個室に通されたマリンは今、ノエル、わためと対面して座している。
「わためぇは瞬間移動ができる。少しでも不審な動きを見せれば、牢獄の仲間達の命の補償はできんよ」
「脅しは必要ないよ、船長は仲間を捨てたりしませんし、強硬策に出る気もない」
「そう」
わためは本当にただの見張り役なのか、黙ってノエルの隣に鎮座している。
かと思えば懐からポテチ?を取り出して食べ始めた。
「さて、ならまずは、こちらの要望から――」
と、簡単な前置き。
「王族殺人未遂罪のかけられたトワちゃんは、島流しの刑に処され、1年ほど前にこの島から追放されとる」
罪状は初耳だったが、島流しは以前聞いた通り。
マリンは首肯して続きを促す。
「追放された者はその後一切、入国を許されん」
「さっきは、特例があると言いましたね」
「ある。一度決まった刑罰も、王なら撤回が可能。じゃけん、王がその撤回を宣言したら、トワちゃんの罪は消える」
「……で、その王が」
「今はおらん」
王がいない……。
つまりそれは、かなたの不在と、トワの罪状変更や撤回機会の消失を意味する。
「トワ様が、かな――王様を、殺しかけたって事で良い?」
「……あっとる」
到底信じ難いが、この強固な警備体制を見るに、杜撰な捜査は行なっていまい。
側から見れば「トワが犯人と思える現場」だったのだろう。
「それで、殺されかけた王はその後、どしたん……です?」
ノエル相手に敬語を使い辛い。
敬語とタメ口が混ざり合う怪文になってしまう。
「姿を眩ましとる。事件の日から、現在までずっと」
「その事に関して、トワ様との関連性はどう……見てるんです?」
「仲間が居たと想定した。だからこそ、仲間として現れた海賊は、この国を脅かす存在であると思うし、同時に『かなたん』の事も知っとるんじゃないんかなと、思っとる」
事件の詳細も、判決に至るまでの詳細も知らぬマリンにとって、その判断は理不尽ながら適切に思える。
マリンのこの質問すら、演技かもしれないと、半信半疑でいるだろう。
「なるほど……」
一先ず相槌で会話を繋ぎ、場の空気を凍らせないよう努める。
場の空気に支配され、感情に左右され、思わぬ怪我をする事もある。
「それで、そっちから何かある?」
話の主導権を一時的にマリンに譲渡する。
「……その、かなたの失踪に、洗脳が関連してると、船長は思いますが」
「……? あー……なんか新聞で……見たような……?」
「――――ぇ?」
ノエルとわための訝しむ表情に、唖然とする。
数秒口をがらんと開けて、放心し……。
「え、ちょ……洗脳のこと知らないの?」
「知らないよそんなの。関係ないし」
トワは知っていたぞ。
寧ろマリンたちは、トワから聞いて、逸早くその情報を得たのだ。
同じ騎士団に所属する団長が、ご存じでないだと?
「ノエちゃん団長でしょ? なんで知らないの」
「だから、なんで団長が知っとらんといけんのん」
「だってトワ様が知ってて、ノエちゃんが知らないってのは――」
「…………何を吹き込まれたの?」
「へ……?」
会話の食い違いに、ノエルは勘付いた。
マリンは思い込みの上での会話なため、気付けない事実。
「トワちゃんは、騎士団員じゃないよ」
「――――――――」
マリンとノエルの行き違いが解消された。
トワは……王国騎士団に、所属していない。
「でも……あ、それ! そのデケェ乳のとこにつけてるバッチ」
「…………」
ノエルの大きな胸よりやや上部。
そこに取り付けられた紋章は、トワの持つそれと同じ。
わための視線がノエルの胸に向かう。
その胸を景色にしながら、変わらずポテチを貪る。
「それ、トワ様も――」
「持ってた⁉︎ どうして……」
テーブルを叩いて身を乗り出す。
それほど、衝撃を与えた発言。
その様子を見て、脳が冷静になるとマリンは冷や汗をかいた。
もしかすると、出してはならない情報を提示してしまったのでは?
「……」
「洗脳について、トワちゃんなんか言っとった?」
「え、なんか……って」
「誰から聞いたとか」
「いや、特に……」
王である、かなたから聞いたとすれば、ノエルの耳に入らない事は不自然ではないか?
でも他に、洗脳の情報源なんて……。
「…………」
一瞬だけ、嫌な可能性が脳裏を過ってしまった。
格好つけておいて、結局自分も……。
いや違う。
マリンは強くかぶりを振るう。
ので、ノエルはまた胡乱な目で見つめる。
わためは、揺れる胸を見ていた。
「船長さんも気付いたみたいじゃけん……もう、決まりかね」
「あ、待って!」
「……まだ何か?」
「……トワ様は悪い人じゃないです」
「感情論は結構。それを示す証拠がなければ、冤罪を証明できない」
「……分かった、ならその証拠を探してきます」
「事件も知らないあなたが、どうやって」
「かなた。あいつを連れてくれば、証明になる?」
無謀な証拠品。
だが、マリンが今最も可能性を見出せる者は、かなただけだ。
過去の経験を基に見れば、恐らくノエルたちは事件の詳細を話してくれない。
ならもう、かなたを探し出すしかない。
「それなら証明にはなる、けど、そんな大口叩くなら、当然それ相応の心当たりと覚悟があるんよね?」
「……」
ノエルからの重圧に押しつぶされそうになる。
あのゆるふわ女騎士から、胸以外でこんな圧を感じる日が来るとは。
「それは……」
「反論がないなら、このまま処分を決める事になるけど――」
「――! 分かった! 探してくる」
「……」
一刻の猶予もない。
マリンは即答した。
「とは言っても、薄い望みを長時間待てない。から……明日の夕刻」
「――――」
「17時まで、時間をあげる」
「――――」
「それまでに証拠を提示できなければ、予定通りの刑罰を執行するよ」
「――――」
現在の時刻を確認すると昼、13時。
24時間以上の猶予。
それまでに、かなたを見つけ出すorその他の証拠を得る。
「異論は?」
「……1週間くらい待ってくだされば……」
「無いようなら話は終わりで――」
「ああ! じゃあ、面会!」
「――」
「一味と面会させて! 今の話とかも、したいから」
「…………分かった」
ノエルが通信機で誰かと連絡を取る。
指示され待つ事5分。
コンコン、とフブキの挨拶のようなノックが響く。
「来たよ、ノエた〜〜ん」
インテリっぽいメガネをかけたラミィが入室。
相変わらず酒瓶を手にしている。
「船長さんに10分間の面会を許可したから、地下監獄まで連れてったげて」
「はぁ〜いぃ!」
……酔ってる、のか?
酒の匂いはするが、手に持つ酒瓶から漂うものかもしれない。
「こっち」
マリンを連れてラミィは退室する。
ノエルたちとの会話以外は、軽いノリが消え、凍てつくような凛々しい声音で接するギャップ。
ラミィも怖い。
「――――」
マリンとラミィの退室した個室。
「いつまで食べてんの、もう……」
気が付けば、わためのポテチの残骸は3袋目に達していた。
つまり、現在4袋目を食している。
そのゴミを回収して、ノエルはわためを強引に椅子から立たせると、ポテチを取り上げた。
すでに満足しているのか、泣き言は言わずに、手に持った最後の一枚をパリパリと……。
咀嚼し、飲み込み……。
「ノエルちゃん……」
「んー?」
「あの船長さん……」
「うん」
溜めに溜めて、何を言うかと思えば――
「デッカいぺぇだったねぇ〜!」
「はぁ…………」
登場キャラプロフィール10
「星街すいせい」
所属と役職……ゼロ海賊団、戦闘員
能力……パズパズの実
能力名の由来……テトリスなどのパズルゲーム
出身……アルメンドラ
好きな物……そら、ホラー、あるカレー
嫌いな物……卑怯な戦い、他の海賊、ホラー
「アキ・ローゼンタール」
能力……ムキムキの実
能力名の由来……ムキロゼ
出身……アルメンドラ
好きな物……戦闘、自分磨き、ダンス
嫌いな物……頭を使う事
(*プロフにミスはありません)