間が真っ向から戦える相手ではない。

 

「姫……」

「人じゃねえからんなたんの能力は無意味なのら」

 

 能力を込めた鋭い眼光を無視して更に一歩、巨兵が接近する。

 やはり狙いは一味。

 

「い、一旦逃げましょう‼︎」

「この島見渡せる高さだぞ! どこに逃げるんだよ‼︎」

「海へ逃げるんです‼︎」

「バカ言え! ここが目的地だ!」

 

 あの巨兵を排除しない限り話は先へ進まない。

 ルイにもはあとにも――記憶を取られた仲間にも会えない。

 

「じゃあ……あれ、倒すの……?」

「しかねえだろうよ‼︎」

「あーもう‼︎ なんで急にホロメンじゃない敵が出てくんの! 怖いじゃんかぁ‼︎」

 

 マリンは得体の知れない怪物へ怒り混じりに恐怖する。

 そして激しく地団駄を踏んで覚悟を決めた。

 

「チクショウ‼︎ 行きますよ皆さん‼︎ 何とかしてあれぶっ壊します‼︎」

「――」

「――⁉︎ いろは⁉︎」

 

 マリンの号令に呼応する様にいろはが駆け出した。

 砂を蹴って森に突入――徐々に速度を上げ、木々や施設の残骸を渡って高度も上げ、巨大ロボットへ肉薄する。

 

「1人は無謀だろ――!」

 

 いろはの真意が汲めずぼたんが麺を伸ばすがとうに射程外で連れ戻せない。

 だがルーナはいろはの無茶を信じて能力を発揮する。

 いろはの速度が増した。

 

 

 愛刀・チャキ丸が牙を剥く。

 

 

 巨大ロボはハエを払う様に大腕を振るった。

 しかし動きは鈍くいろはは身軽に回避して更に迫る。

 

 一同が息を呑んだ。

 

「風華刹月」

 

 ――――

 

 渾身の斬撃が波紋を呼ぶ。

 衝撃波など無かったが、その光景を目の当たりにして誰もが震撼した。

 ギャグ漫画の様に目玉が飛び出た。

 

 ガシャっ――とロボの右脚を見事に切断。

 パックリと割れた右脚の断面図が晒されるとその美しさに度肝を抜かれる。

 

「「ええええええええ⁉︎⁉︎⁉︎」」

 

 規格外の破壊力に傍観者の絶叫がサイトオブメモリアに響き渡った。

 

 

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