ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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126話 改竄人間

 

 巨大ロボットの作りについて一同はある程度の推測を立てた。

 資材はこの島に点在する廃研究所。クロヱの能力で溶解・再構築したものと思われる。

 巨体の操作はころねの能力。擬似心臓を植え付けて自立させていると思われる。

 再生はロボ子の能力。壊しても立ち所に再生するのはロボ子の接合能力と思われる。

 

 心臓を破壊する事で解決すると予測したが、接合能力が厄介で一同は攻めあぐねていた。

 マリンは知識を求めて通信機を取り出し、連絡を飛ばす。

 暫し待機するとまつりが応答した。

 

『はーい。どしたー』

「まちゅりかー? あんさー、今バカでかいロボットと戦ってんだけどー」

『ロボット? ロボ子さん?』

「いやーそれがさー……」

 

 片耳を押さえてマリンは状況を大まかに説明した。

 通信機の向こうにはぺこらもいるらしい。

 一通り説明を終えるとまつりとぺこらが「ほえ〜」と驚いていた。

 

『なんかアレだね。ピーカみたい』

「……そんでさ、どうすれば心臓の位置割り出せると思う?」

 

 まつりの例えは無視して尋ねる。まつりの背後でぺこらがクスッと笑う声がした。

 遠方では未だに一同が観察しながらロボットを食い止めているが、全員――特にシオンの体力は底を尽きそうだ。

 

『いやーそうは言ってもね〜……』

「やっぱ浮かばん?」

『まつり先輩今さ、ピーカつったぺこよな』

『――ん? うん。イシイシの実の岩石同化人間』

 

 不意にぺこらが口を挟んだ。

 何か奇策が浮かんだように。

 マリンが食いついて通信機にがっつく。

 

「ぺこら! なんか浮かんだん⁉︎」

『それさピーカと同じ扱いできるんじゃね?』

「同じ扱い?」

『マリリン、ドレスローザ編見た?』

「ちらっとだけ。ほとんど覚えてないけど、ピーカの声が高いってのは知っとる」

 

 記憶に残るピーカの情報はそれだけだ。

 後はメラメラの継承とか、ドフラミンゴがボスである事とか、ギア4初披露とか……。

 

『巨大なピーカ像をゾロが真っ二つにして、ピーカ本体が切れた上半身に逃げるぺこなんだよ』

『――あ! そっか!』

「え、なになに! それで⁉︎」

『ピーカがひと繋がりの石だけしか操れない様にさ、そのロボットも腕切ったら腕自体は動かないんじゃねぇの?』

「えー……っと?」

『つまり! 例えば上半身と下半身で真っ二つにするやん? 心臓があるのはどっちか一方、これはオッケー?』

「オッケー」

 

 まつりからぺこらへと通信機が渡されたのか、ぺこらの声が近づく。

 マリンはうんうんと頷いて聞き入る。

 

『じゃあ心臓の無い方は切れた瞬間から動かんくなるやん? 例え接合されても心臓の位置が変わらねぇんなら、そうやって何回も壊してけば大まかな位置が割り出せるぺこなんじゃねぇの?』

「なるほど‼︎ マジ天才‼︎」

 

 2人を褒めちぎってマリンは巨兵に向き直る。

 

「ありがと2人とも。やっぱ2人に聞いてよかったわ‼︎」

『あい! んじゃ気をつけてな』

「ん」

 

 通信機の電源を切り、懐に仕舞った。

 

「皆さーん! しゅーごー‼︎」

 

 マリンは高く手を挙げて叫んだ。

 迅速に集まる一同。

 いろはとシオンを除く者たちが再び一点に集う。

 

「どした?」

「今ぺこらから助言貰った。その作戦を伝えます」

 

 マリンはその場にいる全員にぺこらの提案を伝達する。

 

「なるほど。確かに名案だ」

「ぺこらちゃん、さすが!」

「「……」」

 

「でも目算で区切ってくのキツイだろ。ミオさんも狙いを定めにくいぞ、あの巨体だし」

「うん……どこ狙えばいいのか、結構細かく分からないと狙えないかも」

「ならノエちゃんに任し。目印付けちゃげるけん」

「そんなこと出来んの?」

「まあね。みときんさい」

 

 ノエルが自信満々に力瘤を見せた。

 マリンにこれ以上出来ることはないので、後は仲間に託す。

 

「っし! じゃあ順繰り指示出してくんで!」

「あい!」

 

 一同、最後の解散。

 解散直後、ノエルは猛ダッシュで巨兵の足元に向かった。

 いろはとシオンも随分体力を削られている。

 ここからの攻撃は最小限に抑えたい。

 

 ノエルが巨兵の足に触れた。

 

「部位分割」

 

 すると、巨兵の全身に約50cm×50cmの升目が生まれる。

 全身をびっしりと隙間なくマスが埋めたので、少々目が痛い。

 

「あい! 準備オッケー‼︎」

 

 ノエルの合図に合わせてマリンが腕を翳し号令をかける。

 

「いろは、腹を横に切断して! シオンたんは右腕を破壊して!」

「はい‼︎」「わかった!」

 

 ロボットが右腕で一味を狙う。

 その影を潜っていろはが巨兵の腹部まで疾走。

 途中、いろはが跳躍した――がまだまだ腹部の高さには届かない。

 

「――⁉︎」

 

 空中で更に跳躍を重ねた。

 それも2段、3段、4段と次々に。

 

「マジでなんでも出来るやん……」

 

 いろはの怪物っぷりに苦笑を溢す。

 

 いろはが刀を抜き、シオンが衝撃波発動に構えた。

 

「疾風怒刀‼︎」

 

 シュッ――と一閃。

 いろはの斬撃がロボットの腹を真っ二つに切り裂いた。

 それはもう、見惚れるほどに美しい断面を残して。

 

震破・裂傷波(クラッシュ・パールス)

 

 ビシッ――と大気に巨大な亀裂が入った。

 シオンの放った衝撃波が大気を歪ませ、迫り来る巨兵の右腕に向かって拡散。

 衝撃波と腕が正面からぶつかり、腕が粉砕される。

 

 2人の攻撃の破壊力に瞠目しつつ刮目するマリン。

 腕と腹部の再生が同時なら、心臓は上半身にある。

 

「――‼︎」

 

 がっ、と僅かに不規則な挙動を見せた。

 それは上半身。

 正しく再接合する為に体勢を整えたのだ。

 みるみる破損部分が再生してゆく。

 

 ノエルが下半身と右腕のマス目を消し、攻撃範囲を絞る。

 

「いろは! 今度は首切って‼︎」

「はい!」

「シオンたんは左腕!」

「ん!」

 

 ロボットに息つく暇を与えない波状攻撃。

 首の厚さならと、いろははその場で刀を構える。

 シオンは先ほどと変わらない構え。

 

「風華刹月‼︎」

震破・裂傷波(クラッシュ・パールス)

 

 スパッ、と飛ぶ斬撃がロボットの首を刎ねた。

 ビシッ、と大気が砕け衝撃波がロボットの左腕を崩壊させた。

 

 マリンとノエルは一層目を凝らす。

 

 左腕は立ち所に再生するが、頭は再生する前に地面へと落下。

 どごぉぉぉ……と木々を押し潰してロボの頭が大地に衝突した。

 激しい揺れが島を襲い、近海に高波を発生させる。

 

 左腕を再生しながら右腕を動かすロボット。

 右腕が頭を掴んで首元へ運ぶ。

 

「マリン! もう十分だ!」

「え?」

 

 ノエルが更に可視化された攻撃範囲を絞ると、ポルカが瞳孔を広げてマリンの肩を掴む。

 ポルカの瞳はロボットの全体像を捉えていた。

 

(ここまで削れば、あとは未来演算で割り出せる‼︎)

 

 残されたマス目の様々な位置を切断した未来を演算で導き出し、心臓の位置が割れるまで繰り返す。

 

 頭がロボットのてっぺんに乗っかると、再び攻撃を仕掛けてきた。

 一同がそれを押さえようと動く。

 ポルカは演算を止めない。

 脳が焼けるほど発熱した。

 

「――トワ様‼︎」

「っしゃあ!」

 

 演算結果が導き出されるとポルカは誰よりも先にトワを呼びつける。

 エンジンをかけて猛スピードで駆け寄ると脳内をリンクさせた。

 

「ナイス‼︎」

 

 心臓の位置が大きく絞られた未来をトワも獲得した。

 ポルカとハイタッチを交わすと、そのイメージを脳内に残したまま今度はノエルの下へ。

 ノエルにイメージを共有すると、マス目を絞って――50cm四方の正方形を左肺の辺りに残した。

 

「ミオちゃん‼︎」「ミオ先輩‼︎」

「――――」

 

 ミオが瞳に光を集めて瞳孔を広げる。

 視線をノエルの作った正方形へ。

 十分量の光が溜まり、視線での照準も完璧。

 ミオの瞳がキラリと発光した。

 

 

星の光線銃(アストロ・レーザーガン)‼︎」

 

 

 光速の銃が一直線にロボットの胸部を貫いた。

 

「「「どうだ⁉︎」」」

 

 全員の動きが止まった――――。

 

「――――――」

 

 ロボットの動作が、停止した。

 

「…………」

 

 停止から10秒……。

 

「止まっ……た?」

 

 心臓を破壊した、と言う確信が持てず疑心暗鬼になる。

 芸術的な体勢で停止したロボットは今にも動き出しそうだ。

 

「うご……かねぇ、けど……」

 

 胸部まで心臓の破損を確認に行かなければならない。

 

「風真、見てきますね」

 

 いろはが空を蹴ってロボットの心臓を目視で確認に向かう。

 その結果を待っていると――

 

「すごい……ホントに壊しちゃうなんて」

「「――⁉︎」」

 

 一味陣営の誰でもない声が不意にマリンの背後から聞こえた。

 付近のメンバーが一斉に視線を集中させると、そこには赤井はあとが1人で感心した面持ちで立っていた。

 

「はあちゃま……」

「ちゃま?」

「――――」

「この島には私しか居ないよ」

 

 マリンからの呼称にはあとがハの字に眉を寄せる。

 トワやポルカなど警戒心の強い者たちが周囲を見渡すとはあとは軽々しく答えた。

 だが、マリン以外はそんな言葉を信じない。

 

「……あれはもう、止まったんですか?」

「止まってるよ。綺麗に心臓撃ち抜いたね」

 

 はあとがミオに視線を向けると照れ臭そうに視線を逸らした。

 そこへいろはが帰ってくる。

 

「――! あなたは秘密結社の仲間‼︎」

 

 目にも止まらない抜刀。

 一同がはあと1人を取り囲む中で更に一歩強く踏み込んだ。

 

「いろは、落ち着いて」

「そんではあとさん。本当に単身なら、まさか捕まる為にのこのこ出てきたわけじゃないですよね」

 

 いろはを宥めるマリンとはあとを質問で詰めるポルカ。

 はあとは超絶アウェイな状況にも関わらず冷静に視線を返す。

 

「今回私がみこちに状況を伝えたのは、私が無理言ったから」

「……無理?」

「ルイちゃんの目的は4大能力を集める事。つまり最終的に、ぺこらちゃんとマリンちゃんも引き抜くつもりなの」

「……ほう。それで『無理言った』とは?」

 

 ルイの最終目標は推測通りだった。

 それをはあとの口から軽々と聞けた事は予想外だったが、マリンはその先を催促する。

 

「あなた達を奇襲したかったみたいだけど、私がそれを拒否して今に至る」

「奇襲を拒否か……」

「みこちだけに話すか迷ってたけど居ないみたいだし、あなたは元々無関係じゃない」

「――? 何を言ってるんです?」

「マリンちゃん――あなたに見せたいものがあるの。一緒に来て」

 

 マリンは表情を険しくした。

 トワがはあとに近付き脳内を探るが他意は感じられなかった。

 

「分かりました」

「……危ないぞ、とは言ってみるけど聞かねぇよな」

「ええ。皆さんは船の近くで待機しといてください」

 

 止めても無駄だと分かり切っている一味はマリンの意向に従順だが、その他は全員が反対した。

 特にルーナは語気も強くして抗議する。

 

「待って。流石に危険すぎるのらよ。せめて誰か他に1人付けてくべきだと思うけど」

「あたしも姫に賛成です。トワ様の存在だって敵は知ってんだ。トワ様の能力のアドバンテージは頼りにするべきじゃない」

 

 トワのムーブから脳内を読んだことを察して、ぼたんはそう忠告する。

 ぼたんとルーナの発言は的を射ており、理論上では反論のしようがなかった。

 だがマリンは机上の空論を信じて戦い抜いてきた奇跡の女である。

 それは一味が誰よりも知っている。その由来が恐らく、異世界である事も。

 

「トワがマリンに何か助言したように見えたか?」

「……テレパスしてたろ」

「こっちにはな。マリンには何も送ってねぇよ」

「……」

「まあ心配すんなししろ。マリンが信じれるってんなら信じれるんだよ」

「は? まじで意味わかんねぇ……」

 

 過去の対面から丸くなりすぎたポルカにぼたんは引き気味だ。

 ポルカだけでなく一味全員、心酔している。

 

「まあ例えヤバかったとしても、船長以外で逃げれば問題ないんでね」

「マリンさんが戦力から外れるのが大問題なのら」

 

 ルーナは食い下がった。

 マリンの肩を掴んで勝手を止める。

 

「はぁ……ならルーナたんも来る?」

「…………」

 

 マリンはルーナの目を見て妥協案を提示する。

 するとルーナは押し黙った。

 よく考えれば、今ここではあとを拘束しても何にもならない。

 拷問でもするなら話は別だが、みこの友人である手前そんな野蛮な真似はできない。

 寧ろ間近にはあとを置けば、より鮮明にこちらの情報を相手に与える事になる。

 ルイ達が表に出て来ない以上、はあとを詰めても意味がない。

 可能性を信じる他に術がないのだ。

 

 ルーナが重たいため息を吐いてマリンの肩からそっと手を下ろす。

 はあとが挟みかけた口を閉ざした。

 

「分かったのら。ルーナ達は警戒して待ってる」

「ええ、お願いしますね」

 

 はあとがぶっきらぼうな視線を外して森の奥へ歩き出した。

 マリンはその後を追う。

 

「じゃ、例の如くよろしく」

「一応気をつけて」

 

 最後にマリンは敬礼を返してはあとの後ろに付いた。

 そして2人は森の奥の方へと姿を眩ませて行き、一味含めた残り組はアクアマリン号付近へと一時撤退したのだった。

 

 

 

         *****

 

 

 

「それではあちゃま、見せたいものって何?」

「過去」

「過去、とな? 記録映像とかを見る感じ?」

「そんなもんよ」

 

 気の良い返事が無くマリンは不満げに口先を曲げていた。

 はあとの歩幅は変わらず、森の奥へ奥へと進みやがて……廃施設?に辿り着く。

 

「こっち」

「え……なんか不気味なんだけども」

「中に入らないと見れない」

「いや……だろうけどさぁ」

 

 植物の蔦が絡んで一層薄気味悪い寂れた施設。

 元は研究所と言われているが、そんな形跡すら感じないただの施設の残骸。

 はあとはマリンを置いて奥へと足を進めるので、慌てて後を追う。

 靴音が響いて更に怖い。

 

「照明とか点けてよ〜」

「点かない」

「じゃあ懐中電灯くらい持ってて!」

「……」

 

 気晴らしの問答を適当に流してはあとはもっともっと奥へ。

 愈々明かりも無くなってほぼ真っ暗な施設内。

 石と塵と埃の匂いが充満している。

 

「準備するから待ってて」

「え、ちょっと待って‼︎」

「そこに座ってて。別に居なくならないから」

「は、早くしてよ……?」

 

 暗闇に怯えるマリンを放置してはあとは施設内の機材を弄り回す。

 何も見えないがここは廃施設。先刻はあとが明言したように電気すら点かない場所だ。機材なんて到底使えないはず……。

 

 がちゃ、ウィーン……

 

「……」

 

 突如照明――では無く映像がスクリーンに映し出された。

 室内に明かりが灯り概形に微かな色が付く。

 はあとを探すと頭に奇妙な装置を付けていた。

 

「ここは記憶の跡地(サイトオブメモリア)。忘れ去られた過去の記憶を投影できる施設」

「え……」

 

 前触れなくはあとが口を開いた。

 記憶力の無いマリンでも、4大能力と4つの島は重大情報過ぎて記憶している。

 記憶の跡地、記しの島、従属半島、魅惑の火山島。

 この4つの島はそれぞれ、4大能力と関係があるのだと。

 そしてAZKiやルーナ、かなたの話から、

 

 魅惑の火山島――フネフネの実

 従属半島――ペコペコの実

 記しの島――プロプロの実

 

 である事が判明している。

 残る記憶の跡地だけは唯一、リンクする能力が不明であった。

 そんな島の寂れた施設で、投棄品とも言える機材を扱う能力者が1人。

 

「私はナウナウの実の改竄人間」

「――はあちゃまが……⁉︎」

「これは、今は無い約2年前の記憶」

「今は無い……?」

「あなたに見てほしい。私と、みこちと、すいちゃんの馴れ初めと別れを」

 

 スクリーンの映像が動き出す。

 マリンは大きく息を呑んで頰を引き締めた。

 映像から声がする。

 2人の少女の笑い声――。

 

 これは今は無き――サクラカゼでの物語である。

 

 

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