ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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54話 繋ぎ止める

 

 4月30日、朝10時。

 マリン号には、一味全員が集った。

 

 全員の顔は、解散前に比べると、随分と引き締まっていた。

 

「全員、来るんですね?」

 

 皆が合わせて頷く。

 

「ポルカちゃん、このまま行くなら降りるって言ってなかった?」

 

 攻撃的な言葉を使うあくあ。

 嫌味ではなく、「このまま行っていいのか?」と尋ねている。

 

「あくたんこそ、おかゆん連れて降りるんじゃなかった?」

 

 ポルカは冗談混じりに返した。

 

「おかゆが行くって言うなら、あてぃしは当然お供するからね」

 

 おかゆの進む道を、あくあが舗装するのだ。

 怪我しないように、露払いとして、どこまでも。

 

 2人のやり取りを、唯一目を細めて見ていたトワは、話が終わると視線をサッと逸らした。

 

「それで……何で居るの?」

 

 みこが、1人に指差した。

 この場で、現在、唯一一味に属さない存在。

 

「はい、次なる島、シエロソニードへの案内人、博衣こよりさんでーす! 皆さん拍手ー……。わー、ぱちぱちー……」

 

 以前の空気を取り戻そうと、マリンは調子を戻そうと奮起するが、場の空気はピリピリとしたまま。

 弱々しい拍手が、とても虚しく感じる。

 

「紹介はいらん」

 

 虚しさを蹴り飛ばすような一言。

 マリンは凹んだ。

 

「この状況で、敵の1人を船に乗せるのはリスキーすぎます」

「敵に置き去りにされたんですよ。心配入りませんって」

「演技かもしれないよ?」

 

 マリンも捨てていない可能性を、ズバッと切り込むあくあ。

 

「こよりは大丈夫!」

「――――」

 

 また出た、と呆れ果てる一味。

 しかし、その中から何故か溢れ出る安心感。

 マリンはいつでもマリンだ。

 

「このマヨラーが、次の島への案内役かぁ……」

 

 みこはとても不服そうに口元を曲げた。

 こよりは特に反応しない。

 

「……シエロソニード、行くん?」

「はい、行きますよ! トワ様の故郷!」

 

 いつも以上な低音ボイスにも、マリンはテンション高めに応えた。

 

「でも、どうやって?」

「それなんですけど、フブちゃん」

「――はい?」

「あの地図、頂戴」

「えっと……ここを示した地図ですか? この人に貰った」

「そうです」

「ええっと……取ってきます」

 

 フブキが自室へ向かい、戻って来た。

 手には円柱型に丸めたあの地図が握られている。

 

 地図を開き、こよりを一瞥すると、マリンに手渡した。

 

「どうも――はい、こより」

 

 マリンからこよりへと渡る。

 

「…………ここから真っ直ぐ北北東に向かうと、シエロソニードに着くはずだよ」

 

 と、船を出す前だが、早速答えてくれた。

 

「よーし、それでは北北東へ向けて進みましょう。どっちが北北東ですか?」

 

 マリンは水平線を指差しながら、誰かに尋ねた。

 

「船長が今見てる方向の右斜め後ろ」

 

 ほぼ真逆だった。

 ずずず……っと方向をずらして、もう一度、出発の合図を取る。

 

「シエロソニードへ向けて、出航〜」

「あほいあほい」

 

 島が邪魔なので沿岸をぐるりと回って、直線航路に入る。

 

「因みにどれくらいかかる?」

「1週間くらい」

「え……そんなに?」

「当たり前でしょ。元々の航路上にあった島なんだから」

 

 当初のルートを大きく外れてアルメンドラへ来た一味。

 記憶の跡地からシエロソニードへ向かう航路とは、120度も異なる方向を通って来た。

 直線距離を通れば、大凡それくらい。

 キャンディータウンからハングリー島までの距離と、ほぼ等しい。

 

「1週間もね……」

 

 ぼやいた。

 

「……大丈夫だって! ね? ね?」

 

 へつらう。

 

 治安が悪い。

 

「…………」

 

 そんなタイプじゃないが、珍しくこよりが空気を読んで、客室へ篭ろうとした。

 しかし――

 

「待った、こよりさん」

「――」

 

 ポルカが呼び止める。

 

「こん中に、裏切り者はいんのか?」

「「……‼︎」」

 

 こよりは敵からの刺客である可能性と共に、炙れた情報源の可能性もある。

 適度な信頼と疑心が、またしても要求される。

 

「こよは犯人を知らない。けど、内通がある事は確かだよ。AZKiちゃんがそう言ってたから」

「そうか」

「精々、気を付けなよ。こよだって、ぺこらちゃんのとこまでは、送ってほしいからね」

 

 そう残すと、今度こそ客室へと閉じ籠った。

 

「……一体、こよりさんとどんな協定を組んだんですか?」

「シエロソニードへの航路を教えてもらう変わりに、こよりをハングリー島まで運ぶ」

「う〜ん……まあ条件はいいけど。何でそこまでシエロソニードに拘る」

「トワ様の故郷だから!」

 

 と言う建前。

 本心は、そこで暮らすと思われる、かなたや他ホロメンを見つけ出すため。

 でも、口にすればトワに不審がられる。

 だから口外しない。

 

「トワは何も頼んでないけど」

 

 寧ろ、今の一味を現在のシエロソニードへ、連れて行きたくはない。

 だけど、トワもそれを言わない。

 

 

 隠し事があるのは、何も2人だけではなかろう。

 

 

「まあまあ、そう言わず」

 

 ここから更に1週間。今の一味には耐え難い期間だろう。

 しかも、ずっと船内という閉塞的な空間では。

 

「さて皆さん、直線航路に入ったので、ここからは真っ直ぐ進むだけですが、定期的にどこかの島で休憩を挟みつつ行きます」

「……そんな余裕、あるのかな?」

「早く着き過ぎてもダメなんです。ほら、ハングリー島への襲撃日時まで、まだまだあるんですから」

 

 ルーナ、まつりと定めた作戦決行日まではあと半月ほどもある。

 シエロソニードからハングリー島までは、1日ほどの距離。

 近場での滞在は、最小限に抑えたい。

 

「この空気が続いちゃ、一味も保たんしな」

「そ、だね」

 

 決まりだ。

 

「……じゃ、何かあるまでは、どうぞ、自由に」

 

 

 歯切れ悪く解散させられた。

 

 

 それから、一味は島を転々としながら、約9日と言う長期間を経て、音楽の国「シエロソニード」へと到達した。

 

 





 次回、とうとう到来、シエロソニード編。
 初っ端から、新面子三昧なんで、乞うご期待。
 そして一味の中で、暗躍する者が――!
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