ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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78話 混沌の夜更け

 

 一味が眠りにつく頃、ハングリー島近海にAZKiたちはいた。

 

「今連絡があった。明日の朝6時に島を出るらしい」

 

 AZKiは通信機片手に仲間に伝達する。

 

「じゃあ、到着は昼の12時くらいだね」

 

 と、簡単に計算するアキロゼ。

 すいせいも輪に入っているが、やけに機嫌が悪い。

 

「今まで沢山時間かけて、アンタの策に付き合ってんのに――ここまで来て失敗とか絶対に許さないからね」

「分かってるよ――! 一々言わなくても」

 

 鋭い視線と言葉にAZKiが苛立ちを紛れさせる。

 

「じゃあなんであんな危険な奴を野放しにしてたの? 面白がってさ」

 

 そこへ追い打ちをかけるような詰問。

 AZKiもそうだが、すいせいにも随分余裕が無い。

 作戦失敗の未来が少しずつ見え始めたからだ。

 

「どうしようもできないの! あの人だけは!」

 

 静かな夜にAZKiの声が広がる。

 

「洗脳にかけて誤作動を起こした時、洗脳者全員が解放される可能性がある!」

「だからアンタの能力で奪えばいいんじゃん。同じ理由であのお姫様だってそうした」

「それもできない! 見たでしょ⁉︎ 自分自身も効果にかかったみたいに顔を艶やかに染めてた。私がそうなったら彌崩壊するんだから!」

 

 仲間の中でも最も付き合いが長い2人が、正面から口論し、喧嘩するように火花を散らす。

 船上の空気は最悪だ。

 とは言っても、殆どが洗脳下にあるため自己主張は極めて少なく、2人の喧嘩を気に止むものは0に近い。

 

「今回であの人たちとはケリつけて、早く『記録』を探すよ」

「――分かってる」

 

 2人の目的はいつまでもそこにある。

 あの日から、2人は永遠に囚われている。

 

「でなきゃいろはに、合わせる顔がない」

「……分かってるって」

 

 すいせいは輪を抜けて自室へ篭った。

 扉の開閉は実にうるさかった。

 

「……」

 

 AZKiはフブキに弱点をサーチされた時の事を思い出した。

 

「AZKiちゃん。何か作戦とかの情報はあったの?」

 

 通常意識下にある自分が、とアキロゼがAZKiを現実に引き戻す。

 

「ああ、うん――」

 

 現実へ帰還し、仲間から受け取った情報を思い出す。

 

「――敵が3人増えたらしい」

「3人も? 誰?」

「名前までは聞く時間なかったよ」

「そっか」

「うん。それで、従属半島の施設にいる事はバレてるみたい」

 

 調べ込まれていた事に驚きを隠せなかった。

 敵の増援も計算外だが、3人なら誤差の範囲だ。

 

「二手に分かれて、その不明の3人があくあちゃんの能力で不意打ちを狙ってくる」

「そっか。ならころねちゃんを当てないとね」

「そうだね」

 

 ころねをマリンたちとは逆の方角に配置し、索敵として機能させる。

 アジトに戻ったら、簡単な罠を考えておこう。

 敵を一網打尽にする作戦を。

 

 その作戦でこの戦いは終わりにする。

 

 だが何より、AZKiはマリンの能力に警戒する必要がある。

 突然の覚醒。更にヒメヒメの力を持ってしても抑えられないときた。

 もう一度アレをされれば、敗戦となる。

 少なくともAZKiは喰らえない。

 

 だが、周囲に大勢の仲間が居るうちは使うまい。

 制御ができず、仲間にも害があったから。

 適度に有利を取りつつ動くとしよう。

 

「ぺこらちゃんも、何処かセキュリティの高い場所に隠さないと」

 

 この先の事も踏まえると、ぺこらも絶対渡せない。

 何としてでも死守する。

 島外へ移す事は危険なためできないので、島内のどこかだ。

 

 ポルカとフブキの能力はどうしても欲しかったが、これ以上欲をかけない。

 あの2人は状況次第では諦める羽目になるな。

 

「……」

 

 考え事が多い。

 数年前にこの作戦を実行に移してから、日々の疲れが取れない。

 それも全て『記録』に奪われたせいだ。

 奪われたモノを全て取り戻して、きちんと皆を解放する。

 

 そしていろはに、そらに――逢いに行くんだ。

 

 

 

          *****

 

 

 

 深夜。シエロソニードの「???」にて。

 

「全員確認した?」

「した」

「ならおっけい」

 

 ある2人が密会をしているようだ。

 夜闇に紛れて見えもしない本を一冊開く女性。

 

「……どうかした?」

「……約束、忘れないでよ」

 

 もう一方の疑心を読み取って尋ねてみれば、そんな馬鹿げた質問。

 

「2人を繋げればいいんでしょ」

「それと、手を出さない」

「あー、そうそう」

 

 態とらしく頭に手を当てて、てへっ、と。

 信頼に値するのか、半信半疑だが、もうコレに縋るしかない。

 自分の力では、望む愛が実らない。

 

「約束は守るから、早く戻って」

「……」

「見られるとまずいでしょ、お互いに」

「……」

 

 ――――――――。

 

 女性は本を閉じる。

 2人は戻るべき場所へと姿を眩ましたのだった。

 

 

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