ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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44話 あとふたり

 

 いろはが外出して数分後、フブキが帰ってきた。

 

「あ、フブキちゃん、おかえり」

「うん、ただいま――」

 

 喧嘩別れのようになり、言動に細心の注意を払ったおかゆだが、フブキは毅然としていて拍子抜けする。

 ポカンと口を開けてフブキを見つめるおかゆの側を通り過ぎて、フブキはマリンの下へ。

 その隙に、あくあがおかゆの下へ。

 

「船長、いろはさんが早く帰れって」

「――はい?」

「「――?????」」

 

 マリンへの開口一番、信じ難い言葉が。

 誰もが耳を疑い、正常に言葉を処理できなかった。

 

「信じられないとは思いますけど、ケーキ食べたら帰れって」

「いやいやいや……さっきまであんな顔してたいろはが、そんなこと言う訳ないでしょって」

「船長が執拗に仲間入りをせがむから」

「え…………嫌われた?」

「100理くらいある」

「そ、そんなぁ〜……」

 

 仲間を信じないとまでは言わないが、それは到底信じ難い。

 本人に確認を取るまでは認めない。

 そんな意思を持ちたかったが、一味満場一致の意見に涙ぐむ。

 ……かと思いきや、フブキだけは異議があるようだ。

 

「んーん、多分違う。直感だけど、嫌ってる感じではなかったよ」

「そう⁉︎」

「あんま船長に希望を与えんほうが……」

「んー、でもフブキちゃんの勘はよく当たるし」

「へ――?」

「そうなの?」

 

 みこの疑問とフブキの呆けた声が重なった。

 おかゆからの評価はあるが、自覚はないらしい。

 しかし、恐らく裏打ちできるだけの事例が過去にあったのだろう。

 

 フブキは照れ臭そうに鼻を掻いて視線を逸らした。

 

 どちらかと言えば、マリンは好かれている、と伝えようとしたが思い止まった。

 それこそ、根拠無く伝えて、マリンが再度勧誘に固執すれば迷惑極まりない。

 

「でも、どうする? この島にはあと2日はいる予定だけど」

 

 現在4月19日。

 丁度15時を回った頃。

 こよりに地図をもらった日が15日。

 一週間くらいはそこにいる、と言ったため最短のリミットが22日。

 襲撃予定日は21日。

 ここからアルメンドラまで半日と考えると、20日の夜には出港したい。

 今日と明日の大半をこの地で過ごしたい。

 

「そうですね……折角ですが、残りの時間は船とその周辺で過ごしましょう」

 

 先までの涙を忘れたように、マリンがまともな提案をする。

 切り替えの速さももう慣れた一味は、賛成を示して頷く。

 

「まあ何にせよ、ケーキを放置して帰れませんし、いろはが戻るまではここに居ましょう」

「そうだね」

「うぃー」

 

 そのまま主人の居ない家で寛ぎはじめる面々。

 あくあは少々先行きが不安になり、おかゆを物憂げに見つめた。

 やはり誰だって戸惑う光景だ。おかゆだって最初は驚いた。

 賊なのに、とても優しくて穏やかで……。

 

 おかゆは微笑んで、船長に歩み寄った。

 

「――?」

「船長、あくあを連れて行きたいです」

「……」

 

 即断のマリンが、悩むように口を閉ざす貴重な場面。

 誰もが感情を共有できる。

 マリンは、フブキに視線を向けた。

 直ぐに目が合う。

 快くは思ってないが、その決定権は自身にない。

 この一味はマリンのもので、決めるのはマリン。

 いつの間に反発する自己との和解をしたのかは謎だが、フブキはどっちでも、と表情で返し、明後日の方向を向いた。

 

「いいですよ」

「ぇ…………」

「だって、あくあ」

「これであくたんは正式に娘だね」

「トワたちは娘なんか」

「いやだわー」

「みこはそれもいいと思うけど」

 

 歓迎……されているのか?

 少なくとも、マリンとおかゆは嬉しそう……。

 

「えへへ……」

 

 おかゆが笑ってるならいっか!

 

 あくあは特有の陰キャ笑いを浮かべた。

 

 湊あくあ、加入。

 

 これで、マリンを含め一味は計7名。

 ぼちぼちとメンバーも増え始め、将来の洗脳討伐戦や、アルメンドラ戦への準備が整ってきた。

 しかも、洗脳討伐戦に関しては、キャンディータウンとまつり探検隊のバックアップもある。

 中々順調。

 

「それじゃ、いろはが戻るまで時間もありそうだし、あくたんへの状況報告も含めた作戦会議といきますか」

「「おお!」」

 

 2日後の戦を前に身の引き締まる掛け声。

 

 一味はあくあに洗脳を含めた今の事情を説明した後、いろはが戻るまで何度も緻密に作戦を練り直し、アルメンドラ襲撃作戦を構築させた。

 

 

 

 30分後、ケーキの焼き上がりに合わせていろはが帰宅する。

 何故か重ね着をして寒さ対策をしていた。

 出発時には着ていなかった。

 マリンやポルカは気が気で仕方ないが、簡単に一蹴されるか誤魔化されるのがオチだ。深くは聞かない。いや、そもそも聞かない。

 

「風真いろはー、ケーキ焼けたっぽいですよ」

「放置してってすみません、すぐ準備しますね」

 

 フブキからの電報が嘘のように接する2人。

 やはり信じ難いが、直接言われると確実に傷つくので、やっぱり自分からは聞かない事にする。

 

 いろはが上着をハンガーにかけ、刀を棚にしまう。

 そして水道で丁寧に手を洗い、ケーキにデコレーションを始めた。

 どうやら、イチゴと生クリームのホールケーキになるようだ。

 

 いろはの怒りに触れぬよう、適度に賑やかに談笑して待つ事30分。

 

「お待たせ、できたでござるよ」

 

 いろはが食卓にショートケーキを7つ並べた。

 ホイップの乗り方は不規則だが、イチゴは等分後に盛り付けた可能性が高い。

 それぞれが席についたり、卓前に立ったり。

 その中で、みことマリンは吟味するようにまじまじと各ケーキを見つめる。

 

「全部同じでござるよ?」

「いーや!」

「どう見てもコレがおっきいにぇ!」

 

 みことマリンは同じ結論に至り、同じ皿に手をかけた。

 ピタッと手が重なる。

 

「みこち――」

「マリンたん――」

 

 視線を合わせ、鋭く火花を散らせた。

 

「みこち、こっちの方がイチゴが大きいんじゃない?」

「マリンたんマリンたん、こっちのはホイップが多く見えるにぇ」

「じゃあみこちがそれにすればー?」

「マリンたんこそ」

 

 低レベルな争いが始まる。

 ポルカやトワ、おかゆはその熾烈な争いを横目に見ながら、2人が目もくれない憐れなケーキたちをそれぞれ取った。

 

「もう、そんな事で喧嘩しない。ほら貸して」

「「ああ!」」

 

 2人の小競り合いを仲裁するようにいろはが割り込み、誰も手に取らなかった3つのケーキと、火種の1つを1箇所に纏める。

 そして、秤を持ち出し、皿ごとその上に乗せる。

 420g。

 乗せる皿を変える(皿は全て同じ)。

 420g。

 もう一つも確認。

 420g……。

 最後の一つ……。

 420g…………。

 

「ほら、全部同じ質量」

「……うそ、じゃん」

 

 誤差なく、全て一律420g。

 人間業ではない。

 

「几帳面すぎ――」

「にぇ……」

 

 驚愕の事実。

 小さな事だが驚きのあまり言葉を失う。

 

「分かったら喧嘩しない」

 

 いろはは皿を並べ直し、秤を棚にしまった。

 全て同じ量だと分かれば、もはや取り合う意味はない。

 最も近くのケーキを皆それぞれ選んだ。

 

「「いただきまーす」」

 

 仲良く一味全員で合掌。

 早速一口目――

 

「「うっんまっ‼︎」」

 

 ケーキ屋のケーキより美味しい。

 コレが焼きたての味――!

 頬っぺたが蕩け落ちそうな美味さ。

 スポンジは果てしなくソフトで生クリームは熱でほんのり溶けて、スポンジに染みている。そこへ苺の甘味と酸味が適度に混ざり、究極のいちごショートの味が完成する。

 

「これは……本当にすごい」

「うん、美味しい」

「なんか、食べるのが勿体なく感じちゃうね」

「…………」

 

 誰1人として批評はなく、賞賛の嵐。

 諦めてもらうためのケーキだが、却って勧誘の鬱陶しさが悪化しそうだ。

 

「――ん、おいしい」

 

 少し遅れて、トワもケーキ……ではなく見つめていたイチゴを口にする。

 

「ね、ね? 風真いろは、欲しくない?」

「分かるけど言い方――。それと、諦める約束忘れんでくださいよ」

「もー……分かってるって」

 

 

 

 そんなこんな、遅めの激ウマティータイムを済ませて、一味は席を立った。

 

「それじゃあ、我々はそろそろお暇します」

「ん、帰るでござるか?」

「……あー、まあ半分そうなんだけどさ、ちょっとお願いがあって……」

 

 裏を感じないいろはの反応にマリンの心が揺れるが、当初の予定は崩さない。

 萎縮しながらいろはにとあるお願いをする。

 

「お願い?」

「そう。実は訳あって、明日の夜までこの島に居たいんです」

「明日の夜まで、でござるか?」

「はい。あー、勿論寝泊まりは自船でしますし、風真いろはには干渉しないんで……」

 

 自分で言って淋しくなる。

 それが瞳に表れていた。

 だが、いろはは表情を変えない。

 

「それは構いませんけど……」

 

 いろはは一度言い淀む。

 理由やらを尋ねかけたが、自分が多数隠し事をしている手前、余りにも不躾であると自覚した。

 だから、その先は抑えて、ただ了承の旨だけを伝えた。

 

「ありがとうございます」

「ん、皆殿、この先の航路も気を付けて」

「じゃあまたどっかで!」

 

 優しく手を振り玄関まで見送るいろはに大きく手を振りながら丘を登っていった。

 逆向きに歩いたため、マリンは躓いて転びかけた。

 それでも、家が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 





 皆様、どうも作者でございます。

 さて、今回の題名の通り、「あとふたり」なわけですが、予想がついた方はいますでしょうか?
 仲間にはいくつか加入のルールがありますね。
 そのルールを見ればあと2人の内1人は3分の1、もう1人は5分の1であると分ります。
 また、加入順を見れば、ポルカ→0、トワ様→8、フブちゃん→13……となります。
 このルールも見れば、どの辺りで誰が加入するのか……。

 他にも幾つかルールはありますので、気になったら考えてみて下さい。
 でも恐らく、その他はまだ分からないと思います。

 長文失礼しました。
 ではまた次回。
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