ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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16話 自由行動の使い方

 

 自由行動、ポルカ視点。

 

「なんで誰も疑わないんだよまったく……」

 

 近場のコンビニに入り、購入はしないが新聞を手に取る。

 軽く目を通し、気掛かりなニュースを探す。

 パッと目についたものは、洗脳能力の記事。

 どうやら、遂に組織の存在が公表されたようだ。

 とは言え情報は圧倒的に少なく、ただの注意喚起に近い。

 

「賊が拘束……」

 

 更に数ページ捲ると、大きくない見出しの記事が目に止まった。

 1人の賊がこのイリス島にて拘束されたそうだ。

 捕縛の際にかなり抵抗を見せ、数名に負傷を与えたと報道されている。

 

「1人で……やるねぇ」

 

 数名、と正確な人数こそ不明だが、その数を1人で相手取るとは、そこそこの手練れと思われる。

 

「――!」

 

 ポルカは何かに反応し、新聞を戻すと店外へ出た。

 そのまま道を進み、海岸へと出る。

 そこには一隻の大きな船があった。

 

「うげ、なんじゃこの巨大な船は」

 

 自分の乗る船とは明らかにスケールが異なる。

 豪華客船ほどのサイズはないが、並の船よりは大きいだろう。

 

 近場の人間に軽く話を聞いたところ、半年ほど前から定期的に訪れる船らしい。

 乗船者は不明だがいつも10人に満たないと言われ、持ち主は相当の富豪だと噂されているそうだ。

 数日前に停泊して、それから動いていないようだ。

 

「しかし成程ね……」

 

 ポルカは顎に手を当て、唸る。

 予測や推測は幾つも仮定として立てられるが、確証が得られない。

 決定的な証拠さえ掴めば船長に話すのだが……。

 

「証拠なしだと船長納得しないから、逆にリスキーなんだよなぁ」

 

 他言の心配はないが、表情などで出やすい。

 マリンは感情を良くも悪くも表にしすぎだ。

 ボロを出すまで黙っておくとしよう。

 

「今度はどこへ行くか……」

 

 ポルカはもう少し詮索を続けた。

 

 

 

          *****

 

 

 

 自由行動、トワ視点。

 

 行く当てもなく、トワはふらふらと徘徊するように漫歩していた。

 気がつけば人気のない砂浜にいた。

 

 自分は一体……何をしているのだろう。

 

「なんで海賊やってんだ……」

 

 突然、脳が冷静になり、自分の立場を含めて疑問に思った。

 別に、犯罪者のレッテルを貼られる事は構わない。

 ただ、何故この海賊に入ったのかという話。

 トワの目的を果たすなら、寧ろルーナの傍で動いた方が良かった。

 マリンとの取引と言うこともあるが、それを律儀に守らずとも良かった。

 

「…………」

 

 時々、冷静になっては、自分に疑問を抱く。

 自分はどうすればいいのか、どうすればよかったのか。

 トワは一体、マリンの何に期待しているのだろうか。

 弱いし、変態だし、意味不明だし、まるで船長に向いてない。

 

「……」

 

 先導者によくある、人望というやつか。

 それとも、ラプラスをトワに重ねたように、マリンも誰かに重ねてしまっているのか。

 ならばトワがマリンの下に着いた説明はつく。

 

「大丈夫……だよな」

 

 騎士団の証明バッチを掌で転がす。

 

 この先、この一味はどんな進路を取るのだろうか。

 

「戻りたく、ねぇなぁ……」

 

 シエロソニードへの帰還を望むものはいない。

 だが、目的地であるハングリー島への進行路に含まれている。

 中継として一時的に停泊する可能性は高い。

 

「戻ったら……バレる」

 

 それだけは絶対にダメだ。

 そうだ。

 トワは今の目的を果たすためなら、全てを欺くことさえ、厭わない。

 トワの嘘は、すでにこの船上に蔓延している。

 例え、最終的にこの船を捨てる事になっても……。

 

「……わりぃな」

 

 バッチをポケットにしまい、もう少しだけ砂浜を歩いた。

 

 

 

          *****

 

 

 

 自由行動、フブキ視点。

 

 誰も片付けを手伝ってくれない。

 虚しくぼっちで汚部屋掃除。

 とは言っても、ダンボールが山積みになっているわけではなく、1年分の埃が溜まっているだけ。

 早速棚上などの埃落としに取り掛かる。

 高所を先に叩き、続いて床など。

 掃除機をかけて、その後全ての窓を開ける。

 

 掃除だけで、時間は殆ど過ぎた。

 1時間もしないうちに、夕刻。

 

「はぁ……」

 

 部屋に飾ってある写真立てを掴んで溜息をついた。

 4人が仲良く写っている。

 フブキ、ミオ。

 おかゆ、ころね。

 

 それぞれ、カップルのようにくっついて、満面の笑みを浮かべている。

 輝く海を背後にしている。

 

「ミオ……どうして……?」

 

 幼き頃に描いた下手な髑髏マークの旗を見つめる。

 ずっと前、それはもう、10年以上も前。

 フブキはその昔から、夢があった。

 

「私、海賊になったんだよ……?」

 

 フブキがこの船に乗る事を進言した半分程の理由はこれだった。

 船長を夢見ていたが、戦う力もなく、仲間を守れないなら、普通のクルーで構わない。

 しかも、いい仲間たちだ。

 

 文句一つない。

 

「みんなも……」

 

 仲間にならない?

 

「…………」

 

 結局、本気で海へ出るつもりなんて、無かったのかもしれない。

 船上生活なんて過酷だし、行先で何が待ち受けるかの不安と隣り合わせ。

 フブキや海に出る者に言わせれば、そこにスリルとロマンがあって楽しいのだが、分からない者には分からない。

 

「いやだな……なんだか」

 

 ミオが己の将来を考えた結果、今の職に就いたのなら、親友として応援するべきだ。

 けれど、昔からの夢を思うと、醜い感情がチラチラと顔を見せてくる。

 

「私って、性格悪いのかな」

 

 自己嫌悪がフブキの腹の底から這い上がって来る。

 嫌だ、こんな自分。

 

「……」

 

 ダメだ。

 このままではいけない。

 夕食の時、ミオに話を聞こう。

 そして、自分の話を聞いてもらおう。

 

 フブキがどうしたいか。

 ミオがどうしたいか。

 おかゆ、ころねをどうするのか。

 

 そして、もし叶うなら、4人で航海へ……。

 そう、だから……他意なんてない……。

 ないんだよ……。

 

 

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