自由行動、ポルカ視点。
「なんで誰も疑わないんだよまったく……」
近場のコンビニに入り、購入はしないが新聞を手に取る。
軽く目を通し、気掛かりなニュースを探す。
パッと目についたものは、洗脳能力の記事。
どうやら、遂に組織の存在が公表されたようだ。
とは言え情報は圧倒的に少なく、ただの注意喚起に近い。
「賊が拘束……」
更に数ページ捲ると、大きくない見出しの記事が目に止まった。
1人の賊がこのイリス島にて拘束されたそうだ。
捕縛の際にかなり抵抗を見せ、数名に負傷を与えたと報道されている。
「1人で……やるねぇ」
数名、と正確な人数こそ不明だが、その数を1人で相手取るとは、そこそこの手練れと思われる。
「――!」
ポルカは何かに反応し、新聞を戻すと店外へ出た。
そのまま道を進み、海岸へと出る。
そこには一隻の大きな船があった。
「うげ、なんじゃこの巨大な船は」
自分の乗る船とは明らかにスケールが異なる。
豪華客船ほどのサイズはないが、並の船よりは大きいだろう。
近場の人間に軽く話を聞いたところ、半年ほど前から定期的に訪れる船らしい。
乗船者は不明だがいつも10人に満たないと言われ、持ち主は相当の富豪だと噂されているそうだ。
数日前に停泊して、それから動いていないようだ。
「しかし成程ね……」
ポルカは顎に手を当て、唸る。
予測や推測は幾つも仮定として立てられるが、確証が得られない。
決定的な証拠さえ掴めば船長に話すのだが……。
「証拠なしだと船長納得しないから、逆にリスキーなんだよなぁ」
他言の心配はないが、表情などで出やすい。
マリンは感情を良くも悪くも表にしすぎだ。
ボロを出すまで黙っておくとしよう。
「今度はどこへ行くか……」
ポルカはもう少し詮索を続けた。
*****
自由行動、トワ視点。
行く当てもなく、トワはふらふらと徘徊するように漫歩していた。
気がつけば人気のない砂浜にいた。
自分は一体……何をしているのだろう。
「なんで海賊やってんだ……」
突然、脳が冷静になり、自分の立場を含めて疑問に思った。
別に、犯罪者のレッテルを貼られる事は構わない。
ただ、何故この海賊に入ったのかという話。
トワの目的を果たすなら、寧ろルーナの傍で動いた方が良かった。
マリンとの取引と言うこともあるが、それを律儀に守らずとも良かった。
「…………」
時々、冷静になっては、自分に疑問を抱く。
自分はどうすればいいのか、どうすればよかったのか。
トワは一体、マリンの何に期待しているのだろうか。
弱いし、変態だし、意味不明だし、まるで船長に向いてない。
「……」
先導者によくある、人望というやつか。
それとも、ラプラスをトワに重ねたように、マリンも誰かに重ねてしまっているのか。
ならばトワがマリンの下に着いた説明はつく。
「大丈夫……だよな」
騎士団の証明バッチを掌で転がす。
この先、この一味はどんな進路を取るのだろうか。
「戻りたく、ねぇなぁ……」
シエロソニードへの帰還を望むものはいない。
だが、目的地であるハングリー島への進行路に含まれている。
中継として一時的に停泊する可能性は高い。
「戻ったら……バレる」
それだけは絶対にダメだ。
そうだ。
トワは今の目的を果たすためなら、全てを欺くことさえ、厭わない。
トワの嘘は、すでにこの船上に蔓延している。
例え、最終的にこの船を捨てる事になっても……。
「……わりぃな」
バッチをポケットにしまい、もう少しだけ砂浜を歩いた。
*****
自由行動、フブキ視点。
誰も片付けを手伝ってくれない。
虚しくぼっちで汚部屋掃除。
とは言っても、ダンボールが山積みになっているわけではなく、1年分の埃が溜まっているだけ。
早速棚上などの埃落としに取り掛かる。
高所を先に叩き、続いて床など。
掃除機をかけて、その後全ての窓を開ける。
掃除だけで、時間は殆ど過ぎた。
1時間もしないうちに、夕刻。
「はぁ……」
部屋に飾ってある写真立てを掴んで溜息をついた。
4人が仲良く写っている。
フブキ、ミオ。
おかゆ、ころね。
それぞれ、カップルのようにくっついて、満面の笑みを浮かべている。
輝く海を背後にしている。
「ミオ……どうして……?」
幼き頃に描いた下手な髑髏マークの旗を見つめる。
ずっと前、それはもう、10年以上も前。
フブキはその昔から、夢があった。
「私、海賊になったんだよ……?」
フブキがこの船に乗る事を進言した半分程の理由はこれだった。
船長を夢見ていたが、戦う力もなく、仲間を守れないなら、普通のクルーで構わない。
しかも、いい仲間たちだ。
文句一つない。
「みんなも……」
仲間にならない?
「…………」
結局、本気で海へ出るつもりなんて、無かったのかもしれない。
船上生活なんて過酷だし、行先で何が待ち受けるかの不安と隣り合わせ。
フブキや海に出る者に言わせれば、そこにスリルとロマンがあって楽しいのだが、分からない者には分からない。
「いやだな……なんだか」
ミオが己の将来を考えた結果、今の職に就いたのなら、親友として応援するべきだ。
けれど、昔からの夢を思うと、醜い感情がチラチラと顔を見せてくる。
「私って、性格悪いのかな」
自己嫌悪がフブキの腹の底から這い上がって来る。
嫌だ、こんな自分。
「……」
ダメだ。
このままではいけない。
夕食の時、ミオに話を聞こう。
そして、自分の話を聞いてもらおう。
フブキがどうしたいか。
ミオがどうしたいか。
おかゆ、ころねをどうするのか。
そして、もし叶うなら、4人で航海へ……。
そう、だから……他意なんてない……。
ないんだよ……。