ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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128話 終着点は

 

 はあとの過去の投影が終わると室内は再び闇に閉ざされた。

 その闇の中でガチャガチャと物を動かし、数秒後――かちっ、とはあとが懐中電灯で明かりをつけた。

 小さな一点の明かりがマリンに向く。

 

「分かった?」

「――全っ然」

 

 はあとの軽々しい言葉遣いにマリンは大きく首を横に振った。

 未だに無理解が脳を支配している。

 

「私が世界を作り変えて今がある。元々みこちとすいちゃんは――仲良しだったの」

「それは――!……分かってる、つもり……」

 

 小馬鹿にされた気分になり口答えするも、返答される間もなく撃沈。

 ようやっと室内の石と塵と埃の匂いを思い出す。

 

「……正直、意味わからんことばっか……」

「……」

 

 マリンのぼやきをはあとは無言で聞き流した。

 

「これは2年前の事、なんでしょ⁉︎」

「うん。大体」

「……なんで……2年前に、私がいんの……⁉︎」

「…………」

 

 映像内に登場した自分自身の存在。

 マリンにとって最大級の謎。

 これはフィクションだ、と言われた方がしっくりくる程に理解不能だった。

 

「ってか……はあちゃまの能力が改竄で……しかも……。いや待って、本当に分からん」

 

 マリンは付近の何かに腰を下ろして頭を抱えた。

 その姿をはあとが何時迄も照らし続ける。

 

「順番。まずは何が聞きたい」

「……船長の事」

 

 はあとは椅子らしきものに腰を下ろすと、懐中電灯をテーブルの上に置いた。

 よく見えない互いの目を見つめ合う。

 

「それに関しては私も計り知れてない。あくまで私の予測になる」

「それで……構いませんから……」

 

 右手で額を押さえ、マリンは聞きに徹しようとする。

 しかしはあとが微かなため息をついて……

 

「じゃあまずあなたに聞きたいんだけど」

「……なんです」

「あなた、この世界の人間じゃないの?」

「…………ルイに、聞いたんか」

「聞いてない。だから今あなたに聞いたの」

 

 遠回しに答えつつマリンは探りを入れたが、どうやらはあと自身の分析結果らしい。

 マリンの全身が震え上がる。

 

「私にとっては何よりも、その事実が信じられないよ」

「……いいから、早く教えてよ」

 

 マリンは既に憔悴していた。

 脳がパンクする。

 

「私の改竄能力で運命を改竄した。最後の改竄で私は[あの海賊はこの島へ来なかった]と口にした」

「言ってましたね」

 

 あの海賊、とは即ち宝鐘マリンの事である。

 みことすいせいが誰の手で殺されたかは別にしても、全てのトリガーが宝鐘マリンである事に違いはなかったから。

 だからマリンさえ、あの島に来なければ運命は変わると踏んだのだ。

 

「でもその結果、あなたはサクラカゼに来ず、そもそもすいちゃんがサクラカゼに上陸すると言う事象が消えた」

「……ええ」

「だから私はすぐにやり直そうとした。あなたはサクラカゼへ来るけど、2人は引き裂かれないと言う最適解を求めた」

「――――」

「でも出来なかった」

「――――」

「意味が分からなくてあなたの瞬間の情報を得ようとして知ったの。世界からあなたの存在が消えていた事に」

「…………」

 

 マリンが両腕で頭を抱えて蹲る。

 やっぱり意味が分からない。

 いや……分かるような、分からないような……そんな瀬戸際。

 

「私の能力。俗に言うチート級の力だけど、やっぱり欠点はあるの。何だと思う?」

「今の私に質問せんとってよ……マジで……」

 

 論理的な思考なんて今はできない。

 目先の事象の処理で思考が停止しているのだから。

 はあとは明後日の方向を見た。

 

「改竄の欠点は『過程を選べないこと』にある」

「――――」

「瞬間の結末は指定できても、そこへ至るまでの経緯は世界が勝手に決めてしまう。定められた手順を踏まないと至らない地点だから」

「…………」

「そしてもう1つの欠点。能力者本人が記憶を引き継いでしまう事」

「…………」

「改竄後の世界でも、私の記憶にあるのは改竄前の過程だけ。改竄後の世界では、その瞬間に至るまでの経緯を私は知ることができない」

「…………」

 

 はあとは一度言葉を区切った。

 マリンの処理は追い付いていないが、マリンの質問の答えはこの先だ。

 一呼吸おき、はあとは続ける。

 

「踏まえて本題――あなたの存在」

「――ええ」

「本来あなたは2年前にこの世界へ来る予定だった。でも私の能力でそれは改竄されてあなたの転移が2年遅れてしまった」

「…………」

「これが私の推測。真実はもう闇の中で取り戻せないけど、これが最も合点が行くんじゃない?」

「…………」

 

 嚥下を促す。

 喉に閊えた様に考えも言葉も飲み込めない。

 思考が纏まらない。

 

「……それじゃあその2年間。私はどこで、何をしてたって言うんですか……」

「私に聞かれても困る。けど……」

「……?」

「多分あの子…………まつりって言った?」

「――――」

「あの子もきっと同じ出自でしょ」

「…………」

 

 はあとの推察能力の高さにマリンは驚愕して目を見開き、愕然と口を開けていた。

 

「同じ年に来たとは思えないけど、あなたたちは面識あるんでしょ? 時期のズレとか今更なんじゃない。分かんないけど」

「…………」

 

 マリンはふと思い返してみた。

 ぺこらが3年前、まつりが1年前、マリンが今年の転移だが、マリンは転移の直前までまつりたち含むホロメンたちと会っていた……気がする。

 だがこちらへの転移は年単位のズレがある。

 

 きっと「同じ時」から「別の時」へ飛ばされたのだろう。

 ならばマリンの2年の空白も、不自然な話ではない。

 

「ん……?」

 

 今思い返した転移のズレ。

 よく考えると綺麗すぎる。

 要素は4つしかないが3年前、2年前(仮)、1年前、今年と1年周期で誰かが来ているのだとしたら?

 

「…………」

 

 周期のタイミングとルイが行動を起こしたタイミングが上手く噛み合う。

 マリンはとある仮説に自信を持つ事ができた。

 想像通りなら、やはりルイは――。

 

「ベストマッチはクロヱか」

「――?」

 

 急な独り言にはあとは首を傾げた。

 マリンははっとして我に帰る。

 

「ああ、ごめんごめん。色々謎が解けつつあってね」

「へぇ」

「ところではあちゃま、まだ疑問。今見た奴だと船長は元居た世界の記憶がないように思います。それはやっぱり――?」

「私もルイちゃんだと思う」

 

 やはり鷹嶺ルイ。

 マリンは記憶を取られていた事になる。

 そしてそれは、映像内のすいせいの記憶喪失にも繋がる。

 

「今見た世界線だと私やすいちゃんは、ルイに記憶を取られてるのか」

 

 顎に手を当てて熟考するマリンをはあとはじっと見つめた。

 その顔が不意にはあとに向いたので瞬時に目を逸らし、また合わせる。

 

「そいえばはあちゃまはどうしてこれを私に?」

「……」

「――?」

「あなたは……これをみこちに言うべきだと思う?」

「言うべきに思いますね」

 

 マリンはきっぱりと言い切った。

 迷いの無い言葉を前にはあとは顔に影を落とす。

 

「……変だよね。あれ程憎らしくて、死ねばいいとさえ思ってたあなたが、この世界では逆に世界を守ってて……しかもみこちがあなたに惚れてるんだから」

「……別にみこちの好意とは関係ないですよ」

 

 少々過激な発言にもマリンは冷静な受け答えをする。

 死ねばいい、には流石に背筋が凍ったが。

 

「…………ん? 待ってはあちゃま……」

 

 マリンは突如不可解な点が脳内に浮かんだ。

 能力とこの世界の生まれた因果関係は理解したが、それはそれで不自然だ。

 元の世界は取り戻せずとも、ルイを頼ってまで2人を繋げる必要があっただろうか。

 それこそ同じ世界線は不可能でも、みことすいせいが結ばれる世界線を生み出す事は出来るはず……。

 

 でもしなかった。

 危険な存在であるルイに手を貸して強行する手段に出た。

 

「はあちゃま……もしかして能力……」

「…………」

 

 はあとが大きく視線を逸らし確信する。

 

「トラウマ、なのか……」

 

 PTSD――心的外傷後ストレス障害。

 あの一件以来、はあとは心的理由により改竄能力を使う事ができない。

 この2年での試行回数は10以上だが、全て嘔吐反応を引き起こし、眩暈や貧血に見舞われた。

 だからルイを頼ったのは苦肉の策。

 半年前、偶然サクラカゼに訪れたルイとクロヱに接触し協定を結んだ。

 

「私の力をルイちゃんに貸して4大能力収集の手助けをする。その代わりにみこちとすいちゃんに昔の関係を取り戻させる。これが私たちの結んだ協定」

「――」

「でも――あなたが再びこの世界に現れて……あなたの動向とみこちの恋心を知って……私はもう、どうすればいいのか分からない……」

「はあちゃま……」

 

 宝鐘マリンと言う存在は、転移組の中でも特異的なバグ。

 存在一つ、行動一つで世界が大きく変化する。

 それはもう、はあとの改竄力すらも上回る勢いで。

 

「だからマリンちゃん……全てはもうあなた達に任せるよ」

「…………」

「ルイちゃんとマリンちゃんが戦って、ルイちゃんが勝てばすいちゃんの記憶は改変されたまま。マリンちゃんが勝てば記憶は戻ってすいちゃんは再びゼロ海賊団」

「…………」

「結末は、あなた達の勝負の行方に委ねる」

 

 はあとはこれ以上の干渉をしない。

 どちらが勝ってもその結果に準ずる。

 もう自分が頑張ったって何も変えられない事を痛感してきたから。

 

「だったらはあちゃま。しっかり泣く準備しといてくださいよ」

「……?」

「行き着く先は――ハッピーエンド(エルドラド)、ですので」

 

 帽子を深く被って施設の出口を目指した。

 キザなセリフにはあとはきょとんとしていた。

 が、マリンが離れていくので慌てて後を追う。

 

「私はあなたの仲間じゃないけど」

「何言ってんの」

「……?」

「はあちゃまも、ルイも、沙花叉も――」

「…………」

「――全員を助けると誓ってるんですよ、この世界に来た時から」

「…………」

「もう誰も取り溢さない」

 

 決意を再度胸に宿して、マリンはアクアマリン号へと戻った。

 

 

 

         *****

 

 

 

「そうだな……脳筋パンチ、で」

「ダッサ!」

「よわそ」

「真面目に考えてよ!」

 

 マリンのいない船上。

 甲板で固まって会議する宝鐘の一味メンバー。

 会議内容はこれからの事――などでは無く、技名考案会議だ。

 

「超絶真面目じゃん。ノエルの無鉄砲な特攻=脳筋パンチ。完璧だろ」

「どこが! そんなの技ですらないよ!」

 

 ノエルの技名考案でガヤガヤと騒ぎ立てる。

 

「ポルカちゃんって攻撃に技名つけないよね」

「ポルカの攻撃は基本普通に殴ったり切ったりするだけだし。複製と数珠つなぎで基本的に技は終わるかんね」

「未来視に技名はつけないの?」

「付けて叫んでたら見てるのバレるじゃん」

「おいおいお利口さんかぁ〜? もっとロマン求めろよ」

「悪いけどポルカは合理主義なんだ」

 

 ポルカを揶揄うものらりくらりと躱されて、仕舞いにはトワが反撃を喰らう。

 

「そう言うって事はトワ様は、隠密行動中にテレパシーしながら『テレパシー!』って叫ぶんだろうな」

「ぜってーしねぇ〜。バカだろそれ」

「おいおい、もっとロマン求めろよ」

 

 そっくりそのまま言葉を返すとトワは豪快に笑う。

 隠密行動中に技名を叫んで失敗する自分を想像すると、バカすぎて笑えた。

 

「まあトワはちゃんと名前付きの技持ってるし。この前もマリンに1つ伝授してもらったとこだ」

「マリンに?」「マリンちゃんに?」

 

 意外な告白におかゆとポルカが首を傾げた。

 マリンは特別発想力の高い人間ではない。

 しかも技名まであるとは驚きだ……が、イヤな予感がする。

 

「変なやつじゃねぇの?」

「ところがどっこい、違うんだなこれが」

 

 珍妙な技でも考案したのかと思ったが、その予想はいい意味で裏切られた。

 トワは何故か鼻高々に笑う。

 

「変な条件つけられたけど、割とアリだったし」

「変な条件?」

「口上があるんだとさ。使うんならそれ言えって」

 

 本人のいない場では意味をなさない条件。

 だが、その口上がトワ的に刺さったので頂戴した。

 

「へえ〜どんなの?」

「それはいざって時まで秘密だ」

 

 新技に相当の自信が伺える。

 それなりの活躍が期待できそうだ。

 

「僕も何か強い技欲しいな……」

「…………」

 

 俯いて呟くおかゆ。

 周囲の3人が無言で目配せした。

 

「おかゆってどんな事出来たっけ?」

「んーっと……泥の銃と、泥沼と、泥人形と、ヘドロ爆弾……?」

「ひとつ危険物混ざってるな……」

「十分すぎる強さだろ。それでいてロギアなんだし」

「そ、そう……かな?」

 

 性能は充実している。

 本人の気持ち次第で幾らでも強化されるだろう。

 フブキの成長と同じ経路を辿っている様に見える。

 

 マリンやポルカ、フブキとは条件が異なる為覚醒には漕ぎ着けないと思われるが、伸び代は誰よりもある。

 

 自己肯定感を高める為に一味がおかゆを適度に褒める。

 まずは自信と希望、勇気を持つ事から。

 

 

 そんな一味の会話に耳を傾けながらその他のメンバーは警備に当たっていた。

 

「アイツら緊張感ねぇな……」

「ん」「そうね」

 

 常に協力して全方位を見張る。

 だが一味だけはまるで警戒心が無い。

 以前とは見違える船の空気にぼたんは呆れていた。

 

 以前は険悪な雰囲気を醸し出しており、芳しく無い緊張感があった。

 所が今は全員が持って然るべき一定の緊張感すら無い。

 敵地で何を考えているのか。

 ポルカとトワまで下手に懐柔されたと知り、ぼたんはマリンの恐ろしさを再認識した。

 

「……で、あの人もあの人だし」

 

 ぼたんが見上げた先に見張り台がある。

 角度的に姿は見えないが、そこにいろはがいる。

 しかし……多分寝ている。

 一向に顔を出さないし、動く気配もない。

 

 今見張りに当たっているのは、ルーナ、ぼたん、ちょこ、シオン、ミオ、ラミィだ。

 

 ぼたんが視線を水平に戻すとラミィが歩み寄ってきていた。

 3人は顔を見合わせてラミィを見つめる。

 

「どした?」「どうかしたのら?」

「……その、一応話しといた方が……いいと思って」

「「「――?」」」

 

 視線を泳がせながらラミィは会話を図る。

 声を抑えているのは警戒しているからではなく、ノエルとトワに不審がられたくないからだ。

 

「洗脳の事……」

「洗脳? 何で今更」

 

 洗脳についての詳細。

 ルーナやぼたんでさえその意図は汲み取れなかった。

 今更洗脳について知っても役立つとは思えない。

 

「記録との決定的な違いがあるの」

「――?」

「洗脳下にある誰かに勝ってるからって、また同じ人に勝てると思ってるならそれは大間違い」

「……と言うと?」

「洗脳にかけると以前と以降で記憶が乖離する。だから能力の事とかも全部忘れる事になる」

 

 ラミィの改まった解説に3人は首肯した。

 既知の事実。

 そんな情報今更だ。

 

「だから洗脳下にある能力者の能力は、再考案しなくちゃいけない。その能力の使い方を」

 

 それも当然の話。

 記憶がないのだから。

 体が覚えている体術とは話が違う。

 

「その時、能力の活用方法は基本的に洗脳の能力者の発想力に依存する」

「……なるほど」

 

 一足早くルーナが辿り着いた。

 遅れてぼたんも理解を示し、ちょこも更に数秒かけて手を叩く。

 

「つまり洗脳討伐戦で戦った人たちの能力は全て、AZKiさんの発想力によって編み出された……って事なのらね」

「そう。だからミオさんはAZKiさんに伝授されるまでレーザーガンを知らなかったし、逆にシオンちゃんは変な弓が使える」

 

 そこに発想力と言う潜在能力の差が生まれるのだ。

 洗脳兵は指揮官の強さによって強弱が分かれる。

 だが記録は違う。

 発想力・思考力の高いAZKiが扱う洗脳以上の脅威を誇る。

 

「記録の場合は過去のデータに基づいて強化される。洗脳下にあった人たちにその時の記憶はないけど、ラミィたちはその技も戦い方も見てる。過去の戦闘データの蓄積――集大成がこの先で待ってる。だから甘く見ない方がいい、って言う忠告だけ」

 

 ラミィなりの助言だった。

 ルーナはうーんと唸って難しい顔をした。

 

「いや、問題はそれだけじゃねぇのらよ」

「――え?」

 

 ルーナは加えて危機感を露わにする。

 敵の中には居ないが、敵が持っているある人の記憶。

 

「フブキちゃんの記憶。下手したらこっちの弱点も全部割れてるのら」

「…………いや、あたしや一味内は確実に割れてますね」

 

 ぼたんは過去のフブキの心情も考慮し確信した。

 仲間だろうと敵だろうと、全員の弱点を目にしたに違いない。

 目の敵にされていたぼたんは100%。

 

「ん、まあだから……気をつけてって話。それだけ」

「おう。ありがと」

「……んっ」

 

 ラミィは赤面して立ち位置に戻った。

 別にぼたんに惚れたわけではない。

 

 ただその……疎外感のある組織内にいる時に優しくお礼を言われたら嬉しい。

 

 

 だんっ‼︎

 

 

「おわっ!」

 

 見張り台からいろはが降ってきた。

 視線が一点に集まり静まり返る。

 

「マリンさん帰ってきましたよ」

 

 いろはが森の方を指差すので一斉にそちらを見やる。

 ――5秒後、マリンとはあとが草木を掻き分けて浜へと帰還した。

 

(ちゃんと見張ってたんだな……)

 

 

「お待たせしました皆さん」

「…………」

 

 縄梯子を伝ってマリンとはあとが甲板へ登る。

 見張も全員2人の元へと足を運ぶ。

 

「で……これからどうすんの」

「はい。これからルイの所へ向かいます」

「やっぱここにはいないんだな」

 

 何を話したか、ではなくこれからどうするかを取り上げて話す。

 ルイの名前が上がると全員の表情が引き締まった。

 

「でもじゃあ、ルイさんは何処に――?」

「はあちゃまが教えてくれました。場所は我々の始まりの地――」

 

 ポルカがハッと目を見開いた。

 最早懐かしい2人の邂逅の島。

 

 マリンとポルカが口を揃えた。

 

「「記しの島」」

 

 その島の名はこの場の誰もが知っている。

 だが――足を踏み入れた事がある者はこの中でマリン、ポルカ、そしてぼたんのみ。

 ポルカは偶然の漂着、マリンは転移、ぼたんは団長時代にルーナの指令で4大能力を調べる為。

 宝鐘海賊団始まりの地が決戦の地になるとは誰も予想だにしなかった。

 

「でもはあとさんの案内なんでしょ? 待ち伏せされてちゃどうしようもなくない? 船しか足が無いのに」

「そうね。私が今ここにいるのはルイちゃんに無理言ったから。それでも許可が降りたのはあなた達をうまく誘導する事ができるから。このあと私はあなた達に同行して記しの島へ案内、そして島が近付いたらマリンちゃんの居場所をルイちゃんに送る手筈になってる」

 

 はあとは包み隠さず暴露した。

 当然煙たがられ、マリン以外ははあとの同行に反対となる。

 

「大丈夫ですよ。作戦立ててきゃいい話なんで」

「いやでもさ、その作戦もはあとさんにバレるわけでしょ、同行させたら」

「バレます。でもはあちゃまはこれ以上のアンフェアはしません」

「大丈夫かよまじで……」

 

 アクアマリン号への帰路、マリンははあとに幾つかの確認を取った。

 既存の確約以外は両陣営に手を貸さない事。これが一味にとって何よりも有益である。

 信頼度の点に於いては賭けでしかないが、はあとを同行させない選択肢を一味は取れない。

 はあとも連れて帰るとみこに約束しているから。

 

「信頼していいの?」

 

 シオンがはあとに流し目を送りながらルーナに尋ねる。

 ルーナは難色を示すが……。

 

「はあとさんを信じる必要は無い。全員纏めて盲信的にマリンを信じときゃいい」

「トワ様そう言うのやめてね。めっっっっちゃ恥ずかしいから」

 

 堂々と言い張るトワの肩を掴んでマリンが紅潮している。

 

「まあ何にせよ、目的地は定まったわけだし出航すっか」

 

 ポルカが梯子を巻き取り、ノエルが錨を上げる。

 記憶の跡地から記しの島まで6日。

 あまり日を掛けたくはない。

 

「作戦については一旦落ち着いてから話し合いましょう」

「……それもそうだな」

「んな」

 

 船は180度旋回し、再び大海原へと漕ぎ出した。

 

「それではハッピーエンド(エルドラド)――もとい、記しの島へと向けて――出航‼︎」

 

 こうしてアクアマリン号は記憶の跡地から船を出し、記しの島へと舵を取る。

 赤井はあとと言うピースを加えて――。

 

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