ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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5話 誘拐

 

 妙な船が来た。

 わざわざ人気のない浜に停める奴らだ、どうせ悪者だ。

 

 そんな悪者に突っかかってたら、トワさんに宥められた。

 小屋に戻るよう言われて、戻ってきたトワさんは、今度は見張をしてくれとたのんできた。

 海賊が、街を回るための人質だって言う。

 トワさんの頼みだから、仕方なく聞いてやったけど、船に2人で残された。

 とてもイヤな気分だ。

 

「ラプラスって、何でこんなとこいんの?」

「うるさい、黙れ」

「いやさ、船長に話聞いとけって言われたんだよ」

「知らねえし」

 

 馴れ合うつもりはない。

 余所者は、信用できない。

 いや、しちゃいけないんだ。

 

 

 

          *****

 

 

 

 トワとマリンが茂みの方から現れた時は、ポルカもラプラスも衝撃を受けた。

 右腕を少し痛めたトワと顔色が優れないマリン。

 ラプラスは少々苛立った風にマリンの元まで歩いた。

 

「何もなかっただろ、とっとと帰れ」

 

 角を立てるラプラスの腕を、トワが右腕で掴んだ。

 その震える腕に、ラプラスは小さな恐怖を見た。

 そして、起きた出来事を伝えると、ラプラスは血相を変えて小屋へと走った。

 トワもその後を小走りに追った。

 

 マリンは落ち込んだ様子で船に上がった。

 

「何か……あったんですか」

「ちょっと寝てくる……」

 

 独り言のように呟いて自室へ篭った。

 

「……」

 

 ポルカは何も掴めず、知らずのまま。

 今ならマリンも船にいるし、小屋とやらに行くとしよう。

 

「こっち……」

 

 何となくの位置は分かる。

 3人の足跡なども頼りにすれば、辿り着く。

 簡単に小屋を発見した。

 

 遠目にトワとラプラスが確認できる。

 

「……」

 

 ポルカが出ていくよりは、トワと交流ができたであろうマリンの方が、上手く情報が引き出せる。

 ならば……。

 

 コンコン、と空いた扉をノックして、注目させる。

 

「……何でいんだよ」

「気になったので」

 

 入り口に立つのはマリン。

 マリンが2人と話している。

 

「帰れっつってんだよ!」

「……」

「余所者のせいで全部イカれたんだ! 余所者の、アイツが来たせいで、2人が……」

 

 ラプラスの目に滲む涙が、その時の景色を映して見えた。

 トワも疲れ切った表情で座り込んでいる。

 

「何があったのか、話してください」

 

 マリンは問答無用で斬り込んだ。

 

「ふざけんな、信用できないってんだよ」

 

 だが、ラプラスの頑固な思想は変わらない。

 異国人を嫌う、その性格は。

 過去に何かあった事は推察が容易い。

 でも、それが何か不明では、どうにもならない。

 彼女たちは、微塵も助けを求めてない。

 

 ……いや違うか。

 助けを求める相手がいないのか。

 国の者は謎の王の支配下、異国人は信頼できない。

 迂闊に同志を募れない。

 

「……」

「盗み聞きは良くないよ〜?」

「っ!」

 

 小屋の扉裏で話を聞いていたポルカに、聞き知らぬ声がかけられる。

 仰天して振り返ると、謎の仮面と帽子をつけた不審者1人。

 声質は女性。

 

「わお、鋭い目付き、野蛮だね」

「何だお前……」

 

 ポルカは敵意を剥き出しに言葉を投げる。

 話し声を聞きつけた2人も、マリンを押し退けて外へ出て来る。

 

「誰だテメェ」

「ぁ…………お、お前……」

「いるじゃん。久しぶりだね、ラプちゃん」

 

 トワも面識がなく、ラプラスだけが知る存在。

 相手はあだ名でラプラスを呼ぶが、親しい仲には見えない。

 

「おい、船長に伝えてこい」

「はい」

 

 ポルカがマリンに指示すると、マリンは船へと駆け出した。

 そう、このマリンはポルカが複製し操っていたニセモノだ。

 

「お前何を……」

「それは後、コイツ……やべえ」

 

 トワが言及しようとしたが、ポルカは敵に意識を注ぐ。

 仮面の下で笑う女。

 ここへ来た目的は……。

 

「ラプラス、コイツは?」

「……コイツが、今の王だ」

「……‼︎」

 

「どーもー、アイアムキング」

 

 妙な名乗りでピースする。

 掴めない性格だ。

 

「気をつけろ、能力者だぞ」

「能力? なんの?」

「知らん」

「ふーん……」

 

 一戦交える腹積りで話す2人。

 それに対して、王は呑気にポルカを見ている。

 そして、両手でカメラのピントを合わせる仕草をする。

 片目を瞑り、完全にポルカにピントを合わせた。

 

「サーチスコープ」

「何だ⁉︎」

 

 ポルカは警戒心を増加させた。

 気を張って、敵の能力分析にまずは注力。

 

「……へえ〜」

「……なんだ、こいつ」

 

 脈絡のない相槌に調子が狂う。

 先手を打たれると思ったが、何もないなら先手必勝。

 ポルカは駆け出そうとした。

 

 ポツポツ、と水が滴る。

 まばらに垂らされる水滴。

 それは僅か数秒で勢力を増し、土砂降りの大雨と化す。

 

「なんで急に雨が……!」

「っつ……ぐっ……!」

 

 トワとラプラスは咄嗟に雨を避け、小屋の下へ入るが、ポルカは頭を抱えてへたり込む。

 次第に顔色を悪くし、息を荒げる。

 

「お、おい……どうしたんだよ」

「頭痛ぇ……」

「2人は一般人だったね」

 

 ポルカをダウンさせ、トワとラプラスに近寄る。

 標的は多分……。

 

「ラプラス逃げろ!」

「おおっと」

 

 トワが拳を振るった。

 案外身軽に躱されるが、足止めはできる。

 

「トワさん……」

「行け!」

 

 ラプラスはたじろぐ。

 逃げたらトワが、どうなるか……。

 

「あー、私もう帰るんで」

「……は?」

 

 王はポルカを担いで街へと歩き始める。

 

「…………待て!」

「なんです?」

「……そいつ、どうすんだよ」

 

 情なんて湧きやしないが、ポルカを狙う意図が読めない。

 トワには本当に、全く。

 ラプラスには、心当たりがあるようだが。

 

「ラプちゃんが教えてくれるよ、じゃ、バイバーイ」

 

 王が去ってすぐ、雨は止んだ。

 気持ちの悪い喪失感と湿気を残して、時は流れる。

 

 トワとラプラスは、急いで船へ向かった。

 その途中で本物のマリンと遭遇し、起きた出来事を共有した。

 

 

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