ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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19話 三度、出会う

 

 ポルカの全力の攻防と、ぼたんの圧倒的な力によりミオ、おかゆ、ころねの捕縛に成功した。

 不思議な奇跡に見舞われ、なんとか宝鐘海賊団も全員解放。

 

 適当な場所から手錠と灯りを持ってくる。

 3人の拘束を、ぼたんの能力から手錠へ。

 そして明かりを灯し、この面子で情報を交換……しようとしたが……。

 

「ミオ……」

「……」

 

 フブキが灯りに火照る頬に涙を流して、そっと歩み寄る。

 ミオは果たして……洗脳なのか。

 ころねは? おかゆは?

 

「……」

 

 フブキの問いかけにも応答はない。

 本人の意思か、それともはたらく強制力か。

 

「フブちゃんのことも踏まえると、まあ洗脳でしょうね……」

 

 満場一致の考察をポルカが口にする。

 ただ、ぼたんは首を傾げていた。

 

「ってかさ、あんた誰なん?」

「あたしは獅白ぼたん」

「捕まってたのを助けた」

「……犯罪者じゃないよね?」

「違うんじゃない?」

 

 トワがようやくぼたんの存在に突っ込む。

 

「そういうあんたらも何なん?」

「ってかポルカ! さっき何したん?」

「あの……3人のことを……」

「それよりも鍵開けたの誰?」

 

 予測された収拾不能の事態。

 思い思いの疑問をそれぞれが並べ、誰がなんと言ってるのやら……。

 普段なら輪に乗っかって混乱させてるタイプだが……マリンは船長。

 コラボ配信で言うところの、企画者に当たる。

 ここはビシッと船長らしく決めさせてもらおう。

 

「ハイ! みなさん落ち着いて!」

「「――?」」

「1人ずつ、1つずつ解決していきましょう」

 

 皆が静まり、暗い牢からの隙間風が聞こえる。

 ああ、素晴らしきかな、船長。

 これが人を纏める時の「快感」なのか。

 メチャクチャ気持ちいい!

 

「じゃあ、まずぼたんさんから」

 

 と、敢えて身内を後回しにして、ぼたんから話を聞く。

 船長の顔を立て、他の者はキチンと耳を傾けていた。

 

「じゃあまず、アンタらは何?」

「海賊です」

「…………」

 

 マリンの即答で解答終了。

 しばし沈黙する。

 

「……海賊? アンタらが?」

「……弱そうって思いました?」

「おん」

 

 うーん、ストレート!

 ぼたんのスパッと言い切る性格に寧ろ懐かしさを感じる。

 しかし、それは事実。

 否定材料などない。

 マリンはうっすらと笑って流した。

 

「じゃあ、さっき話に出てた、洗脳って何?」

「流石、鋭いですね」

 

 何気なく核心をつくのもまた、彼女らしい。

 

「人を操る能力者が今、密かに幅を利かせてるみたいで、うちのフブちゃんも被害者の1人だったんです」

「……へぇ」

「んで、まあ流れ的にこの3人もかなって」

「洗脳かぁ……」

「心当たりでも?」

「んや、心当たりはない。単なる心配事」

 

 簡略化した説明だが、通じただろうか。

 まあ、洗脳に気をつけろ、と言っても、顔が割れてない以上不可能だ。

 存在だけ認識していれば、程度だ。

 

「おっけ、もういいわ」

「ほいほい、んじゃ次トワ様」

 

 ぼたんが手を上げて、質問終了を合図したので、次はトワへとパス。

 

「トワはポルカの事。さっき何したのか、それといつからミオさんを疑って、どうこの場所を特定したのか」

 

 この島での圧倒的MVPであるポルカ。

 様々な観点で慧眼すぎる。

 居場所の特定なども、優秀にこなしていた。

 真似できるとは思えないが、ポルカがどんな意図を持って行動し、どんな技を使って策略を立てたのかを知りたい。

 それに、仲間の能力を理解すれば、活用の幅も広がる。

 

「ミオさんを疑ってたのはここに来る前から」

「――⁉︎」

「みんなだって少しは考えたでしょ。事フブちゃんに関しては特に」

「…………」

 

 マリンもフブキを見て僅かに意識していた。

 フブキが洗脳にかかっていたのなら、その歯牙が親友に及んでいても不思議はないと。

 それを口にせず、有り得ないと決めつけていたのは、罪悪感を覚えるから。

 それを直感したからこそ、ポルカも確証を得るまで話す気になれなかった。

 

「だから細工した」

「細工?」

「ポルカの能力は複製に加えてまだ、幾つか使い方がある」

 

 ほうほうと、フブキ以外が真剣に聞き入っている。

 

「内ひとつ、マーキング」

「マーキング?」

「なんか……エロい?」

「全くエロくない」

 

 人差し指を立てた。

 

「一度触れた物、人にマークをつけることができる」

「それ、なんの役にたつの?」

「マークを付けた物の居場所は一定範囲内なら分かるし、マークしている間はそれに触れずとも複製ができる」

「GPSみたいな感じ?」

「じーぴーえすってなに?」

「え、えっと……発信機?」

「発信機……?」

「とにかく! 遠くなければ、場所がわかるってこと!」

 

 似た性質を持つ物を挙げたが、この世界線にはまだ存在しないらしく、寧ろ混乱を呼ぶ。

 最終的に、その文明の発展には深く触れず。

 まあ、存在しない物なら深掘りする必要はないだろう。

 

「マーキングは1、2、3までの番号があるから、マークできるのは3つまで」

「同時に3つも⁉︎」

「1番は例の親友にマークつけっぱなしだから今は使えない。で、2番は船長につけてるから、基本的にフリーなのは3番だけ」

「え、船長監視されてんの?」

「そりゃあもう、船の頭失うわけにはいきませんからね。行動も読めませんし」

「えぇ……こわい」

 

 今までマリンはポルカに動向を監視されていたと言う驚愕の事実。

 これからは、その目を気にして夜も眠れない……と言うのは嘘で、怖いのは1つだけ。

 

「ただまあ、場所がわかるだけなんで、何してるかはさっぱりですよ」

「ふぅ……」

「そう、だから、昨晩部屋出て何してたのかは知りません」

「「ぅぇ……」」

「ポルカ、ダメでしょそんなこと言っちゃぁ」

「……」

 

 何をしていたのだろう?

 あまり、いい予感はしない……というか、間違いなく……。

 

「みんな、汚物を見る目はやめようね。傷付くから」

 

 マリンの脳内は所詮ピンク色。

 何を考え、何をしていたのか、知る必要はない。

 

「そんな話、今更でしょ。んで、さっきポルカが2人から借りた物だけど」

「ねえ、船長ってそんなにカースト低いの? 船長だよ、船長」

「船長うるさい」

「え、なに、これからこんな雑談ある度にこの扱いうけるの?」

 

 キャンディータウンでも同様の件があった。

 会話がシリアスになればなるほど、マリンの存在は弾かれやすいのかもしれない。

 船長なのに、船長なのに!

 

「これが雑談? あんたの人生物騒っすね」

 

 ぼたんが拾った。

 ちょっと予想の斜め上だが嬉しい。

 好き。

 

「ポルカは人のパワー数値を見て、それを借りることができる」

「ま、そんなとこやろうとは思ったけどさ……」

「ポルカのパワーは20」

「それ、高いの?」

「女性平均は20、男性平均は35」

 

 ポルカのパワーは丁度平均。

 

「パワーってのは純粋な力の事だから、パワーが高い人が強いって訳じゃない」

「でもそれさ、使ったらトワたち動けんかったじゃん? なら、敵に使えば良くない?」

「自分よりパワーの高い人からは借りれないし、数値も見れない。パワーの大きい人に敵うわけないって事よ」

 

 これはまた、何やら面倒な能力だ。

 しかし、それはつまり、ポルカのパワーはマリンとトワより高い、と言うことになる。

 ならば、2人は20より低い?

 

「船長のパワーは10で、トワ様は25」

「……?」

「船長からパワーを借りれば、ポルカのパワーは29でトワ様を上回る。つまり、あたしのパワーが変化すれば、見える者も借りれる者も増える」

「ポルカ、20+10は30ですよー」

 

 ポルカの解説に対し、マリンが煽るように水を差した。

 誰でもできる算数のミス。

 煽り顔がやけにうざい。

 

「パワーが0になったら大変だから1だけ残したんだよ」

「へ、へぇ……」

「0になるとどうなんの?」

「さぁ、やった事ないけど、活動停止して死ぬんじゃない?」

「最強じゃん」

「いや、んな事せんから」

 

 真偽は不明ながら、強力なことに違いはない能力。

 パワー1の状態でも、気怠さが増して動く気になれなかった。

 弱い兵士をかき集めれば、ポルカは化けると言うことだ。

 

「でもそれ、逆にころね先輩のパワー高すぎたって事?」

「そう、3人のパワーを合わせた数値は53。ころねさんはその上をいく」

「えっぐ……」

 

 男性平均を余裕で上回る。

 それが能力によってパワー強化されているとしても、十分に高い。

 

「でもその能力使い道少なそうじゃん」

「えそう? 船長はめっちゃ使いやすいと思ったけど」

 

 ぼたんとマリンで評価が二分した。

 

「まあ、味方からパワー借りれるのは今回みたいな特殊な場合だけだし、そもそもあたしのパワーがそんな高くないから」

 

 自身のパワーが高ければ、敵から直接奪ってダウンさせられるが、低ければそう上手くはいかない。

 

「……? そうですね」

「分かってないっしょ」

 

 テキトーな相槌に嘆息する。

 

「で、で、ここのメンバーのパワーってどんなもんですか?」

 

 マリンの興味はそこへと移る。

 マリン自身のパワー不足は自覚ある為、あまり凹んでいない。

 寧ろ、トワの25という数値に驚いた。

 では、ミオとおかゆ、ぼたん、フブキはどうだろう。

 

「フブちゃんは15、ミオさんは20。ころねさん、おかゆさん、ぼたんさんは見えん」

「15……」

「微妙ですね」

「船長にだけは言われたくないです」

 

 マリンに揶揄われ、フブキは朴を膨らませた。

 少し、元気になってくれたかな?

 

「ぼたんさんところね先輩はまあ……って感じですけど、おかゆ先輩も高いんですね」

 

 少し意外性がある。

 ころねと比較されやすいからだろうか。

 イメージ的におかゆは、平均のやや下あたり。

 

「まあ、パワー数値なんて気にせんくっていいっすよ。あんま使わないんで」

 

 と、これだけ解説しておいてポルカは投げやりに締めた。

 要するに、今の時間は無駄。

 

「そう? なら次行きましょうか。はいポルカ」

 

 ポルカの解説が終わり、マリンはそのまま質問を促す。

 

「ん、じゃあ、鍵開けたの誰?」

「「…………」」

 

 質問への返答はない。

 マリンがぐるりと見回しても、横に首を振るだけ。

 この中に、牢屋の鍵を開けた救世主はいない。

 

「妖精かなんかですかね」

「はあ?」

 

 マリンの戯言をわざわざトワが拾う。

 いつもの、根も葉もない言葉だと思った。

 

「いるみたいなんですよ、この国」

「……妖精が?」

「まあ、見えない『何か』が」

「――?」

 

 不可視の存在は把握したものの、正体やその原因などは一切解明できておらず、マリンも詳らかにはできない。

 この説に納得はできないが、他の推測もできず、この話題は途絶える。

 そして残るは……。

 

「えっと……そろそろ、3人のこと……」

 

 フブキが控えめに挙手した。

 そう言えば、フブキは一応人見知りだが、こんなに消極的なタイプだったろうか?

 

「そうですね」

「船長なんとかしてよ」

「無茶振り!」

「……」

 

 トワが雑に振るが、フブキは結構期待していた。

 なんせフブキはマリンに救われたと思っている。

 その真相は未だ闇の中だが、フブキは大いに期待を寄せている。

 なぜなら他に縋る糸がないから。

 

 カランカラン……。

 

 え?

 何の音――

 

「ぎっッ――‼︎」

「どわっ」

「――⁉︎」

 

 何が起きた⁉︎

 トワの足を押さえて屈み込んでいる。

 ポルカが吹っ飛んで壁に激突する。

 ぼたんが脱力して地に伏している。

 

「何! ど、どうなって――!」

「ぁ――!」

「のわっ!」「ふぇっ⁉︎」

 

 フブキとマリンの脚に妙な感触の物が絡まり、2人を引いた。

 受け身も取れず転倒する。

 石材の床に衝突し、痛みが走る。

 

「っ⁉︎ ミオ、やめて!」

「あぶな……!」

「わっ!」

 

 暗晦の中、朧げにミオの動きが見えた。

 フブキを眼下に置き、右腕を銃のように構える姿を。

 旧友に憐憫も容赦もない酷烈な瞳。

 そこに、嘗ての友情や愛情は、ない。

 

 口を開く暇があったなら、回避行動も起こせたはずだ。

 だが、フブキは必死に言葉と瞳で訴えるだけ。

 あのままではきっと、何かがフブキを撃ち抜いていた。

 だから、ぼたんは絡めたままの脚を引いて、助けた。

 序でにマリンも引き寄せる。

 

「あ、あたしを……担いで……」

「へ! な、なな、何で⁉︎」

「いい、から」

「分かりました!」

 

 這い蹲るぼたんからの指示に周章するフブキに対し、マリンは嬉々としてぼたんの身体を担ごうと上半身(主に胸部)や下半身を触診のように触れる。

 ぼたんは険しい表情を作りマリンを蔑視する。

 彼女の邪推は間違いなく的中している。

 

「オッら!」

「どおおおおぅ!」

 

 ころねの追撃に絶叫する。

 ギリギリ誰にも命中はしない。

 

「ふざけてないで……早くしろ……‼︎」

「いや、重くて持てないんですって!」

「はあ……⁉︎ オマエ重いとか……ふざ、けんな……!」

「違う違う違う違う‼︎ そうじゃなくて船長の非力さガァァァッッ――‼︎」

 

 マリンの場を弁えないセクハラに怒り心頭なぼたん。

 口調や言葉遣いは怒っているが、なんせころねの能力で血が上手く巡らない。

 強く叱れない。

 

 そんな茶番に水を差すように、ミオの乱射がマリンを狙う。

 何故、一発も当たらないのか不思議だ。

 ビビりが洗練されて避けることに特化しすぎている。

 なのでオマケに逃げ足も速い。もちろん、逃げ足に限ってではあるが。

 

「せ、船長!」

「逃げます!」

 

 マリンが下半身、フブキが上半身を担いで地下牢を飛び出る。

 あれ……よく見れば、ぼたんから紐状の何かが……。

 

 マリンの背後から、紐状の何かに巻かれたトワ、ポルカ、そしておかゆが飛んでくる。

 ぼたんの能力で無理矢理引いて来ているようだ。

 トワは足の負傷で動けず、ポルカは衝撃で意識がない。

 そして、これまた何故か、唯一錠の外れなかったおかゆ。

 ぼたんは盾にするように最後尾におかゆを添える。

 

 そう言えば、ミオは銃を使い、ころねは人を束縛したり増強したり索敵したりな能力だが……。

 おかゆは、能力の片鱗すら見せていない。

 まだ隠し球を蓄えている可能性がある。

 

「ええっと、どっち?」

 

 逃げるフブマリ。

 正面に岐路。

 右が左かの2択。

 

「そこ左……!」

「は、はい!」

 

 ぼたんの号令にフブキが背筋を伸ばして返事する。

 その先に更に曲がり角。

 

「そこ右……!」

「はい」

 

「右」

「はい」

 

「左」

「はい」

 

「左」

「はい」

 

「ちょ、そこ下」

「え、下⁉︎」

「階段、あるでしょうが」

 

 完璧な脳内マッピング。

 特別な関係者でもない上でよくもまあ……。

 連行される際に通ったルートを完コピしているのだろうが。

 

 指示通りに進む。

 マリンは後続なのでのらりくらりと追従するだけだが、フブキはぼたんに萎縮して、非常に一生懸命。

 

 そんなこんなで、船内を疾走した果てに、一味は甲板へ飛び出た。

 バンっ、と扉をぶち破るように開き、飛び出した先――

 

「わぁ……これは偶然……」

「は、何でアンタらいんの、マジで」

 

 船上でバッタリ鉢合わせた。

 そう、三度。

 AZKi、星街すいせい、と。

 

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