ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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21話 威を借るキツネ、夢を見る

 

 ゲームと娯楽の国。

 街には賭場やゲームセンターなど、一生を遊び尽くせる娯楽場が満ち満ちている。

 

 そんな国で育った少女――白上フブキ。

 これは彼女がまだ、幼い頃のお話――。

 

 

 

 生まれた時からゲームに囲まれていた。

 ゲームは得意だ。

 でも、何年もゲームに囲まれていると、することが無くなってくる。

 当然、毎日のように新作が公表され、販売されているが、駄作と傑作は存在する。

 傑作を数多く遊び、フブキは遂に境地に達してしまった。

 

「つまんない」

 

 どのゲームも、同じような内容。

 真新しさを感じる作品がない。

 RPGはストーリーが似ているし、サバイバルゲームは作業ばかりでいつか飽きる。

 FPSは勝つと楽しいけど、ずっと銃を撃つだけで、やっぱり飽きる。

 メタ的なストーリーの作品には衝撃を受けたが、何本もメタストーリーを見ていると、どうしてもパクリ感が否めなくなる。

 

 こうして、ゲームというものに飽きたフブキは、早々に家を飛び出し、外の世界を見たくなった。

 

 真っ先に友達を集める。

 フブキはミオ、おかゆ、ころねを連れて滅多に人の立ち行かない森へと向かった。

 

「ねえフブキぃ、どこ行くのぉ……」

 

 森の奥へ奥へと進むフブキにミオは恐る恐る尋ねる。

 

「探検だよ」

「でも、なんで急に探検なの?」

「冒険したいから」

「えぇ〜」

 

 おかゆの問いにもザックリ答えた。

 本当にやりたいだけ。

 フブキはこの国の全てを知らない。

 フブキの知らない森には、何があるのか。

 これが、フブキに好奇心が芽生えた瞬間だった。

 

「まずはね、この島を隈なく探索するの」

「島全部⁉︎」

「うん!」

 

 大きな島ではないが、子どもが制覇するには相応の時間を必要とする。

 不眠不休なら3ヶ月ほど。

 子どもの体力や必要な休憩時間などを計算すれば、1年かかるかもしれない。

 

 と、思っていたが、想像以上にムラだらけの探検は、3ヶ月ほどで完了した。

 

 毎日のように4人で集まり、森へと立ち入る。

 探して探して、お宝まで発見した。

 

「これって……」

 

 4人が見つけた一つの宝、それは――

 

「ころさんが食べたやつじゃない?」

「能力者になれるやつだ!」

 

 そう、禍々しい果実。

 白と黒の縞模様が刻まれており、まるで食欲を唆らない。

 そんな果実を前に、フブキは眼を光らせていた。

 これが一体、どんな力を秘めているのか。

 また一つ、好奇心が湧き立つ。

 

「食べていい?」

「え、や、やめときなって……」

 

 鮮やかな生物は、毒を持つ危険性が高い。

 直接的な毒でなくても、いつかそれが、毒として身体や心を蝕む日が、来るかもしれない。

 ミオは否定的だった。

 

「食べたら泳げなくなるかもしれんけど、いいの?」

「でも、すごい能力かもしれないじゃん」

 

 能力者であるころねからの確認。

 海のカナヅチを許容してでも食べたいなら、構わないと。

 

「ころねって、いつ食べたんだっけ?」

「ゲーム大会の景品で貰ったんだよね」

「3年くらい前だっけ?」

「そう」

 

 3年前に出場したゲーム大会の優勝賞品。

 優勝して手渡された時は戸惑ったそうだ。

 食べてみるとありえないまずさ。

 しかも、以降海に入れなくなった。

 

 だが、代わりとして得た力は中々だった。

 

「ドキドキの実だよね、確か」

「縄文ドキドキ〜」

「好きだねそれ」

「あはは」

 

 能力の話が出ると必ず飛び出すセリフに苦笑が漏れる。

 

「……」

 

 フブキは果実を手に取り、そっと深呼吸した。

 途端に場が静まりかえる。

 皆に緊張が走り、ぐっと息を呑む。

 

「はぶっ――」

 

 1齧りし咀嚼。

 すぐに2口目、3口目と続け、全てを口に含み飲み込もうと――

 

「うお″お″お″お″お″ッッッッッ!」

「だ、大丈夫⁉︎」

 

 空嘔(からえずき)に苦しむフブキの背に手を乗せ、不安気に眉を寄せるミオ。

 

「おいしくないんだよ」

「そ、そうなの?」

「まっずい!」

 

 唯一事情を知る、能力者のころねは少し嬉しそうだ。

 能力を得られる、と欣然として果実に齧り付くフブキに愉悦を感じていたのだろう。

 

 喉を摩って自身に嚥下を促す。

 不味さをアピールするように舌を出したりもしていた。

 

「それで、何か変わった?」

「…………うーん」

 

 手を握って、感触を確かめたがるが、そもそも能力名すら不明で試し方が分からない。

 

「ころさんの時はどうだったの?」

「こぉね? こぉねん時は食べてから暫くして、急に周囲の人の心音が聞こえて……で、酔っちゃったんだよね……」

 

 当時を思い出すように苦笑して頰を掻く。

 当初はそれがトラウマとなって、人の心音に過剰反応を示していたが、最近は短時間であれば使えるようになった。

 トラウマに関係なく、大量の心拍を感じ取ると、頭がおかしくなる。

 だから、その制御は上手くならなくては。

 

「そうなの? でも、今はたまーに使ってるよね?」

「まあ、一度に大勢は難しいけど、1人のとかなら」

 

 1人と言いつつ、ころねは右手をおかゆの心臓付近に当てた。

 心拍数が高い。

 おかゆはそっと視線を逸らした。

 

「でもじゃあ、私もすぐに何か分かるよね!」

「多分」

 

 フブキは前向きに破顔した。

 それに対するころねの相槌は、実に頼りないものだが。

 

「それでそれで、そっちの宝箱は?」

 

 そう。

 冒険の末に発見した宝箱。

 果実とは別の場所に隠されていたごく普通の宝箱。

 

「いざ、オープン」

 

 鍵もなく、勝手に泥棒する。

 そんな宝箱の中身は――

 

「わぁ……」

「キレイだねぇ」

「キラキラ……」

「おぉ……」

 

 少量ではあるが、宝石が入っていた。

 親指サイズほどの宝石が、いくつか。

 どれも違う宝石だ。

 正直、ダイヤモンド以外はわからない。

 しかも、宝石の下に、また別の宝が敷いてある。

 

「これ……紙?」

「宝の地図とか⁉︎」

「ええ!」

 

 古びて焦げたような茶色を帯びた紙を、意気揚々と手に取り広げる。

 紙面には、地図なんてものは描かれておらず、代わりに文章が短く綴られていた。

 

「何コレ?」

「さあ……」

 

 文字は読める。

 難しい漢字はない。

 

『この文書を見つけた者に私の夢を託したい。4大秘宝を集め、いつの日か私の下へ現れてほしい。その時は、想像を絶する世界へ招待することを約束する』

 

 たったコレだけ。

 『4大秘宝』の部分は何重書きでもしたのか、やけに太い。

 

「4大秘宝ってなんだろう?」

「なんだろうね」

 

 フブキ以外はあまり気にしていない。

 成果が結局僅かな宝石だけ。

 それで片付けようとしていた。

 

 おかしい。

 どうして?

 なんでこんなに、ワクワクする事が記されているのに……。

 どうしてみんなは、つまらなそうなの?

 ここには、世界に存在する不思議が証明されている。

 世界の広さと楽しさを、暗示している。

 

「ねえ、もう少し大きくなったら、みんなで海に出ようよ」

「ええ⁉︎」

「う、海?」

「海は……」

 

 大声で仰天するミオと、目をパチクリさせるおかゆ。

 ころねは、能力者である観点から躊躇う。

 

「漫画で読んだけど、海賊って楽しそうじゃない?」

「しかも海賊ぅ⁉︎」

 

 ミオはひっくり返りそうだった。

 

「捕まっちゃうよぉ……」

「人の物を奪ったりしなければ大丈夫だって!」

「で、でもでも、怖いとことか、人とか……」

「ころねがいるじゃん!」

「――え、こぉね⁉︎」

 

 消極的、というか、怯えている。

 ころねとおかゆは傍目に見ている。

 なんで?

 どうしてそんなに、無関心なの?

 

「確かにころさんは強いけど、僕やミオちゃん、フブキちゃんも強くないよ?」

「寧ろ弱いよぉ……」

「…………」

 

 おかゆとミオからの何気ない攻撃。

 確かに、腕相撲で3人に勝てた事がない。

 皆直接口にはしないが、フブキが一番弱いと思っているはずだ。

 フブキもその通りだと思う。

 全く圧のない言葉に気圧され、フブキは押し黙る。

 だが、数秒前を思い出した。

 

「――大丈夫! 私だって能力手に入れたんだから!」

 

 鼻高々と胸を張る。

 まだよく分かってないけど。

 

「だから、ね?」

「うーん……」

「ま、まあ、大きくなったらだし、今決めなくてもいいんじゃない?」

「そうだよ、もっとやりたい事、見つかるかもだし」

 

 フブキの押しから逃げるように話題が切り上げられていく。

 そんなに……いやなの……?

 

 フブキは少し……えっと、なんだろう、この気持ち。

 なんかこう……モヤモヤするけど、怒ってはなくて、でも寂しくて……。

 

「――! じゃあ、最後にお宝見つけた記念で写真撮っとこうよ」

「「「……?」」」

「ほらほら、こっちで撮ろ」

 

 カメラを持ってきて、みんなをある場所へ引っ張る。

 見晴らしのいい砂浜だ。

 真昼の砂浜は、砂も海も光を反射して眩しい。

 ゲーム画面の光とは全く違う眩しさ。

 

 いつか、あの海の向こうへ。

 みんなで。

 きっと――。

 

「いくよ――」

 

 カメラをセットして、急いで枠の中へ。

 ミオに抱きつくように。

 おかゆところねも仲良くくっ付いている。

 

 パシャっ。

 

 4人の眩しい笑顔が、ここに記録された。

 

 





 どうも作者です。
 今回は過去回で、おかゆんとフブキのお話はお預け。
 ですが、次回はそこですよ。

 そしてポンと出されるころさんの能力。
 縄文ドキドキでした。
 原作からだとバラバラとか似合うと思いますけど、これは解釈不一致の人も多そう。

 それではまた次回。
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