ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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26話 灼熱の浜

 

 砂浜をサクサクと歩く。

 漂着したゴミが散乱している。

 そんな漂着物に紛れて、時折この島で投棄されたと思われる機材も目に付く。

 

 ふらふらと浜を散策し、他の船が停泊していないかを確認するぼたん。

 とは言え、島を一周する暇はない。

 4分の1ほどで引き返す予定だ。

 

 浜の4分1の安全が確保されれば十分だろう。

 

 無言で進む。

 波風と木の騒めく音に耳を傾けて。

 

 ……。

 船長今頃、なにしてっかな。

 無事かな。

 逸れて1週間くらい経つし……。

 ちょっと心配だ。

 あたしみたく捕まったりしてないといいけど……。

 

 ルーナ姫、元気かな……。

 久々に、挨拶くらいしたかったんだけどなあ。

 あの子らはどうしてんだろうか。

 今の騎士団は、どうなってんだろうか。

 

「…………」

 

 色々想いに耽っていたが、一つの停泊船を発見し、現実へ引き戻される。

 キョロキョロと周囲に人影を探すが無し。

 小走りに駆け寄り、船の構造を確認。

 小型だが強力なエンジンが搭載されているため、マリン号より最大船速は速いだろう。

 軽く中を物色してみる。

 航海用の荷物が殆ど積まれてない。

 冒険などではなく、この島を目的地とし一往復のみの使用を予定した船だ。

 

「おい、何してんだおめぇ」

「――――」

 

 背後から突如、脅すように声をかけられた。

 だが、不思議と怖くない。

 ぼたんのメンタルが強いわけではなく、相手の脅迫が弱いから。

 原因は声だろう。

 トーンを下げて警戒心を高めた声でもやや音が高く、微妙に滑舌が悪い。

 

 ぼたんは敵対意識を消し、争いを避けるため両手を上げる。

 早速降参するようなポーズを取りゆっくり振り返った。

 

「すんません、泥棒とかじゃないです。無人島に船があって気になったんで」

「はっ、こんな島で何してんだよ」

「それはそっくりそのまま返します」

 

 少し離れた位置にその人はいる。

 この島には似つかわしくない格好。

 桜のような服装。

 探索でもしていたのか、全身に草木や泥がついているが、その癖に手ぶら。

 

「じゃあいいにぇ。とにかく降りろ」

「……? わかりました」

 

 珍妙な語尾に首を傾げつつも、冷静に指示に従い刺激しないよう対応する。

 手を上げたままゆっくり小型船を降りる。

 背後にその人も着いてくるので、降りてから更に森の方へ少し距離を取る。

 

 そして――

 

「ソルポニエンテ」

 

 まるで詠唱のような単語。

 滑舌の悪さも相まって上手く聞き取れない。

 だが不穏な空気と異様な熱気に当てられ、ぼたんは振り返る。

 やけに熱いと思ったら、熱気を放つ真っ赤な球体が直近からぼたんを照らしていた。

 

 ああ……熱い、熱い、熱すぎる。

 数秒で全身が汗塗れ。

 体温上昇で急激に体力が奪われてゆく。

 

 本日は猛暑。

 

「その気はないって……! あっちぃ……」

 

 突如正体不明の能力で襲いくる。

 ぼたんは冷静に反撃はせず、敵意の無いことを訴える。

 

「うっせぇ! この島を誰かが彷徨いてんのは知ってんだ」

 

 桜少女を中心に炎が発生する。

 敵意を消しても、警戒を解いてくれない。

 

「話聞けって! あたしはついさっきここへ来たんだ!」

「何しに」

「航海の休憩に寄ったんだって!」

「ここにする意味が分かんにぇ」

「それはあたしが今乗ってる船が――海賊船だからだよ」

「――――」

 

 飛ばされたり、広がってくる炎を汗水垂らして回避するぼたん。

 まるで聞く耳を持たず、訴えも虚しく蒸発するよう。

 そんな時、ピコっと少女が何かに反応した。

 ぼたんも口にしてハッとする。

 海賊は悪が共通認識のはず。失言だったか……。

 

「……船長の名前は?」

「あ? な……じゃなくて、宝鐘マリン」

 

 もう2度、反応した。

 目の色が変わり、愛らしく光った。

 

「マリンたん――⁉︎」

「……は?」

 

 海賊にも関わらず、ときめいたような反応。

 想定の斜め上を行く様相に虚を突かれたぼたんは唖然として一瞬動きを止めた。

 気が付けば、熱気も止んでいた。

 

「おめえ、マリンたんの仲間か!」

「いや……厳密には違うけど、まあそう」

「そうか、それならそうと早く言えよー」

「いや……もういいよ」

 

 マリンの名前を出した途端態度が急変。

 こいつは恐らくあれだ、アホだ。

 

「マリンさんのとこ連れてこうか?」

「ええ――! あ、いやいや、そうしたいのは山々だけどにぇ、そんな暇はにぇんだよ」

「そうっすか」

「うん、だからマリンたんに宜しく伝えといてほしいにぇ」

「……? ま、分かりました」

 

 己の欲望を押し切り、少女は自身に課せられた任務を優先した。

 軽く手を上げて断られたが、何を宜しく伝えればいいのか。

 元気でやってたって?

 まあ何にせよ、無事片付いてよかった。

 キリもいいので、ぼたんはここを境に引き返す。

 少女もまた、森の方へと歩き出した。

 

「あ、そうだ!」

「――ん?」

 

 ぼたんの突然の発声に少女は過敏に反応した。

 

「名前聞いてなかった」

「おお、そうだった! みこは、『さくらみこ』! 宜しくにぇ」

 

 最後に大きく手を振って森の奥へと姿を消した。

 ぼたんも軽く手を上げて、元来た道を引き返す。

 

 頭は悪いが、人は悪くなさそうだ。

 しかし、森の中に何の用だ?

 マリンに聞けば分かるだろうか。

 ってか、何だあの能力。

 汗のベトベトが残っていて気持ち悪い。

 戻ったらシャワー浴びさせてもらおう。

 

 にしてもマリンさん、人望あるなぁ。

 船長やルーナ姫もある方だと思ったけど、マリンさんは桁違いだな。

 

 などと考えながらぼたんはマリン号へと帰った。

 

 





 皆様どうも作者です。
 投稿が少し遅かった理由は特にありません。

 今回でみこちの再登場ですね。
 みこちはめちゃくちゃ強いのでね、今後の活躍があれば期待できます。

 それではまた次回。
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