上空でサイコキラーな笑みを浮かべるのは、星街すいせい。
浮遊するブロックの上に座っている。
明らかな敵意を持ってこの場に現れている。
一見して分かる。
馴れ合いはできない。
「めっちゃ強い能力者ってあんた?」
すいせいがみこを睥睨し指差す。
が、3人が近すぎて、誰を指しているか遠目には判別できない。
「いやいや、そんな強くないっすよ」
「え、もしかして私の事⁉︎」
ポルカとマリンが反応した。
照れながら頭を掻く乙女チックな素振り。
すいせいは少しイラッとしたように舌打ちした。
「誰、アンタら、ウザいんだけど」
めっちゃ口悪っ!
マリンは引き攣った笑みを残して数歩下がる。
ポルカは純粋に少し落ち込む。
しかし……これはつまり。
「みこの事?」
めっちゃ強い能力者は、みこである。
それを意味する。
だが、当のみこは首を傾げ難色を示す。
「みこち、能力者なの? どんな能力? 強い?」
マリンがみこの背後から質問攻めにする。
すいせいの鋭い眼光……サイコアイに当てられ萎縮して、みこの後ろに隠れているのだ。
「能力なんてにぇよ、みこは果実すら見たこともにぇー」
全否定を受けた。
「あと、みこに隠れんな!」
ついでに前に引っ張り、突き出された。
まるでエサを差し出すように。
「ちょっとみこち! 船長はね、ザコなの! 分かる⁉︎」
「はあ⁉︎ おめえ海賊だろ! みこの方が弱ぇんだからおめぇがいけよ!」
「海賊だから強いとはなんないの!」
「力とか無くても海賊なら度胸ぐらい持ってろや!」
「うるっっせぇっ!」
「おめえがうるせぇぇ!」
すいせいもポルカもそっちのけで、弱さを張り合う2人の壮絶な戦い。
とにかく煩い。
そして、アホらしい。
「アンタ、能力者じゃないの?」
すいせいが今一度みこに問いかける。
何か期待した声と顔で。
「能力者どころか、その果実すら見た事ねぇっつってんだろ」
「そっか、なら……」
明後日の方向を向き、ブロックを動かそうとする。
しかし……
「ちょっ、何で……」
その場から動かない。
すいせいの体に、何やら異変が起きている様子。
「…………分かったよ!」
再度方向転換し、もう一度向き直る。
そして今度は、マリンとポルカそれぞれに指すと、
「はぁ……アンタら、能力者なんでしょ」
イヤイヤ尋ねる。
実に面倒臭そうにため息をつき、明からさまに落胆する。
「それがどうした?」
ポルカは肯定的に返す。
マリンもそっと頷いた。
「はあ⁉︎ おめえ、能力者のくせにみこに戦わせようとしてたんか!」
「だーかーらー! マリンちゃんの能力はね、大ハズレなの!」
「船長はそう言うけど、ポルカは使い方次第だと思うよ、確かに強いとは言い難いけど」
「ほら、ポルカもこう言ってんにぇ」
仲間もみこの意見に賛成。
反論の余地はなしだ。
「マジで最悪……コキ使いやがって」
すいせいは悪態をついて立ち上がり、大きく伸びをする。
「秒で終わらす」
天から大量のブロックが降り注ぐ。
まるで、テトリスのよう。
「やっべ!」
「ノォー!」
「ブロックボックス」
ブロックが前後左右、そして上から3人を包囲する。
巨大なブロックに抗う術などない。
「複製」
パシっと、ポルカが一つのブロックに触れ、全く同じものを真上に現出して放った。
潰されたらしまいだ、せめて上はカバーしなければならない。
しかし……重い。
質量が大きすぎて、複製も一つ限り。
同じ場所に追加では降って来ないが、完全には跳ね返しきれない。
既に前後左右は閉ざされ、間も無く天井も出来上がり。
暗闇が近づく。
「ポルカ……」
「ヤバい、2人とも……何か考えて……」
必死に抵抗するポルカは、頭がうまく回らない。
打開策なんて、マリンとみこに生み出せるだろうか?
「殺す気はないってのは分かるけど、だからって話よ」
マリンはいち早く気付いた。
しかし、仰る通り。
殺意はないにしろ、身動きを封じようとしている。
天井が完成すれば終わりだ。
「おめえも能力者だろ、何とかしろよ」
「ポルカはああ言ってくれたけど、マジでここで打開できる応用はないって」
このブロックさえ除去できれば、すいせいを地面に引き摺り下ろす事は可能だが。
その前提の、ブロック除去が不可能。
もし、可能性があるとすれば……。
「みこち、悪魔の実が有ったら、食べる?」
「……能力の話? 何だにぇ急に」
「答えて、食べる?」
「……物による、にぇ」
マリンはその解答を聞いて、宝箱を取り出す。
がっと勢いよく開き、中身を見せる。
黒と赤の禍々しくも強力そうな果実が露わになる。
正しく悪魔のような見た目。
「まさかこれ……!」
「悪魔の実。これ食べて!」
初期装備をもう使い切るのは怖いが、手段がない。
ここで全滅はもっと恐ろしい。
「はあ⁉︎ これ何の能力だよ」
「分かんない、けど、これしかもう賭けれるもんがないの」
「言っとくけど、おめえの仲間には……」
「なんなくていいから! 自分と船長らを助けて!」
「……」
「お願い!」
宝箱を差し出す。
換金なんて考えてた自分がバカだった。
これは、悪魔の実。
食ってなんぼの代物だ。
マリンもポルカも、食べられない。
「…………ハズレの能力だったら一生恨むど!」
指が陥没するほどの力で果実を掴みバクっと齧り付く。
赤黒い果汁が跳ね、吐き気を催す味が全身を襲う。
思いっきりえずきながら全てを飲み込む。
アイドルらしからぬ汚さ。
だが、この世界のみこはアイドルではない。
生こそ全て。
清純さなど捨て置け。
能力は、食べればその性質が分かる。
マリンも、一瞬ではなかったが、実は数十秒後には大まかな力は把握できた。
容量の悪くないみこなら、すぐに使いこなして見せるさ。
「…………」
どうだ!……?
「シュジョウオニエ」
地面に、巨大な赤い円陣が形成される。
赤く輝き、掛け声に合わせて火柱が昇る。
さくらみこ、能力獲得。
悪魔の実。
「みこち……すげぇ!」
「なんだよ! 大当たりかよ!」
「今食べたのは……ニエニエの実」
「ニエニエ……煮えるってか?」
炎を使うみこらしさ抜群、且つ純粋な強さ。
すいせいも、彼女らしさは満載だが、みこの方が何故かズバ抜けてマッチして見える。
マリンも決して不適ではない。
ポルカは名前だけで、効果は完全にポルカに起因するものでない。
「全員能力者になった……!」
すいせいが危機感を露わに、距離を取る。
より高く昇り、誰も届かぬような高所からブロックを落とす算段だ。
「すいちゃん! 降りてきなさい!」
マリンが右手を広げ、すいせいに怒鳴る。
右手からは何も発生しないが、すいせいの乗るブロックに一つの錘が生成された。
それは、サイズによっては1トンを超える重量。
そう、船には必須のアイテム、錨。
ブロックの真下に非常に短いチェーンで繋がれ、無理矢理ブロックを落下させる。
「ヤバい!」
ブロックを乗り捨てて、別のブロックへ。
それも落とされまた別のブロックへ。
それを数度繰り返す。
そんなある時、
「は……は……ぶぇっくしゅ!」
みこが不意に大きなくしゃみをした。
「おお、くしゃみ助かる」
「助かるってな……っくしゅ!」
「はい助かる!」
ツッコミかけたポルカまでも連鎖した。
みことポルカが鼻を啜り、擦る。
「何か、鼻が……」
「確かに……」
マリンも感じ取り、何となく呼吸器官を覆った。
数秒後、次第に視界が薄れ始めた。
空にいるすいせいが霞んで見えなくなる。
「何だこれ、霧……じゃねえな」
「これは……粉?」
「これじゃ、逃げられるにぇ」
「待って、火はダメだ、爆発するかもしれん」
すいせいを捕らえようと無闇に能力を放ちかけたみこをポルカが止めた。
これが粉なら、粉塵爆発の危険もある。
細かい原理は知らないが、粉のそばで火や火花は危険だ。
「ちょっ、何?」
「一旦帰るよ」
二つの声が、霞んだ視界の先から聞こえる。
一つはすいせい。
もう一つは……。
ポルカもみこも知らない。
「AZKi先輩?」
マリンは記憶に一致する声があった。
「……名前、知ってるんだ。ふふ、またね」
「ちょっと待って! アタシまだ……」
「ほら、粉もそろそろ消えるから」
粉塵の中で、2人は言い合い、静かになる。
やがて視界が晴れるが、そこにはもう、誰もいない。
固まった3人がいて、美しいエリートチェリーが並んで、神社があって。
……一難は、去っていったようだ。
皆様どうも、作者です。
早速敵対勢力らしきメンバー1人との遭遇でした。
しかもラストはあずきち?まで出てきて……。
果たして彼女たちはなんて能力なのでしょうか?
まあ、分かりやすいですけどね。
さて、今回はみこちが「ニエニエの実」を獲得しました。
煮える、とは言い難い火力でしたが、炎を使うみこちらしい能力に仕上がったと思ってます。
どのメンバーよりも、いい出来だと思ってます。
名前にしても、効果にしても。
で、みこちが存在する能力を使うなら、ですが……。
問答無用で「マグマグの実」一択ですね。
これは解釈一致というか、想像通りなのでは?
てなわけで、また次回。