ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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87話 昏倒の脅威

 

 

 1階東通路、ラプトワvsシオねね――。

 

 

「合わせた事はないけど、やれるな」

「はい、バッチリっす」

 

 トワもラプラスも実は互いの能力を知らず、一度も共闘した事がない。

 ただキャンディータウンで知り合った、少し経歴が似通った者同士。

 でも不思議と息は合う気がする。

 

「シオンはどうとでもなりますけど、ねねさんには気を付けてください」

「ああ、昏倒だろ」

 

 そんなシオンにラプラスは致命的な一撃を貰ったわけだが、それは別の話。

 徐々にラプラスの体力が減るのなら、大方5分で半分にまで低下する。

 時間を掛けるほど勝機は薄れてゆくだろう。

 

「ッリャー!」

 

 ラプラスの奇声と共に大地が揺らめき隆起して、土石流が押し寄せる。

 波〜〜〜、と打ち出しそうな構えでシオンは土砂を引きつけ、ねねは天井のある部分に張り付く。

 シオンが極限まで待機して――

 

大災害波(カラミティパールス)‼︎」

 

 床を半壊させて土石流の軌道を地中へ変更させる。

 その土砂の中からラプラスが飛び出した。

 

「最強の一撃喰らえ――!」

 

 何の変哲もないパンチがシオンの腹部に直撃。

 鳩尾を狙ったが中途半端に躱されて狙いが逸れた。上手く抉れば大ダメージだったが、これでは威力不足だ。

 

 後方に吹き飛ぶ直前、シオンが反射的にラプラスの腕に触れて弱い「裂傷波」を放つが、流動化する身体には意味がなかった。

 

「赤脚‼︎」

 

 ラプラスの脳天目掛けてねねのちょっとセクシーな右脚が降り掛かる。

 

「ッ!」

 

 トワが割り込むが、落下速も含めればパワー負けしている。

 それでも引かずにガードを構え、ねねのキックを受け止めた。

 腕から受けた衝撃が全身を伝い両脚へ下る。

 

 痛い、かなり。

 

 半年前とは言え、稽古が活きていない気分になる。

 

「フルフルDevilショック」

 

 ねねの接触攻撃に対してトワは帯電する事で抗う。

 作戦前夜、ラプラスから頂いた情報によれば、ねねは地に足をつけていなければ周囲の人間を昏倒させることができない。

 空間を駆け巡る力はフィールド掌握に長けているが、アドバンテージとなる「昏倒への警戒心」を捨てる事になる。

 だからトワはこの様に、ねねが天井や壁、空中に居る際は積極的に攻撃できる。

 

「ぃび――」

 

 弱いスタンガンを喰らったねねが声にならない声を上げた。

 しかし、トワの様子から反撃を察知したのか、攻撃を受けるとほぼ同時に後方へ飛び退いた為、流電時間も極めて短く、多少の麻痺が右足を襲うに止まる。

 

 ねねが地に立つと同時に、軽く吹っ飛んだシオンも起き上がる。

 

 ラプトワが上手く立ち回れている様に見えるが、所詮は起き上がりに過ぎない。

 偶々相性良くぶつかり合っただけで、もし対処する相手がチェンジされれば逆に遅れを取る事になるだろう。

 特にねねから遅れをとった場合は致命的。

 シオンにも、「刻印」とやらを刻まれれば10分の命となる。

 

「――」

 

 一瞬、ラプラスの全身が痙攣した。本人だけが微かに感知できる、微弱な痙攣だが。

 ラプラスは自らの腹に手を当てた。

 力の衰えを感じる。

 急がなければ。

 

「ラプラス、ワンモア」

「うっす」

 

 トワに云うべきだが、伝えようとすると口が固まる。

 だから諦めて、残り数分で確実に倒す方向性に再シフトした。

 軽やかに呼応して構えると、呼吸を整える。

 

「ねねち」

「シオンちゃん」

「「――?」」

「「合体――‼︎」」

 

 ねねとシオンは互いを呼び合い、猛々しく叫ぶ。

 合体。

 そんな大層な変化は無かった。

 ねねがシオンを肩車するだけの組体操とすら呈する事のできぬ低レベルな変形。

 トワは思わず目を覆いたくなるほど不憫に感じた。

 一方ラプラスはどこか羨ましそう。

 

「金色&紫コンボ!」

 

 超絶にダサい……コンビ名? 技名?

 兎に角、「なんかよく分からんの」を叫んでお子ちゃま2名が猛突進して来る。

 ねねが全力で走り出し、肩に跨るシオンが「裂傷波」を乱れ打ち。

 いや、シオンの攻撃は殆どがトワに向いていた。

 

「足元に気を付けろよ!」

 

 ラプラスの力強い踏み込みに床が共鳴し、敵の足元が突出する。

 シオンを乗せて抜けた天井に吹き飛ぶねね。

 しかしクルクルとシオンを抱えて宙を舞っており、まるで攻撃を喰らったとは思えない。

 しかも――

 

雨乱槍(アマランス)‼︎」

 

 大回転しながら放つかまいたちの様な雨。

 今までは真下にのみ放たれていた技だが、回転を加えることにより全方位に乱れ打ち。

 今度こそ本当にランダムな攻撃。

 

「ゔっ……!……!」

「トワさ――。ん」

 

 トワの全身に傷口が増えて様々な箇所から血が滲み始める。

 服もザクザクと破かれて、肌が露出を始めた。

 咄嗟にラプラスが動き出したが、彼女も攻撃の対象範囲内。無傷とは言え一瞬脚に喰らえばその部分が流動化してバランスが崩れる。

 口も一度塞がれて少々イラッとした。

 

「ッラ!」

 

 また踏み込んで、今度はトワの周囲を山で覆う。

 数秒で破れるが、数秒で2人は落下する。

 

「すまーっしゅ!」

「ィ――⁉︎」

 

 回転を止め、ねねが抱えたシオンをラプラス目掛けて投げ飛ばした。

 なんて雑な!

 しかもそれは……無意味だろ。

 

高速裂傷波(ジェットパールス)‼︎」

「――⁉︎」

 

 ドピュん、と放たれた「裂傷波」は先刻より勢いを増していた。

 ラプラスの右脚を切断して転倒させる。

 無論、ノーダメージ。

 だが、ラプラスが動けないその一瞬に、ねねが間近に降りて来る。

 慌てて全身を土砂に変えて、距離を取る様に流れた。

 

 離れた位置で全身を再形成して立ち上がったが……。

 

「ぉろ……っ」

 

 くらっと視界がぶれて転びかけた。

 2回程予期せぬステップを踏み、目眩に耐える。

 ねねの能力に触れてしまったようだ。

 

「クッソ……」

 

 ラプラスが回避不能と踏んで狙った様だが、ラッキーだった。

 トワが狙われると危険だったろう。そう思い返しながら、トワを囲う山を平地に戻した。

 

 2人で敵を挟む様な状況となる。

 トワの服はビリビリに破れ、至る所に切り傷がある。

 ラプラスは外傷こそないが、刻印により体力は半分以上削れ、更にねねの昏倒能力を軽く喰らい平衡感覚が鈍った。

 

 対してねねとシオンはほぼ蓄積ダメージなし。

 ラプラスにも次第に危機感が出てきた。

 

「……」

 

 ねねだ。

 兎に角ねねを対処しなければならない。

 彼女は存在そのものが厄介。

 

「アバドンDevilエンジン」

 

 トワがひっそりと体内のモーターを加速させる。

 

「オラァ‼︎」

 

 再三、ラプラスの力強い踏み込み。

 毎度同じで単調且つ大雑把な攻撃。

 

 迫り上がる床がねねとシオンを宙に放り上げる。

 

「ラプラス!」

「はい!」

 

 トワの掛け声に合わせてラプラスが道を形成する。

 どちらでもいい。シオンかねねへと繋がる道が出来ればそれで。

 

 目前の床が上り坂となって2人へ向かうので、その通路を猛ダッシュ。

 エンジンをかけたトワはこの中の誰より速い。

 ギリギリ目に止まる程度の速度で坂を駆け上がるトワに、シオンから「裂傷波」が複数回放たれるが「予期した様な動きで」左右に回避して突き進む。

 

 坂が途絶えているので大きくジャンプ。

 ねねの腹に全力の拳を撃ち込んだ。

 

「ぅぇっぶ‼︎」

 

 胃酸の混じった唾液を飛散させて、ねねは地に急降下。

 高度はないので落下ダメージは見込めないが、この一撃はデカい。

 しかも、今の隙にトワを狙ったシオン――を更にラプラスが狙い撃った。

 もう一度大地を隆起させて、地面を直接シオンの背中にぶつけた。

 

「がっ――ハ‼︎」

 

 攻撃の入射角もあり、シオンはねねより高い位置から落下した。

 骨折まではしなかったが、大きく負傷する。

 だが結局、その怪我は治ってしまうので意味はない。

 

「クッソ……」

 

 ラプラスが一撃でシオンの意識を刈り取れなかった事は重大なミスだ。

 刻印のせいでまるで力が入らない。

 能力の勢いも衰えており、以降は更に威力減となる。

 

 トワの拳も上手く入ってはいたが、あやめやノエルほどの腕力やセンスが無いので、どうしても威力不足に陥る。

 

 ねねとシオンが地に転がり、トワはラプラスの前に背を向けて着地。

 追撃に距離を詰めたい思いをトワはグッと堪えた。

 でも大丈夫。

 ラプラスがもう一度、2人を宙に跳ねさせれば、今度こそ仕留められる。

 その筈だが、待てども地形が変化しない。

 髪を振るって振り返れば、ラプラスは這いつくばっていた。

 

「ラプラス!」

 

 咄嗟に駆け寄り、視線は正面に戻す。

 背中に触れながらも敵からは目を離さない。

 

「どうした!」

「す、んません……シオンに、やられて……」

 

 記憶を巡るがトワの記憶内でそんな瞬間は存在しなかった。

 落下前の話か。

 

『一旦退くか?』

『え⁉︎ 何⁉︎ 何これ⁉︎』

「――‼︎」

 

 会話を聞かれぬ様、トワがラプラスと脳波の回線を繋ぐ。

 一瞬戸惑うも直ぐに要領を得て、思考を脳内に浮かべた。

 

『吾輩連れて、逃げれるんですか?』

『いーや、正味自信ねぇな』

 

 早く追撃しなければ、今の攻撃も水の泡と化す。

 

『今の攻撃、あと一回だけでもできんか?』

『できるかな、どうかな――頑張ります』

 

 聴いてはいけない小さな葛藤は聴き流し、トワは首肯した。

 視線を一度だけ合わせて。

 

 ラプラスは地べたに寝そべったまま、顔だけを上げて必要な環境と状況の情報を視覚内に収める。

 格好はつかないが、この態勢のまま地面を隆起させて再度2人を宙に放り上げた。

 立ち上がる前に打ち上げたので、ねねすらも上手く制御が効かない筈。

 

 トワは駆け出した。

 先ほどと全く同じ光景。

 坂の通路が出来上がり、駆け上って距離を詰める。

 

「ッ⁉︎」

大災害波(カラミティパールス)

 

 トワがシオンの行動を危ぶみ坂から飛び降りた途端、シオンが指を鳴らした。

 すると床に大量の亀裂が入り、坂も脆く崩壊してしまう。

 

 トワが回避一辺倒となる中、ねねはシオンの脚を掴む。

 これによりバランスを調整、能力で自在な方向への進行を可能とした。

 シオンが脚を振るうと、ねねが一直線にラプラスの下へ。

 

 どん、と力強く着地すると、もはや虫の息のラプラスにトドメの昏倒能力をぶつけて意識を刈り取る。

 パタリと頭も地に寝かせてしまった。

 

「ラプラス!」

 

 叫ぶも虚しく声が反響するのみ。

 そこへシオンが落下しながら裂傷波を連投。

 初撃を反射で躱したが、続く2、3撃目は諸に喰らう。

 

「ッぐ――!」

 

 捻挫しながらシオンが着地。

 直後ねねが猪突猛進してきた。

 

「やっ――」

 

 落下後もシオンの攻撃は止まず、脚や腹、腕に喰らい動きの鈍ったところへねねが到着。

 

「寝符宙雲」

「ぅ――」

 

 半歩退いたが手遅れ。

 トワも昏倒の能力の前に屈した。

 

 パタリ――。

 

 

 息巻く心も虚しく、ラプトワはシオねねの前に倒れてしまったのだった。

 

 





 どうも作者でございます。

 投稿遅くなって申し訳ない。
 ライブがあったのもそうですが、実は色々してましてね。
 そのせいです。

 さて、今回の結果は意外だったのでは?
 おかゆに続いてこちらもやられてしまうと言う。
 次回は勝てるかな〜。
 次回はかなたんの所に行くよ。

 ではまた次回以降。
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