ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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45話 傀儡! ヘントウの戦い、開幕

 

 戦を前にした一味に緊張感が走る――事もなく、のんびりと、自由気儘にアホらしく時を過ごしていた。

 そして、20日夜、遂に出発の時を迎える。

 

「それでは、アルメンドラに向けて、出発」

「ヨーソロー」

 

 深夜ながら威勢のいい掛け声と共に出航し、アルメンドラへと進路を取った。

 

 

 6時間ほど経つと、夜も更け始める。

 まだまだ海の底に近い朝日が、進路の先から赤く船を照らす。

 

 一味は早めの食事を済ませ、食卓で作戦の最終確認を行う。

 

「最初の関門だった停泊はあくたんの能力を使います」

「パレパレの実」

「そう、それ」

 

 パレパレの実のパレット人間。

 自由な着色を行える能力。

 

「会議の後は、フブちゃんの20倍スコープで島が見えるのを待ちます」

 

 対戦車ライフルに付属していた品。

 いや、寧ろライフルの方が付属品か。

 

「島が見えたら、あくたんの能力で船と一味全員を隠して、停泊場所を探しつつ、停泊」

「一番の懸念点だった上陸が、あくたんのお陰で随分楽になったね」

 

 当初は予定していなかった作戦の一部。

 島周辺を船が彷徨いて、敵に見つかれば奇襲の意味を成さない。

 それどころか、逆に船を攻撃され、あえなく撃沈。

 最も危惧していた点だ。

 

「停泊後も船を隠して、今度は敵を探します」

「ポルカの仕事だね」

「流石にまだ……」

「反応はない。けど、マークは残ってるから大丈夫」

 

 ミオに付けたままのマーキングを当てに、敵の位置を割り出す。

 こよりの言葉から、ミオところねがいる事だけは確実だ。

 ミオのマークを辿れば、敵のアジトに到着する。

 

「敵の場所を確認したら、向こうから見えない位置について、一度フブちゃんに弱点を見てもらいます」

「うん、それは任せて」

 

 戦いが始まれば、フブキは参加できない可能性が高い。

 ならばその前に、使える力を存分に使おう。

 ここでも、20倍スコープが活きる。

 

「弱点を見たら、フブちゃんとおかゆさんは船へ戻ってください」

「うん」

「その先は、我々が行きます」

 

 そこから先は、本物の戦場。

 主にみこに頼りつつ、敵を討つ。

 

「非常事態の場合は、独自の判断に任せます」

「敵わないと思ったら逃げてもいい、と?」

「はい。寧ろタイマンになった時、みこち以外は敵うと思いませんから」

「悲しいけど、同意だな」

「どんな行動に出てもいいですが、死なず、囚われず。とにかく全員で、もう一度再開できるように心がけて下さい」

「「了解」」

 

 締めるようにマリンが命を下す。

 口を揃えて、力強く返事をすると、全員席を立つ。

 

「じゃあ、行きましょう」

「うっす」「ああ」「はい」「うん」「んにぇ」「……」

 

 一同は甲板へ出て、島影が見えるまで待ち続けた。

 この日に至っては、流石に緊張感が走る。

 冗談ひとつ飛びかわない、極稀に見る本気モードの宝鐘海賊団が波に揺られていた。

 

 

 

 …………………………。

 

 

 

「船長! 見えました!」

「――!」

「島です!」

 

 見張り台から甲板へ声を張り上げるフブキ。

 肉眼では水平線しか見えない。

 でも、号令がかかった。

 肉眼で見えてからでは遅いのだ。

 

「あくたん、お願いします」

「うん」

 

 マリンの指示に首肯し、手元に一本の筆を出現させる。

 その筆先は透けている。

 

「クリアペイント」

 

 全てが消えるように透明色となる。

 

「ぎゃあああああ!」

「ななんななななん、なんだなんだ⁉︎」

「あー! ちょっと一旦ストップ! 戻して戻して!」

 

 全ての色が再着色される。

 色がついた船上で、1人が涙を流していた。

 

「どしたの⁉︎」

「あー……高所恐怖症かぁ……」

「あー……」

 

 震えて涙するのはフブキ。

 船すらも色を消し、まるで自分が海面の十数メートル上に浮いて見えた事が原因。恐怖症発症の引き金となったようだ。

 

「それは我慢してもらわないと……」

「うぅ……だってぇ……」

 

 恐怖症の発症を回避する方法はない。

 フブキが我慢するしかないのだ。

 

「じゃあ、ほら、フブキちゃん」

「うぅ?」

「手繋いでてあげるから、フブキちゃんは着くまで、目を瞑ってて」

 

 おかゆがそっと歩み寄って、優しく手を差し伸べた。

 フブキはこくりと頷いて、その手を取る。

 

「ま、どっちみち何も見えないから、着くまでできる事ないけどね」

 

 足元も分からなければ、歩くことすらままならない。

 マリンとあくあ以外は、透明船では動けない。

 到着した時は、マリンとあくあが色付きハシゴをかけて、一味を下す算段。

 

「ありがと、おかゆん……」

 

 フブキはおかゆの手をぎゅっと握りしめて、もう目を瞑った。

 腕から脚、閉じた瞼、唇と、全身至る所まで震えている。

 

「フブちゃん行けそう?」

「い、いい、けます!」

「……じゃあ、あくたん」

「……ちっ……クリアペイント」

 

 堂々と舌打ちしやがった。

 おかゆを狙うものとして、羨ましいのは分かるが……目が怖い。

 

 あくあの能力で、再び船と一味が姿を消す。

 今度ばかりはフブキの絶叫も聞こえない。

 

「――?」

 

 おかゆの腕が、不意に誰かに掴まれた。

 フブキではない誰かに。

 

「……やれやれ」

 

 今回の作戦の貢献に感謝し、おかゆはその行為を寛大な心で許した。

 

「両手に華ですねぇ〜」

 

 しかもまた別で本命がいる。

 羨ましい事この上ない。

 

「船長も人を惹きつける力が欲しいもんですよ」

「「――」」

 

 戯言の様に流された。

 悲しい。

 

「――――っと、そんな場合じゃなかった」

 

 我に帰ると、マリンは黙ってアルメンドラ到着を待った。

 

 

 そして約30分後、遂にアルメンドラへ到着した。

 

 

 透明のままぐるりと島を回る。

 だが、あくあの能力の着色は素がインクであるため、海に接触する船底の一部は透明色が落ちていた。

 それでも、島を回る際に強く人目を引くことは無かったのは、幸運だった。

 

「よし……この浜に停めます」

 

 人気の無い浜を見つけ、マリンはそこへ船を停泊させた。

 あくあとマリンでハシゴをおろし、2人の補助有りで一味は船を降りた。

 

「……船底はかなりインクが剥げちゃってるよ」

「ですね……。でも最悪、船は再生成出来るので、壊されても問題はありません」

「資材が全滅は金銭的にも辛いけど」

 

 そこが色を取り戻し、姿を見せかけている船を見て、おかゆが船を憂う。

 製造者?のマリンは毛ほども気にしていないが。

 

「こっからは、ポルカ先頭で頼みますよ」

「あいよ。見失わんように」

 

 靴だけ透明を落とし、一味はポルカのマークを目印に歩き始める。

 浜から隘路を抜けて茂みへ入る。

 その際、定期的に靴が見えなくなり、見失いかけたが全員揃って街へ抜けた。

 

 街へ出れば、靴だけが見える光景は逆に目立つので、一度全ての色を消す。

 そして、ポルカに集合場所だけ指示をもらい、個別で向かう。

 あくあは人混みに紛れることに慣れているが、それ以外は透明人間の素人。

 到着までに時間をかけてしまった。

 

「全員いるな」

「こっからは半島っぽいんで、人は少なそうっすね」

「……インクが減ってきてるから、そろそろ気を付けてよ」

「多分こっからは、もう色変は無いと思う」

 

 あくあの能力はインクを使用する。

 インクの残量には限りがあるため、使い過ぎると能力が使えなくなる。

 全色共通のインクを使用しているので、何色を使っても限界は同じ。

 着色時間は関係なく、使用量だけが残量に直結する。

 

 一同は再び靴の色を元に戻し、半島へと踏み込んでいく。

 少し歩くとポルカは足を止めた。見つけたわけでは無い。

 反応の位置はここから右側だが、左側に丁度良い高さと広さの空間がある。

 あの岩場から、敵の姿が観測できないだろうか?

 

 ポルカは何も言わずにそちらへ足を向けた。

 皆も信じて付いてくる。

 足場に注意を払いながら、小さな岩場を登ると、ポルカはフブキに声をかける。

 

「フブちゃん、スコープ貸して」

「ほい」

 

 内ポケットからスコープを抜き取り、ポルカに渡す。

 マークを頼りに倍率を調整しつつ、「大神ミオ」を探す。

 

「見つけた」

「――‼︎」

 

 その一言で、瞬く間に空気が張り詰める。

 すぐにフブキもポルカの隣に立つ。

 

「分かった、じゃあ私が――」

「いや、でも……」

「――?」

「何か問題でも?」

「……ミオさんはいた。でも逆に、ミオさんしかいない」

 

 洗脳にかかったミオが1人でこんな所に居るはずがない。

 周囲に少なくとも正気の人間が1人はいる筈なんだ。

 だと言うのに、他の影が見当たらない。

 

「船長、作戦変更しましょう」

「どんな風に?」

「フブちゃんとおかゆんを船に戻して、残りで敵を探す」

「……それで行きます」

「待って! 私にも何か――」

「いやダメだ。明らかにこっちの動きが読まれてる。考えてみれば、フブちゃんの能力だって向こうは知ってんだ。簡単に弱点を教えてはくれない」

「でもそれじゃあ、私たち何も……」

 

 隠密作戦である事を忘れ、声量が増してゆく。

 ポルカの正論が火をつけてしまう。

 だからおかゆが、宥めるように腕を掴んだ。

 

「あくあ、僕たちのインクを消して」

「分かった」

「待っておかゆん、私は――」

「船長命令だから戻るよ」

「頼みます」

 

 2人のインクが消滅し、おかゆがフブキの手を引いて道を引き返していった。

 何時迄もフブキはおかゆに文句を言っているように聞こえた。

 

「……で、どうすんの、こっから」

「あたしらはこのままミオさんのとこに行きます」

「そっからは、ぶっつけ本番ってところだにぇ……」

 

 敵の虚を突く策だと思ったが、その策さえ見抜いて裏を取られた。

 この状況は非常にまずい。

 

「こっちの鍵はあくたんです。向こうはあくたんの存在を知らない」

「ああ、でも、向こうにはころねさんがいるから、少しでも違和感を感じたら能力で索敵する筈だ」

「要は、警戒させるなってことね」

「りょーかい」

 

 一味は岩場を離れ、そこそこ整備された林道を駆ける。

 一直線にミオの信号へ向けて走る。

 

 走って走って、ポルカがふと足を止めた。

 

「やっぱり……」

「おい、まさかとは思うが……!」

「ああ、お出ましだ」

 

 ミオの信号が正面から迫ってくる。

 十中八九、ころねも同席している。

 さあ……来るぞ――

 

 正面のマークが猛スピードで距離を詰めるが、進行路の先からはまだ人が見えない。

 ――いや、1人。

 ミオが駆けてくる。

 正気を取り戻した、なんて事はない。

 しかし妙だ……ころね無しでどうやって――

 

「ポルカァっ――!」

「――⁉︎」

 

 道からではなく、その道を挟む木々の上から、ころねが奇襲を仕掛けてきた。

 作戦の基盤を形成する司令塔、ポルカを狙って強烈な拳が放たれる。

 逸早く緊急信号で察知したトワが両腕でガードしながら割り込むが、威力が高すぎて数メートル飛ばされた。

 

「ポルカとトワ様の色を戻して進め!」

 

 ポルカとトワに色が戻る。

 その2人をこの通路に残して、ミオが来る方向へ走り出す残り3名。

 

 姿は見えないが通路が広くない。

 だからこそ、ミオが両腕を構えると、絶体絶命。

 逃げるか? 森林の中へ。

 いやダメだ、マリンたちでは方向感覚を失う。

 

「みこち!」

「あい!」

「あてぃしがやる――注目の黄色」

 

 マリンの指示が下り、みこは能力を解放しかけたが、あくあが先行して足止めを放った。

 それは、たった一つの丸い着色。

 誰もいない地面に嫌に目を引く黄色い円が描かれた。

 

岩石銃(ペトロガン)

 

 容赦無く――石の弾丸が乱射される、が……あくあの描いたマークを狙っていた。

 強制的に攻撃の意識を向けさせる、忠告、注目を意味する黄色。

 

「ナイスあくたん! オッら!」

 

 ミオがマリンたちを追わぬように一撃、ポルカは蹴り込みを入れた――つもりだった。

 

「だぁーーー……」

 

 何故が振り抜いた右脚は黄色い円(地面)に命中した……。

 右脚へ反動が響く……。

 

「ごめーん! それ周囲の人の意識全部集めちゃうからー!」

「うぉーい!」

 

 連携の取れないワンシーン。

 ポルカは恥ずかしくて赤面した。

 

 しかし、ミオもころねもこの場に留まる。

 迎撃は失敗だが、足止めは成功。

 マリンたちが見えなくなると、ポルカは羞恥心を紛らすように八つ当たり気味に地面のインクを踏み潰して消した。

 

「くっそ! 恥かいた!」

「じゃ、その分ここで決めとこうや」

「……ああ」

 

 宝鐘海賊団の奇襲作戦は失敗。

 そして各所で戦いが始まる――。

 

 半島(ヘントウ)、小林道の戦い――

 ポルカ&トワ vs ミオ&ころね。

 

 





 登場キャラ設定プロフィール7

 「湊あくあ」
 所属と役職……宝鐘海賊団、医者(?)
 能力……パレパレの実
 能力名の由来……あくあ色ぱれっと
 出身……ディアスケーダシティ
 好きな物……猫又おかゆ、インペリアルトパーズ
 嫌いな物……恋敵、パパラチアサファイア、人付き合い

 「赤井はあと」
 能力……ナウナウの実
 能力名の由来……#はあちゃまなう
 出身……サクラカゼ
 好きな物……さくらみこ、星街すいせい
 嫌いな物……自分、ナウナウの実

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