ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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15話 後付け設定

 

「ウチ、心配してたんだからね」

「えっへへ、ごめん」

 

 ミオの家にお邪魔して、おもてなしを受ける一同。

 テーブルにお茶を注いだコップが置かれる。

 4種類は統一された可愛らしいデザインだが、他は何の変哲もないガラスのコップだ。

 

「無事だから良かったけどさ」

「うん、色々あったけど……でも、元気!」

「そっちの人たちも、ありがとね」

「いえいえ、フブちゃん可愛いから」

 

 マリンとミオが軽く挨拶を交わすように言葉を交わす。

 そして、ふふっ、と苦笑する。

 

「会話の不自然さを無視すんな」

 

 どんな時でも平常運転なマリンと当然の如く会話するミオ。

 ポルカとトワが冷静に突っ込みつつ、状況と人格を分析する。

 

「ミオは最近、何してるの?」

「ウチ? ウチは普通にお仕事してるだけだよ」

「何のお仕事?」

「街のパトロールとか、金庫警備とか、犯罪者の輸送とか」

「え⁉︎ 警察!」

「警察……」

 

 意外すぎる職にマリンは度肝を抜かれる。

 フブキも驚いていた。

 

「という事は、我々捕まるのでは?」

「あはは、悪い事してたら捕まえるかも」

「みんな良い人だから大丈夫!」

 

 海賊を悪とするか否か。

 世間一般では悪だが、海賊旗を掲げると犯罪、という法律はない。

 悪事を働けば問答無用で牢獄へぶち込まれよう。

 フブキの優しきフォローも、正直意味はない。

 

「ところでフブキ、これからどうするの?」

「この後は2人のとこにも行こうと思うんだけど、いるかな?」

「それは流石にウチもわかんないな」

「2人って? まだいるん?」

「そうだよ!」

 

 嬉々としたフブキの表情から、その仲の良さを感じる。

 コップが4つだけ統一されたデザインなのは、4人で昔から使用していた為と思われる。

 

「フブキ、今日どうする? 泊まってく?」

「え、私の家でもいいかなって……」

「でも、1年くらい帰ってないんじゃないの?」

「1年か……」

「あれ、それとも会ってないだけで引き篭ってたとか?」

「あ、ううん! じゃあ今日だけ泊まらせてもらうよ」

「いいですね、お泊まり会」

 

 フブキが洗脳されていた期間が約1年だと判明した。

 予想通りながら、その期間の長さにフブキは恐怖で少し身震いした。

 だが、続くマリンの言葉とミオの柔らかい笑顔で震えは止まる。

 

「うん、じゃあウチは準備しとくから、みんなは2人のとこ行ってきていいよ」

「あ、洗いもん手伝いましょうか?」

「んーん大丈夫だよ、ありがとね」

「でも……」

 

 ポルカがコップを掴み手伝いを進言するが、丁寧に断る。

 そのコップを受け取り、微笑む姿はまさにママ。

 ポルカの指に軽くミオの手が触れる。

 

「長い間いなかったんだから、早く会いに行きなって」

「……」

「会ったらきっと驚くよ」

「うん! 分かった!」

「お言葉に甘えて」

「どこにきてもママだなぁ」

 

 ミオの包容力に和むマリン。

 一同はミオの優しさに甘えてその場を後にした。

 

 

 フブキの案内のもと辿り着いた一軒家。

 大きくはないが小さくはない。

 2人、とは夫婦なのか?

 表札すらない。

 因みに、ミオは一人暮らしで一軒家。

 外見的にここの家とサイズ感は同じだ。

 

「いないね」

「どこかに出掛けてるんじゃないですか?」

「うーん……」

「人が住んでる形跡とかあるし、この国にいなかったらさっきの人も気づきそうだからね」

「じゃあ仕事とかか?」

「私、2人の仕事先知らないよ」

 

 住人不在で戸惑うフブキ。

 庭の小綺麗さや、ドア付近の汚れの無さを見る限り、最近までの人の出入りはあると見えられる。

 と、ポルカが分析した。

 仕事先に突撃しようにも、勤務先すら不明。

 このまま当てもなく街中を彷徨うわけにもいかない。

 

「……ミオの家に戻ってお手伝いでもしよっか」

 

 他の目的もないので、とフブキが提案すると満場一致で賛成だった。

 談笑しつつミオ宅へ向かう途中、そのミオに出会う。

 

「あれ⁉︎ ミオ!」

「あ、フブキごめん! ウチ、ちょっとお仕事が入ったから」

「え、そうなの?」

「事件ですか?」

「うーん……違うけどそう。夕方までには帰って支度するから、どこかで時間潰してきて」

「あたしたち、家事の手伝いくらいしますよ?」

「いいのいいの! 見られたくない物とかもあるし!」

「……そうだね。プライバシー!」

 

 軽くそんなやり取りを終えて、ミオは小走りに仕事へ向かった。

 走りつつも冷静な背中を眺めてマリンがニヤける。

 

「見られたくない物……」

「好きな人の写真とかかな?」

「ちっがーう!」

 

 マリンの不純な思考には微塵も気付かず、フブキが純真な想像を口にした。

 それをマリンが怒号で切り裂いた。

 

「船長、分かるの?」

「はぁ……フブちゃん、相手にしない方が……」

「分かりますよ! 相手がミオ先輩であろうとも、一つや二つアイテムを持っていてもおかしくは――」

「どーん!」

「いっダァ! 何すんの!」

 

 話し相手に関わらず危険な発言は許さない。

 そんな勢いでトワがマリンの頭に棒を叩きつけた。

 脳天を両手で押さえて座り込み涙を流す。

 その乙女チックな涙目が横目にトワを見上げている。

 

「不純」

「いいでしょうが別に」

「想像は勝手だけども口にすんなアホ」

「アイテムって?」

「そりゃあ勿論――」

「黙れ変態」

「…………」

 

 興味惹かれるフブキの反応に、復活して応えようとするマリンをトワが一言で粛清した。

 

「……?」

「アイテムってのは……『スッゴイお宝』のこと!」

「へえ……どんなお宝なの?」

「え、えぇと……世界中の人を魅了するような、物凄いお宝!」

「そうなんだぁ! じゃあ、それを見つけるのが目的なの?」

「そうなんだよー、船長お宝に目がないから!」

「ちょっとポルカー」

 

 デタラメから始まる目的。

 勝手にマリンの目標を決められて、ツッコミたい様子だが、ポルカと目が合うと口を閉ざした。

 ポルカの目が語る。

 この純粋な目と心を汚すな、と。

 

「それで世界に出るなんて……やっぱ海賊ってすごいなぁ」

 

 感銘を受けるようにマリンを見つめる。

 その輝かしい瞳に、マリンも心が浄化……され……ない!

 でも、罪悪感を僅かに覚えたので、もうこの話はやめよう。

 

「…………」

「船長?」

「いや……」

「私の顔になんか付いてる?」

「可愛くて見惚れてた」

 

 フブキへの神妙な視線をテキトーに誤魔化す。

 

「でも、時間潰すったって、どこ行くん?」

 

 強引にでも話題を戻す。

 

「じゃあ、私の家行く?」

「フブちゃんの家か」

「いいじゃん」

「掃除手伝って」

「…………」

 

 皆がばらけてゆく。

 

「おーーーい」

「じゃあ、夕方5時、ミオ先輩の家で!」

 

 2年後に集うかのようにマリンの号令がかかる。

 それを合図に皆は各々自由に散策を始めた。

 

 

 

 

 その散策風景、マリン。

 マリンはミオの家に向かう途中で感じた匂いの正体を暴きに向かった。

 周囲にあるのはゲームセンターやカジノ店、至って普通の飲食店など、美味しい匂いやタバコの匂いは時折鼻に付くが、いい香りはしない。

 

「ゲームだらけはいいけど……タバコはやだな」

 

 タバコ嫌いのマリンは顔を顰めて通りをそそくさと抜けた。

 

「うーん……匂いの正体も気になるけど、フブちゃんの親友、残りの2人も気になるな……」

 

 顎に手を当て、むむと唸る。

 人と接触しないよう道の脇に寄り、歩みを止めて考える。

 

「多分おかころだけども……」

 

 フブミオに合わせてもう2人、しかもゲームの国。

 FAMSなどでも不思議はないが、ゲーマーズの方がしっくりくる。

 

「……ってか、スバル先輩じゃないからFAMSじゃないじゃん」

 

 キャンディータウンにスバルはいた。

 ならば、その線は消える。

 色々と深く考えすぎかもしれないが、偶然にしては世界が都合よくできている。

 

 敵対するみこめっと、敵仲間のイノナカ、キャンディータウン王宮組のすばちょこるーな、同国の昔馴染みのkids、偶然出会ったラプトワ。

 

 出来すぎた構図がこの先も続くなら……。

 

「――! この匂い!」

 

 再び、マリンの鼻にあの嗅ぎ慣れた匂いが通り抜ける。

 

「すんすん……」

 

 鼻を鳴らし敏感にニオイを感じとる。

 匂いの出どころは……。

 

「っと――すみませ……?」

 

 意識していたが誰かに接触した。

 咄嗟に顔を上げ正面の誰かに謝罪をするのだが、そこには誰もいない。

 

「…………成程?」

 

 誰かいる。

 誰もいないが、誰かいる。

 ……誰だ?

 

 匂いが遠くへ離れない。

 意図的にここにいる。

 透明化する能力だろうか。

 スケスケやイロイロ的な。

 

「よし、観光しに行こう」

 

 マリンはその場を後にした。

 

「…………変な人」

 

 空気から、女の子の声がする。

 

「そんなに匂うかな……」

 

 鼻を鳴らす音がする。

 

「でも、あの人なら……!」

 

 足音はこっそりとマリンを追いかけた。

 

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