妙な船が来た。
わざわざ人気のない浜に停める奴らだ、どうせ悪者だ。
そんな悪者に突っかかってたら、トワさんに宥められた。
小屋に戻るよう言われて、戻ってきたトワさんは、今度は見張をしてくれとたのんできた。
海賊が、街を回るための人質だって言う。
トワさんの頼みだから、仕方なく聞いてやったけど、船に2人で残された。
とてもイヤな気分だ。
「ラプラスって、何でこんなとこいんの?」
「うるさい、黙れ」
「いやさ、船長に話聞いとけって言われたんだよ」
「知らねえし」
馴れ合うつもりはない。
余所者は、信用できない。
いや、しちゃいけないんだ。
*****
トワとマリンが茂みの方から現れた時は、ポルカもラプラスも衝撃を受けた。
右腕を少し痛めたトワと顔色が優れないマリン。
ラプラスは少々苛立った風にマリンの元まで歩いた。
「何もなかっただろ、とっとと帰れ」
角を立てるラプラスの腕を、トワが右腕で掴んだ。
その震える腕に、ラプラスは小さな恐怖を見た。
そして、起きた出来事を伝えると、ラプラスは血相を変えて小屋へと走った。
トワもその後を小走りに追った。
マリンは落ち込んだ様子で船に上がった。
「何か……あったんですか」
「ちょっと寝てくる……」
独り言のように呟いて自室へ篭った。
「……」
ポルカは何も掴めず、知らずのまま。
今ならマリンも船にいるし、小屋とやらに行くとしよう。
「こっち……」
何となくの位置は分かる。
3人の足跡なども頼りにすれば、辿り着く。
簡単に小屋を発見した。
遠目にトワとラプラスが確認できる。
「……」
ポルカが出ていくよりは、トワと交流ができたであろうマリンの方が、上手く情報が引き出せる。
ならば……。
コンコン、と空いた扉をノックして、注目させる。
「……何でいんだよ」
「気になったので」
入り口に立つのはマリン。
マリンが2人と話している。
「帰れっつってんだよ!」
「……」
「余所者のせいで全部イカれたんだ! 余所者の、アイツが来たせいで、2人が……」
ラプラスの目に滲む涙が、その時の景色を映して見えた。
トワも疲れ切った表情で座り込んでいる。
「何があったのか、話してください」
マリンは問答無用で斬り込んだ。
「ふざけんな、信用できないってんだよ」
だが、ラプラスの頑固な思想は変わらない。
異国人を嫌う、その性格は。
過去に何かあった事は推察が容易い。
でも、それが何か不明では、どうにもならない。
彼女たちは、微塵も助けを求めてない。
……いや違うか。
助けを求める相手がいないのか。
国の者は謎の王の支配下、異国人は信頼できない。
迂闊に同志を募れない。
「……」
「盗み聞きは良くないよ〜?」
「っ!」
小屋の扉裏で話を聞いていたポルカに、聞き知らぬ声がかけられる。
仰天して振り返ると、謎の仮面と帽子をつけた不審者1人。
声質は女性。
「わお、鋭い目付き、野蛮だね」
「何だお前……」
ポルカは敵意を剥き出しに言葉を投げる。
話し声を聞きつけた2人も、マリンを押し退けて外へ出て来る。
「誰だテメェ」
「ぁ…………お、お前……」
「いるじゃん。久しぶりだね、ラプちゃん」
トワも面識がなく、ラプラスだけが知る存在。
相手はあだ名でラプラスを呼ぶが、親しい仲には見えない。
「おい、船長に伝えてこい」
「はい」
ポルカがマリンに指示すると、マリンは船へと駆け出した。
そう、このマリンはポルカが複製し操っていたニセモノだ。
「お前何を……」
「それは後、コイツ……やべえ」
トワが言及しようとしたが、ポルカは敵に意識を注ぐ。
仮面の下で笑う女。
ここへ来た目的は……。
「ラプラス、コイツは?」
「……コイツが、今の王だ」
「……‼︎」
「どーもー、アイアムキング」
妙な名乗りでピースする。
掴めない性格だ。
「気をつけろ、能力者だぞ」
「能力? なんの?」
「知らん」
「ふーん……」
一戦交える腹積りで話す2人。
それに対して、王は呑気にポルカを見ている。
そして、両手でカメラのピントを合わせる仕草をする。
片目を瞑り、完全にポルカにピントを合わせた。
「サーチスコープ」
「何だ⁉︎」
ポルカは警戒心を増加させた。
気を張って、敵の能力分析にまずは注力。
「……へえ〜」
「……なんだ、こいつ」
脈絡のない相槌に調子が狂う。
先手を打たれると思ったが、何もないなら先手必勝。
ポルカは駆け出そうとした。
ポツポツ、と水が滴る。
まばらに垂らされる水滴。
それは僅か数秒で勢力を増し、土砂降りの大雨と化す。
「なんで急に雨が……!」
「っつ……ぐっ……!」
トワとラプラスは咄嗟に雨を避け、小屋の下へ入るが、ポルカは頭を抱えてへたり込む。
次第に顔色を悪くし、息を荒げる。
「お、おい……どうしたんだよ」
「頭痛ぇ……」
「2人は一般人だったね」
ポルカをダウンさせ、トワとラプラスに近寄る。
標的は多分……。
「ラプラス逃げろ!」
「おおっと」
トワが拳を振るった。
案外身軽に躱されるが、足止めはできる。
「トワさん……」
「行け!」
ラプラスはたじろぐ。
逃げたらトワが、どうなるか……。
「あー、私もう帰るんで」
「……は?」
王はポルカを担いで街へと歩き始める。
「…………待て!」
「なんです?」
「……そいつ、どうすんだよ」
情なんて湧きやしないが、ポルカを狙う意図が読めない。
トワには本当に、全く。
ラプラスには、心当たりがあるようだが。
「ラプちゃんが教えてくれるよ、じゃ、バイバーイ」
王が去ってすぐ、雨は止んだ。
気持ちの悪い喪失感と湿気を残して、時は流れる。
トワとラプラスは、急いで船へ向かった。
その途中で本物のマリンと遭遇し、起きた出来事を共有した。