ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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56話 見え方が変わる

 

 個室に通されたマリンは今、ノエル、わためと対面して座している。

 

「わためぇは瞬間移動ができる。少しでも不審な動きを見せれば、牢獄の仲間達の命の補償はできんよ」

「脅しは必要ないよ、船長は仲間を捨てたりしませんし、強硬策に出る気もない」

「そう」

 

 わためは本当にただの見張り役なのか、黙ってノエルの隣に鎮座している。

 かと思えば懐からポテチ?を取り出して食べ始めた。

 

「さて、ならまずは、こちらの要望から――」

 

 と、簡単な前置き。

 

「王族殺人未遂罪のかけられたトワちゃんは、島流しの刑に処され、1年ほど前にこの島から追放されとる」

 

 罪状は初耳だったが、島流しは以前聞いた通り。

 マリンは首肯して続きを促す。

 

「追放された者はその後一切、入国を許されん」

「さっきは、特例があると言いましたね」

「ある。一度決まった刑罰も、王なら撤回が可能。じゃけん、王がその撤回を宣言したら、トワちゃんの罪は消える」

「……で、その王が」

「今はおらん」

 

 王がいない……。

 つまりそれは、かなたの不在と、トワの罪状変更や撤回機会の消失を意味する。

 

「トワ様が、かな――王様を、殺しかけたって事で良い?」

「……あっとる」

 

 到底信じ難いが、この強固な警備体制を見るに、杜撰な捜査は行なっていまい。

 側から見れば「トワが犯人と思える現場」だったのだろう。

 

「それで、殺されかけた王はその後、どしたん……です?」

 

 ノエル相手に敬語を使い辛い。

 敬語とタメ口が混ざり合う怪文になってしまう。

 

「姿を眩ましとる。事件の日から、現在までずっと」

「その事に関して、トワ様との関連性はどう……見てるんです?」

「仲間が居たと想定した。だからこそ、仲間として現れた海賊は、この国を脅かす存在であると思うし、同時に『かなたん』の事も知っとるんじゃないんかなと、思っとる」

 

 事件の詳細も、判決に至るまでの詳細も知らぬマリンにとって、その判断は理不尽ながら適切に思える。

 マリンのこの質問すら、演技かもしれないと、半信半疑でいるだろう。

 

「なるほど……」

 

 一先ず相槌で会話を繋ぎ、場の空気を凍らせないよう努める。

 場の空気に支配され、感情に左右され、思わぬ怪我をする事もある。

 

「それで、そっちから何かある?」

 

 話の主導権を一時的にマリンに譲渡する。

 

「……その、かなたの失踪に、洗脳が関連してると、船長は思いますが」

「……? あー……なんか新聞で……見たような……?」

「――――ぇ?」

 

 ノエルとわための訝しむ表情に、唖然とする。

 数秒口をがらんと開けて、放心し……。

 

「え、ちょ……洗脳のこと知らないの?」

「知らないよそんなの。関係ないし」

 

 トワは知っていたぞ。

 寧ろマリンたちは、トワから聞いて、逸早くその情報を得たのだ。

 同じ騎士団に所属する団長が、ご存じでないだと?

 

「ノエちゃん団長でしょ? なんで知らないの」

「だから、なんで団長が知っとらんといけんのん」

「だってトワ様が知ってて、ノエちゃんが知らないってのは――」

「…………何を吹き込まれたの?」

「へ……?」

 

 会話の食い違いに、ノエルは勘付いた。

 マリンは思い込みの上での会話なため、気付けない事実。

 

「トワちゃんは、騎士団員じゃないよ」

「――――――――」

 

 マリンとノエルの行き違いが解消された。

 トワは……王国騎士団に、所属していない。

 

「でも……あ、それ! そのデケェ乳のとこにつけてるバッチ」

「…………」

 

 ノエルの大きな胸よりやや上部。

 そこに取り付けられた紋章は、トワの持つそれと同じ。

 

 わための視線がノエルの胸に向かう。

 その胸を景色にしながら、変わらずポテチを貪る。

 

「それ、トワ様も――」

「持ってた⁉︎ どうして……」

 

 テーブルを叩いて身を乗り出す。

 それほど、衝撃を与えた発言。

 

 その様子を見て、脳が冷静になるとマリンは冷や汗をかいた。

 もしかすると、出してはならない情報を提示してしまったのでは?

 

「……」

「洗脳について、トワちゃんなんか言っとった?」

「え、なんか……って」

「誰から聞いたとか」

「いや、特に……」

 

 王である、かなたから聞いたとすれば、ノエルの耳に入らない事は不自然ではないか?

 でも他に、洗脳の情報源なんて……。

 

「…………」

 

 一瞬だけ、嫌な可能性が脳裏を過ってしまった。

 格好つけておいて、結局自分も……。

 いや違う。

 

 マリンは強くかぶりを振るう。

 ので、ノエルはまた胡乱な目で見つめる。

 わためは、揺れる胸を見ていた。

 

「船長さんも気付いたみたいじゃけん……もう、決まりかね」

「あ、待って!」

「……まだ何か?」

「……トワ様は悪い人じゃないです」

「感情論は結構。それを示す証拠がなければ、冤罪を証明できない」

「……分かった、ならその証拠を探してきます」

「事件も知らないあなたが、どうやって」

「かなた。あいつを連れてくれば、証明になる?」

 

 無謀な証拠品。

 だが、マリンが今最も可能性を見出せる者は、かなただけだ。

 過去の経験を基に見れば、恐らくノエルたちは事件の詳細を話してくれない。

 ならもう、かなたを探し出すしかない。

 

「それなら証明にはなる、けど、そんな大口叩くなら、当然それ相応の心当たりと覚悟があるんよね?」

「……」

 

 ノエルからの重圧に押しつぶされそうになる。

 あのゆるふわ女騎士から、胸以外でこんな圧を感じる日が来るとは。

 

「それは……」

「反論がないなら、このまま処分を決める事になるけど――」

「――! 分かった! 探してくる」

「……」

 

 一刻の猶予もない。

 マリンは即答した。

 

「とは言っても、薄い望みを長時間待てない。から……明日の夕刻」

「――――」

「17時まで、時間をあげる」

「――――」

「それまでに証拠を提示できなければ、予定通りの刑罰を執行するよ」

「――――」

 

 現在の時刻を確認すると昼、13時。

 24時間以上の猶予。

 それまでに、かなたを見つけ出すorその他の証拠を得る。

 

「異論は?」

「……1週間くらい待ってくだされば……」

「無いようなら話は終わりで――」

「ああ! じゃあ、面会!」

「――」

「一味と面会させて! 今の話とかも、したいから」

「…………分かった」

 

 ノエルが通信機で誰かと連絡を取る。

 指示され待つ事5分。

 コンコン、とフブキの挨拶のようなノックが響く。

 

「来たよ、ノエた〜〜ん」

 

 インテリっぽいメガネをかけたラミィが入室。

 相変わらず酒瓶を手にしている。

 

「船長さんに10分間の面会を許可したから、地下監獄まで連れてったげて」

「はぁ〜いぃ!」

 

 ……酔ってる、のか?

 酒の匂いはするが、手に持つ酒瓶から漂うものかもしれない。

 

「こっち」

 

 マリンを連れてラミィは退室する。

 ノエルたちとの会話以外は、軽いノリが消え、凍てつくような凛々しい声音で接するギャップ。

 ラミィも怖い。

 

 

「――――」

 

 マリンとラミィの退室した個室。

 

「いつまで食べてんの、もう……」

 

 気が付けば、わためのポテチの残骸は3袋目に達していた。

 つまり、現在4袋目を食している。

 

 そのゴミを回収して、ノエルはわためを強引に椅子から立たせると、ポテチを取り上げた。

 すでに満足しているのか、泣き言は言わずに、手に持った最後の一枚をパリパリと……。

 咀嚼し、飲み込み……。

 

「ノエルちゃん……」

「んー?」

「あの船長さん……」

「うん」

 

 溜めに溜めて、何を言うかと思えば――

 

「デッカいぺぇだったねぇ〜!」

「はぁ…………」

 

 

 





 登場キャラプロフィール10

 「星街すいせい」
 所属と役職……ゼロ海賊団、戦闘員
 能力……パズパズの実
 能力名の由来……テトリスなどのパズルゲーム
 出身……アルメンドラ
 好きな物……そら、ホラー、あるカレー
 嫌いな物……卑怯な戦い、他の海賊、ホラー

 「アキ・ローゼンタール」
 能力……ムキムキの実
 能力名の由来……ムキロゼ
 出身……アルメンドラ
 好きな物……戦闘、自分磨き、ダンス
 嫌いな物……頭を使う事


 (*プロフにミスはありません)

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