ゲームと娯楽の国。
街には賭場やゲームセンターなど、一生を遊び尽くせる娯楽場が満ち満ちている。
そんな国で育った少女――白上フブキ。
これは彼女がまだ、幼い頃のお話――。
生まれた時からゲームに囲まれていた。
ゲームは得意だ。
でも、何年もゲームに囲まれていると、することが無くなってくる。
当然、毎日のように新作が公表され、販売されているが、駄作と傑作は存在する。
傑作を数多く遊び、フブキは遂に境地に達してしまった。
「つまんない」
どのゲームも、同じような内容。
真新しさを感じる作品がない。
RPGはストーリーが似ているし、サバイバルゲームは作業ばかりでいつか飽きる。
FPSは勝つと楽しいけど、ずっと銃を撃つだけで、やっぱり飽きる。
メタ的なストーリーの作品には衝撃を受けたが、何本もメタストーリーを見ていると、どうしてもパクリ感が否めなくなる。
こうして、ゲームというものに飽きたフブキは、早々に家を飛び出し、外の世界を見たくなった。
真っ先に友達を集める。
フブキはミオ、おかゆ、ころねを連れて滅多に人の立ち行かない森へと向かった。
「ねえフブキぃ、どこ行くのぉ……」
森の奥へ奥へと進むフブキにミオは恐る恐る尋ねる。
「探検だよ」
「でも、なんで急に探検なの?」
「冒険したいから」
「えぇ〜」
おかゆの問いにもザックリ答えた。
本当にやりたいだけ。
フブキはこの国の全てを知らない。
フブキの知らない森には、何があるのか。
これが、フブキに好奇心が芽生えた瞬間だった。
「まずはね、この島を隈なく探索するの」
「島全部⁉︎」
「うん!」
大きな島ではないが、子どもが制覇するには相応の時間を必要とする。
不眠不休なら3ヶ月ほど。
子どもの体力や必要な休憩時間などを計算すれば、1年かかるかもしれない。
と、思っていたが、想像以上にムラだらけの探検は、3ヶ月ほどで完了した。
毎日のように4人で集まり、森へと立ち入る。
探して探して、お宝まで発見した。
「これって……」
4人が見つけた一つの宝、それは――
「ころさんが食べたやつじゃない?」
「能力者になれるやつだ!」
そう、禍々しい果実。
白と黒の縞模様が刻まれており、まるで食欲を唆らない。
そんな果実を前に、フブキは眼を光らせていた。
これが一体、どんな力を秘めているのか。
また一つ、好奇心が湧き立つ。
「食べていい?」
「え、や、やめときなって……」
鮮やかな生物は、毒を持つ危険性が高い。
直接的な毒でなくても、いつかそれが、毒として身体や心を蝕む日が、来るかもしれない。
ミオは否定的だった。
「食べたら泳げなくなるかもしれんけど、いいの?」
「でも、すごい能力かもしれないじゃん」
能力者であるころねからの確認。
海のカナヅチを許容してでも食べたいなら、構わないと。
「ころねって、いつ食べたんだっけ?」
「ゲーム大会の景品で貰ったんだよね」
「3年くらい前だっけ?」
「そう」
3年前に出場したゲーム大会の優勝賞品。
優勝して手渡された時は戸惑ったそうだ。
食べてみるとありえないまずさ。
しかも、以降海に入れなくなった。
だが、代わりとして得た力は中々だった。
「ドキドキの実だよね、確か」
「縄文ドキドキ〜」
「好きだねそれ」
「あはは」
能力の話が出ると必ず飛び出すセリフに苦笑が漏れる。
「……」
フブキは果実を手に取り、そっと深呼吸した。
途端に場が静まりかえる。
皆に緊張が走り、ぐっと息を呑む。
「はぶっ――」
1齧りし咀嚼。
すぐに2口目、3口目と続け、全てを口に含み飲み込もうと――
「うお″お″お″お″お″ッッッッッ!」
「だ、大丈夫⁉︎」
「おいしくないんだよ」
「そ、そうなの?」
「まっずい!」
唯一事情を知る、能力者のころねは少し嬉しそうだ。
能力を得られる、と欣然として果実に齧り付くフブキに愉悦を感じていたのだろう。
喉を摩って自身に嚥下を促す。
不味さをアピールするように舌を出したりもしていた。
「それで、何か変わった?」
「…………うーん」
手を握って、感触を確かめたがるが、そもそも能力名すら不明で試し方が分からない。
「ころさんの時はどうだったの?」
「こぉね? こぉねん時は食べてから暫くして、急に周囲の人の心音が聞こえて……で、酔っちゃったんだよね……」
当時を思い出すように苦笑して頰を掻く。
当初はそれがトラウマとなって、人の心音に過剰反応を示していたが、最近は短時間であれば使えるようになった。
トラウマに関係なく、大量の心拍を感じ取ると、頭がおかしくなる。
だから、その制御は上手くならなくては。
「そうなの? でも、今はたまーに使ってるよね?」
「まあ、一度に大勢は難しいけど、1人のとかなら」
1人と言いつつ、ころねは右手をおかゆの心臓付近に当てた。
心拍数が高い。
おかゆはそっと視線を逸らした。
「でもじゃあ、私もすぐに何か分かるよね!」
「多分」
フブキは前向きに破顔した。
それに対するころねの相槌は、実に頼りないものだが。
「それでそれで、そっちの宝箱は?」
そう。
冒険の末に発見した宝箱。
果実とは別の場所に隠されていたごく普通の宝箱。
「いざ、オープン」
鍵もなく、勝手に泥棒する。
そんな宝箱の中身は――
「わぁ……」
「キレイだねぇ」
「キラキラ……」
「おぉ……」
少量ではあるが、宝石が入っていた。
親指サイズほどの宝石が、いくつか。
どれも違う宝石だ。
正直、ダイヤモンド以外はわからない。
しかも、宝石の下に、また別の宝が敷いてある。
「これ……紙?」
「宝の地図とか⁉︎」
「ええ!」
古びて焦げたような茶色を帯びた紙を、意気揚々と手に取り広げる。
紙面には、地図なんてものは描かれておらず、代わりに文章が短く綴られていた。
「何コレ?」
「さあ……」
文字は読める。
難しい漢字はない。
『この文書を見つけた者に私の夢を託したい。4大秘宝を集め、いつの日か私の下へ現れてほしい。その時は、想像を絶する世界へ招待することを約束する』
たったコレだけ。
『4大秘宝』の部分は何重書きでもしたのか、やけに太い。
「4大秘宝ってなんだろう?」
「なんだろうね」
フブキ以外はあまり気にしていない。
成果が結局僅かな宝石だけ。
それで片付けようとしていた。
おかしい。
どうして?
なんでこんなに、ワクワクする事が記されているのに……。
どうしてみんなは、つまらなそうなの?
ここには、世界に存在する不思議が証明されている。
世界の広さと楽しさを、暗示している。
「ねえ、もう少し大きくなったら、みんなで海に出ようよ」
「ええ⁉︎」
「う、海?」
「海は……」
大声で仰天するミオと、目をパチクリさせるおかゆ。
ころねは、能力者である観点から躊躇う。
「漫画で読んだけど、海賊って楽しそうじゃない?」
「しかも海賊ぅ⁉︎」
ミオはひっくり返りそうだった。
「捕まっちゃうよぉ……」
「人の物を奪ったりしなければ大丈夫だって!」
「で、でもでも、怖いとことか、人とか……」
「ころねがいるじゃん!」
「――え、こぉね⁉︎」
消極的、というか、怯えている。
ころねとおかゆは傍目に見ている。
なんで?
どうしてそんなに、無関心なの?
「確かにころさんは強いけど、僕やミオちゃん、フブキちゃんも強くないよ?」
「寧ろ弱いよぉ……」
「…………」
おかゆとミオからの何気ない攻撃。
確かに、腕相撲で3人に勝てた事がない。
皆直接口にはしないが、フブキが一番弱いと思っているはずだ。
フブキもその通りだと思う。
全く圧のない言葉に気圧され、フブキは押し黙る。
だが、数秒前を思い出した。
「――大丈夫! 私だって能力手に入れたんだから!」
鼻高々と胸を張る。
まだよく分かってないけど。
「だから、ね?」
「うーん……」
「ま、まあ、大きくなったらだし、今決めなくてもいいんじゃない?」
「そうだよ、もっとやりたい事、見つかるかもだし」
フブキの押しから逃げるように話題が切り上げられていく。
そんなに……いやなの……?
フブキは少し……えっと、なんだろう、この気持ち。
なんかこう……モヤモヤするけど、怒ってはなくて、でも寂しくて……。
「――! じゃあ、最後にお宝見つけた記念で写真撮っとこうよ」
「「「……?」」」
「ほらほら、こっちで撮ろ」
カメラを持ってきて、みんなをある場所へ引っ張る。
見晴らしのいい砂浜だ。
真昼の砂浜は、砂も海も光を反射して眩しい。
ゲーム画面の光とは全く違う眩しさ。
いつか、あの海の向こうへ。
みんなで。
きっと――。
「いくよ――」
カメラをセットして、急いで枠の中へ。
ミオに抱きつくように。
おかゆところねも仲良くくっ付いている。
パシャっ。
4人の眩しい笑顔が、ここに記録された。
どうも作者です。
今回は過去回で、おかゆんとフブキのお話はお預け。
ですが、次回はそこですよ。
そしてポンと出されるころさんの能力。
縄文ドキドキでした。
原作からだとバラバラとか似合うと思いますけど、これは解釈不一致の人も多そう。
それではまた次回。