ホロメンと悪魔の実   作:炎駒枸

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95話 覚醒(めざ)めの声

 

 監視室を探す為、地下牢を後にした夏色まつり。

 1階中央ホールで倒れたわためを発見するも、起こす事も連れて行く事もできずその場に置いて上階へと上がった。

 そして2階中央ホール。

 

「メルメル! ちょこせんせー!」

 

 メルとちょこの2人組と居合わせた。

 2人は相当に熱い抱擁を交わしていたが、まつりの登場に際して勢いよく離れる。

 どちらも自我はあるようだ。

 

「まつりちゃん」

「……! あなた、あの時の……」

「1年ぶり!」

 

 ぼたんを連れて国を出た人、と言う曖昧な記憶だけがちょこの記憶に残っていた。

 なので名前を直ぐには思い出せなかった。

 

「メルたち、どうすればいいかな?」

 

 メルは最大の目的を果たして次なる任務を探している所。

 まつりは一瞬だけ悩んだが――

 

「船長の後を追って、1番上に向かって」

「ん、分かった」

「ちょこは……」

 

 ちょこは洗脳解放直後でイマイチ状況が掴めていない。

 単独行動は危険だろう。

 

「メルメルか、まつりか……まあメルメルの方がいいかな。ついていって」

「わ、分かった!」

「行こ、ちょこちゃん」

「ええ」

 

 そう言ってメルとちょこが階段を駆け上がるので、まつりも続く。

 すると2人はそう言えば、と前置きし、

 

「まつりちゃんはどこに?」

「監視室。多分4階以上にあるってルーナが」

「ルーナ姫――⁉︎」

「うん。あ、大丈夫。捕まってるんだけど、ししろんが奮闘してるから!」

 

 この場の3人のぼたんに対する信頼は絶大だ。

 その一言で杞憂をやめた。

 現実は敗北という結果に終わっているが、今の3人には知る由もない。

 

 3人は纏まって3階の中央ホールへ突入した。

 

 周囲に人影はない。

 足を止めず4階へ駆け上がる。

 

「――⁉︎ フブキ、みおしゃ!」

 

 4階中央ホールに転がる2人の姿を発見。

 メルとちょこを追い抜いて、まつりが駆け寄る。

 

「あ、まつりさん……どうも」

「まつりちゃん!ね!」

「はい……」

「どうしたの? みおしゃは……意識が無いけど」

 

 フブキがミオの手を握っている事には触れず、大まかな状況だけを問う。

 そこそこの速度で駆けてきたまつりより、フブキの方が息切れが激しく感じる。

 

「私がやったの、気にしないで……」

「フブキが?」

「へへへ……意外でしょ……」

「まあ、ある意味では」

 

 まつりは宝鐘の一味の内部事情など知らない。

 辛うじてマリン、トワの能力を知っており、みことフブキの能力を一片ほど、その他は一切知らない。

 なので、フブキがミオに勝てないなど欠片も思っていないのである。

 まつりが驚いたのは、フブミオが戦った事実の方だ。

 

「フブキ、動ける?」

「うん、私は動けるんだけど……ミオが動けないから」

「どうするの?」

「ここに残るよ」

「あ、ごめん間違えた。どうしたいの?」

「え……」

「ここに残るのは、みおしゃが心配だからでしょ? その心配が不要なら、フブキはどうしたいの?」

「――船長のとこに行きたい」

 

 フブキはミオと繋いだ手を離して上体を起こし、まつりに顔を寄せて力一杯に答えた。

 まつりはその思いを尊重して思い切り頷いた。

 

「メルメル、ちょこせんせー、みおしゃを船まで運んであげて」

「え?」「分かった」

 

 メルとちょこで反応が割れるがちょこはメルの意思に従うようで、直ぐに黙った。

 

「船はマリンさんの船でいいの?」

「うん」

「……ミオ、まだ洗脳にかかってるから、気をつけてください」

「大丈夫、任せて」

 

 ちょこがミオを背負う。

 そしてメルを先頭に2人は来た道を引き返して、2階南側に減り込んだマリン号を目指した。

 

「フブキ、1人で大丈夫だよね?」

「うん。あれ? まつりさ――ちゃんはどこへ?」

「監視室。4階以上のどこかにあるってルーナが言うから探しに行くの」

「そっか、気を付けて!」

「うん!」

 

 階数以上の情報はないので、まつりは無鉄砲に走り出す。

 直感だけを頼りに北通路へ飛び込んだ。

 それと同時にフブキも5階へ続く階段を駆け上がる。

 

 まつりが薄明かりの奥へ消えた頃、フブキは5階へ突入、するはずだった。

 ところが……

 

「――! 塞がれてる⁉︎」

 

 階段が閉ざされていた。

 扉などではなく元々道など無かったように――空いた穴に「パズル」を嵌めたように、塞がれていた。

 

「まつりさんちょっとまっ……」

 

 まつりの姿はもう無い。

 そしてフブキはここ以外に階段があることを知らない。

 

「ど、どうしよう……!」

 

 

 

          *****

 

 

 

 北通路へと進んだまつりは片っ端から扉を開け放ち、監視室を探す。

 運良く見つかって欲しかったが、そこまでの運は持ち合わせていない。

 

「まあ、運の無さなんてあの赤スパ祭りで散々証明されてるからなぁ」

 

 1年以上配信とはご無沙汰しているが、尚も強く記憶に残るあの事件たち。

 ふと思い出すと配信業が恋しくなってきた……。

 

「――――」

 

 いや、そんな事は今関係ない。

 そう、この話は事件を解決してマリンと話すんだ。

 だからまずは、監視室を――

 

 かちゃっ……

 

「ぇ――」

 

 独りでにある扉が開く。

 まつりは心霊現象と恐怖して数歩引くが、扉から出てきた者を見て身構えた。

 

「うげっ……」

「こより⁉︎」

 

 扉から静かに警戒しつつ現れたのは博衣こより。

 まつりと目が合うと酷く顔を歪めた。

 

 航海中に一度、記憶の跡地で一度と2度に渡りこよりに襲われているまつりにとって、知り合いと言えど厄介な存在。少なくともこの世界では。

 この場に於いてはこよりも同様のことを思っただろうが。

 

「ま、またマヨネーズ漬けにするつもり⁉︎」

「……今はあんたに構ってる暇ないから」

 

 こよりは無関心に視線を逸らして静かに扉を閉めた。

 そしてまつりの方へ歩き始める。

 

「な、なに! やるの⁉︎」

「うるさい、静かにして」

 

 こよりの言葉を無視するように拳を握って見せるまつり。

 イラっとして少し語気を強めるが、それでもこよりは静かだ。

 過去に出会った時とは様子が異なる。

 

 そのまままつりの隣を抜けて、まつりが開け放した扉の奥へと進み、扉を閉めた。

 

「何してるの?」

 

 まつりは後を追って扉を開き直し、入り口に佇む。

 きょとんとこよりの背中を見つめて。

 

「黙って。あとドア閉めて」

「ええ、何してるのか教えてくれないとやだ」

「――」

 

 まつりのいけ好かない態度にイラつき、こよりの行動が荒々しくなる。

 力強い踏み込みでまつりに詰め寄ったかと思えば、勢いよく扉を閉め――かけて思いとどまり、音を抑える。

 感情より思考が先行していて、大人だった。

 

 薄暗い部屋の中、こよりは家具の裏側を弄り始める。

 かちっ、と音が鳴ると新たな扉が生まれた。

 

「――⁉︎」

 

 いや、元々そこにあったが、スイッチを押すまで完全に壁に擬態していた。

 まつりの驚愕の表情は誰にも見られないまま流される。

 

「何それすごっ!」

「――」

 

 こよりは最早まつりをいない者として扱う。

 隠し扉の奥へ進んでいくので、まつりは慌てて滑り込んだ。

 かちゃ――。

 

 真っ暗闇となり視界は閉ざされた。

 かと思えば、こよりが照明を付けて口に咥える。

 犬みたいで可愛いと思った――。

 

「あ、犬だった」

「何言ってんの」

 

 唐突な発言に無視しきれずうっかり返してしまう。

 咄嗟に視線を逸らして口を閉ざすと、こよりは梯子を登り始めた。

 

「ほぇ〜……これどこに繋がってんの?」

「――――」

 

 もう2度と口は効かないと言う意思が滲み出る態度。

 まつりはこよりのパンツを眺めて――

 

「ちぇっ」

 

 暗闇の中の逆光でパンツは見えなかった。

 そもそもズボンなので、光があれどスカートほど効率よくパンツを拝めない。

 

 それでも上を見ながら梯子を登り、上の階へ到達。

 

 こよりの背後について扉を一つ抜けると先のような小部屋に出る。

 隠し扉を丁寧に閉ざしてもう一枚扉を開けると、先ほどまでいたような通路に出る。5階の北通路に出たのだろう。

 

 こよりは周囲、特に天井付近を警戒しつつ中央ホール側へ。

 なのでまつりもそうする。

 

 中央ホールへ近づくに連れて、何やら激しい物音が響いてくるが……。

 

「――んの」

「――っぇ――にぇ」

 

 声は極めて聞き取りづらいのだが、とある語尾だけは印象的で、2人の内1人は誰なのかが直ぐに分かった。

 

「みこち――?」

 

 監視室探しを一旦忘却し、まつりは声のする方へ駆け出した。こよりを追い抜いて。

 するとこよりが焦燥を見せる。

 

「バカっ――‼︎」

 

 まつりは設置された監視カメラの前を平然と通過、途端にこよりは隠密を諦めてまつり同様に駆け出す。

 

 5階中央ホール――。

 

 そこには全身に様々な傷をつけたみことすいせいがいた。

 

「みこち! すいちゃん!」

 

 まつりは声を上げる。

 こよりが頭を痛めるような仕草を見せるが、どのみち対面に立っているすいせいにはバレていた。

 

「――! まちゅり!」

「……こより」

 

 振り向くみこ。

 こよりを睨みつけるすいせい。

 

 こよりはみこめっとの攻防の惨状に目もくれず、とある一室の取手を掴んだ。

 がちゃっと回して押し開こうとするが――

 

「んっ! こっ! こんの‼︎」

 

 数度体当たりをかますも扉はしなるに止まる。

 内側からの施錠だけでは説明できない扉の堅さ。

 

「ロボ子さんか――!」

 

 強引な改修工事の犯人を瞬時に特定し、こよりは扉から距離を取る。

 そして勢いよく激突して突破を図るも、やはり人力では早々開かない。

 

「こより、そこに何があるの?」

「うるさい! 黙ってて‼︎」

 

 まつりとこよりの登場でみこめっとの戦いは中断される。

 様子から、すいせいはこよりを完全に敵と見做した。

 ので、みこを無視してこよりに襲いかかる。

 

「待てよ星街ー!」

 

 しかしみこの妨害で動きが止まる。

 

「――っ! チッ」

 

 環境のパズル化でこより達の妨害は可能だが、あの部屋にも被害が及び、扉の施工を無駄にしてしまう。

 こよりは流動化できるため、拘束も難しい。

 

「――よく分かんないけど、こよりはすいちゃんの敵なんだね?」

「それが――! 何――! んっ――‼︎」

 

 だん、だん、だんと肩から扉に激突を続ける。

 まつりは意を決してこよりの味方をすることに。

 マリン達の利益となると信じて。

 

「こよりー‼︎」

「何ッ――⁉︎」

「がーんーばーれぇー‼︎」

 

 痺れを切らしたこよりからの激しい怒号。それを掻き消してまつりの声援が届くと、こよりの全身に力が漲った。

 

「ほらこより、突進突進!」

「――だから、うっさい‼︎っての‼︎」

 

 まつりの加担は直感できた。

 だから表面上は怒りを見せつつも、内心ではわずかだが感謝していた。

 表面に見せた怒りを力に乗せて、渾身の体当たりで強固な扉をぶち破る!

 

 バギッ、と砕ける木製の扉をこよりは突き抜けて、その部屋へ侵入成功。

 室内の高級そうなチェアーに座っていた女性――ロボ子が慌てた様子で立ち上がる。

 

「なっ、ウソ⁉︎」

「ロボ子さんだ……」

 

 破壊された扉の外から一点――ロボ子の姿に釘付けになるまつり。

 そんなまつりを放って、こよりは奇襲を仕掛けた。

 

「Xeウェーブ」

 

 押し寄せるマヨネーズの波。

 

「メインウェポン!」

 

 対するロボ子が口から放つのは大量のネジ。

 既に全身を流動化してこよりは受け流し体勢を取っていた。

 こよりを突き抜けて数多のネジが扉や室外の壁に突き刺さる。

 まつりの立ち位置が悪ければ、間違いなく流れネジを喰らっていた。

 

「――っ、サブウェポン!」

 

 マヨネーズの荒波に対抗するべく両腕をドライバーへと変形させるが――

 

「下手に火花を散らすと爆発させることになるよ」

「――――ぅ」

 

 既に室内の床はマヨネーズで侵食された。

 相変わらず原理は不明なのだが、下手に着火すれば爆発してしまう。

 

「……どうやってここまで」

「こんな時の為に『あの酒豪』と隠し通路を作ってたの。カメラに映らないルートをね。北口から屋上まではカメラに捕まる事なく移動できる」

 

 ここへのルートでは、この扉の前のカメラで必ず見つかるが、その場合は手遅れだ。

 

「カメラ……? って、ここ監視室じゃん!」

 

 まつりは嬉々としてモニターに駆け寄った。

 ビン――――と何かが膝に引っ掛かる。

 

 シュシュシュ――――。

 

「――――ぇ?」

 

 自分の失態に気がついた時、まつりの腹部に痛みが走った。

 

「いッ……」

 

 痛みに震え、視認する事に怯えながら視線を落とせば腹に先程と同じネジが刺さっていた。

 腹からじわじわと生々しい血液が滲み出てくる。

 

「や、ば……死ぬ……」

「あーあ、バカだねあんた。大丈夫だよ、そんなんじゃ死なないから」

 

 単純な侵入者迎撃トラップにかかったらしい。

 こよりは周囲を見回して危険がない事を確認するとまつりを無視してモニター前に立った。

 だが、先程より語気が柔らかくなっていた。こよりなりに感謝しているのだろう。

 

「まつりちゃん、そこの扉閉めて」

「え、痛いのに……?」

「ゆーて一本でしょ。抜かなければ大した事ないから、早く」

 

 こよりの指摘は正しいのだが、もう少し労わってほしい。

 もしネジではなく剣だったら、まつりの腹は抉れていた。

 

 結局渋々痛みに耐えながら扉を閉めた。

 

「――!」

「動いたら口と鼻にマヨネーズ詰めるからね」

「ぅっ……」

 

 ロボ子の反撃を察知したこよりが目もくれず背後に語り掛けると、ロボ子は縮こまった。

 こよりは一生懸命に数多のモニターからある1人の姿を探している。

 やがてその姿を発見すると、放送の設定を弄る。

 放送範囲を一度全消しして「地下」のボタンを押すと、マイクに口を寄せた。

 

「ラミィちゃん、聴こえる?」

 

 一言尋ねるとカメラにラミィが視線を向けたのでカメラ越しに目が合う。

 声は届いているようだ。

 同時に他の階層の様子も確認するが、変化は見られない。放送設定は上手くいっている。

 

「うぅ……え⁉︎ ししろん⁉︎」

 

 まつりが弱々しい足取りでモニターに近付いて地下の攻防の結末を知る。

 投獄されたぼたん。彼女の腹にはまつり以上の流血がモニター越しにも目視できる。

 その他の階は一旦意識の外へ。

 まつりの声も入ったようで、ぼたんとルーナの視線も動いた。

 

「ラミィちゃん、今すぐその2人を解放して」

「――え? こより……どしたの?」

 

 地下モニター内の3人と監視室の2人が全く同じ表情をした。

 まるで示し合わせたように。

 その中でも最も驚いているのはラミィだったが、彼女は口を開かない。

 声が届かない事も含めて、ここの作りは熟知しているから。

 

「いい? 今から言うことはこよの見解だから真実は知らないけど、少しでもぺこらちゃんを思うなら指示に従ってよ」

「『――』」

 

 同じ様相だった5人だが、その言葉に対して唯一異なる反応をしたものがいた。

 ロボ子だ。

 眉を寄せる4人に対して、ロボ子は歯軋りした様な音を立てていた。

 

「恐らくぺこらちゃんは今、AZKiちゃんの能力で洗脳の能力を奪われてる」

「『――――‼︎⁉︎』」

 

 まつりはチラリとロボ子の様子を確認すると、答え合わせは完了した。

 

「意味分かるよね? ぺこらちゃんは今、AZKiちゃんによって洗脳にかけられている、って事」

「……」

 

 ロボ子が強引に口封じを行うかと危惧したが、寧ろ逆だった。

 諦めたようにため息をついて脱力していた。

 お陰で彼女の身体の至る所にマヨネーズが付着する。

 

「ボクが気に入らないのは知ってる。でもぺこらちゃんに少しでも恩義を感じてるなら、今からマリンさんの味方をして。ぺこらちゃんを解放する為に動いて」

 

 モニターを超えて、ラミィの鋭い視線がこよりの瞳を貫く。

 声は聞こえないので眼で訴えているのだ。嘘でなくとも、もし間違っていれば一生許さないと。

 

 そのアイコンタクトも終わり、ラミィが檻へと歩み寄る。

 施錠を外して檻の内に入り、2人の枷を解くその光景を見届け、こよりは放送を切った。

 

「意外と大人しいじゃん」

「正直ボクはね……どっちに転んでもいいんだよ」

「あっそう」

 

 決して手を抜いたわけではないが、この作戦が失敗するのなら、それでもいいと思った。

 だから、こよりがここを制圧して、最早抵抗する気力を無くしたのだろう。

 

 ロボ子はずっと、「どちらの側」に付くのか思い悩んでいて、結果として導き出したのが中立だった。

 ゼロ海賊団で最も半端なヤツが、自分だったのだ。

 

「こより、終わったなら、変わって」

「――?」

 

 まつりが腹を庇いながらマイクの前へ立つ。

 こよりの操作を見て学んだのでそれに倣い……放送範囲、全部。

 放送開始――

 

「すぅーーっ、ぅッ……」

 

 大きく息を吸うと傷が痛んだ。

 まだ我慢できる範囲で良かったと思いつつ、軽く息を吸い直す。

 モニターに映る者も、映らない者も。

 自分の知る限りの味方を頭の中に浮かべて。

 そして――

 

 

「みんなァァァァーーーー‼︎ がァァんーーばァァれェェーーー‼︎ ッゲッホ、ゴッホ……」

 

 

 傷のせいで呼吸が乱れたので速攻マイクを切った。

 

 腹を押さえて呼吸を整え始めるまつりの背後で足音がした。

 

「……こより、どこ行くの?」

「ラミィちゃんのとこ。一応直接話しておく」

 

 モニターにはぺこらの姿もあるが、自分が言っても無意味だと理解しているのだ。

 洗脳の解除法はこよりもよく知らない。だからマリンに託すしかない。

 こよりは監視室を後にした。

 

「……まつり、どうしよ」

「まつりちゃん」

 

 小さいながらに響く負傷をして、次の行動に悩むまつり。

 そこへ新たな声が聞こえた。

 

「ん――どわぁっ‼︎⁉︎」

 

 まつりの正面にロボ子がいて、背後に人はいないはずだ。

 名前を呼ばれて慌てて振り返るとビックリ仰天!

 

「あ、あ……あくた……!」

「ご、ごめん。3階からずっと付けてたの」

「……うっ、いでで……」

「あ、それ治すから、動かないで」

 

 唐突に現れたのは湊あくあだった。

 あくあの能力を知らなかったまつりは当然として、ロボ子も流石に度肝を抜かれていた。

 

 あくあはまつりの腹に刺さったネジを無理矢理引き抜く。

 

「イ゛ッ⁉︎」

「が、我慢して」

 

 本日最大の痛みにまつりは涙を流す。

 ネジが外れるとぷしっと出血するので、あくあは迅速に緑のインクを傷口に塗った。

 

「生命の緑」

 

 癒しの力でまつりの傷は消滅。

 

「うぅ……あ、りがとぅ……」

 

 腹に付着した血液は消えないが、殆どが元通り。

 まつりは目元に涙を浮かべて苦笑いした。

 

「うん、じゃあ――船長のとこに行こう」

「――うん、そうする!」

 

 あくあとまつりは監視室を出ると、一度中央ホールを見やる。

 絶賛戦闘中。

 2人は北通路奥の階段へ向かった。

 

 

「…………」

 

 監視室に残されたロボ子。

 マヨネーズは全て消滅している。

 

「……」

 

 モニターを見回して戦況を眺め、とある3点に視線を強く向ける。

 丁度2階へ進もうとしているいろは。まだあやめを抱えている。

 次にみことすいせいの戦う、5階中央ホール。

 そして屋上の「ぺこらとマリン」。画面には映っていないが、AZKiも必ずそこにいる。

 

「……」

 

 ロボ子は、みこめっとの戦いの決着を待つ事としたのだった。

 

 

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